異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?   作:剣の舞姫

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@turuginomaihime


第6話「女7人の中に男1人は……居た堪れない」

異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?

 

第6話

「女7人の中に男1人は……居た堪れない」

 

 異世界に召喚されたクラスメート5人と副担任の梨々子を連れて、剣佑とフィリアは屋敷に戻る前にそれぞれの用事を済ませる事になった。

 剣佑は冒険者ギルドへの王国騎士団からの依頼完了報告へ、フィリアには女子ばかりのクラスメート5人と梨々子と共に下着や服などの衣類を買いに行ってもらっている。

 6人分の着替える類と、生活物資、今晩の食材など、今日は買わなければならないものが多いのでギルドで報告を早々に済ませて報酬を受け取った後、食材の買い物をしつつフィリア達との合流予定場所へ向かう事となった。

 因みに、6人分の生活物資や食材を買うとなると大荷物になって持ち運びが困るだろうと王宮からは手伝いに人を出すと言ってくれたものの、剣佑とフィリアの持っているアイテムがそれを解消してくれるアイテムだったので断っている。

 

「さてと、食材はこんな所か……武装スキル“収納”」

 

 剣佑の左手首にあるプラチナのバンクルに付いたルビーのような赤い宝石が光ったかと思うと、剣佑の目の前に木箱で積み上げられた大量の食材が光となって宝石へと吸い込まれた。

 このバンクルは一応、防具に分類される物だ。効果としては魔法耐性効果が付与されており、ソレ自体は武器・防具屋でも買える。

 ただ、剣佑のバンクルは同じ魔法耐性効果を持つプラチナバンクルでも、生産の過程で時々生成される武装スキル付きのプラチナバングルなのだ。

 武装スキルは大きく分けて二つに分類される。天然スキルと人工スキルと呼ばれ、前者は剣佑の魔剣ルクスリアのように自然発生したスキルで、どんなスキルが付与されるか使って見なければ分からないのが特徴。そして後者は職人が作る武器・防具に稀に付与されるスキルで、こちらは天然スキルとは違って付与された武器・防具の種類によって何のスキルなのか予想出来る。

 天然スキルは同じスキルが二つと無いスキルであり、人工スキルは同じスキルが付与された武器・防具が数多くあるというのが最大の違いだろうか。

 今回、剣佑が使ったのはプラチナバンクル……腕輪系防具によく付与される『収納』というスキルで、腕輪系防具は他に『爆発』というスキルがある中で1年半くらい前に運良く入手出来た荷運び系スキルなのである。

 

「さて、みんなは……」

 

 食材を『収納』した後、王都のメインストリートを少し歩いて生活物資の店が立ち並ぶエリアを歩いてみたが見当たらない。

 実はフィリアも彼女自身が元々持っていた『収納』バンクルがあるので先に生活物資を買い終えて衣類関係のエリアに居るのかもしれないと足早に向かって見れば案の定だった。

 

「フィリア」

「あら剣佑、もう終わったの?」

「ああ、そっちは……まだ掛かりそうか」

 

 女性物の服屋の前で店頭に飾られていた薄緑色のワンピースを眺めていたフィリアに声を掛けてクラスメート達の事を尋ねれば、店内に視線を向けたので追ってすぐ理解した。

 店内ではクラスメートの女子5人と梨々子が服を手に取って店員と話をしている姿があり、まだまだ時間が掛かりそうだと肩を竦める。

 

「貴方の着ていた制服や彼女達の着ている制服やスーツ? っていう服を見て改めて思うわ……文明の差が凄い」

「確かに、こっちだと化学繊維なんて無いから全部天然繊維だ」

 

 因みに言うと下着もこの世界と地球では差がある。男のパンツ、女性のショーツといった下着も全て天然繊維製で、辛うじてゴムはゴムの木が発見されているので使われているものの、完全天然繊維の下着というのは素材によって肌ざわりが異なるのだ。

 更に言うならこの世界、ブラジャーというものが無い。なので貴族の女性なら補正下着としてのコルセットを、平民の女性はさらしの上にシャツやブラウスを着るか、さらしを巻かずにオープンコルセットを着て胸を支えるのが主流である。

 

「あの子達が下着を選んでいる時に見せて貰ったけど、ぶらじゃー? っていうの、アレ良いわね。この世界でも作られないかしら」

「すまん、女性の下着の話題はノーコメントで」

 

