異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!? 作:剣の舞姫
平日にも一話上げたかったのですが、毎日寝落ちしてました。
異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?
第17話
「手記」
ダンジョン探索三日目、昨夜はダンジョン内でキャンプをして一夜を明かした剣佑達は朝の時間には身支度を済ませてキャンプ地にしていた小部屋を出ると、昨日同様に地下3階の探索を続けた。
マッピングをしつつルートを慎重に選びながらの進行の為か、どうしても速度は遅くなってしまうものの、このマッピングというのは大事な作業なので疎かに出来ないのだ。
「フィリア、過去にマッピングされた物って王宮からは支給されなかったのか?」
「無理よ、一番最新の物でも50年前の物で、それだって馬鹿みたいに高い上に数が少ないから中々出回らないのだから」
「昔はもう少し数があったらしいがな、ダンジョン内で持っていたパーティーが全滅して紛失、ってのが続いて現存するマップは相当少ないらしい。ビーストダンジョンのマップも、確か一番新しいのだと80年くらい前の奴か? それ以降のは失われたって聞いてる」
「80年前の地図が……劣化してそうだな」
紙はどうしても劣化する消耗品だ。なので古い地図は所々が欠けたり霞んだりなどで役に立たない事の方が多い。
ここ数年はダンジョンに潜る冒険者は皆無になってしまっていたので、最新のマップが作成される機会も無くなった。なので新たにダンジョンに挑む者は大金叩いて古いマップを購入するか、自分でマッピングするかのどちらかなのだ。
「このビーストダンジョンも最後に冒険者が入ったのは自害用チョーカーが普及し始めた当初みたいだから、たぶん25~30年前ね。当時のマッピングされた物が無いという事はパーティーが全滅してマップも失われたのかしら」
先日見つけた遺骨が恐らく最後にビーストダンジョンに入ったパーティーの女性なのだろう。彼女と、そしてその仲間は恐らくこのダンジョンで全滅して、その時に彼女達がマッピングしていた地図も失われたのだ。
「私達のマッピングした地図も、失われないようにしないといけませんね」
「ええ、大事な資料だもの」
そんな話をしながらマッピングしていると、ついに地下4階へ降りる階段と、その横に少し豪華な扉が現れた。
おそらく扉の向こうは今までの小部屋なんかとは違うはず。扉が豪華という事は、何か大事な部屋である事は簡単に予想出来る。
「扉自体に罠は無さそうね」
鍵穴を調べたフィリアが鍵が開いている事と、特に罠が仕掛けられている様子は無い事を教えてくれたので、まずはスウェンが先頭に立って慎重に扉を開いた。
中からモンスターが飛び出す様子も無く、中を覗き込めば書斎だろうか。古い本が並べられた本棚に囲まれた室内の様子が伺える。
「ダンジョンの主……8000年前にここを根城にしていた十二将軍の一人の部屋か?」
「書斎だろうな。だが本はどれも劣化が激しいようだ」
試しにスウェンが本棚から一冊本を取り出してみると途端に崩れてしまった。古すぎて劣化が激しいため、本を持ち出すのは不可能だと判断した剣佑とフィリアは部屋の奥にあった机の上を調べる。
机の上には空になったインクボトルと劣化した羽ペン、それから劣化しているものの辛うじて読める日記らしき本が置かれていた。
「手記ね」
「読めそうか?」
「……殆ど読めないわ。所々読める箇所が残っているけど、大半が掠れているか紙自体が崩れてるみたい」
机の上の手記、どうも8000年前の物のようだが、劣化防止の保存魔法が掛けれれていた形跡があるらしい。
とはいえ、その魔法も既に効果を失っており、魔法の効果が失われてから相当な時間が経過しているのは確かなようだ。
「えっと……『デュ・・の言っ・・・・・・。・・・・・方を狂・・・・、創・・・ミウ・・・だっ・・・・・・・事実を、・・意識・・る内・・・。後世・・・よ、どうか・・・クとマリ・・・・様の無念・・・・・て欲し・。・・・、・・・・ゴスを滅・・・・・し。鍵は、アク・・ア・様だ』……古い文字な上に所々が欠けてるから読み難いけど、内容はこんな感じ?」
