VRゲームやってみたいですか?やってみたいですよね?そう、やってみたくなるんですよ   作:かるー7

8 / 14
8

 

 

 

 

 もう既に暗くなってしまった街の片隅で俺は呪いの装備についての師匠から説明を受けていた。

 

 

 

「まぁまぁ、そんなに慌てるでない。呪いの装備とは言ってもその効果は千差万別じゃ。もしかしたらお前さんの役に立つ効果がある呪いの装備なんかもあるかもしれないのじゃ」

 

「役に立つ効果……。じゃあ、安心してこの篭手のを使えるってことか!」

 

「呪いの装備ということはこの王国で特に発展している呪いの効果を応用して物質に様々な効果をつける付呪という技術が使われているも同然じゃからな。付呪がされているかどうかでかなり値段が変わるからの」

 

「へぇ、そうなのか……ん?」

 

 

 

 それじゃこの篭手ってかなりの値段が張るのでは? 

 

 というかこの武器塚に捨てられている殆どの武器が呪いの装備──つまりされているかいないかでかなり値段が変わるという付呪がされている装備──なのだからこんなに杜撰に捨ててあっていいのか? 

 

 金になる物がこんなにも沢山、それも無防備に置いてあるのなら盗人の一人や二人それこそこの武器塚がなくなるぐらいには現れたっていいはずだ。

 

 それに師匠はわざわざ"付呪されている"ではなく"呪われている"と言った。役に立つのものもある"かもしれない"とも言った。

 

 ……何か嫌な予感がする。

 

 

 

「師匠……。もう一度聞きます。この武器塚に捨てられている武器は何で捨てられているんですか?」

 

「む? もう気づいてしまったかの? 使うまでは気づかないと思っておったのにお前さん、やるのう」

 

「速く答えてくださいよ! 絶対この武器塚に捨てられてるやつってやばい奴だろ! というかこの篭手の効果はなんですか!」

 

「まぁまぁ、落ち着け。一つずつ答えてやるからの。まず武器塚に捨てられている武器には大体3種類ある。

 

 一つは付呪の効果が使えないもの。これには大体貴族が依頼して出来たとんでもない効果を持ったものや研究の途中で生まれたものなんかも含まれとるの。付呪された武器を潰して再利用しようとしても付呪の性質が残っとるからそれが出来なくて捨てるしか無いからじゃの

 

 二つ目は先の連合軍との戦で使われた武器。これは連合軍側の未熟な付呪技術が引き起こしたものじゃ。付呪は出来とるには出来とるにはその製法故か使うには厄介な性質を持ったものばかりだったからの。

 

 3つ目は犯罪で使われたものじゃな。これは単純に付呪の効果が分からないものや。その効果が余りにも危険すぎるものなんかが含まれとるの。振るうだけでその者の精神を蝕むものなんかがよく使われておったの。まぁ、ある日を境に消えたんじゃがな」

 

「……全部ヤベぇじゃねぇか!」

 

 

 

 なんだよ! 振るうだけでその者の精神を蝕むとか、研究の途中で捨てられたやつとか、未熟な技術で作られた奴とか明らかに全部ダメなやつじゃねぇか! 

 

 というか俺は早くこの篭手を外したほうがいいのでは? 

 

 一度不安になったら一気にそんな気になった。俺は右の篭手を掴み外そうとする。……ガッチリと張り付いていて外せない。

 

 

 

「師匠! 何かこの篭手外せないんですけど!」

 

「そりゃそうじゃろ。そこに刻まれとる文様全部吸着とか吸収とか、同化を表してる文様じゃぞ」

 

「マジで呪いの装備じゃないですか!」

 

「だから、言ったじゃろうが。呪われとるって」

 

「言うの遅すぎだろ! 行く前は鹵獲品が何とかみたいなことしか言ってなかったじゃないか!」

 

「そりゃ、お前さん呪いの装備を探しに行くぞなんて言ったら絶対反対するじゃろ」

 

「反対するに決まってるでしょうが!」

 

「じゃあ、儂が鹵獲品と言って誤魔化したのは正解じゃったな」

 

「師匠への尊敬とかそういうの今のでかなりなくなりましたよ! 弟子騙して呪いの装備を装備させてんじゃねぇ!」

 

