VRゲームやってみたいですか?やってみたいですよね?そう、やってみたくなるんですよ 作:かるー7
「ぅ……」
微睡みの中、荒野の中心にガシャガシャと動く四本脚の機械が突然踊りだしグネグネと曲がり始め、気付くと周りは森に変わり四本脚の機械は何処かに行ってしまったようで代わりに小さい戦車のような機械がミラーボールの下で砲塔を振り回しながら踊り狂っていた。
その瞬間、先程の四本脚の機械が怒り狂った様子で戦車を体に取り付けられていた銃で穴だらけにし始め、終いにはグレネードのようなものまで投げつけた。
それが爆発すると中からヨシゴイの群れが飛び出し未だ鳴り響く銃声に合わせて踊りながら俺に近づいてくる。一定の距離に達するとピタリと動きを止め俺を見つめる。
そして見つめ合ったまま何とも言えない時間が過ぎる。そして銃声がやんだと気付いたとき一斉にオレに飛びかかり俺に巻き付いた瞬間、体中に激痛が走る。
「痛ででっ!」
痛みによって悪夢から覚めるとそこはあの魔女の家のようなアルーザさんの家だった。そこには倒れている俺を見下ろす包帯のような物を持ったさっきまで半透明だった少女がいた。
「ええっと……。セイムさんだったっけ?」
「はい……。……あなたは確かナインさん……でしたよね?」
「あぁ、はい。ナインです。……それでその既に使い終わったみたいな色をした包帯は?」
「治療に使います」
セイムは緊張している所為か強張った顔でそう言うと包帯を握りしめながら近づいてくる。
その包帯は赤黒く染まっていて既に使い終わったかのように見える……が患者の味覚を破壊し尽くし、不快感の極致を味合わせるような薬なんてものがあるのだ。もうどんな見た目だろうが効果だろうがアレに比べればマシな気がしてきている。
そんな事を考えていると目の前の少女が包帯を振りかぶり鞭のように振り回し始める。
「え?」
俺が困惑し、硬直していると音の壁を超えた音ともに包帯が俺に向かって飛んでくる。
思考が追いつかず間抜け顔をさらしている間に瞬く間に包帯は俺に迫り、直後凄まじい痛みがやって来た。
包帯はウネウネと体の上で蠢き体を締め付ける。傷口に遠慮なく入り込み体全体を覆っていく。そして十を数える頃にはもう身動きができないほどきつく縛られた男がそこにはいた。
可愛くもない男の束縛プレイとか誰得だよ! しかもクソ痛い! 口も閉じられてるから声も出せねぇ! このまま誘拐でもされるのかってぐらいに何もできない。
「む゙ー!」
「すみません……何を言っているのか分からないです……」
「も゙ベぇばびびが!」
そりゃ分かるわけ無いでしょうねぇ! だって口まで包帯で雁字搦めにされてるからねぇ!
それでもなんとか芋虫のように体を動かしボディランゲージと辛うじて出せるうめき声で口の包帯を解いてくれと伝える。それを伝えるのに手一杯で体の拘束は解いてもらえずミノムシの様に地面に転がされているが……大体十分ぐらいかかった気がする。おかしい……治療のはずなのに受ける前より体がボロボロになってる気がする。というか。
「何で口まで塞いじまったんだよ! ってかこれは何だ!? くっそ痛いんだが!?」
「呪いを全部封じるために体全体を覆うように設計されてますから……」
「それなら、まぁ、しょうがないか。え? て言う事はあの鞭みたいに振り回すのも使い方としてあってるの?」
「はいあってますよ……。元々が呪いを使った犯罪者を捕らえるためのものですからね……」
「犯罪者捕まえるための物で俺は治療されるのか……」
本当に大丈夫か? そう思っているとセイムか俺の不安な表情を見て安心させようとしたのか喋りだした。
「大丈夫ですよ……。この国はちゃんと犯罪者の命は生かして捕らえる方針の様なのでどんな有様だろうと死ぬ事は出来ないはずです……。まぁ、呪いが強すぎて普通の人にも使えたら犯罪道具として優秀すぎるので法を破った相手にしか使えないように工夫されてますけどね……」
さっき、のたうち回っていた時に分かった。呪いの影響は止まってると思う。のたうち回れたってことは師匠のよく分からん呪いを止めた方法も解除されてる筈だ。
それでも痛みはあるが新たに傷口が増えるようなことも無かったと思うし、右手は柔軟性を取り戻している。
そして左手は何か滲み出てる気がしないわけでもないが包帯で覆われているおかげでこれ以上俺の体積が減るような事は無いと思うし足は痛いまんまだけど……多分これ以上腐るのは止まってる筈。プラシーボ効果でないことを祈るばかりだな。いやそれがあるだけマシなのか?
