異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?   作:剣の舞姫

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お待たせしました。
風邪は治ったのに、咳が止まらないっす。
ずっと喉の奥に何かが引っかかっている感じ。


第8話「勇者一行が旅立ったらしい」

異世界転移して3年……クラスメートがクラス転移してきた!?

 

第8話

「勇者一行が旅立ったらしい」

 

 剣佑が指名依頼を受けて勇者パーティーをボコボコにした日から2週間が経過した。その間、剣佑とフィリアは冒険者としての依頼で王都を離れており、今は王都のある王家直轄領の東隣の貴族の領地へ来てる。

 依頼内容は領地にある中規模程度の村付近に最近だがゴブリンとオークの群れが住み付いたというものだ。

 下級モンスターのゴブリンだけでなく中級モンスターのオークも居たという事で最初はシルバーランク冒険者をリーダーにしたブロンズランク冒険者達のパーティーが討伐に出たのだが、上級モンスターのミノタウロスとオークロード、ゴブリンロードの姿も確認されて撤退、シルバーランクのパーティーでも荷が重いと判断してゴールドランク冒険者向けの依頼へと格上げされた。

 その依頼を剣佑とフィリアが受けて、王都から馬車に乗って村まで来たのが昨日。夜が明けた今、こうして村の近くの森まで来ているのだ。

 

「いるな」

「ええ、偵察かしら……ゴブリンが10程度」

 

 森の中を歩いていると視線を感じた剣佑とフィリアが即座に戦闘態勢に入った。既にゴブリンやオーク達に二人は捕捉されていると理解して剣と弓を構えると、頭上から石が投擲がされる。

 

「フィジックシールド! フィリア!!」

 

 飛んできた拳大の石を魔法で展開した魔力シールドで受け止めている間に、フィリアは既に弓へ矢を番えていた。

 狙いは石が防がれている事に気付いて飛び出してきたゴブリン……ではなく、その向こうで石を投げているオークだ。

 走り寄るゴブリンの間を縫うように射られた矢はオークの眉間に1本、両目の眼球に1本ずつ突き刺さり、そのままオークは絶命してこれ以上の石の投擲は無くなった。

 既に至近距離まで来て棍棒やショートソードを構えて攻撃姿勢に入っていたゴブリンは剣佑達が今更何かしようとしても間に合う筈が無いと醜い笑みを浮かべながら襲い掛かる。

 

「武装スキル、“色欲の剣”発動」

 

 もう遅いと剣佑へ攻撃しようとしたゴブリン達、だが攻撃が剣佑に届くよりも前に、その醜い緑色の小柄な身体は力を失ったように地面へと倒れ、ゴブリン達は口から泡を吹いて痙攣しながら絶命するのだった。

 

「“色毒抱擁”……無味無臭の毒の気体を吸って助かる筈が無い」

 

 剣佑の持つ魔剣ルクスリアの武装スキル“色欲の剣”は持ち主の色欲の強さによって毒性が変化可能な猛毒の霧を刀身から発生させたり、刀身自体に毒が塗られたりする毒の剣となる。

 勿論、スキルによって発動する毒なので指向性も調整可能で、味方が毒を吸っても死なないようにする事も可能だ。

 

「ガァアアア!!!」

「来たか」

 

 偵察のゴブリンとオークが死んだことで森の奥から追加のゴブリンやオーク、それだけでなくオークロードやゴブリンロード、ホブゴブリンにミノタウロスまで。

 

「少し数が多いか……」

「任せて! 武装スキル、“神秘の矢”発動」

 

 フィリアの持つ木製の弓、これはただの木の弓ではない。精霊の里と呼ばれる精霊の隠れ里にのみ生えている精霊樹と呼ばれる樹の枝から削り出された特別性の弓なのだ。

 そのため当然、武装スキルも備わっており、その効果は持ち主の魔力を矢の形にして撃つ事が可能となるスキルで、魔力が続く限り矢の本数を気にせず撃てるようになる。

 さっそく、フィリアは己の魔力を矢の形にして番えると、そのまま上空目掛けて引き絞った弦を放した。

 

