VRゲームやってみたいですか?やってみたいですよね?そう、やってみたくなるんですよ   作:かるー7

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 あの石人形と呪いを使った戦闘のあと、何度も戦ったせいで流石に精神がキツくなってきたから師匠に休むと伝えてログアウトして寝てリフレッシュしてきたぜ! 

 

 ……まぁ、リフレッシュしたあとにすることが地味な練習なんだけどね。

 又やるのか。あの石人形との戦闘を繰り返す時間が始まるのか……。

 あれって終わるまで外に出れないから時間感覚が本当になくなるんだよな。

 

 でもあの時と比べて今の俺には呪いがあるからな! 土足なんていう地味なものに比べたらまだ楽しみがいがある。

 それでもボコボコにされるのは嫌なんだよな。

 それに新たに呪いを発動させて止めることが出来ても、無意識のうちに発動している『溶化の呪い』をまだ止めることが出来てないからな。それを何とかしなきゃ、俺の命にタイムリミットが追加されてしまう。

 一定時間経ったら、水になって死ぬとか……、どんな呪いだよ。

 

 ……これ呪いだったわ。

 

 取り敢えず、師匠でも呼ぶか。

 暗闇に既に慣れている目で周りを見渡しても人影は思った通り見当たらない。

 それでも俺には師匠はいるという確信があった。

 

「師匠、早く出てきてくださいよ」

「そんな事を言われんでも既におるわい」

 

 思った通り誰もいなかったはずの空間に師匠は立って居て、返事をしてきた。

 

「それで、今日は何をするんですか?」

「前も言った通りある程度は戦えるようになってもらわんとな」

「今のままでも十分じゃないですか? ……ほら、強くなりすぎて血が出なくて呪いが感染しなくなっちゃうとかあるかもしれませんし」

 

 決して石人形と戦うのが嫌という訳ではない。本当に嫌というわけではないんだけど、強くなりすぎてしまうのもよくないというか……ね? 

 

「そんな心配よりも、何もできずに死んでしまう方を心配した方が良いのう」

「ということは……」

「勿論今日もあれと戦ってもらう。後1週間と少ししかないからのう、無駄にできる時間はお前さんには残されておらんからな」

 

 そう言うといつの間にかそこにいた石人形は戦闘を始める準備を終わらせ、俺に向かって飛びかかってきていた。

 

「ですよね〜!」

 

 やってやらぁ! 次こそお前の体を粉砕してやるぜ! 

 ……その前にまずは回避しないと! 俺が粉砕される……! 

 

 横に飛び込んで石人形のタックルを回避する。そのままの勢いで転がり、立ち上がって走り出す。

 

 このまま逃げても俺は生物、あいつは無機物、疲労でいつかは死。まともにやり合ったら普通に俺が死ぬ。でも殴らなきゃ相手は死なない。

 

 つまり、ヒットアンドアウェイで削るしかない。俺の体力がなくなる前に奴を粉砕する! 

 

 ていうか本当に俺は毎回曲芸しないとダメージが相手に入らないのに、相手は殴っても、突っ込んでも蹴ってもなんなら適当に転げ回っているだけでその硬度と重量で俺を殺せるっていうのは理不尽すぎないか? 

 

 振り返り、相手を待ち構える。その間に土足を出せるように構えを作る。

『硬くなれ』! と念じる。腕が宝石のように硬質化していく。

 

 そうしている間に奴が拳を振り被りながら来る。後はこれを回避しながら土足をぶち込むだけ! 

 

 相手の攻撃を『見ろ』! 達人的な感じで見切るんだ! 

 

 その瞬間、不思議なことが起こった。

 

 世界がモノクロになり早回しになる。奴の拳が俺の体を撃ち抜き臓物をぶち撒ける。

 死んだ。と思った瞬間、世界が戻る。いつも通りの時間の流れに、目の前にはまだ拳を振りかぶっている奴がいた。

 

 今のは何だ!? 俺確かに死んだよな!? 

