VRゲームやってみたいですか?やってみたいですよね?そう、やってみたくなるんですよ 作:かるー7
仕事がうまくいかない……。
っていうか新しい機器に慣れるのが難しすぎる。
こちとらつい最近までスマホをいじって生きてきたというのに職場の同僚は何だそれ、いつの時代のやつ? とかホントにそれいま使えるの? みたいなことばっか言ってきやがる。
こんなことを言われる前はみんなパソコン使ってたし、思考入力なんていうわけのわからないテクノロジーは存在しなかった。
もう、
「え! そんなこともできないんですか! ……あっ、すみません。配慮が足りませんでしたよね」
みたいな感じになるのは嫌だ! 。
だけど教えてもらってもできないんだ。
頑張っても脳内でクリックするとか、スクロールするとかってどうやるのか分からないんだよ。
そんなふうに混乱して思考入力がないパソコンばっか使ってたらあっという間に置いてかれた。
同僚たちは少しずつ機器をアップデートしていったから思考入力方式に慣れているというのに俺は思考入力とかが関わった瞬間何一つできない木偶の坊と化す。
こんなんじゃだめだと思っても先に言った通り思考入力方式とかマジでついていけない。
思考入力が導入されたのを見た当時、はたから見たらパソコンの前でじっとしてるだけなのに文字が入力されていくのはちょっとした恐怖だった。
本当にスマホから脳内デバイスは段階を飛ばしすぎなんだよ。
画面すらなくて映像も脳内でやるとか頭おかしいだろ。
おかげで俺は何一つ資料とか読めなくなってしまったし、単純作業すらおぼつかなくなってしまった。
だが、そんな日々もここまでだ。というのも完全没入型VRというものが開発されたからだ。
これならほとんど現実と変わらないような感覚で仮想空間上で作業ができるらしい。つまり仮想空間上にパソコンを作ってやれば仕事ができるようになるというわけだ。仮想空間に入ってパソコンを使うとか二度手間のように感じるかもしれないが今現在稼働しているパソコンはほとんどない。
一足先に俺がそれに触れておけばもう若い子たちにあんなことを言われずに済むって寸法だ。
それに加えて嬉しい情報がある。世界で初めての完全に仮想空間上で活動できるツールだというのにその活用先がゲームなのだ。しかもMMORPGらしい。
趣味が仕事に活かせるというわけだ。遊んでいるだけで給料が上がるかもしれないと思うだけでワクワクしてくる。
効果が出るのは何年もあとのことだろうが……。
そのゲームで遊ぶためにいろいろな情報を送ったり料金を支払ったり、有給を取ったりした。
仕事のためとは言ってはいるが本心ではゲームが楽しみでしょうがない。
そして、今日はそのゲーム『One Thing』のサービス開始日だ。
仮想空間へと行くためにだいぶゴツい見た目のヘルメットのような形状になっている機器を身に着けいざ、ゲームの世界へいざ行かん。
気がつくと辺り一面真っ白だ。目の前にはあなたの名前を決めてくださいという文字が表示されたウィンドウがある。
うーん、名前かぁ。身バレは嫌だから、さすがに本名をいじっただけのやつとかはやめておいたほうが良いいよな。
適当に好きな数字でいっか。ナインっと。
本当にこれでよろしいですかと確認ボタンが出たのでOKを押す。
すると次のチュートリアルを始めますかとYESとNOのボタンが現れたので当然YES ボタンを押す。
すると目の前に麻のシャツとズボンを着た自分がいた。
ウィンドウを再びみると身長や髪の長さ顔の造形などアバターの見た目を決めるためのパラメータがあった。
どうやらここでキャラメイクをするらしい。
試しに鼻の高さと書かれているパラメーターを上げてみると鼻の高さが上がった。のだが……なんというかものすごく違和感がある。
うーん、どうしたものかリアルバレをさけるために少しくらいは変えておいたほうがいいとは思うのだが、このパラメーターをいじったら何か微妙なことにしかならない気がする。
いや、多分上手い人がやれば違和感なくできると思うのだが俺ができるとは思えない。
ここは無難に髪の色とか目の色だけを変えるか。
……ん? おすすめ? あぁ、なるほどねなんか良い感じにイケメンにして身バレを防いでくれるのね。
じゃあ、おすすめを使っておくか。1人だけ妙にブサイクとかだったら悲しくなってしまう。
次は……ステータスね。えっと筋力、敏捷、防御力、技巧、知力、HP、MP、SPがあるらしい。ヘルプをみてみれば詳細が書いてあったが簡単にいえばこんな感じだ。
筋力は簡単にいえば攻撃力だ。その他にも装備重量がある装備は筋力が足りないと移動なんかができないらしい。
敏捷はそのまんま素早さだ。これを上げると素早く動ける。
防御力もそのまんま。敵からのダメージを受けたときにこれが高いと受けるダメージが減る。
技巧は主に生産職に必要でこれが高いほどより良い品質の物が作れるらしい。その他にも弓や鞭など一部の武器はこの数値が高くないと装備できなかったり本来の性能を引き出せなかったりするらしい。
知力は上げると魔法のダメージや使える魔法の種類とかが増えるらしい。
HPはダメージを受けると減り、なくなると死んでリスポーンする。
MPは魔法を使うと減り、無くなっても特に影響はなく時間経過で回復する。
SPは魔法以外のスキルなんかを使うと減り無くなっても影響はなく時間経過で回復する。
