異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!? 作:剣の舞姫
異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?
第4話
「召喚されたクラスメート達は、年下になった」
剣佑がこの世界に来た3年前、その頃はまだ元の世界に戻る方法を探していた。
フィリアと共に冒険者として数々の依頼を受けながら魔法についても学んで世界を越える方法を模索していたが、自分はあくまで剣士であり補助魔法程度に魔力を使える魔法剣士が精一杯、世界を越える魔法が使える程の魔法使いにはなれないと1年ほどで悟った。
2年目に入る頃には元の世界へ帰りたいという気持ちも薄れ始めて世界を越える魔法を探さなくなり、ゴールドランク冒険者となってフィリアと交際を始めた段階で完全に帰りたいという気持ちは無くなったのだ。
「うそ、だろ……」
そんな元の世界への未練が無くなった剣佑でも流石に驚き、懐かしさを感じざるを得ない者達が謁見の間に入って来た。
23名の男女、特に男子の着ている服は3年前まで剣佑も着ていた制服で、23人全員の顔を、剣佑は知っている。
「剣佑、あの子達の着ている服って確か3年前に貴方も着ていた……」
「ああ、私立浜崎学園の制服……俺が通っていた高校の制服で、あいつらは……俺のクラスメート達と、副担任の先生だ」
そう、謁見の間に入って来たのは3年前、剣佑が日本に居た時のクラスメートと、副担任だった教師。
しかし、3年経つ筈なのに何故彼等が制服を着ているのか。普通に考えれば既に卒業している筈なのに。
「え、た、立華君!? 立華君よね!?」
謁見の間に入って来た23人の中の一人、唯一の成人である副担任の女性……楠木 梨々子が剣佑の姿を見て驚きながら近寄って来た。
「あなた、何でこんな所に居るの!? 1ヶ月も学校を無断欠席して!!」
「く、楠木先生……え、1ヶ月?」
どうやら剣佑がこの世界に来てから3年も経つというのに、向こうの世界では1ヶ月しか時間が経っていないらしい。おそらく時間の流れ方が違うのか、それとも何か別の要因なのか、今の段階では判断が付かない。
「先生はもうこの世界が俺達の住んでいた地球、日本じゃないって事は説明を受けました?」
「ええ、信じられない事ばかりで混乱しているけど、流石に理解させられた」
「この異世界に俺も来ていたんですよ。既に3年が経ちます」
「さ、3年……?」
「そうです、なので今18歳ですね」
そう言って気が付いた。今、剣佑は18歳、今年で19歳になるが、クラスメート達はまだ剣佑が地球に居た頃から1ヶ月しか経っていないという事は……まさかの年下になってしまったという事だ。
「はぁ!? なんで剣佑が年上!? 意味わかんないんだけど!」
「明日華……」
剣佑の存在に驚き、梨々子と剣佑の話を聞いていたのかクラスメートの一人、金森 明日華が声を荒げる。
その声に釣られてそちらへ顔を向ければ相変わらず剣佑によく向けていた不機嫌顔でこちらを見ており、その周りには懐かしい不良生徒仲間の姿もあった。
「ま、年上になったからって地味男は地味男のままよねぇ! 相変わらずオシャレなんて欠片も無い地味ぃなカッコウで!」
実はこの明日華と剣佑は幼馴染と呼ばれる関係だ。日本に居た頃の実家が近所で、それこそ幼稚園の頃からの付き合いなのだが、中学の頃から少しずつ疎遠になり、明日華が御洒落に興味を持ち出した辺りからは剣道一筋だった剣佑を地味男と呼んで嫌うようになった。
「ケンスケよ、その様子を見る限りそなたもこの者らと同じ、異世界からの来訪者のようだな」
「はっ! 左様にございます陛下。確かに私も、3年前に異世界より転移してきた来訪者、以来冒険者として活動してルーンメイル王国に住まう民となりました」
「うむ、事情は理解した……して、此度の彼等の召喚について、詳しい事情を説明したい。ケンスケ、そなたも関係者として話を聞いて貰いたいのだが構わんか?」
「我がパートナー、フィリアも同席してよろしいのであれば」
「うむ、許す」