それにしてもそんな制限を設けられるのなら犯罪に使えないようにすればいいのに。そんな事はできないのか?
「へぇ〜。ん? 法を破った相手にしか使えないようになってるって言った?」
「えぇ言いましたよ……」
「じゃあ何で俺に使えてるの?」
「それはナインさんが犯罪者だからに決まってるじゃあないですか……」
「マジで? 俺犯罪者だったの? ……何の罪とか聞いて良い?」
「はい……、まぁ色々と罪状はありますが、主なのは呪術的道具の窃盗とかですね……。呪術的道具って結構用意がめんどくさかったり、歴史のあるものが呪術的に意味を持つこともあるので結構重く刑が設定されてるんですよね……。多分武器塚を丸々盗んだのでギロチンで素直に死ねたらラッキーぐらいの罪じゃあないでしょうか……」
俺知らんうちに結構な重犯罪に手を染めてたのかよ……。聞いてた話と違うぞ! ……というかそんな重犯罪やらせるなんて聞いていなかったんだが。
いや、まぁでも師匠に連れてこられたから仕方なくやっただけで故意にやったわけではないから情状酌量の余地ぐらいはあるんじゃあ無いか? 少なくともゲームがまともにやれなくなるのは回避したい。ただでさえステータスが無くなっているのだから。
弁明して擁護の証言くらいもらえないかなと思って口を開いた。
「指示は師匠からだし、故意にやったわけではなく」
「故意じゃなくても街を消したことは事実ですよね……?」
「……まぁ、……そう、だな。うん俺犯罪者だわ」
弁明は瞬く間に潰された。しかも自分でも認めてしまった。クソっ、事実しか言ってないから何にも否定できねぇ!
俺このままだと指名手配から打ち首獄門されまくるんじゃあねぇのか? プレイヤーだから蘇るし。
そんな暗い未来を考えて俯いているとセイムがまた話し始めた。
「その包帯の名前対犯罪者封印布らしいですよ……。街の区画の一つ丸々消した犯罪者としての自覚を持って生活してくださいね……。まぁ、通報は師匠に止められているのでしませんけど……」
俺はその言葉を聞いてミノムシの様な体勢で勢い良く顔を振り上げた。
「ひっ……」
その様子を見たセイムさんが何故か怯えていたがまぁいい。これで指名手配からの打ち首獄門でまともにゲームがプレイ出来なくなることは無くなるはずだ。
そんな事を思っているとセイムさんがおずおずと話し出した。
「急に顔が明るくなってキラキラとした目で見るのやめてもらっていいですか……?」
「理不尽!」
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弟子がそんな事を話しているうちに師匠は小屋の奥の薄暗い研究用の道具が立ち並ぶ部屋で会話を重ねていた。最も一人はその空間で何かを作業しながらではあるが……。
作業が一段落ついたのか、フラスコを加熱していたアルーザが話を切り出した。
「それで、アレはどうするつもりなんだ?」
「取り敢えずはまともに動けるようになってもらわんと困るのう。まぁ、呪い兵として使えれば十分なのじゃが……。流石の儂も動けない身体で置いておくような非道ではないわい。それに攻撃してこない相手を殴る様な馬鹿がいるとは思っておらんからの。ある程度は動いてもらわんとな」
「……まぁ、医者として動けるようにするのは保証するが、あの王には呪い兵なんてものは効かないぞ」
「そんな事はとっくのとうに分かっておるわい。連合軍が起死回生の策として呪い兵を出してきたのに、装備だけ残されて中身が消え去ったのは今も脳裏に焼き付いておるわい。なぁに、安心せい。王相手に使おうなどとは思っとらんよ」