 

 って考えてる場合じゃねぇ! 急いで構えをそのままに相手の行動を『見ながら』後ろに飛ぶ。

 

 瞬間世界が又、往年の映画のように白黒になり早回しになる。後ろに飛んでいる俺が下から生えてきた小石に躓いて転ぶ。

 まずい! と思った瞬間、世界が元に戻る。先ほどよりゆっくりな世界の動きに混乱しながら小石に躓くこともなく、小石が生えてくることもなく無事に着地する。

 

 先程の現象に頭を悩ませる暇もなく向かってくる奴に合わせて取り敢えずダメージを与えるためにタイミングを『見て』踏み込む。

 

 すると世界がもう一度白黒になり、俺も奴も重力がおかしくなったような動きをし始める。天井が崩れ落ち瓦礫が降り注ぐ。岩の下敷きになり目の前が真っ暗になる。

 そして白と黒よりは色彩に富んでいる世界に戻った。

 

 見て、体験している途中は鮮明なのに戻った瞬間、夢を夢だと認識した時のように感覚がぼやけた。あるいは遠い昔に体験したように不鮮明になってしまった。

 

 今のは何だ? 何が起きた? 

 

 わけもわからないまま慌てて後ろに飛び、そのまま奴から逃げる。

 

 体力がどうとか言ってる場合じゃねえ! 今はこれが何なのかが分からないと攻撃もできねぇ! 

 分かるのは今までの感覚的に今のは呪いだってことと、見ることを意識すると呪いが発動するようになっているってことだ。

 

 考えられるのは何だ? 俺は何を見ている? 

 未来視? いやそんなものが武器塚に無造作に捨てられるのか? 

 可能性の世界とか? パラレルワールド的な感じか? それとも見た光景が起きなくなるとか? 

 幾つもの可能性が頭をよぎる。そして最終的に残った答えは……。

 

 いやただの幻覚だコレ! 

 

 俺が見てるのは未来でも何でもねえ! 失敗した先の最悪の光景だ! 失敗する要素がなくても失敗する原因を勝手に作り失敗した時の最悪の光景を見せて体験させてくるんだ! 

 

 ……呪いの装備すぎるだろ! 

 

 だが、それでも殴らなきゃこの地獄は終わらねぇ! 

 

 幸いと言ってもいいのか分からないが石人形なら目の前に来ている。

 

 見ることを意識するとこれが発動するのなら、それを意識しなければいい! 

 石人形が走ってきた勢いをそのままにタックルを仕掛けてくる。

 

 俺はそれを『見て』避けようとする。視界が白黒に染まり、タックルを避けるのに失敗する。重く、硬いその体によって地面とサンドイッチになった俺は血と臓物をぶち撒けながら物言わぬ骸となった。

 

 そりゃそうだよな! 意識しなければいいって言って意識しないってことができれば苦労しないよな! 

 

 取り敢えず元に戻った世界でタックルをサイドステップで避ける。

 

 タックルが外れたことで体勢を崩した石人形の横っ腹にダメージを与えるために相手の動きを『見て』、左拳を『硬く』握り土足を入れようとする。

 

 また白黒の視界になり、短く圧縮された体験が流れる。

 足元に転がる小石によって踏み込みが少しジャリという音を立てながら滑る。そこから生まれた歪みが全身を伝わりながら大きくなり、拳にたどり着く頃には致命的なズレを生んだ。曖昧な感覚の中でもこれでは土足は成功しないとはっきりと分かる。

 だが、夢の中のように思ったとおりに体は動かず、振りかぶった拳を止めることもできないまま振り抜いてしまう。

 勢いだけはついた拳が石で作られた硬い腹に当たってそのままグシャリと潰れる。

 世界が少し巻き戻り、幻覚から目が覚める。

 

 足を踏み込んで、拳を振り抜こうとするが先程の光景がフラッシュバックする。

 

 大丈夫だ。踏み込みも上手くいっている。会心の出来という程ではないがこのまま行けば成功はするだろう。

 

 でも、もし土足が失敗したら──

 

 そんな疑念が頭をよぎり、少し、ほんの少しだけ拳を振る速度が鈍る。その間に僅かに石人形が動いて、拳が当たる瞬間がほんの少しズレる。

 

 あれ? 当たらない? 