「そうか? 師匠っていうのは大体弟子ボコボコにして、騙すもんじゃろ。儂も若い頃はただのピクニックとか言われて吸血鬼殴りに行ったからの」

 

 

 

 駄目だ。この爺さんの師匠も終わってやがる。

 

 多分ここで俺がどんなに騒いでも師匠が反省をすることはないだろう。……ここは引き下がって他の事でも聞いたほうがいいな。

 

 ……何か一度篭手のことを呪われてるって意識したら、妙に温かい気もしなくもない気がする。いや、そんな事はない……はず。早く話を聞いてログアウトしよ……。

 

 

 

「はぁ……。それで、付呪されてるけど効果が危険で迂闊に触ると精神を蝕まれるから人が寄り付かないのはわかりました。それで二つ目の理由っていうのは何なんですか?」

 

 

 

 単純に刑罰が重いとかなのかな。付呪がこの国の強みというのなら、それを盗むということはかなりこの国にとって良くないことなんじゃないか? 最悪付呪の製法が盗まれた付呪によって明らかになり、この国の優位な点が無くなるかもしれない。

 

 ……考えれば考える程俺ってかなりヤバいことしたな。この推測が正しければ大犯罪者の上に、呪いで死んでたって……。

 

 頼むからこの推測は外れててくれ。

 

 

 

「二つ目の理由はこの国の今代の王のお陰じゃの」

 

「王のお陰……ですか? ……それは付呪に関する法整備を滅茶苦茶したとか、衛兵とかの配備を厚くしたとかですか?」

 

「いや、あの王はそんな回りくどい事はしてないのう。特に罰則何かも作っておらんし、そもそもあの王は例外を除き殆ど法律に関わっておらん。じゃが、ここの武器塚に限ったことではなく、あの男が玉座についてからこの王都では犯罪は消えたと言ってもいいほどに減少したのじゃ」 

 

 

 

 確かに1つ目の理由のところである日を境に消えたとか言っていたな。でもどうやって法律でも衛兵などの警察みたいなものの増強もせずに犯罪を止めたんだ? 

 

 

 

「それは……どうやって?」

 

「あの王は単純に、犯罪者の下に行っておった」

 

「は? ……王自身がですか? ……いやいやありえないでしょ! 一番守られなきゃいけない人が何で危険な所に行ってるんですか!? というかこれは大丈夫何ですか!? 王様きちゃいません!?」

 

「最初の頃は皆その反応じゃったな。まぁ、安心せい。この武器塚から武器を貰っていくのは……まぁ法的には少しアウトじゃが、バレないようにちゃんと工夫しとるからの」

 

「少しアウトって何だよ! 法的に少しアウトだったら全部アウトだよ! バレないようにつっても限度があるだろ! 俺ここで結構な時間武器と戯れてましたけど!?」

 

「そこら辺も含めて何とかしとるんじゃよ。壁の穴も潰されておらんかったし、あの王に阻止出来るのはこれから起きて知覚出来る犯罪のみじゃからな」

 

「はぁ……。それじゃあ、ここでの事は王にはバレてないんですね。いや、本当に良かった……。それで、何で王様が犯罪者の下に行くようになったんですか?」

 

「そりゃ、犯罪を止めるためじゃろ」

 

「それはわかってる! 俺が聞きたいのはその方法の方だ!」

 

「方法の方か……。とは言っても物凄く単純じゃぞ」

 

「単純……ですか。何か王様が居て犯罪者がビビる……みたいな感じですか?」

 

「お、よくわかったのまさにそんな感じじゃ」

 

「よし! ようやっと当たった! ……いやでも、それで大丈夫なんですか? 王様がそれで倒れたら結構な大事になりますよね?」

 

「いや、それはない。何と言ってもあの王自身がこの王国、いや世界で一番強いんじゃからな。あの男が王になれたのも殆どあの男自身の武力のお陰みたいなもんじゃからな」

 

「は?」

 

 

 

 王になるのに使ったのが個人の武力ってどんな化け物だよ。ていうか世界最強が犯罪してたらでてくるの怖すぎるだろ。そりゃ犯罪が無くなるはずだわ。

 

 更に師匠は言った。

 

 

 