そこで語られたのはまず歴史の話からだった。全ての始まりは8000年前、邪神戦争と呼ばれる人類と邪神の戦争が起きた事だ。
8000年前、現代の魔族にとって祖先というべき純魔族と呼ばれる種族の一人の男が、神を殺してその神核を喰らい神格を得た事で邪神へと昇格、その際に汚染された神核から放たれる邪悪の波動が純魔族達と一部のモンスターを狂暴化させて人類に襲い掛かった。
その戦争で人類軍と邪神軍の戦いが大陸各地で起きた結果、人間族やエルフ族、獣人族、ドワーフ族といった人類軍は数多くの死者を出しながらも、最終的に勇者と呼ばれる者によって邪神が封印されて終結した。
「邪神戦争……そんな戦争が8000年前にあったって話はフィリアから聞いていたけど、詳しい話は初めて聞いたな」
「無理もあるまい、8000年も前の戦争だ。当時の資料など発掘はされているが大半が劣化して情報が失われ、現存する解読出来た資料も情報として広まるのは貴族からだからな」
その邪神戦争で邪神軍の首領である邪神を封印した勇者こそ、当時存在した国が異世界より召喚した勇者だったのだと伝えられている。
「ゆ、勇者……アニメやラノベと同じ展開だぁ」
勇者という単語を聞いてクラスメートの一人、肥満体型の男子が呟くが今は無視する。
つまり、今回のクラスメート召喚は当時の勇者召喚に習って行われたという事だろう。召喚する方法は、発掘された資料を解読して何とか得られたもの。
しかし、そうなるとクラスメートと副担任含めた23人もいるのは何故なのか。8000年前の勇者召喚でもそんなに召喚されたのだろうか、その辺りの事を訪ねてみると。
「いや、残念なら8000年前の召喚で現れたのは勇者ただ一人のみ……今回の件は完全にこちらの落ち度だ」
なんでも、次期王太子最有力候補の座を第二王子から奪いたいが為に、第一王子が功を焦ったのと、魔法に関して無知なのが原因らしい。
大量の魔鉱石を無駄に使って、しかも本来なら1ヶ月後に王族全員の立ち合いの下、正式に行う予定だった召喚の儀式を魔術師団員の一人に王族命令で従わせて強行した結果、今回の事態に繋がった。
「なので、おそらく召喚された23名の内、誰かが勇者なのだろうが……残る22名は巻き込まれたという事になる。愚かな真似をしたグレイの父として、そして王として謝罪する」
「ち、父上!! 勇者が混じっているかもしれないとはいえ、下賤な者に王が頭を下げるなど!!」
「黙らんか!!! 王とて時に頭を下げる事もある。その相手が例え平民であろうと無かろうと、下げなければならない時は素直に下げる、それが王としての務めだ。平民相手なら何をしても良いわけでは無い。王族だからと平民に頭を下げなくて良いわけではない」
フィリップス王は少し腰の低い所もあるが善王と呼ばれる程に民からの人気と信頼が厚い王だ。
残念ながらそんなフィリップスの気質を第一王子は受け継いでいないようで、むしろ第二王子レオルの方がフィリップスに似ている上に能力もあるから次期王太子最有力候補と呼ばれているのだろう。
「ところで陛下、一つ伺いたい」
「ケンスケか、何だ?」
「勇者は、邪神封印後は元の世界に帰れたのでしょうか?」
それだ。もしかしたら8000年前の勇者が元の世界に帰っていたのなら、日本に帰る方法も見つかるかもしれない。
剣佑自身は既に興味の無い事ではあるものの、不安そうな表情を浮かべていたクラスメート達はその質問に目を輝かせた。
「いや、残念ながら勇者はその後、この世界で寿命を迎えるまで生きていた。実際、勇者の墓は勇者が使っていたとされる聖剣と共に発掘されておる」
その墓所があった場所が今のルーン城のある場所だ。墓守の為に900年前の初代国王がルーン城を勇者の地下墓所の上に建てて、地下に眠る勇者の亡骸が入った棺と聖剣を守護してきたのだ。
「聖剣は勇者の適正がある者のみが武装スキルを発動出来る。その証は適正者が聖剣に初めて触れた時に手の甲に聖痕が刻まれるらしい」
フィリップス王の合図と共に謁見の間に一本の剣が持ち込まれた。白銀色の刀身と黄金の柄が眩いその剣は、銘を聖剣マリーメイアという。
