異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?   作:剣の舞姫

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第2話「王国騎士団」

異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?

 

第2話

「王国騎士団」

 

 剣佑達が住むルーンメイル王国は、世界で最も広大な大地を誇るメイアー大陸中央諸国

三大国の一つであり、中央諸国最大の国家だ。

 その歴史は900年にも及び、建国以来ルーンメイル王家の統治の下に長い年月を掛けて開拓や戦争で領地を広げてきた。

 国土がある程度の広さになった頃にはメイアー大陸中央諸国も安定して、ルーンメイル王国の国としての地盤は完全に固まったと言えるだろう。

 それから幾百年、中央諸国三大国の一国に数えられる程度には国力が増して、隣接する国が滅亡したなどの理由で吸収合併している内に中央諸国最大の国家と呼ばれるようになったのだ。

 そんな大国ルーンメイルの王城は王都中心部に存在しており、この日は剣佑とフィリアがギルドで受けた騎士団の訓練相手の依頼で訪れていて、立派な城門を見上げているところだ。

 

「改めて見ると、やっぱりでかいな」

「そう? 剣佑の世界にはお城は無いの?」

「あるけど、俺が住んでた国の城より大きいぞ」

 

 目の前にあるルーンメイル王国の城、通称ルーン城と呼ばれる白亜の城は剣佑が日本に居る時に見た日本の城よりも大きい。

 それこそテレビで見た海外の城のイメージそのままだと言えるだろう。少なくとも海外旅行をした事が無い剣佑にとっては初めて見る大きさの城だ。

 

「さあ、いつまでも見上げてないで行きましょう」

「おう」

 

 いつまでも見上げていても仕方がない。時間も迫っているので二人いる門番に依頼で来た冒険者だという事を伝えて依頼書を渡すと、片方が中に入って人を呼びに行った。

 しばらく待っていると中に入った門番が戻ってきて、その後ろから銀色のプレートアーマーを纏った男性が出て来る。

 

「おお、依頼を受けてくれた冒険者か! ようこそ、ルーン城へ! 俺は王国騎士団団長のスウェン・リーデンバーク、よろしくな」

 

 見た所人間族の男性、歳は30後半から40前半といったところか。逆立てた短い髪に無骨な顔つきの彼は漢くさい笑みを浮かべていて、人柄の良さが滲み出ている。

 

「ゴールドランク中級冒険者の立華 剣佑です」

「同じくゴールドランク上級冒険者のフィリア・ケルトウッドです」

「ゴールドランク! それは助かるなぁ、前はシルバーランクの冒険者だったから、今日は更に濃い訓練が出来そうだ! よろしく頼むよ、タチバナ殿、フィリア殿」

 

 この世界では初対面でも基本的にファーストネームで呼ぶのが習わしだ。そして、スウェンは立華が剣佑のファーストネームと勘違いしてしまったようで、剣佑をタチバナ殿と呼んでしまった。

 

「ああ、すいません。立華は家名、ファミリーネームでして、剣佑が名前なんです。なのでこの国風に名乗るならケンスケ・タチバナとなります」

「おや、そうだったのか……それは失礼したケンスケ殿。しかし珍しいな、家名が先なんて」

 

 それはよく言われる。実際冒険者登録をした時にも言われたし、行く先々で名乗ると同じ様に勘違いされてしまうので、フィリアからもケンスケ・タチバナと名乗った方が良いのではと言われていた。

 しかし、そこは日本人としての拘りというか、未だ帰還する事の叶わない故郷との唯一の繋がりのように思えて、どうしても日本風の名乗りを変えられないのだ。

 

「立ち話をしていてもなんだ、早速だが王宮内にある騎士団の訓練場へ案内しよう」

 

 入場許可証は既に門番に発行して貰ったので早速スウェンの案内で王宮に入ると、その内装の豪華さに改めて感嘆の息が漏れる。

 異世界転移して3年、ファンタジーな世界の城に初めて入る事になったが、中々どうして、圧倒されるとはこの事か。

 

「ははは、ケンスケ殿はこういった城に入るのは初めてかな?」

「まぁ、はい」

「そうか、確かに冒険者という身分だと中々こういう機会も無いのかな……フィリア殿は経験がありそうだが?」

「ええ、これでも200年以上を生きてますので、そういう機会はありました」

「なるほど、エルフ族であればそれも納得だ」

 

 歩きながらそんな話をしていると、城内にある騎士団用の訓練場に到着した。中では沢山の騎士達が剣や槍、ハルバードなどで訓練をして汗を流している様子が伺える。

 騎士団というだけあって男所帯なのかと思ったが、ちらほら女性騎士の姿もあるが数は少ない。

 

「全員注目!!」

 

 スウェンの掛け声と共に訓練をしていた騎士達が動きを止めてこちらを振り返った。動きが一斉に止まったのを見る限り連携訓練も確り熟しているのは間違いないだろう。

 