エルフ族という長命種族というだけあって実は古代文字を習っていたフィリアが解読した内容を別の紙に翻訳して書いてくれた。
流石は古代資料を解読する仕事をしている事の多いエルフ族の一人というだけあって、フィリアの解読した手記の内容も見事なものだ。
「この『創・・・ミウ・・・』って、創造神デミウルゴス様の事では?」
解読した文字を読んでいたアンナがポツリと零した言葉にスウェンがギョッとした顔をして、すぐにフィリアが書いた文字を読むと、納得した顔をする。
「確かに、創造神デミウルゴス様の事だな」
「それから、『鍵は、アク・・ア・様だ』って所、これって創世の女神アクエリアス様の事な気がしますけど……」
「むぅ……そう、読めるな」
「そうね、そうと考えるのが自然よね」
スウェン、アンナ、フィリアは知っているようだが、剣佑は初耳の名前だ。尋ねてみれば実に単純というか、この世界では当たり前に知られている事だった。
「御伽噺なんです。この世界に生きる人なら子供の頃に絶対に一度は読んだり聞いたりした事がある御伽噺」
「世界を創世された創世の女神アクエリアス様と、大地や海、生命などを創造した創造神デミウルゴス様、この二柱の神の名と偉業は、この世界で産まれ生きる者なら誰もが当たり前に知っている事だ」
「日本神話の伊邪那岐と伊邪那美みたいなものか……」
剣佑のイメージしやすい日本の神を当てはめれば分かりやすい。
創世の女神アクエリアスとは文字通りこの世界を創世した神、原初の神と呼ばれる御伽噺に登場する女神の名で、創造神デミウルゴスは大陸を構成する大地や母なる海、そして生命そのものを創造した神として同じく御伽噺で語られている。
「この二柱の神の名が出ているって事は、この『マリ・・・・』っていうのは遺神マリーメイアの事なのかも? こじ付けだけど」
「いや、着眼点としては間違っていないんじゃないか?」
フィリアが口にした神の名、それは勇者の聖剣マリーメイアの基となった邪神に殺された遺神マリーメイアの名であり、世界で最も有名で信者数も多い遺神教会が崇め祀り信仰している神の名だ。因みに御伽噺の中で遺神マリーメイアとは創造神デミウルゴスと創世の女神アクエリアスの娘だと伝えられている。
それを聞いて剣佑の中ではマリーメイアの立ち位置が日本神話で言うところの天照大神と同じだろうとイメージした。
「他に読めそうな所はあるか?」
「ちょっと待って……劣化が激しいから下手に触ると読めなくなりそうね」
慎重にページを捲り、他に読めそうなページが無いか調べるフィリアだったが、数ページほど捲って手を止めた。そこにはビーストダンジョンを含む全てのダンジョンについて書かれているようだ。
「ちょっと待って、今翻訳してるから……えっと、『守護・・、・・・・・た中・・、特・・・・・・・・・用・・・。最上・・ン・・ー・・・・・・合わ・・・整・・い・。』ね」
意味はよく分からないが、少なくとも良い情報ではなさそうな気がする。守護というのは、剣佑の直観が間違っていなければ守護者という意味だと予想出来るが、もし守護者だとしたら……。
「守護者として、最上級モンスターが居るって事じゃないのか?」
「お、おいケンスケ……それが事実だとしたら」
「今も、このダンジョンの奥には最上級モンスターが守護者として存在している可能性があるって事だな」
「不味いな……」
最上級モンスターといえば上級モンスターの上に位置する最悪のモンスターたち。個体差はあるが大半が災害級の扱いを受けており、特に最上級モンスターの代表格と言われているドラゴンともなれば一国の軍が総力を挙げて挑んでやっとダメージを与えられる程度には戦えるようになるとも。
冒険者ランクの最上位、ダイヤモンドランク冒険者ですら最上級モンスターとは単独で戦っても勝てないと言われている文字通りの化け物だ。
