VRゲームやってみたいですか?やってみたいですよね?そう、やってみたくなるんですよ   作:かるー7

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 俺は今、虎の尾ならぬ、ウサギの尾を踏んでしまって居た。

 

 キュイキュイと鳴くウサギ。

 

 これが何の変哲のないただのウサギだったらどんなに良かったことか。

 

 このウサギがどんなに凶暴で強いのかなんてのはもうとっくのとうに味わってしまっている。

 

 というか速すぎなんだよ。俺全力で走って、追いつかれて挙句の果てに突進で突き飛ばされて思いっきり転んだし。

 

 しかもその後、用は無いと言わんばかりに去っていったし。

 

 正直、初期モンスターだからと言って勝てる相手ではない。

 

 だが、やるしか無い。それに少し打算もある。勝てる打算ではないがこうなっている現状を変えられる打算だ。

 

 その打算とはこのウサギに殺される事だ。簡単なことよ。街に入れない? なら死んでリスポーンすればいいではないか。

 

 ということでこのままウサギになす術なくボコられて死ぬだけで目標は達成できるのだ。

 

 まぁ、それと俺の気持ちは別なので限界までウサギに抗ってから死ぬつもりだ。

 

 始めて街の外に出てやったことがウサギにボコられた。だけじゃかっこ悪すぎる! 

 

 というわけで長々とまるで走馬灯のように駆け巡っていった思考たちを纏めてそこら辺に捨て去り動き出す。

 

 相手は小さい動物だ。拳なんて使おうものなら顔面に蹴りを食らってしまうだろう。だから使うべきは足。

 

 俺は踏んでしまった尻尾を思いっきり踏みしめて逆の足でウサギを蹴る。ウサギはかなり勢い良く吹っ飛んだ。

 

 が、手応えは無い。恐らく俺から逃げるために後ろに跳んだのと同時に俺の蹴りが入った為丁度良く衝撃を無くせたのだろう。

 

 俺は走って距離を詰める。そのまま蹴りをウサギに入れようとするが逃げられてしまう。

 

 だが、ここは林だ。木が沢山生えているせいでさぞ動きにくかろう。ましてやその速度だ。平原なら速度を生かして逃げ、そのまま背後から襲うなり何なり出来ただろうが、ここでは木にぶつかってしまうからなあ。

 

 今度は俺が追う番だぁ! てめえの同族から味わった苦痛たっぷりと返してやるからなぁ! 

 

 そう思って俺は白いウサギを追いかけるが追って数十歩もしないうちに見失ってしまった。

 

 くそ! 見逃したか、まぁいいリスポーン出来なかったのは痛手だがウサギなどいくらでも居るのだ。

 

 さて次のウサギを探そうかな。と思った瞬間目の端に素早く動く白い何かが映る。

 

「痛ってぇ!」

 

 俺の背中に痛みが走る。慌てて背中を振り返るとそこには先程のウサギが居た。

 

 なるほど、逃げたわけじゃなくて隠れてもう一度攻撃を仕掛けに来たのか。ウサギってこんなに好戦的だったっけ? 

 

 そんな事を考えて居る暇はない。

 

 もう一度ウサギの突進が来る。ウサギが跳び上がり俺……ではなく木に向かって突進する。なんだ? 急におかしくなったのか? ともったのも束の間、ウサギは木を蹴ることで方向転換をして俺の方に向かってきた。

 

 思いっきりしゃがんでその攻撃を避けると、ウサギが、避けられるとは思っていなかったのか俺の後ろにある木にぶつかって居る。

 

 おいおいマジかよ。木を蹴って移動とかアニメ、ゲームの世界じゃ……この世界ゲームだったわ。

 

 俺は少しでも体力を削るためにウサギに向かって立ち上がり走り出した。そのままの勢いで蹴りを叩き込む。

 

 おっしゃぁ! やっとまともに一撃入った! 草原で戦った時には速すぎて何もダメージを当てられないままボコボコにされたからな。

 

 逃げられないように蹴りを入れた事で怯んだウサギを持ち上げダメージを与える為に木に叩きつける。

 

 しばらくして冷静になってくる。

 

 何か……ものすごく悪いことをしている気分になってくるな。手でやっているのがまた、何とも言い難い罪悪感を煽ってくる。

 

 これが剣とか魔法! みたいなTHEファンタジーって感じの奴なら興奮が罪悪感を上回ると思うんだけど、そうじゃなくてもせめて拳で殴ったりとかならまだマシなんだけれども。

 

 掴んで木に叩きつけるは……ね? 動物保護団体にブチギレられるというか現実でも有りそう感が何か駄目な感じを醸し出してるんだよな。

 

 

 

 〘経験値を入手しました〙

 

 

 

 そうして罪悪感に苛まれているうちにウサギはこと切れてしまったようで、ぐったりとしている。

 

 勝った……。けど罪悪感が凄い……。しかも最初の時みたいに生き物感が無いやつじゃなくてしっかりとした動物だったからな。後味が悪すぎる。

 

 

 

 というか。死体残ってんじゃねえか! 周りの奴らを見てるとウサギを倒したらポンッて音を立てて煙になって死体を残さず死んでたんだけど! 