「それならいい。私としても精霊と人との融合体が王に消し飛ばされて死体すら残らないのは惜しいからな」
当然というような表情でそんな事を言った新しく器具を取り出しフラスコに取り付け始めた女を見ておどける様に老人は疑問を投げかけた。
「お前さんの中で儂はどうなっとるんじゃ?」
「貴重な資料だ。それにあのおばあさんとやらも計画が終わった後には姿をくらましてしまいそうだからな。なんなら死んでいてもおかしくはない……が、あいつならなんとかなってしまいそうだな」
半ば笑いながらフラスコに薬剤を加えた女が言った言葉を聞いて老人は肩をすくめながらおばあさんが何をしてきたのかを語りだす。
「まぁ、あやつはどうあっても死ぬ姿が想像できんからの。なんせ【光の竜】から託され『水の精霊』の一員となり『火の精霊』を所持して『風の精霊』となった女じゃからのう。あそこまでの協力を得たのは当時【竜殺しの英雄】に何処も追い詰められていたとは言え正直驚きじゃわい」
「それには私も同意だ。全くどんな方法を使ったのか……。私の時にはどんなに譲歩しても何もくれなかったというのに」
蒸留によって分離された液体を取り出し試験管の中に保管し始めた女に老人が呆れたように言葉を返した。
「それはお前さんの要求が物騒すぎるからじゃろ。お前の肉を寄越せなぞ、今どき子供のお伽噺でも聞かんわい」
「私は事実を述べたまでだ。死ぬようなことはありはしないとちゃんと説明したはずなのだがな」
「儂の耳には先ず腹を裂き、内臓一つ一つを少しずつ切り取り、その後には機械を埋め込みその後に内臓が動かなくなるかもしれない薬を飲んでもらうといった恐怖を煽るような説明の仕方に聞こえたがのう」
老人がそう言うと道具を片付け始めた女は不服そうな顔を浮かべた。
「それは心外だ。私は事実を述べただけだ。むしろ私ほど丁寧に説明してる医者はそうそういない」
「事実だけを言えば良いというわけではないということを少しは学んだらどうじゃ? エルドレアも事実しか言わないということは無かったろうに。一体奴から何を学んだのじゃ?」
「医学だ。私は師匠と同じように話していたつもりだったのだがな。一体何処が違うというんだ?」
「それが分からないからエルドレアの奴にそこさえ分かれば私と並ぶと言われる様になるんじゃよ」
それを老人に言われた女は気まずそうな顔を浮かべ、沈黙した後に口を開いた。
「……話を戻そうか」
「……逃げたな。まぁよい。それで、お前さんはどうするつもりじゃ?」
「最低限の研究材料はもらって私も王都との接続は切るつもりだ。……計画の成功度合いによっては接続をまたつなぎ直すかもしれないがな。お前のほうこそどうするつもりなんだ? ……まさかあの王に勝つつもりか?」
老人がにやりと笑いながら言った。
「当然、借りはきちんと返すつもりじゃよ」
Tips:呪いの武器について
通常、強い呪いが込められた物は意思を持ち自分が気に入った人間を自らの下に呼び寄せ使い手にさせたり、自分で勝手に赴くがままに動くのが常である。
だが、王国の王都にある武器塚はその兆しが全くもって見られない。武器塚から他の場所に持っていくと通常通りに動くのだが、武器塚に無かった強い呪いが込められた物を武器塚に置いても動くのだ。つまり王都に元々武器塚が出来た当初から武器塚にある物を持ち込むと動かなくなるのだ。
だがそれ以外でも王都に持ち込むと動かなくなる呪いの武具などもある為他にも条件があると考えられている。
では何故動かないのか?それは武器塚の武具達に聞いてもなお未だに分かっていない。何故かそのことになると途端に何かに怯えて口を噤んでしまうのだ。
何に怯えてしまっているのか、王都にはまだまだ謎がありそうだ。