レベルが上がるとステータスポイント(STP)が20ポイント手に入り任意のステータスに割り振れる、10ポイントがそれまでにした行動などで自動的にステータスに割り振られるようになっているらしい。
HP、MP、SPはレベルが上がるごとに5ずつ増えていくがSTPを割り振ることでも増加させることができるらしい。
ステータスを見るためには一定の動作をすればいいらしい。ここらへんは個人で変えれるとのことだ。俺は右手の人差し指と中指を振り下ろすという動作にした。
今の俺のステータスがこうだ。
筋力:0
防御力:0
敏捷:0
技巧:0
知力:0
HP:30
MP:10
SP:10
スキル:無し
ここにチュートリアルで30STP貰えるのでそれを割り振っていくとこうなった。
筋力:5
防御力:10
敏捷:15
技巧:0
知力:0
HP:30
MP:10
SP:10
スキル:無し
まぁ、妥当な方ではないか。被弾をしてもいいように防御力に多めに振り快適性のために俊敏に多く振って攻撃が通らないと困るから筋力にも振った。
スキルはこれまでにした行動に応じて手に入るらしい。つまりずっと鉄をハンマーで叩いていたら鍛冶やもしかしたら硬いものを砕くスキルなんかを手に入れられるかもしれないということらしい。
ウィンドウにはチュートリアルを進めますか? の文字とYESとNOの2つのボタンが表示されている。
俺はYESのボタンを押すと真っ白な空間に様々な武器と何かが現れた。
青くてプルプルと震えているスライムがそこにはいた。
俺はウィンドウを見るとそこにはモンスターにここにある武器で攻撃してみてください。とかかれている。
ここにある武器ねえ。様々とは言っても数自体は少ない。剣が数本あったりするだけだ。
とは言っても俺はこのゲームを始める前から使う武器は決めていた。それは拳だ。
これまでに何もできなかったというストレスをたくさん受けてきたんだ。
剣や魔法を使うよりも拳のほうがストレス発散できるからな。
というわけで特に何も武器は取らずに素手でぷすらに勝負を挑む。
「オラァ! 特に恨みはないが俺のストレス発散のために死ねぇ!」
拳を振り降ろし足元のスライムをぶん殴る。それでは倒せなかったので足でスライムを蹴り上げる。
そうするとスライムはポンど音を立てて消えた。
〘レベルアップ!
レベル1→2
行動に応じてSTPが自動的に割り振られます。
スキル[格闘]を獲得しました。〙
システムメッセージが入るがそれよりも、何も抵抗してこなかったせいで罪悪感がすごい……。
まぁ、そんなことよりもレベルアップだ。
これによって20STPを入手できたはずだから早速割り振るか。流石にスライムを一撃で倒せないのはきつい気がする。
筋力:5→10
防御力:10→20
俊敏:15→30
技巧:0
知力:0
HP:35
MP:15
SP:15
スキル:[格闘]
とこのようにになった。スキルについてだが[格闘]を獲得できたようだ。おそらくチュートリアルだからだろうか、かなり楽に獲得できた。
肝心の[格闘]の効果についてだがそれはステータスの[格闘]のところをタップすると詳細が見えるようになるので効果もすぐに分かった。
[格闘]Lv.1
拳や足などを用いた攻撃にダメージ補正が入る。
使用可能アーツ
《パンチ》Lv.1 消費SP5
次に拳で攻撃したときに10ダメージを追加。
とのことだった。つまりパッシブ(常に発動する効果)としては今までよりも攻撃が通りやすくなるということで、アーツに関して言えば必殺技のようなものだろうか。
さらにダメージが入るのでよりモンスターを倒しやすくなるということだろう。
ウィンドウを見てみるとチュートリアルは完了しました。と表示されていてその下に始まりの街に移動しますかと書かれている。答えはもちろんYESだ。
気がつくといつの間にか人がごった返し雑然としている大通りにいた。
「すげぇー!」「かなり西洋風だな、ヨーロッパモチーフなのかな?」「そんなことは無いと思うぞ、あそこらへんアジア系だろ?」「人多すぎ」「ほとんどが西洋風だから輸入品とかじゃねえの」「次は何処に行く?」「やっぱ、魔法とかあんのかな!」「この感じだったらあるんじゃない?」「ここって何処とかって分かったりしませんか?」「この日に行くところと言ったら冒険者ギルドだろ!」「国王様最高!」「王都の大通りに決まってるだろ?」「最近の技術凄すぎだろ」「何も違和感ない無いしな」
「うおっ! なんだこの人混み」
「え? あんた知らないのか。今日はサービス開始日だよ。どこのオンラインゲームでも同じだけど最初はみんなこんなもんさ。ましてや、世界初の完全没入型こうなるのも当然というか。みんなゲームの世界に行きたいとおもっているからこの人数になったんだろうねぇ。まぁ、ここからとんでもないクソゲーってなったら悲しくなるくらい人がいなくなると思うけど後発がでてくるまでこれが唯一の完全没入型だから人がいなくなるかどうかは分からないけど」
え? なんだこいつ独り言言っただけなのに、なんかすごい長文で返されたんだが。
困惑してるうちに彼は人混みに飲み込まれてどこかへ行ってしまった。
あっ、また誰かの独り言に対して長文で返してる。
まさかあの人ずっとそうなのか? この人混みのせいで行きたいところに行けず、ここで延々と誰かの独り言に対してずっとあの長文で返しているのか?
