異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?   作:剣の舞姫

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仕事の疲れより通勤の疲れの方が大きい……。


第3話「召喚」

異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?

 

第3話

「召喚」

 

 日本の首都東京の某所、私立浜崎学園は偏差値自体そこまで高い高校ではないが女子の制服が可愛いという理由で進学を希望する女子が多い高校だ。同時に、そんな女子目当てで進学を希望する男子も多く、学生の質という点で見れば素行の良い学校とはお世辞にも言えない。

 毎年入学してくる新入生で、夏休みを迎える前には高校デビュー……つまり髪の色や制服が派手になり素行も悪くなる者が普通の高校より多く、半ば教師も諦めているのか適当な指導しかしないものだから生徒達が余計に付け上がってしまう。

 

 この日、浜崎学園の1年生の教室、その1クラスである1年3組の教室では3時間目の授業が終わって次の体育の授業までの休み時間になると、行動の早い生徒は直ぐに着替えを持って教室を出て行ったのだが、授業中からダラダラとお喋りに興じていた生徒は移動する様子も見せない。

 

「あなた達、次は体育なんだから早く移動しなさい」

 

 3時間目の授業をしていた現代文の教師にして3組の副担任である女性教師、楠木 梨々子がお喋りに興じる4人の生徒に声を掛ける。

 濃い茶髪のセミロングヘアーは艶があり、160cmはある身長と切れ長の吊り目が特徴の美人顔、そのメリハリのあるスタイルはタイトスカートのスーツに包まれて男子生徒には魅惑的に見える為、梨々子は男子生徒からの人気が高い。

 そんな大人の魅力溢れる教師への嫉妬心からなのか、それとも別の理由からか、4人の内の一人、明るい茶髪をサイドポニーにした女子生徒が短すぎるスカートの中が見えるのも関係無しに机の上に座って足を組むと、不満そうな表情を梨々子に向けた。

 

「はっ? 相変わらずウゼェ、センコー如きがアタシらに指図すんなよ」

 

 如き、と言って教師を見下した発言に彼女……金森 明日華の周囲の男女も同意するように頷いて同じように梨々子を見下していた。

 この4人の生徒、今年入学した生徒の中でも取り分け素行の悪い生徒として有名であり、特に明日華と、その4人の内の一人、ド派手な金髪を逆立てて耳や唇、舌に付けられたピアスやネックレスと長身に程よく筋肉が付いた身体、イケメンと言っても過言ではない顔をその性根の悪さに歪ませ男子生徒……向居 聡一は1年生にして既に浜崎学園で一番の不良カップルと噂されている。

 

「つかさ、授業終わったんならさっさと消えなよセンセー?」

 

 素行不良生徒4人の内、もう一人の女子生徒である少女……後藤 めぐみもピンクに染めたツインテールの髪と耳のピアス、ブラウスの第3ボタンまで開けられて見えている赤いブラに包まれた見事な谷間を作り出している双丘を揺らしながら小悪魔的な笑みを浮かべて全く敬っていない「センセー」呼びだ。

 

「なぁ聡一、めぐみ、明日華、ダリィし4時間目サボってどっか行くか?」

 

 最後に4人の内のもう一人の男子、青と緑のツートンカラーにした少し長い髪を後ろで縛った爽やか風のイケメン、田中 晴信は聡一と中学の頃からの付き合いで、現在はめぐみの彼氏でもある。

 

「イイなソレ……おい楠木、オレらきゅーびょーで早退すっから、ヨロシクな」

「なっ!? そんなの認められるわけっ」

 

 そこまで言って梨々子の言葉は遮られた。聡一が、その拳で机を殴りつけた音が教室に響き渡り、周りの生徒達も驚いて竦んでしまっている。

 

「テメェの意見なんざ聞いちゃいねぇんだよ、オレが早退するつってんだから、黙って聞いとけや……あんまウゼェのが過ぎっと、次は机じゃなくてテメェの顔面がこうなるぜ?」

 

 そう言って聡一は自分が殴りつけた机を見せた。聡一の拳が振り下ろされた箇所は罅割れて微かに拳の形に凹んでいるのが見える為、どれほどの力で殴りつけたのかハッキリと判る。

 

「ま、そういうこった。あんま聡一を怒らせない方が身のためだぜ? 楠木ちゃんだって知ってるだろ? 聡一が入学直後に3年で一番強いって言われてたセンパイを一方的にボコって病院送りにした事」

 

 よく知っている。その事件が原因で病院送りになった3年は自主退学、聡一は実家が金持ちという事もあって被害者家族や校長に金を握らせたのか何事も無く翌日から普通に登校して来たのだ。

 

「そうそう、アタシの彼氏は男女びょーどーしゅぎ? って奴だから、センコーが女だからって殴られないなんて思わない方が良いよ」

 

 教室内の空気が悪い。そんな殺伐とした雰囲気が漂い始めた教室に居たくないという生徒が何人か教室から出て行くのが見えたが、梨々子は竦むこと無く4人を睨み返した。

 すると、その時だった。突如教室の床全体に魔法陣のような物が展開され、光り輝いたのは。

 