「連合軍との戦いもほぼ全てあの男が解決したからの。軍勢があっという間に消し飛んでいくのは壮観ですらあったわい。まぁ、あれがこっちに向けられるとなると途端にそれが恐怖に変わるんじゃろうけどな」

 

「え? 軍相手に勝ったんですか? それも複数の国を合わせた数を相手に?」

 

「そうじゃが?」

 

 

 

 マジか、軍相手に勝ったのか。せいぜいが格闘世界チャンピオンみたいな感じだと思ってたけど、そのレベルの武力なのか。最早人間核ミサイルみたいな存在だな。

 

 

 

 そうやって師匠と話していると俺の体がブルリと突然震えた。

 

 夜になって寒いからとも思ったが、まだそんな季節ではない。……篭手が張り付いている部分も何か生暖かいし。

 

 そのまま俺の体の震えは止まらず全身に伝播していく。……ただ震えているだけでなく部位ごとに違う感じで操られているといったほうが適切かもしれない。右手はずっと拳を握りしめていて最早痛くなってきているし、足はバタバタと走ろうとしている。それに加え左手は関節を殆ど無視してヘビのような動きで周りにある石を掴んでは離しを繰り返しているのに全く感覚がないし、体全体が重たい。

 

 ……早速呪いの効果でてるくね!? 

 

 

 

「師匠何か体の震えが止まらないんですけど!? どうなってるんですか!? これ!?」

 

「あぁ、多分それが呪いの装備の効果じゃな」

 

「問題ないんじゃないんですか!?」

 

「いや、儂はそんな事は一言も言っとらん。まぁその様子を見る限り複数の呪いを受け取るようじゃな」

 

「俺、この篭手しかつけてませんけど!? 付呪って言うのはそう何個もアガッ!」

 

 

 

 突然顎を思いっきり噛み締め舌は痺れて感覚がなくなり膝は前へと曲がりだしていた。目の前が明るくなっているところを見ると目か額、それか鼻でも光っているのかもしれない。

 

 

 

「いんや、付呪はそう何個も効果を付与できたりはせん。素材や付呪を行う者の腕にもよるし、付呪の内容にもよる。軽い付呪なら何個もつけられるとは思うがそれでも限度はあるのう」

 

「のんきにいってないでたすけてください! というかそれならなんでおれはこんなめにあってるんだ!? こてしかつけてないだろ!?」

 

「だから、その篭手に描かれとる文様は吸着とか吸収、同化の意味があると言うとるじゃろうが」

 

「つまり!? どういうことですか!?」

 

「お前さんが消したと思っとる武器塚の武器はその篭手の中に吸収されて、全部の武器の付呪の効果が発動しているということなんじゃあないかの? まぁ、それでも同時に発動できる付呪の数に限りがあるとは思うがそこら辺はあんまり知らんからの。あくまで素人の意見じゃな」

 

 

 

 そう言うと同時に俺の顎が開いては閉じを繰り返し、喉は不規則に痙攣し背中の筋肉が強張り海老反りになった。その状態のまま足は明後日の方向を目指してバタバタと動かし続け、膝はあらぬ方向に曲がっているし右手はどこまで痛くなっても拳を握りしめ続け左手はヘビのように動きとうとう石を投げ始め、体は鉛のように重くなって舌は最早俺の言うことを聞かず何か呪文のような物を呟き続け顔面の何処からかでてくる光は既に点滅を繰り返して光で何かを伝えようとしている。

 

 

 

「まにゅふぁく! うもすとる! もーたるぅと! かとんされ! きにとう! びゃっつ! ひりよこに!」

 

「あぁ、もう呪いがかなりの数発動しとるの。取り敢えずここに置いとく訳にもいかんから連れて行くかの」

 

 

 

 そう言って師匠は俺の首根っこを掴んで引きずり始めた。

 

 その夜奇声をあげながらジタバタと暴れ光を放つ男が引きずられていたという話があったとかなかったとか。

 

 

 

 

 

 




Tips:冒険者ギルドのクエストについて
一部のクエストを除き殆どのクエストは固有のクエストです。
住民がクエストを出しているので内容には差異があります。クエストの難易度等は住民が決めているため実際の難易度などとは違う場合があるためあくまで目安として見るといいでしょう。
エレクトロウェーブ社
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。