なんか、不憫すぎだろ。というか俺もこの人混みのせいで動けねぇ。このままだとあの人と同じように誰かの独り言に対してなにか言ってあげることぐらいしかやることがないくらいには暇になっちまう。早くこの人混みを抜けなければ。
周囲をこの通りを埋め尽くす人に邪魔されながら見渡していると裏路地のようなところがあるのを見つけた。あそこに行けば落ち着く事ができるだろう。ひとまずはあそこを目指さないと。人混みをかき分け、押し合い圧し合いながらその小さい路地を目指す。
かなり時間がかかったが路地にたどり着くことができた。薄暗い路地の奥には階段があり腰を落ち着けるために少し登る。
そこで腰を落ち着けると自然に大通りが見えるため人混みもまた見える。落ち着いて街を見れるようになったから街をよく見てみると西洋風のTHEファンタジーって感じの街並みになっている。
それにさっきはそれどころじゃないから意識していなかったが体を動かすときに違和感が何一つとしてない。
初めての完全没入型という話だったがもうここまで完成度が高まっているのか。
するとここで1つ疑問が湧いてくる。なぜ他のプレイヤーがこちらに来ないのかという疑問だ。
不思議に思いながらその人ごみを眺めて考えていると理由が分かった。
通りの真ん中の方に頭上にプレイヤーネームが表示されたプレイヤー達が居るのに端の方には麻のシャツとズボン以外の豪華な服(あくまで麻のシャツとズボンと比べてだが)を着た者たちが楽しそうな表情で騒ぎながら移動しているのだ。
おそらく祭りか何かの時期に俺たちは来てしまったのだろう。
俺は十分に休んでからその場を離れ街の外にでられないかと道を探し始めた。
裏路地を歩いていると先ほどの賑やかさとは違った静けさが裏路地を満たしていた。路地が狭いせいかかなり薄暗く感じられる。
街の出口はどの方向かと見渡すが周りに家屋が所狭しとあるせいで街の出口は見つけられなかった。
だが街の外の方向は分かっている。それはこの周りの家屋のせいで大分狭くなっている空からでも見ることができるほど大きい石造りの壁だった。
おそらくは外からの侵攻やモンスターなどの被害を防ぐために建設されたのかもしれない。
そんなことはどうでもいいが、とりあえず壁の方向に向かって歩き続ける。
壁を目指して歩き続けるがこの路地が迷路のように入り組んでいるせいでなかなかたどり着けない。
そうやって歩き続けていると路地で掃除をしているおばあさんがいた。
すぐ背後の壁に扉があるのであそこの住人だろうか。
俺は無闇に歩き続けるよりも道案内を頼んだほうがいいだろうと思ってそのおばあさんに話しかけた。
「あの〜すみません。街の外にでたいんですけど街の出口って知ってますかね?」
「なんだい? あたしゃ見ての通り掃除で忙し……なるほどね。そういうことならあたしゃも大歓迎だよ」
おばあさんはこちらの服装をみた途端態度を変える。
微かな笑みを浮かべながら掃除をやめ、後ろの扉を開けて中に入りこちらへ手招きをする。
「早く入りな。どこで奴らがかぎつけてくるのか分かったもんじゃない」
とりあえずこの人の指示には従っておこう。なんか街の外まで案内してくれそうだし。
それはそれとして勘違いされているような気もするがバレるまではやってみようかな。ゲームなんだし楽しまないとな。
「はい」
そう言って俺はおばあさんのあとに続いて部屋に入った。
中の部屋は雑貨屋といったと様子で様々なものが店に並んでいる。
一部ドクロマークのついた瓶や明らかにヤバそうな雰囲気を放っている禍々しい武器などもある。
棚の商品をみている間におばあさんはカウンターの奥に行ってしまった。俺は慌てておばあさんを追いかける。
カウンターの奥には机と椅子が置いてあり、おばあさんはすでに座っていた。
「さっきは悪かったねぇ。よく考えればこの日にここに来るやつがアイツラなわけないのに。で、あんたはここになにをしにきたんだい?」
「先ほども言ったとおりです。街の外に行ってみたいんです」