 

 そう思った瞬間、拳に凄まじい衝撃が走る。思いっきり硬い壁に手をぶつけたような衝撃だ。

 そう、壁を相手に土足の練習をしていた時に土足に失敗した時はこんな感じだった気がする。

 一体何が起きたのか分からず一瞬固まる。頭の中で類似する体験が薄っすらと浮かび上がり、目の前に石人形がいることを思い出して急いで後ろに下がる。

 

 石人形を呆然としながら見て、その後手元を見る。そこにはヒビが入り、割れ目から包帯が覗き、輝く粉をポロポロと溢している右手があった。

 

 しばらく、手を眺めてこれからどうするかを考える。

 

「……ふぅ、どうしよ」

 

 いや、マジで本当にどうしよう。

 

 俺、殆ど右でしか土足を使えないんだよねぇ! しかもずっと『硬く』握りしめて石にしてないとすっごく痛そうなんだよな! これ元に戻ったら拳が幾つかに分裂する時の痛みを味わうってことだろ!? 

 

 目の前にいる石人形はさっきの衝撃で転び、まだ立ち上がれないでいるが、もう少しすればこちらに殴りかかってくるだろう。

 仕方ない。前に考えた通り右手を鈍器代わりにするか、まだ成功率の低い左手で土足をするしかない。

 

 というかそれ以外の起死回生の策を考えられる時間も頭もない! 

 

 構えを作り、左手を引いて石人形を待ち構える。

 既に立ち上がっていた石人形は俺に向かって走ってくる。

 

 ここで、決める! 良く見ないで、何となくで決める! 

 

 いつもと反対の足で踏み込んで拳を向かって来ている石人形に向かってを突き出す。

 

 拳が石人形に衝突し、そのまま勢いでぐしゃりと潰れる。中途半端に土足が成功したのだろう。肩には何の力もかからず腕がそのまま縮んで石人形の体が近づいてくる。

 

 コレは駄目だ。俺でも分かる。というか、タックルをまともに受けたら死ぬって何回も食らって分かってるはずなのに、避けられなかった。

 テンパり過ぎちまったぁ! 

 

 俺の体が地面と石人形のサンドイッチになってその重量によって潰れる。

 

 

 冷たい床の感触が全身に伝わる。それが、呼び水となって意識を一気に上へと持ち上げる。

 

「はっ! ……また、負けた。クッソ、どうやったら勝てるんだ?」

 

 今回は呪いとか、特別な力も貰ったから行けると思ったんだけどな。コレでも無理かよ。

 どうやったら勝てるんだ? ……考えても土足をもう少し練習して成功率を高めるとか、どんな体勢でも出せるようにするとかしないと無理な気がする。

 

 また、地味な練習が始まんのか……。というか、呪いも扱いきれてないし、そっちの練習もしないと……。手札があっても使いこなせなきゃ意味ないしな。

 

 というか、どんな呪いがあるのかすら分からないのはどうにかならないのか? ……ならなさそうだな。武器塚にある呪いの武器たちは聞いただけでもそれぞれ来歴がかなり異なりそうだった。それをあの数調べて、呪いの効果を調べるというのは現実的ではない。

 

 ならば、ありそうな呪いを考えて、それが発動しそうな道筋を考えて発動させてどんな呪いなのかを考察して、それが使えそうかどうかを判断して……。

 

 ……やること多すぎないか? 何かいいものがあるかもしれないし、後で考えよう。

 

「反省はもう済んだかの? そろそろ行くぞい」

「行くって、どこにです?」

「そりゃ、もちろんお前さん以外の協力者のところじゃよ。これから共に戦うというのに、何も知らんのはお互いにとっても良くないじゃろ?」

「そうですね! 何も知らないっていうのは良くないですしね!」

 

 よし! これであの地獄みたいな訓練は逃れられる! また、何度も殺されるのは勘弁だからな! 

