異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?   作:剣の舞姫

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早めに書き終わりましたので投稿します。


第5話「不良勇者パーティー結成と残された者たち」

異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?

 

第5話

「不良勇者パーティー結成と残された者たち」

 

 突然だが、邪神戦争や勇者、聖剣などについて実はまだまだ判っていない事の方が多い。何せ8000年も前の事なので、現代に残っている資料や発掘されて解読された資料が少ないのだ。

 例えば聖剣と勇者の関係について。何故この世界の人間には勇者の適正が無いのか。どうして異世界の人間を召喚する事になったのか、そもそも邪神は何処に封印されたのか、こういった大事な情報が長い歴史の中で抜け落ちてしまっている為、世界中で資料の発掘と解読が急務とされている。

 それでも判明している大事な情報もいくつか存在しており、その一つが勇者だけが使える聖剣マリーメイアの武装スキルが神格殺しのスキルだということ。これは邪神に殺された神の残留思念が武装スキルとして聖剣に宿ったからとされているが、この辺りは流石に詳しくは解明されていない。

 

「へぇ、わかってねー事ばっかじゃん」

 

 そして現在、謁見の間では剣佑を含めた浜崎学園1年3組の生徒達と副担任の梨々子が大いに不服ではあるものの学園一の不良生徒である聡一が勇者だという事が判明して詳しい説明を受けている所だ。

 

「んで? 勇者ってのはそのブソウスキル? っての以外に何が出来るんだ?」

「何が、とは?」

 

 問われたロードス宰相が聡一の質問の意図を理解出来ず首を傾げた。それに対して舌打ちをした聡一はクラスメートを見渡し、その中の一人の男子をロックオン。

 

「おい汚ブタ! テメェ確かオタクだったろ? ならこういう状況で聞くべきことくらいわかんだろ!!」

 

 汚ブタと呼ばれた生徒、肥満体型で髪はフケまみれのボサボサな男子生徒の名は山田 太志。

 聡一の言う通り、彼は典型的なオタクであり、卑屈で粘着質で肥満の上に不潔というクラスの嫌われ者であり、聡一達にとってイジメの対象としていた生徒だ。

 

「ぶ、ぶひっ!? ぼ、ぼぼきゅ、僕がき、聞くの?」

「他に誰がいるんだよ?」

「じゃ、じゃあ……え、え、えと……何かチートスキルとか?」

「ちーと? というのが何なのかわからんが、スキルとは武装スキルの事ではないのかね?」

 

 なるほど、確かにオタクらしい着眼点だと言える。チートスキル、異世界転移モノの定番と言うべきもので、異世界の勇者、または異世界転移者が高い確率で持っている世界観を破壊しかねないスキルを指す。

 クラスメートより3年早くこの世界に来ていた剣佑はその質問に対する無情な答えを持っていて、質問の意図を理解していない宰相に代わり答える必要がありそうだ。

 

「山田、残念だがこの世界でスキルというのは武装スキルの事を言う。お前の知識にあるチートスキルというもの含めた個人に与えられるスキルというものは存在しない」

 

 そう、この世界でスキルとは武装スキルの事を言うのだ。聖剣マリーメイアや剣佑の持つ魔剣ルクスリアを含む魔武装と呼ばれる特殊な武装、それから一部の武具なんかに稀に付与される能力、それを武装スキルと呼び、個人にスキルというものは存在しない。

 

「え、じゃ、じゃあ、い、異世界チート、とか、無双とか」

「無い」

「おいおい、汚ブタの知識なんも役に立たねえな」

「びゅひっ!? あ、え、あ……あ、れ、レベルは!? い、異世界、なら、レベルとか……異世界転移したらレベル、とか、す、ステータスとかの、上限とか、上昇速度がチートとか」

「残念ながら、この世界にレベルやステータスという概念は存在しない」

 

 これもオタクならではの着眼点だが、流石に不良の聡一や剣道一筋だった剣佑でもレベルやステータスという言葉は知っている。

 彼等とて小さい頃はゲームをしていた記憶があり、その中にはRPGゲームもあった。大抵のRPGゲームにはレベルの概念やステータス画面で強さを見る事が出来たが、この世界にレベルの概念も無ければステータスという概念も無い。

 精々、魔力の量がある程度目安となる数値を定めているくらいで、HPや筋力値、敏捷値などといったものは無いのだ。

 

「チッ、役立たずの汚ブタが……」

「ぶひぅ……」

 

 舌打ちにすっかり縮こまった太志は放置して聡一は剣佑を睨んだ。

 剣佑が聡一の彼女である明日華の幼馴染である事は知っているが、まともに話をした事は無い。精々が明日華から昔から剣道一筋のダサ男、お洒落にも遊びにも興味を示さない地味男だという事くらいしか聞いていないのだ。