おばあさんは先程までの優しそうな顔を引っ込めて真剣な顔で聞いてくる。
「それは何のために」
何のために? この世界を楽しむためだ。他にはストレス発散のためでもあり、仕事ができるようになるためでもある。あと他には……。
「強くなるため……」
おばあさんはその言葉を聞いて机をバンバンと叩きながら急に笑い出した。
「アッハッハ! いいじゃあないか。いい目標だ。そんないい目標をそんな小さな声で言うもんじゃあないよ。もっと堂々と言うもんさ」
ひとしきり笑ったあとにおばあさんは紙を渡してきてこう言った。
「強くなりたいなら、この紙に書いてある場所にいる土くれのジジイに教えを請いな。あのジジイなら確実にあんたを強くしてくれるだろうさ」
俺はその言葉を聞いたあと礼を言ってからその場をあとにした。
薄暗い路地裏でおばあさんからもらった紙を空に向かってかざしてみる。そこには目的地が記された地図とこれは……文字だろうか? 何かの記号のようなものが左下には書かれていた。
紙を懐にしまって目的に向かって歩き始める。
行く途中に大通りの近くを通るとまだ住民たちの騒いでいる声が聞こえる。
近いとは言っても地図を見るとかなり離れているはずなのに、聞こえてくるのはこの路地が静まり返っているからだろう。
ただ歩いているのも暇なので耳を澄ましながら歩いていると歌が聞こえてくる。歓声や話し声などに邪魔されて聞きづらいが何かを歌っているのが聞こえる。
『【竜殺しの英雄】は偉大なる王となる〜』
こんな感じだろうか遠いせいで一部聞き取れないが、とにかく【竜殺しの英雄】とやらを褒め称える言葉で構成されている。
そんな歌をBGMにして俺は目的地にたどり着いた。
至って普通の家屋だ。周りにある家とそう大差はない。
扉を開けると中は真っ暗だった。扉から差し込む光を頼りに中を見てみると、俺は思わず後ろを確認してしまった。
なぜなら、部屋の中が岩でできていたからだ。石造りというわけではない。
洞窟のようなゴツゴツとした岩でできた通路が奥へと続いていた。
一度扉を閉めて地図を確認する。確かにここで間違いない。
ここが現実だったら絶対入らないだろう。だがここはゲームの世界だ。
現実と同じ事しかやらないならこのゲームを買った意味がない。値段の分は楽しまなくちゃ。
俺は意を決して扉を開けて中に入る。
洞窟特有のひんやりとした空気が肌を撫でて少し寒い。
この光景を観られないようにするために後ろ手で扉を閉めると中は完全に真っ暗になる。
壁に手を当て転ばないように慎重に歩を進めて行く。
真っ暗な中、ただただ手を壁に当てる音と足音、異様なまでに静かなせいで聞こえる自分の呼吸音が洞窟の中にいることによって響いて妙な音になって聞こえる。
それらのせいでかなり恐怖心を煽られるがこれはゲームと言い聞かせながら歩く。
ふと足元に向けていた視線を前に向けてみると開けた空間が奥にあることに気づけた。
あそこにたどり着いたら少し休もうと考え、少し歩いてその空間にたどり着いた。
その空間には微かに光る何かがわずかながら壁に付着しているおかげで暗闇に慣れた目ならば周りを見渡す事が出来た。
そのおかげでわかったのはここが
これ以上先に道はなく、そこにあるのはただの壁だった。
土くれのジジイに教えを請いなと言われてやってきたがそんな人物はここには見当たらなかった。
ここまで苦労して来たというのに空振りか? そう思い始めてどうしようかなと考えていると声をかけられた。
「のう、お前さん
「うわぁ!」
急に声をかけられたため驚いてしまった。その声の方向を見ると外套のような襤褸布をまとった褐色肌の身長180cmは超えているであろう白髪の老人がいた。
Tips:冒険者のカード
冒険者ギルドに入った時に与えられるカード。身分証の代わりになっており、街に入る時に提示が必要。ある程度以上の力を持つものはカードが更新されるらしい。
なくさないようにインベントリに入れておくとよいだろう。