 

 他の奴の事を知れば、俺が頑張らなくても良くなるかもしれない。

 

 そう言うと師匠は、洞窟を出ていったので俺もついていく。

 毎回のこの眩しさも、もう慣れたものだ。外に出ると、師匠は迷いなく裏路地を歩いていく。

 

「師匠、4人俺みたいな奴がいるって話でしたけど、どんな感じなんです?」

「うぅむ、まずは役割というか、やっていることから話しておいたほうがいいかもしれんの」

「まぁ、そうですね。せめて扱う武器とかやれることが分かれば何とか連携とか考えられるかもしれませんし、後方で支援してもらうなんてこともあるかもしれませんし」

 

 単純な剣士とかそれ以外にも魔法使いとか、そういうのもあるかもしれないしそういうのを知っておく事は大事だよな。

 師匠はそのまま話し始める。

 

「まずはアルーザのところのあの娘。セイムじゃな。出来る事は錬金とか、製薬じゃのう」

 

 この人は知ってるな。昨日お世話になったし。見た感じ戦うのは無理そうだったけど、ステータスがあってあの縄みたいな道具をたくさん作れるんだったら十分戦力になる。

 

「次は、お前さんはまだ会ったことない奴らじゃのう。一人目はグレイブのところの弟子、弐色(ニシキ)じゃな。大雑把に言えばやってることは鍛冶じゃのう」

 

 鍛冶をやっているのか。俺以外は武器は結構必要だと思うし、鍛冶をやっているなら筋力高いと思うし、ギリ戦闘できるんじゃあないか? 

 

「二人目はネーディのところの弟子で、コロネと言う奴じゃな。この前会ったときはひたすら陶芸をやっておったわい。何でも、私が作りたいのはこんなのじゃないとか言って作っては壊すを繰り返していたぞ」

 

 陶、芸? ……いや、まぁ、……それは個人の趣味で実際は普通に強い可能性あるし、芸術家みたいな奴だからって戦闘が出来ない保証は無い。そう、きっと戦える人なんだよ。

 

「ちなみに、ここに来てから粘土と泥しか弄っておらんようじゃったな」

 

 …………。いや、あれだから。リアルで、現実で強い可能性あるから。うん、きっとそう。

 

「最後はキッシュのところの弟子、三太郎(さんたろう)じゃな。こっちに来てからはずっと土を弄って作物の世話をしておるな。養蜂もやってみたいと言っておったぞ。農家になりたいと言っておったな」

 

 作物の世話……。農家……。

 

「ちょっと待ってください……鍛冶職人? 陶芸家? 農家!? それで本当に勝てるんですか!? 戦闘が出来るとは思えない職業なんですけど!? 敵はかなり多いんですよ!?」 

 

 本当にいけんのか? 勝てるのか? この編成で? 

 セイムさんはヒーラーとかはできると思うけど、直接的に敵を倒せるとは思えないし、芸術家もそう。農家なんて戦場にだしちゃいけない職業第一位だろ。鍛冶職人……はこの中なら何とか戦えそうな雰囲気あるけど、何とかなるのか? 

 

 

 




Tips:壁
何時からあるのか、誰がどのようにして作ったのか、何のために作ったのかも分からない巨大な壁。
だが、この壁には魔性は近づかなかった。だからこそ人類は生き残る事ができた。
そのため、信仰の対象にもなっている。聖教の次に大きな宗教はこの壁を都市の守り神として崇める都市神信仰である。
聖教の信者と都市神信仰の信者の数を比べると都市神信仰の方が多いが都市ごとに崇める神が違うので聖教が最大の宗教になっている。
また、聖教を信仰しているからといって都市神を信仰していないわけではない。聖教は不死に対する対抗手段であるが、都市神は魔性に対する対抗手段として信仰されている。
一番目図書館所蔵:文明史・九番目 より引用

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