「今日は毎月恒例の冒険者との訓練だという事は朝礼で伝えた通りだ。その冒険者がいらしたから紹介する。ゴールドランク中級のケンスケ殿とゴールドランク上級のフィリア殿だ」

 

 紹介されたので頭を下げると、騎士達から「よろしく」と声が上がった。

 

「早速だが先日決めた選抜メンバーと模擬戦を始めようと思う。ケンスケ殿、先にケンスケ殿からお相手して貰っても?」

「構いませんよ」

「うむ、ケンスケ殿から先に相手をして下さる。なのでそうだな……アンナ・フォーゲル!」

「はい!」

 

 スウェンに呼ばれて出て来たのは銀色のライトアーマーを着た赤いミニスカートの女性騎士だった。セミロングの髪は鮮やかな赤い色で、エメラルドのような瞳が美しい人間族の少女だ。

 見た所、まだ10代くらいの若さで、少女から女性になりかけという印象を受けるのだが……。

 

「このアンナ・フォーゲルは17歳と年若いですが、実力は十分ある。入団3年目にして既に師団長候補に名を連ねるほどなので、ケンスケ殿の相手として不足は無いと判断した」

「へぇ、それはそれは」

 

 17歳、剣佑よりも年下ながら既に騎士としての実力は騎士団長が認める程というのだから凄いものだ。

 

「アンナです、歳が近いみたいだけど既にゴールドランクだなんて凄いですね」

「そちらこそ、師団長候補だなんて驚いた……その実力、期待しても?」

「勿論」

 

 歩いてくる姿や立っている際の姿勢を見ても身体の軸がしっかりしていてブレが無い。それに何より感じられる雰囲気からして相当な実力者である事が伺える。

 剣佑は腰から愛剣を鞘ごと外してフィリアに預けると、騎士団長から渡された訓練用の模擬剣……刃を潰したロングソードを持って訓練場中央のフィールドに向かった。

 同じく模擬剣を持ったアンナもフィールドに立って剣佑と対峙、互いに剣を構えて中央にスウェンが立つ。

 

「? 変わった構えですね」

 

 アンナの構えは身体を落として左足を前に、両手で持った剣は水平にして肩の高さで構える王国騎士の基本の構えだ。

 対する剣佑の構えは所謂正眼と呼ばれるものに見えるが、その剣先が上下に揺れている。一見すると剣の重さでブレが生じているようにも思えるそれは実際にはわざと動かしているに過ぎない。

 

「多少のアレンジは加えてるけど、この構えは鶺鴒の尾の構え……俺の故郷で大昔から存在する剣の流派の構えだ」

 

 北辰一刀流の鶺鴒の尾の構え。

 実は剣佑が通っていた剣道の道場は剣道以外にも北辰一刀流を教えている道場だったのだ。だから小学生の頃からその道場に通っていた剣佑は北辰一刀流も中学生になってからだったが教わっている。

 この鶺鴒の尾の構えは北辰一刀流の基本の構えの一つではあるのだが、教わってから異世界に来るまでの3年では完全な習得は出来ていなかった。

 しかし、異世界に来て更に3年、実戦経験を数多く積んで実力を伸ばした今はロングソードで使うためのアレンジこそ加えられているものの、完全に習得する事が出来たのだ。

 

「セキレイノオの構えですか……聞いた事がありませんが、良いでしょう。ルーンメイル王国騎士団、騎士アンナ・フォーゲル参ります!!」

 

 女性ならではのしなやかな筋肉によるスピード重視な動き、思っていたよりも速い動きで突撃してきたアンナに対して、剣佑は普通に考えれば回避行動を取るのが正解だと思われるが、あえて剣佑は己も前に出た。

 

「っ!」

 

 突っ込んでくる相手に自分も突っ込むなど自殺行為だと観戦していた騎士達は思っただろう、しかし上下に振っている剣先が丁度水平に構えているアンナの剣の下に入った瞬間、騎士達も、そしてアンナ本人も驚愕した。

 剣先がアンナの剣の下に入った瞬間に振り上げられた剣佑の剣がアンナの剣を上へと弾き、アンナの上体のバランスを崩したのだから。

 

「しまっ!?」

 

 目の前に迫る剣佑の剣の切っ先を首を傾けて紙一重で回避、だが突刺を放った剣佑はそのまま剣を横薙ぎに払ってきたので、飛びのいて避けたもののアンナは冷や汗が止まらなかった。

 顔面目掛けて放たれた突刺、そこから派生するように首目掛けての横薙ぎへの流れるような繋ぎ、これだけで剣佑の実力が並大抵のものではないと実感させられたのだ。

 

「フ、フフフ……」

 

 無論、だからといって怖気づいたりなんてしない。むしろアンナの中で熱いモノが込み上げてきている。

 このような熱を感じたのは騎士団長であるスウェンと本気の模擬戦をした時以来だった。だから、余計に勝ちたい。スウェンには負けてしまったが、歳の近い剣佑が相手ならばこそ負けたくないと思ってしまう。