嘗て邪神となった純魔族によって殺された神の神力の残滓が結晶化した物と言われており、けっして劣化する事も折れる事も無い神の力の名残。
「武装スキルか、魔武装と同じようなものだな」
「そうね、剣佑の魔剣ルクスリアも武装スキルがあるから」
武装スキルを持つ聖剣と聞いて、剣佑とフィリアの脳裏に浮かんだのは武器持ち込み禁止の謁見の間へ入る前に見張りの兵士へ預けた剣佑のロングソードだ。
魔武装と呼ばれる特殊な武器で、剣佑の持つ魔剣ルクスリアを含む魔武装にはそれぞれの武具特有の武装スキルというスキルが付与されている。
「そもそも、今回勇者召喚を行う事となった経緯は8000年前に封印された邪神が復活する可能性が高いと遺神教会の予言者による予言がされたからだ。邪神が復活すれば再び邪神戦争と同規模の災厄が訪れる……故に、邪神復活の前に勇者を召喚して力を付けさせ、復活した邪神の討伐もしくは再封印をして貰いたいのだ」
聖剣は異世界の勇者にしか聖痕を刻まない。しかし、邪神が復活したら邪神だけでなく、8000年前に邪神と共に封印された邪神軍の生き残りも同じく復活してしまう。だからこそ、フィリップス王も心苦しくはあったが異世界より招く事を決めたのだ。
問題は、第一王子の所為で本来召喚される勇者一人以外にも余計に招いてしまった事だけ。なので、召喚された者達全員に聖剣に触れて貰い、勇者が誰なのかを確認した後の生活は保障してくれるとのこと。
勇者と共に戦いたいというのなら支援するし、勇者じゃなかったとしても王国騎士団が引き取って当面の面倒を見る。
当然、元の世界に戻りたいというのなら、今は方法が不明だが国を挙げて全力で帰還方法を探すという保証もしてくれた。
「宰相、後は任せて良いか?」
「お任せを陛下」
勇者選定は宰相のロードスが指揮する事になっているらしく、任された宰相はツルリと光る毛髪の一切無い頭を人撫でしてから前に出ると、兵士に持って来た聖剣マリーメイアを用意した机の上に置くよう指示した。
「これより君達には一人ずつ順番に聖剣マリーメイアに触れて貰う。触れた手に聖痕が出た者が本来召喚対象とされた勇者だ。それで先生殿、で良いかな?」
「あ、梨々子って言います。楠木 梨々子」
「これは失礼、リリコ殿……先生と呼ばれているという事は教師だと認識している。生徒達に聖剣の前で並ぶよう指示して貰えるだろうか?」
「わ、わかりました」
梨々子も不安だろうが、生徒達の手前表に出さず聖剣の前に並ぶよう指示を出している。一部、梨々子を嫌っている不良生徒は舌打ちをしているが、状況から反発しても仕方がないと渋々したがって列の最後尾に並んだ。
「ケンスケ殿、ケンスケ殿も一応触りますかな?」
「いえ、俺は召喚されたわけじゃないですし……まぁそもそもこの世界に来た理由とか、どうやって来たのかは今も判ってませんけど」
そうなのだ。実は3年も経つのに、未だ剣佑がこの世界に来た理由、どうやって来たのか、来る直前の記憶が一切戻っていない。
とはいえど、今回の召喚には関係無さそうなので自分が勇者だとは思えず辞退した。そもそも魔剣ルクスリアという愛剣があるのに聖剣を欲しいとは思わないし、邪神とも襲ってくるのなら戦うが、あくまで冒険者だというスタンスを崩すつもりはなかった。
その後、梨々子を筆頭にクラスメート達が一人ずつ聖剣マリーメイアに触れて行くが、誰の手にも聖痕が刻まれず、いよいよ不良生徒達の番になり明日華、後藤 めぐみ、田中 晴信も触れたが聖痕は刻まれない。
「んだよ、ホントに聖痕? とやらが出るのか? 嘘っぱちじゃねぇだろうな」
最後の一人、入学して早々に浜崎学園一の不良として有名になった向居 聡一がイライラしながら雑に聖剣に手を置くと、その手が光り出して手の甲に幾何学模様に似た光の聖痕が刻まれた。
「おい、マジかよ……ハハハハ!! 俺が勇者ってか!!」
本当にまさかの状況だ。浜崎学園一の不良生徒である聡一が、聖剣マリーメイアに選ばれた勇者だとは。
これには思わず剣佑も頬が引き攣ってしまうのも、無理はなかった。
次回は明日、投稿出来ればします。