「メテオシューター!!」

 

 上空に放たれた魔力の矢が弾けて無数の矢となり、流星の如く敵へと降り注ぐ。

 フィリアが得意とする武装スキルとの組み合わせの技、“メテオシューター”は広域殲滅用の技で、効果は見ての通り。

 上空から降り注いだ魔力の矢が数多く居たゴブリンやオーク達をハリネズミのようにして絶命させ、生命力の高いゴブリンロードやオークロード、ミノタウロスでさえも大ダメージを受けている様子。

 

「っ!」

 

 一瞬で駆け出して毒に濡れた魔剣ルクスリアを一閃、手前に居たオークロードの首を落とすと、ゴブリンロードの眉間に矢が突き刺さるのは同時だった。

 そして最後に残ったミノタウロスへオークロードの亡骸を足場に飛び出して斬り掛かる。

 

「っ! ブモォオオ!!」

 

 だがミノタウロスもただでやられるつもりは無いと、その手に持った錆だらけの肉厚で巨大な斧を軽々と横薙ぎに払って来た。

 周囲の木々を薙ぎ払いながら迫り来る肉厚の刃を受け止めるなど自殺行為だ。なので無難だがその場でジャンプ、斧が剣佑のいた場所を薙ぎ払って完全にミノタウロスには隙が出来る。

 

「終わりだ」

 

 猛毒に濡れる魔剣ルクスリアをミノタウロスの心臓の位置に突き刺す。剣が刺さった瞬間から体内に大量の猛毒が流し込まれたミノタウロスは口や鼻、目や耳など全身の穴という穴から血を吹き出しながらその場に倒れて絶命するのだった。

 

「お疲れ様、剣佑。相変わらず“色欲の剣”の猛毒は凄いわねぇ」

「ああ、持ち主の俺でも未だ驚くというか、若干引く」

 

 これでまだ全力ではないというのだから恐ろしい。本気ともなれば相手の肉体を溶解する程の猛毒を出す事も可能らしいが、正直なところ使い道に困る。

 

「この力に頼りきりっていうのは困るから、なるべく大物以外には使わないようにしているんだよな」

「便利なスキルなのに、剣佑ったら使いたがらないのが不思議だわ」

「便利だからこそだ。便利な力や能力に頼り切っていたら己の成長が無い。まだまだ剣士として未熟なんだ、日々是修行也……俺は剣士としてもっと高みへ行きたい」

 

 日々の修行と、こうした命を賭けた実戦経験、この世界に来て剣佑の実力が急速に伸びたという実感があるのは、それが理由だ。

 この調子なら、いつの日か剣士としての頂き……剣の極地へと辿り着く事も夢じゃないのかもしれない。剣を極める事……剣道を続けてきて、いつの間にか剣佑の抱いていた夢だった。

 

 討伐が終わり、村で一泊した後は近くのギルドがある町まで馬車で移動、ギルドでギルド間トランスポーターを使用して王都ギルド本部へ戻って来た。

 受付で依頼完了報告を済ませた二人は今出ている依頼書をチェックして特に目ぼしい依頼が無い事を確認すると、早々にギルドを去って屋敷への帰路に着く。

 

「ギルド間トランスポーターってさ」

「ん?」

「なんで帰り限定なんだろうな」

 

 帰り道、ふと疑問に思った事を口にした。

 ギルド間トランスポーターとは簡単に言えば遠く離れたギルドへ一瞬で移動出来る転移魔道具、その使用はゴールドランク冒険者にのみ資格を与えられる。

 そして、ゴールドランク冒険者でも使用して良いのは依頼の帰りのみというルールがあって、行きでは使えないのだ。

 

「元々は行き帰りどっちも使えたのよ、昔はね」

「途中でルールが変わったってことか?」

「そうよ。確か先代のギルドマスターだったかしら、楽を覚えては“冒険”の意味が無いって言って使用制限を出したのよ」

 

 20年以上前の話だった。その時のルールが今のギルドマスターの代になっても続いていて、冒険者はトランスポーター使いたさにゴールドランクを目指す者も居るくらいなのだ。

 