 あまりにも居た堪れない。ただ一つ言えるのはフィリアが普段さらしを巻いた上に上着を着て胸当てを付けている事を、剣佑は知っているという事だけだ。

 

「もう何度も脱がしているものね? 上着も、さらしも」

「いい加減口を閉じろ!?」

 

 公共の場で何てことを口にするのかこのエルフは。

 確かに、もう何度身体を重ねたか覚えていないくらい、剣佑とフィリアは同じベッドで夜を共にしてきたが、もう少し恥じらいというものを覚えて欲しい。

ベッドの上では普通に恥じらう癖に、どうしてこういう場では恥じらいを捨ててしまえるのか。

 これはエルフならでは気質で、元々平均寿命が長いエルフ族は生殖本能が高くないのか、普段は所謂下ネタのような話をしても羞恥心は無いのだ。

 その代わり、いざそういった行為に及ぶと途端に恥じらいを取り戻したり興奮したりするという中々難儀というか、面白い性質の種族特性をしている。

 

「あ、立華君!」

 

 そのとき、ようやく買い物を終えたのか店から梨々子を筆頭に智香、美夜、澄香、桃菜、千里の5人も出て来て、各々が茶色の袋をいくつか腕に抱えていた。

 

「じゃあ、私の収納バンクルに入れるから待ってて……武装スキル“収納”」

 

 フィリアの右手にある金色のバンクルに付いたサファイアのような青い宝石に紙袋が全て収納され、全員の手が空くと剣佑とフィリアが先頭に立って歩き始める。

 時間的にそろそろ屋敷に戻って夕飯の準備をしなければいけない頃合いなので、今日の買い物はこれにて終了、足りない物があれば後日という事となった。

 

「そうなの、じゃあ立華君は自分がどうしてこの世界に来たのか、経緯も理由も一切覚えていないのね?」

「そうなります」

 

 道中、いつの間にかフィリアは後ろに下がって智香達と話しながら歩いていて、先頭を歩く剣佑の隣には梨々子が並んでいた。

 歩きながら、剣佑がこの世界に先に来ていた件についてや、この世界の事についてなど、色々と情報を聞いている様子から、教師として少しでも多くの情報や知識を集めて生徒達を安心させたいと考えているのだろう。

 

「でも、本当に驚きました……つい1ヶ月前まで普通のクラスメートだった立華くんが、3歳も年上になっているだなんて」

 

 梨々子と話していると、後ろからクラス委員長だった美夜が話しかけてきた。

 彼女はクラス委員長というだけあって本当に真面目な性格で、厳しく躾けられたのだろう一人を除いて誰に対しても敬語を崩さない姿勢や学年トップという成績から教師からの評判も良い女子生徒だ。

 むしろ、頭の良い彼女なら浜崎学園よりもっと偏差値の高い高校にだって進学出来ただろうに、なぜ生徒の質が良くないと評判の浜崎学園に入学したのか。

 

「ね~! 立華ぁ、ウチの美夜はあまり年上の男に免疫が無いんだから、気を使ってやってよ?」

「ちょ、ちょっと澄香! それは保護してくれた立華くんに対して失礼でしょ?」

 

 美夜の隣を歩く澄香は笑いながら美夜の肩を抱いて剣佑にも軽い口調で接してくる。実はこの二人中学の頃からの付き合いとの事で、美夜にとって澄香は同世代の友人達の中で唯一ため口で話す事が出来る親友なのだ。

 

「気にしてないよ。それに気を使うつもりではいたから安心して欲しい」

「あの、その……はい、ありがとうございます」

 

 逆に気を使わせてしまったか。恐縮したように縮こまってしまった美夜の姿に困った表情を浮かべていると、空気を変えるかのようにクラスメート女子5人の中で一番背の高い千里が話しかけてきた。

 

「ねぇねぇたっちー」

「た、たっち……?」

「そそ、立華だからたっちー」

 

 地球に居た頃、千里と剣佑が会話した事は無い。お互いに顔と名前を知っているというだけのクラスメートの一人に過ぎなかったからだ。

 ただ、剣佑は常日頃から周囲の話を聞いて情報収集する習慣があったので千里の性格は知っている。

 明るくて社交的、ポニーテールにした茶髪と168cmという女子の中では高い身長からスポーツ少女と思わせておきながら実は運動音痴な彼女は実家がラブホテルを経営しているという事で有名でもあった。

 