「な、なんだこれ!?」

「ま、魔法陣!? マンガかよ!!」

「せ、先生!!」

 

 教室内に残っていた生徒達が突然の出来事に悲鳴を挙げている。その声に梨々子も同じく驚いていた所だったのに気を取り直してすぐ教室から避難するよう叫ぼうとしたのだが、もう時すでに遅く、光が教室全体を飲み込み……。

 4時間目が始まって1年3組の生徒が約半分程しか体育館に現れない事を不審に思った体育教師が教室まで見に来ると、教室内には誰一人として生徒の姿が無く、同時に現代文教師である楠木 梨々子も職員室に戻って来る事は無かった。

 

 

 ルーンメイル王国の国王には5人の子供がいる。長男の第一王子と次男の第二王子、長女の第一王女、次女の第二王女、三女の第三王女の合計5人で、全員国王と王妃の子だ。

 国王には世継ぎを残す義務があるので側室もいるが、側室が産んだ子で国王の子として認定されるのは男児のみという決まりがあり、残念ながら側室が産んだ男児が居ない為、国王の子はこの5人とされているのだ。

 ルーンメイル王家は代々男児が複数いる場合、一番下の王子が20歳を迎えた時に王太子を決めるという決まりがある。

 そして現国王の子で男児は第一王子と第二王子の二人、現在はどちらが王太子になるのかという事で派閥争いが起きていて、現在17歳の第二王子が20歳になった歳に自分達が望む方に立太子して欲しいと貴族たちで争っていた。

 当然、当人である第一王子と第二王子も自分が王太子になるべく成人した15歳の頃より政務に励み、結果を残そうと努力しているのだが、実は能力的な点で言えば第二王子の方が上のため、周囲からは第二王子が王太子になる可能性の方が濃厚だと言われている。

 そんな周囲の評価もあってか、第一王子は功に焦っていた。何か弟よりも目立ち、貴族たちの心を掴む大きな功績を残さなければ3年後、兄を差し置いて弟が王太子になってしまう。それだけは第一王子としてのプライドが許さないと焦って、そして見つけてしまった……全ての元凶とも言える方法を。

 

「あの、グレイ殿下……本当に陛下や宮廷魔術師殿に黙って行うのですか? 確か、1ヶ月後に公表してから正式に陛下立ち合いの下に行う予定だった筈ですが……」

 

 王族の証たる豪華な白い衣装を着た薄紫色の長髪の青年にローブを着た男が話しかける。

 ここはルーン城の地下1階にある巨大儀式部屋、1ヶ月後に行われる予定の儀式の準備が進められていて、部屋の中央には魔法陣と大量の魔鉱石が置かれていた。

 青年の名はグレイ・ルーンメイル、ルーンメイル王国の第一王子であり、派閥争い真っ只中の王族の一人だ。

 

「良いからやるぞ! ここで俺様が勇者を召喚すれば父上や他の者とて理解出来る筈だ。単独で勇者を召喚出来る俺様こそが王太子に、次期国王に相応しいという事が!」

「し、しかしですね……魔鉱石をあんなに大量に用意しても必ず成功するとは」

「うるさい! 魔力は大量にあった方が良いに決まっているだろう! 何せ異世界から勇者を召喚するのだからな、異世界から呼ぶのに魔力などいくらあっても良いに決まっている!」

「ですが、資料は8000年も前の資料ですし、一部失われている箇所もあるので……本当に召喚出来るという保障は」

「だから魔鉱石を大量に用意したのだ! 膨大な魔力でゴリ押せば多少の無理も利くというもの!! さぁ! 御託は良いから始めろ! 王族命令だ!!」

 

 渋々、ローブの男は魔法陣の最後の仕上げである文字を書き上げると、グレイへ向かって頷く。

 それを満足そうに頷き返したグレイは自身の魔力を魔法陣に流し始めると、最初に魔法陣が光り出して、次に中央に大量に置かれた山盛りの魔鉱石が光った。

 次第に光が強くなって魔鉱石が一つ、また一つと割れる度に光が更に強くなり、最後の一つが割れると部屋全体を眩い光が包み、同時に膨大な魔力の衝撃が儀式場どころか城全体に広がる。

 

「おお!!」

 

 部屋全体を覆っていた光が止んだ時、魔法陣中央にあった魔鉱石は全て灰になって、その代わりに魔法陣の上に10数人の人影が立っていた。

 

 

 冒険者ギルドで王国騎士団の模擬戦相手の依頼を受けた剣佑とフィリアは騎士団長スウェンの頼みで王宮内の訓練場を訪れ、騎士団を相手に模擬戦をしている所だった。

 その最中、突如王城全体に奔った膨大な魔力の衝撃、状況確認の為に訓練場を出て行ったスウェンが戻ってきた時、剣佑を国王が呼んでいるという事でフィリアと共にスウェンの案内で謁見の間に向かっている。