 ただ、それでもクラスでも一番と言って良い美人の明日華が幼馴染ではなく自分を選んだ事に優越感を持っているので、聡一の中で剣佑の評価は相当低い。

 

「おい地味男、テメェのが早くこの世界に来てたならなんか良い情報とかあんだろ?」

「良い情報……ね」

 

 残念ながら邪神戦争の事は触り程度しか知らなかったし、勇者や聖剣については今日初めて知った事なので、正直その辺の知識という点ではクラスメート達と変わらない。

 なのでそれ以外のこの世界の知識という点で何か役立つ知識として教えられることと言えば……。

 

「そう、だな。この世界にはモンスターが存在しているから、それらを討伐する為の依頼を受けてお金を稼ぐ冒険者という職業はある。冒険者ギルドという所で冒険者登録をしたら誰でも冒険者になれるぞ」

「おいおい、勇者たる俺に冒険者になれってのか?」

「その辺は知らん……というか、モンスター討伐となると正直、冒険者ギルドに依頼されている情報くらいしか知らんぞ、俺も冒険者だからな」

 

 モンスター討伐依頼、という話を聞いて何やら宰相が考え込んだ。何かあっただろうかと思い目を向ければ、その輝かしい頭を光らせながら顔を上げる。

 

「実は冒険者ギルドに話はしていてな。勇者殿には冒険者ギルドから勇者専用の特別ランク冒険者としての冒険者証を発行する事となっている」

 

 勇者、つまり聡一専用のランクだ。それと、もし聡一がパーティーを組むのならメンバーにも特例で特別ランクを与える事になっているという。

 依頼によるモンスター討伐や盗賊の討伐などで実戦経験を積んで実力を伸ばして貰うのが狙いで、その為に予め冒険者ギルドのギルドマスターとギルド本部の本部長と打ち合わせていたらしい。

 

「んじゃ、俺はギルドとやらで依頼受けてモンスターをぶっ殺しまくれば良いんだな? 邪神が復活するまで」

「そうなる。それと、今ここで仲間、つまりパーティーメンバーにしたい者がいるのなら指名して貰いたい。その者達にも王宮の武器庫から武器を与える故な」

「お、そうか? なら当然俺の彼女の明日華、それから晴信、めぐみの3人だ」

 

 聡一が指名した3人は当然という顔で頷いた。だが、それに待ったを掛けたのは召喚された中で唯一の大人である梨々子である。

 

「待ちなさい! モンスターと戦うって事は命の危険があるという事よ!! 子供達だけでは危険だわ! だから私も……」

「はぁ? ありえないし、つかウザいし、何で異世界来てまでセンコーと一緒に居ないといけないのさ」

「梨々子ちゃんさ、空気読もうぜ?」

「センセーマジでウザッ」

 

 だが、肝心の3人から拒絶され、聡一も来るなと睨んでいた。

 

「た、立華君! 立華君も冒険者よね!? なら冒険者の危険性って理解していると思うの、だから彼等を説得して……」

「いや、先生……あいつらの好きにさせれば良いですよ。正直、俺はそこまであいつらに興味ありませんから」

「で、でも金森さんはあなたの幼馴染でしょ!?」

「ただの昔馴染みというだけです。そこまで興味ありませんし、あいつがどうなろうと俺に関係ありませんよ」

 

 ドライな考え方だと思われるだろうが、事実として剣佑は聡一の事も、晴信の事も、めぐみの事も、そして幼馴染である明日華の事も興味が無い。

 普段から暴力で他者を威圧する聡一と晴信、そんな二人を全肯定する明日華とめぐみには自分達にも暴力が返って来る事を学ぶべきだと考えている程だ。

 むしろ、他人に暴力を振るう癖に、それが自分に返って来るという考えも覚悟も無い彼等を軽蔑すらしている。

 

「ふむ、では勇者殿とハルノブ殿、アスカ殿、メグミ殿の4人パーティーでギルドには申請しておく」

 

 後の問題は残ったクラスメート達18名と梨々子だ。当面の生活は保証すると言ったものの、だからといって働かずにタダ飯食らいでは困る。

 なのでフィリップス王とロードス宰相の指示で男子10名全員と、それから希望する女子は王国騎士団と魔術師団が引き取って団員として働いて貰う事となった。

 働いている間の衣食住に関しては給料を渡すし、寮も用意してくれるので問題は無い。無いのだが、そうなると他の問題が発生してしまう。

 残った女子5名と梨々子だ。王宮のメイドは格式高い存在で、平民ではなれない決まりがある為、彼女達をメイドとして王宮で雇う事は出来ない。

 

「なら、俺とフィリアが住んでいる家で引き取りますか?」

「む?」

 