 

 え? もしかしてまだ死んでないの? こんなにボロボロになっているウサギをこれ以上殴るのは流石に良心が咎めるというか、精神衛生上良くないというか……。

 

 これバグかなんかなのか? 取り敢えず設定とか開いてみるか。

 

 俺は右手を上げて下げてステータスを開き、ヘルプとかを探して数分それらしいものをみつけた。そこには血などのエフェクト規制についてと書いてあった。

 

 ほーん、なるほどねぇ。エフェクト規制を完全に無くすと死体が残ったり、切った時に出るのがポリゴンじゃなくて血になるんだ。

 

 初期設定ではエフェクト規制はかなり高めに設されているのでそう言うスリリングな体験をしたい方にのみオススメと。

 

 俺エフェクト規制とかいじってないが? というかそんな物を知らなかったんだが? 

 

 不思議に思いながらさらに読み進めていくと、お客様の要望により最初からエフェクト規制がなくなっている場合がございます。と書かれてあった。

 

 思い返してみると『One Thing』を始める時に何か契約書みたいなのがあって同意した気がする……し、それも結構な数同意した気がする……。

 

 ……嫌な事は後で考えよう。今はポンッと消えて素材だけが残らないのが問題なんだ。はぎ取りの仕方とか分からんし、俺はこんなバイオレンスな感じをゲームに求めていない。

 

 どうやってエフェクト規制を無くすんだろう。

 

 えーっと……。エフェクト規制を剥がす特殊な処理を行う為デバイスを一旦弊社に預けて3日ほどしてから郵送で返却します。

 

 ……マジか。3日も経ったら俺が取った有給ほとんど消し飛ぶぞ。

 

 仕方無い。諦めてこのウサギ持って帰るか。……街には帰れないけど。

 

 こうなったらこの林の中に拠点でも作ってそこでログアウトなり何なりできるかどうかはわからないが試してみるとするか。

 

 ログアウト出来なかったらどうしよう……まぁ、そこら辺は、考えられてるよな……多分。取り敢えずこれ持ったまま突っ立ったままでいるわけにもいかないから移動するか。

 

 そうやって動き出した途端、遠くからパイプオルガンのような音が鳴り出す。そして俺の眼前にさっきまで開いていたウィンドウとは違う豪華な装飾がなされたウィンドウが出てきた。

 

 

 

『真理解明

 

 プレイヤーのレベルが5に到達いたしましたのを確認いたしました。よって新たにシステム『意思』を解放いたします。これからはレベル5になり次第順次システム『意思』を解放いたします』

 

 

 

 真理解明? 意思? 何だコレ? まぁ、新しいシステムって書いてあるし、何か新しくなったのかな。

 

 でも何が新しくなったのか全くわからんがすぎる。というかもうレベル5になった人がいるの? 早すぎないか? 俺まだレベル2だよ? チュートリアルのレベルだよ? 

 

 まぁ、レベルが上がる兆しが見えない俺には関係のない話だ。気にしても仕方がない。とにかく移動だな。

 

 

 

 

 

 はい! というわけで戻ってまいりました。最初の街です! 

 

 あの後すぐにウサギが現れて最初にボコボコにされたことによってHPが減っていたのを忘れて、一撃くらいなら大丈夫だろと思って受けたらあっけなく死にました。

 

 うん、やっぱりレベル5とか俺には関係のない話だわ。それにしても街に戻れてよかった。

 

 あのままあの林の中を彷徨っていたらログアウトも出来ずに苦しんでいたに違いない。うん、多分きっとそうなんだ。だから死んだのなんて全然悔しく無いんだからね! 

 

 と脳内でツンデレになってみたが普通に悔しい。というか外で思いっきり暮らす想定で考えてたのに全部無駄になったな。

 

 まぁ、多分いつか役に立つだろ。

 

 とりあえずはあの爺さんがいたところに行くか。いつの間にかあの混雑も収まってるし、簡単にたどり着けられそうだな。

 

 裏路地に入り、大分静かになった街に違和感を覚えながら歩く。しばらくするとあの家屋が見えてきた。

 

 よかった。道の記憶がかなりあやふやだったからかなり不安だったが、無事にたどり着けた。あの地図もステータス封印されてからインベントリ使えなくなったから迷っていたらまた何時間も彷徨うところだった。

 

 扉を開けてもはや慣れした親しんだ冷たい岩肌を踏みしめながら歩く。

 

 相変わらず冷たい空気に暗い空間だな。ほんの少しの間しか離れてないけど。

 

 突き当りまで歩いて辺りを見渡す。誰もいない。どうやら師匠はここには居ないようだ。

 

 まぁ、あの人を見つけられた試しがないからこうやって確認するのも無意味かもしれないけれど。

 

「どうしたんじゃ? 帰ってきおって」

 

 突然、さっき見渡したはずの空間からニュッと師匠が現れ声がかかる。やっぱり確認したの無意味だったな……。

 

 とりあえず師匠に外でのことを伝えないとな。

 

 

 

 




Tips:ステータスの影響
ステータスの数値が変わると与えるダメージ量や扱える武器の種類などの他にプレイヤーの身体能力も変わります。
武器の使用条件を満たしていてもステータスがより高いほうが扱いやすくなるでしょう。
エレクトロウェーブ社
 
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