「あら、立花君、フィリアさん」

 

 話しながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。振り返ってみればクラシックタイプのメイド服を着た梨々子が食材の入った紙袋を抱えている姿が。

 

「おかえりなさい」

「ただいま、先生」

「ただいま、リリコ」

 

 梨々子は現在、剣佑の屋敷でメイド長として働いている。そんなメイド長である梨々子が自ら買い出しとは、他のメンバーは忙しいのだろうか。

 

「忙しいもなにも……そっか、立花君とフィリアさんは仕事で居なかったものね」

 

 剣佑の屋敷でメイドをしているクラスメート達は、昨日は騎士団や魔術師団に入ったクラスメート達と共に王宮に泊まっているらしく、今日の夜に戻って来るらしい。

 

「昨日? なんかあったんですか?」

「何かあったもなにも、昨日よ? 向居君たち勇者パーティーが旅立ったのは」

 

 剣佑にボロボロに負かされた後、聡一達は貴族達主催のパーティーに連日出席して、勇者としての顔見せを済ませた後、つい昨日の朝に王都を旅立った。

 そのときは盛大にパレードもやったらしく、そういえば道端には色取り取りの紙の切れ端が落ちているではないか。

 

「王都に戻って来る途中ですれ違ったりしなかったの?」

「俺達は冒険者ギルドにあるギルド間トランスポーターを使って直接王都のギルド本部へ転移してきたから、すれ違う事は無かったですよ」

「へぇ、冒険者ギルドってそんな便利な物もあるのねぇ」

 

 なにやら興味深そうにしている梨々子、そういえば元々は心配だからと聡一達に付いて行こうとしていたが、梨々子は何か戦う術があるのだろうか。

 一応、剣佑が見た感じでは梨々子の体幹はしっかりしている。正中線に軸が出来ており、ブレが無いのは何かしら武道や武術を納めている証拠でもある。

 正直、結構気になるので直接聞いてみたら、予想通りの答えが返って来た。

 

「学生時代から空手をやってたのよ。これでも全日本空手道選手権大会女子組手個人戦で優勝した事もあるんだから」

「全日本で優勝!?」

「他にも大学生の頃に総合格闘技の大会にも出場したかな」

「え、え~……先生、たしかに体幹とかしっかりしてるけど、その細さでまさか」

「これでも大学卒業するくらいまでは腹筋割れてたのよ?」

 

 それは意外だ。だが同時に、スタイルにメリハリがあるのも納得出来る理由でもあった。しかも美人なのでメリハリのあるスタイルと合わせればそれは男にモテるだろう。

 明日華達が梨々子を嫌っていたのも彼女の美貌とスタイルの良さに嫉妬していたからだ。だけど、話を聞くに学生時代から鍛えていた彼女のスタイルと、遊んでばかりの明日華達のスタイル、どっちが魅力的に見えるのかなど問われるまでもない。

 

「ところでリリコ、戦えるのなら何故騎士団に入らなかったの?」

「空手って、言わば無手……素手で戦うものだから、剣とか槍は持った事が無いのよ。それに戦えない子達に寄り添って守りたかったから」

 

 なるほど、どちらも納得できる。実に教師らしい回答で、そしてそれが本心である点が梨々子の魅力でもあるのだ。

 若いが、ちゃんと生徒を見てくれる先生で、本気で生徒に寄り添おうとしてくれるから、それを理解出来る生徒にとっては本当に良い先生だ。

 

「ところで、冒険者登録……興味あるならします?」

「う~ん……今は、とりあえずいいわ。あの子達の傍を離れるわけにもいかないもの」

 

 興味があるのは間違いない。だけど、それ以前に生徒を守る教師として、戦えず剣佑の屋敷でメイドをする事になった生徒達に寄り添って、傍で守る道を選んだ梨々子の選択を、剣佑もフィリアも尊重した。

 その後、三人は無事に屋敷に到着して、その暫く後になって王宮に泊まっていた5人も帰って来る。

 そして、その翌日の事だった。剣佑とフィリアが王宮に呼び出されたのは。




次回は王宮に呼び出された理由です。
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