 そこで手を挙げたのが剣佑だ。流石に顔見知りの彼女達が路頭に迷うのを良しとする程、非情ではないつもりだ。

 

「幸い、俺とフィリアが住んでいる家は元々貴族の別邸だった屋敷を格安で購入した物ですので正直持て余してまして、冒険者として活動していると家を空ける事も度々あるから掃除が行き届いていないんですよ」

「貴族の別邸……待て、ケンスケよ、そなたの言う貴族の別邸だったという屋敷に余は覚えがあるぞ?」

「奇遇ですな陛下、私もケンスケ殿の言う屋敷に覚えがありますぞ」

 

 嫌な予感がするという表情で剣佑を見るフィリップス王とロードス宰相、それだけでなく周囲の貴族や大臣、騎士団長のスウェンや宮廷魔術師のエラルドまでもが同じような表情を浮かべている。

 

「ち、因みにだがケンスケよ……そなたとフィリアが住む屋敷は何処にある?」

「? 王都東通りの突き当りを左に曲がった所にある屋敷ですけど」

「ふ、フロズド元子爵の別邸ですな」

 

 フロズド元子爵、ルーンメイル王国に嘗て存在した子爵の爵位を持っていた家で、先代当主が子宝に恵まれず、王国法で養子に家督を継ぐ権限は与えられない為に断絶、爵位は王家へ返上されて領地も今は王家直轄領になっている。

 その元子爵の別邸が今は剣佑の住む家なのだが、そもそも断絶したとはいえ貴族の別邸だった屋敷を格安で購入出来たのは誰も買い手が付かず大幅に値下げされていたからだ。

 

「まぁ、格安とは言っても普通の平民では手が出せない金額でしたよ。冒険者としての活動で貯めた金があったから買えましたけど」

「それはそうだろうて、貴族というものは跡継ぎを残すのが仕事、跡継ぎが生まれず断絶した貴族の別邸など縁起が悪いから誰も買いたがらなかったのだ」

 

 そういうものなのだろうか。貴族とは縁遠い生活を送って来た剣佑には理解出来ない感覚だが、縁起というものだけは理解出来る。

 

「まぁ、そんな訳でウチでしたら使用人も雇ってませんし、残ったクラスメートと先生くらいなら引き取りますよ。勿論、使用人として仕事はして貰いますが」

 

 こうして、召喚された23名の内、聡一と明日華、晴信とめぐみの4人が勇者パーティーとして旅立つ事が決まり、男子10名と女子3名が王国騎士団と魔術師団が引き取り、残った女子5名と副担任の梨々子は剣佑が引き取る事が決まった。

 話し合いが終わった後は謁見の間に聡一含む勇者パーティーだけが残り、騎士団や魔術師団に引き取られる生徒達は騎士団長のスウェンが連れて行った為、剣佑とフィリアは兵士から預けていた剣と弓を返して貰った後、梨々子達を連れて王宮にある貸し会議室に移動する。

 

「あの、立華君……ごめんなさいね、先生まで面倒を掛けて」

「別に構いませんよ。正直、あの場で見捨てるのもアレでしたので」

 

 梨々子の謝罪を受けて気にするなと伝えると、改めて剣佑は梨々子以外のクラスメート5人を見渡した。

 黒髪ロングヘアーの髪を膝裏まで伸ばしたお堅い印象を受けるクラス委員長、小山内 美夜。

 その親友で赤味掛かった茶髪を背中まで伸ばした大橋 澄香は普段誰にでも敬語で話す美夜が唯一タメ口で話す相手。

 144cmという低すぎる身長に似合わぬ巨乳を持つ紫掛かった黒髪をシュシュで纏めて前に垂らしている根岸 桃菜。

 実家がラブホテルを経営しているという事で有名な明るい茶髪をポニーテールにした村松 千里。

 図書委員で、本の虫と呼ばれるほど本が好きな黒髪を三つ編みにしたメガネの少女が上田 智香。

 以上の5人に梨々子を加えた6人がこれから剣佑の屋敷で使用人として働くことになる。

 

「宰相閣下から皆の生活に必要な物資の購入は全て王宮にツケて構わないと言われているから、これから買い物に行く。着替えなんかも必要だろうから、サイズとかは彼女……フィリアに伝えて欲しい」

「フィリア・ケルトウッドよ。エルフ族、ケルトウッド大森林の集落で生まれ育ったからケルトウッドは家名であり集落の名前でもあるわ」

 

 因みに剣佑とフィリアが王宮にいる理由である王国騎士団の依頼については、スウェンが気を利かせて依頼達成のサインを依頼書に書いてくれたので問題無い事を此処に記しておく。




次回は書き終われば今日中に投稿しますが、あまり期待しないでください。
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