 謁見の間へ繋がる扉の前で兵士に武器を預けると、扉が開かれて中に入ると既に玉座にはルーンメイル王国国王、フィリップス・ルーンメイルが座っており、その隣には王妃ティティリア・ルーンメイルが座っていた。

 更には第二王子レオル・ルーンメイル、第一王女マリー・ルーンメイル、第二王女マリア・ルーンメイル、第三王女ティリア・ルーンメイルと、第一王子以外のロイヤルファミリー勢ぞろいだ。

 他には宰相のロードス・ワインゲイル、宮廷魔術師のエラルド・オーバン、王都滞在中の公爵家当主も数名、錚々たる顔ぶれと言える。

 そこに近衛騎士団長、王国騎士団長スウェン、兵士長と広い謁見の間が随分狭く感じる人数が揃っていた。

 

「凄い面子だな」

「そうね……」

 

 種族も人間族だけではない。王族や公爵は当然人間族だが、人間族以外にも宮廷魔術師のエラルドは魔族の吸血鬼タイプで、兵士長は獣人族、この場にはエルフ族のフィリアもいるのでドワーフ族以外の全ての種族が揃っている事になる。

 因みに、この世界においてヒト種と呼ばれる種族は5種族あり、人間族、エルフ族、獣人族、ドワーフ族、魔族の5種族。

 人間族は全種族の中で最も寿命が短い代わりに人口が最も多い種族で、能力は全種族の平均値が基本の種族だ。

 エルフ族は全種族の中で最も寿命が長い代わりに最も人口が少ない種族で、全種族の中で最も魔力の多い種族。

 獣人族は人間族の次に人口が多い種族であり、全種族で唯一魔力が無い代わりに身体能力が最も高い種族。

 ドワーフ族は成人の平均身長が全種族の中で最も小さい種族で、その代わりにパワーだけは獣人を越える上、手先が器用な者が多い種族。

 魔族はエルフの次に寿命が長い種族で、全種族の中で最もタイプの多い種族。夢魔やサキュバス・インキュバスといった淫魔、吸血鬼などは全て魔族に括られている。

 

「そなた達が今日、騎士団の模擬戦の相手を勤めていた冒険者か」

 

 玉座に座るフィリップスの問い、それに対して跪いた剣佑とフィリアは肯定の返事を返す。

 

「ゴールドランク中級冒険者の立華 剣佑と申します」

「ゴールドランク上級冒険者のフィリア・ケルトウッドと申します」

 

 名乗ると、「ふむ……」という声と共にフィリップスの視線が剣佑に向けられた。

 

「タチバナ……騎士団長から聞いたが、そなたの家名がタチバナで、そなたの国では家名を先に名乗るのが慣わしなのだな?」

「はっ! この国風に名乗るのであればケンスケ・タチバナとなりますが、私の国では立華 剣佑となります」

「なるほど、やはりあの者達と同じか……ケンスケよ、そなたは冒険者になって何年になる?」

 

 気になる事を呟いていたが、問われたことに対して3年だと答えると再び考え込んだフィリップスに何事なのかと視線で問うと、その答えは自分達の後ろ……先ほど剣佑とフィリアが入って来た扉の向こうにあるようで、少し騒がしい。

 

「実はケンスケ、そなたを呼んだのは確認したい事があったからというのと、会って確認して貰いたい者達がいるからという二つの理由がある」

「確認したい事は私の名前、ですか?」

「うむ、そして会って確認して貰いたい者達というのも既に呼んで、もう来たようだ」

 

 すると、向こう側が騒がしい扉が開かれると真っ先に第一王子であるグレイ・ルーンメイルが入ってきて剣佑とフィリアを無視してフィリップスの前に立った。

 

「父上! 何故、第一王子である私抜きでこのような場を!!」

「貴様が勝手な真似をしたからだ馬鹿者が!! あの者達に説明はしたのだろうな?」

「それは……説明などという下々の仕事は第一王子である私のするべき事ではございませんので、この場で顔見せついでに誰かに説明させようと思い連れて参りました」

「まったく貴様という者は……それで、連れて来たというのなら貴様だけ入ってきてどうする? まだ扉の向こうに居るのなら早く入ってきて貰わんか!」

 

 フィリップスの一喝で慌ててグレイが扉の前にいる兵士に合図すると、兵士は再び扉を開き、向こうにいる者達を中へ呼んだ。

 ぞろぞろと中に入って来たのは合計23名の男女、それも一人を除いてまだ少年少女と言って差し支えない見慣れない服を来た者達、その者達の顔を、そして着ている服……学生服を見て剣佑の表情が驚愕に変わった。

 

「嘘、だろ……」

 

 何故ならその者達は、3年前この異世界に来る前……剣佑がまだ日本に居た時の、浜崎学園1年3組のクラスメート達だったのだから。




次回は何故、クラスメートが召喚されたのか、その説明になります。
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