「そうです。最上級モンスターは基本的に人が単独で挑んで良い存在ではありません。それどころか、こんな4人パーティーで相対する事自体が自殺行為と言っても過言ではありませんよ」
基本、最上級モンスターの生息域は大陸北の危険地帯が主なので、危険地帯にでも行かない限り遭遇する事は殆ど無い。
ただ、極々稀に危険地帯以外にも姿を現す事があるので、その時は災害扱いを受けて国が出動する事態に発展する。
そんな危険モンスターが各ダンジョンの奥に居るという事なのだろうが、それにしては変だ。全12カ所存在するダンジョンの内、ダンジョンコアが破壊されて機能停止したダンジョンが3カ所、そこで守護者たる最上級モンスターを見たという報告が無いのだ。
「今、嫌な予感がしたんだが」
「奇遇ね、私もよ」
「俺もだ」
「私もです」
剣佑の予感は全員共通だった。そう、もしかしたら機能停止した3カ所のダンジョンに、未だ守護者が残っている可能性があるという事だ。
ダンジョンコアが機能停止する事で無くなるのはダンジョンモンスターの再出現という機能のみ、つまり最上級モンスターの報告が来ていないという事は……コアだけ発見出来たものの、守護者はまだ誰も倒していないか遭遇していないだけの可能性が高い。
「どうする? 守護者が本当にいるのか……確かめるか?」
「もし守護者のいる場所に魔界へ通じる何かがあるとしたら……しかし、最上級モンスターがいるとしたら流石に……」
剣佑の問いにスウェンもどうするべきか悩んでしまった。重要な情報を手に入れたのは良いが、それで新たな問題が発生してしまったのだから。
しかも、場所がダンジョンという事もあってルーンメイル王国軍の総力で挑むには狭すぎるのだ。
「どんな守護者がどんな存在なのか、遠目に確認するだけでも探すべきだと思うけど……危険よねぇ」
「しかし、守護者がどこにいるのかを調査するのも必要な事な気がしますし」
まず現状で判っているのは、もし守護者が実在していて、その正体が最上級モンスターだった場合、このメンバーだけで挑むのは無謀を通り越してただの自殺行為だという事だ。
ただ、守護者が実在した場合、守護者のいる場所に邪神の封印されている場所と言われている魔界へ通じる何かが存在する可能性もあるというのがもどかしい所か。
「ケンスケさん、どうしますか?」
「……そう、だな」
正直、調査三日目でこれだけの情報が集まったのなら一度報告に戻るのもありだとは思う。だけど、守護者の存在自体が今はまだ憶測の段階でしかないという事を考えると、探すべきだとも思うのだ。
だから、剣佑の判断としては……。
「予定通り、1ヶ月はこのダンジョンの調査を続行するべきだと思う。それで守護者のいる場所を探して、見つかっても見つからなくても、1ヶ月の調査を終えたら一旦王都へ戻ろう。それで、もし守護者を見つけたのなら……絶対に近づかず遠目に姿を確認して即座に引き返す。それでどうだろうか?」
「妥当だな」
「私もそれで良いと思う」
「はい、私もです」
こうして1ヶ月、剣佑達はビーストダンジョンの調査を行った。1ヶ月の調査で判明したのはダンジョンが地下6階に降りてもまだ更に下が存在しているという事と、階層が下がると殆ど上級モンスターばかり出現するという事、それから調査最終日に地下7階へ降りたところで己の死を幻視するほどの凄まじい気配を感じて引き返した事だ。
間違いなく、守護者は存在している。地下7階か、もしくはその下があるのなら地下8階か、とにかく地下7階に降りた瞬間に感じられた気配から間違いなく最上級モンスターがダンジョンの奥に存在しているという事だけは判った。
手記の事と、それから調査して判明した結果をまとめた剣佑達は1ヶ月の調査期間を終えて王都へ戻る。
王都に戻って国王フィリップスに報告をした際、この1ヶ月で勇者パーティーが依頼を程々にサボって遊び歩いていた事や、近いうちに次のダンジョンへ行く日程について話し合いがしたいという事などの話と、最後に労いの言葉を掛けられて剣佑達の最初のダンジョン調査は終わるのだった。
次回はクラスメートの智香と梨々子先生の悩みについて