「あたしらってさ、たっちーのお屋敷? でメイドさんって、どんな仕事をしたら良いの?」

「基本的には掃除、洗濯、食事の用意がメインで、俺とフィリアが仕事で居ない間の屋敷の管理や来客応対もやって貰う事になる」

「なるほどねー。お部屋の掃除とかなら任せて! 実家の手伝いでホテルの部屋の掃除とかベッドメイキングとか慣れてるから」

 

 どうやら昔から小遣い稼ぎの名目で実家の手伝いしていたらしい。ベッドメイキングや部屋の掃除関係は慣れているという事なので、今回はメイドの仕事でその経験を遺憾なく発揮して欲しいものだ。

 

「あ、あの……えと、そのぅ」

「ほら智香ー、ちゃんと聞きたいこと聞いておきなよー」

 

 最後に声を掛けてきたのは図書委員をしていたメガネと黒髪三つ編みお下げが特徴の智香と、その親友で身長144cmという低身長にも関わらず胸だけは大きいトランジスタグラマーな少女である桃菜だった。

 智香は両手で一冊の本を抱えており、そのタイトルが地球の文字ではなくこの世界の文字で書かれている事から、先ほどの買い物の最中に購入していたようだ。

 

「こ、この世界の、文字、お、教えてほしいな……」

「ああ、そうか、言葉は何故か通じてるけど文字ばかりはな」

 

 そうだ。これは剣佑もこの世界に来たばかりの頃も思った事なのだが、この世界の文字こそ地球の文字とは異なるのに、何故か言葉だけは通じるのだ。

 この世界の住人の言葉が日本語に聞こえるし、自分達が話す日本語も通じているらしく、そこに違和感を覚えるが原因は不明、とりあえず通じるなら良いかと言葉について剣佑も気にしなくなった。

 その代わり文字だけはどうにもならなかったので必死に覚える必要があったが、文字自体も地球で言うローマ字に似た文体と文字なので、覚えるのに然程時間は掛からなかったが。

 

「屋敷に俺がこの世界の文字を覚えるのに使った教本があるから、それを使ってみんなで覚えてくれ、一応俺やフィリアも教えるから直ぐに覚えられると思う」

「えー、異世界に来てもお勉強ー?」

 

 新しい知識を身に着けられるのが嬉しいのか話を聞いた智香は言葉にこそ出さなかったが真っ赤になっていた顔に喜びの感情が浮かび上がったのに対し、その親友たる桃菜は勉強という言葉にげんなりしている。

 この桃菜、飄々として表情筋が殆ど動かない所為か何を考えているのか掴みにくいところのある少女だ。

 しかし、召喚されたクラスメート22人と梨々子が謁見の間に入って来た際、真っ先に周囲に視線を巡らせてさり気無く智香を自身の背後に置くよう移動していたのを剣佑は見ていた。それはつまり誰よりも早く自分達の状況を理解して誰よりも早く情報を少しでも視界に映るものから得ようとして、それでいていつでも親友を守れるようにしようとしていたという事に他ならない。

 

「着いたぞ、あの屋敷が俺とフィリアの住んでいる王都の拠点だ」

 

 王都東通りの突き当りを左に曲がった所にある屋敷、大きさは日本で言うところの東京駅丸の内北口の駅舎くらいの大きさの如何にも貴族のお屋敷といった風貌な屋敷が建てられている。

 庭の広さは同じく東京駅の丸の内駅前広場くらいの広さをイメージすれば判りやすい広さだろうか。中央に小さいながらも噴水があり、その周りは芝なのだろうけども、手入れが行き届いていない所為か少し葉が伸びているのが気になるところ。

 その庭の先にある屋敷の壁は白く塗装された漆喰の外壁の屋敷だ。屋根は光の反射で少し見難いが濃い青系統の色にも見えるので、おそらく紺色辺りの屋根なのだろう。

 

「どうしても空けている事の方が多い所為で、手入れが行き届いていないのが心苦しいけど、どうぞ入ってくれ」

「今日からはあなた達の家でもあるから、遠慮しないでね」

 

 こうして、日本から召喚された教師、生徒含め23名全員がこの日は各々の引き取り先で用意された場所で落ち着く事が出来たのだ。

 いつ日本に帰れるのか、本当に帰れるのか、そんな不安が残っているものの、流石に色々な事があり過ぎて疲れてしまった少年少女達は与えられた夕食を平らげて入浴まで済ませた頃にはベッドに倒れ込んで異世界初日の夜を過ごすのだった。




次回は明日の予定です。
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