 

「今度はこちらから行きます! “フィジカルアビリティ”!!」

 

 下級の身体強化魔法、フィジカルアビリティ。近接戦闘を生業としている者ならば必修の魔法、模擬戦で使うつもりは無かったが、剣佑を相手に勝つには使わないなどという選択は無かった。

 身体強化されたことで先ほどよりも更に速度が上昇、素早い動きで剣佑の周りを走って隙を伺いながら脇構えという剣を後ろにした構えに似た構えで背後から迫り、そのまま一気に横薙ぎの一撃を加えようとした。

 

「“フィジカルアビリティ”」

 

 剣佑の身体強化魔法を使用する声が聞こえた。だがもう遅いと剣を握る手に力を込めたアンナは、気が付けば訓練場の床に仰向けで倒れていて、右手には半ばから叩き折られた模擬剣を握っていた。

 右肩から左腰に掛けての痛みと倒れている状況に何が起きたのか理解が追い付かないが、判るのは自分が負けたという事のみ。

 

「それまで!」

 

 スウェンの声と共にやっと思考が追い付いたのか慌てて起き上がると痛みに呻いてしまう。

 そこに差し出された手が視界に入り、顔を上げてみれば剣佑が申し訳なさそうな表情で手を差し出している姿が。

 

「ありがとう」

「いや、こちらこそ申し訳ない。あまり手加減出来なかったが、痛みは?」

「この程度、普段の訓練で日常茶飯事ですから大丈夫ですよ」

「なら良かった」

 

 剣佑の手を取って立ち上がったアンナは折れた模擬剣で騎士の礼をすると気になる事を尋ねてみた。

 

「あの時、何が起きたんですか?」

「簡単な事さ。振り向き様に君の剣に俺の剣を叩き付けて折った後、そのまま振り下ろして左袈裟に一閃、それだけだよ」

「ひだりけさ……?」

「右肩から左腰に掛けて斬った事を左袈裟斬りって言うんだ」

「なるほど」

 

 ただ、その速度が尋常ではなかったからアンナはいつの間にか倒れていたと錯覚してしまったのだ。

 

「いや見事だった! まさか次期師団長候補筆頭のアンナがこうもあっさりやられるとは、以前に来て貰ったシルバーランク冒険者には勝てたのだがなぁ」

 

 どうやらアンナは、前回の同じ依頼を受けたシルバーランク冒険者には勝ったらしい。しかし、忘れてはならないがシルバーランクとゴールドランクでは強さのレベルが違う。

 剣佑のように3年でゴールドランクに到達するような例外を除けばシルバーランクからゴールドランクに到達するのは容易ではなく、それこそシルバーランクのまま冒険者を引退する年齢を迎える者も居るほどなのだ。

 

「さて、じゃあ次はフィリア殿に相手をして貰うか……そうだな、誰が良いか」

 

 次はフィリアの番だという事なので剣佑とアンナは模擬戦のフィールドから出ようとしたが、次の瞬間その場の全員が城全体に広がった魔力の衝撃を感じ取った。

 

「何事だ!?」

 

 スウェンの声を聞きながら剣佑も、それから少し離れた所に立っているフィリアも魔力の波動がどこで発生したのか探っている。

 あれほどの馬鹿魔力と呼ぶべき膨大過ぎる魔力量から考えて尋常ではない事態が発生していると見るべきなのは間違い無く、もしかしたらテロの可能性も視野に入れなければならない。

 

「すまんが俺は陛下の所へ行って状況の確認をしてくる! 皆はこの場で待機! ケンスケ殿とフィリア殿も、申し訳ないがしばらくここで待っていてくれ」

 

 訓練場を飛び出して行ったスウェンを見送り、剣佑は近づいてきたフィリアから愛剣を受け取って腰に下げると、フィリアも弓を手に取って戦闘準備を整えているのを確認する。

 他にもアンナを筆頭に騎士団員達もそれぞれ模擬戦用の武器から騎士団支給の武器を手に取っていつでも出られるようにしていた。

 

「テロか何かだろうか?」

「でも、警備が厳重な城に誰にも気づかれる事無くテロリストが侵入するなんて難しいんじゃないかしら……城には王国騎士団だけじゃなくて宮廷魔術師率いる魔術師団や王族直属の近衛騎士団だっているのよ?」

 

 その後、しばらく待機していたが騒ぎが起きる様子は無く。ただ城で勤務していた宮廷貴族達が慌ただしく走り回っているのだけは確認出来た。

 そして、そのまま2時間くらい経った頃、ようやくスウェンが戻って来て神妙そうな表情で剣佑を見つめて来る。

 

「すまんが、ケンスケ殿……陛下がお呼びだ。至急、謁見の間に来て欲しい」

 

 どうやら、本当に尋常ではない事態が起きたらしい。スウェンの表情が、それを物語っていた。




明日から平日、仕事なので流石に毎日投稿は難しいかもしれません。
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