仮面ライダーシノビ外伝 仮面ライダークロシノビ 作:めたるくらすた
勢いがなければ行けません
その勢いのまま戦闘シーンまで読み飛ばしてください
西暦2022年、来るエネルギー問題に向け、日本では自然エネルギーを生み出す忍者が注目された。
それに伴い日本政府は『忍者法』を制定、日本社会は忍者一色となった。
しかし
その裏で暗躍する謎の影があった。
それこそが
『闇の忍者軍団 虹蛇』
である。
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出歩く人影も見当たらぬ闇夜の中、月光と街灯に照らされた黒い影が1つ。
その瞳は紫色に輝き、その光を手にした刀が反射している。
その光が当たる先は───────
「悪かったって…!ちょっとした出来心だったんだよ!許してくれ!」
地面に膝をつき、冷や汗をかきながら宣う男。
黒い影はその言葉に動じることなく、ただ光る眼を男に向けている。
「命だけは…な?頼むよぉ…!!」
男の言葉は命乞いに変わり、汗の量も増えていく。
あいも変わらず影は不動、否
「……はァ〜〜〜ッ…」
心底面倒くさそうに、溜息を吐く。
「なっ…何だよ…?」
「さっきから言い分を聞いてはいたが…聞く価値もない話だと思ってな。」
「ちょっ…!?待てって!本当に悪気は無かったんだよ!ただ俺は…」
「言い訳は聞き飽きた。やらかしたヤツは命を落とす、それが今の忍者社会だ。それにはしっかり則って貰うぞ。」
その手を振り上げ…
悲鳴すら上がることなく、男がいたであろう場所にはその痕跡1つ残っていない。
影は振り返り、やがて走り出す。
光のない暗闇の中、紫の眼光のみが残像として残る。
その影を捕捉できるものは誰一人として居ない。
ひる
「…ねむ」
闇の忍者軍団 虹蛇の朝は早い。
夜も遅いくせに。
欠伸をするのは、長い髪を後ろに結んだ男。
名を《鬼頭 才蔵》、虹蛇でもトップクラスの実力者である。
自身の役目として組織に与えられた『裏切り者の粛清』を終え、漸くの安息が齎される。
しかしそれもほんの一時、組織の性質上裏切り者は少なからず存在するのだ。
「ったく、もっと忠誠心ってもんをだなぁ…」
「…俺に言われても困るんだが。」
才蔵に愚痴を吐きかけられた男、《山隠 永都》。
才蔵の同期にして良きライバル。
「お前も大概だろうがよ…ちったァ真面目に任務をこなして欲しいんだがね。」
「悪いが、俺は俺のやりたいようにやる。お前みたいに組織の使いっ走りは御免なんだよ。」
「何をぅ…お前だって、裏切りゃアイツらと同じに俺が斬るんだからな…。」
「はっ、なら1度でも俺を斬ってから言えよなぁ!」
「むぅ…」
割と気にしている。
才蔵の思想は『とにかく基礎を鍛える』というもの。
忍術だけでなく、体術や剣術に関しても手を抜いたことは無い。無いのだが…
「一太刀でも届いてりゃ、俺にも大口叩けるだろうになぁ」
「クソが…」
剣術に関しては彼の方が上。腹立たしいことに。
そんな昼下がり、何の変哲もない駅前ファミレスでの会話である。
その後解散、それぞれの任務に帰っていく。
ただし才蔵の…『粛清』の場合は基本夜だ。
必然的に他者を殺害する仕事、光の多い内は働けない。
故に昼間は
「おーい、才蔵君!」
「…春夏さんか。」
「こんなとこで何してんの?」
「いや、少々散歩をね。」
『表側』の友人、上谷春夏。
粛清執行人としての裏の顔を隠した、ただの一般学生としての生活における友人。
「そっちこそ、今日は何用?」
「私はまあ…普通に用事があってね。」
「ほお、用事。何を?」
「ちょっとした買い物だよ。ほれ」
言葉と共に手に提げたビニール袋を見せる。
中身は食材がどっさり。
「おお…やっぱ家事全部やってると大変だな…」
春夏の家は何やら複雑な事情らしく、両親は既にいないそう。
故に彼女含めて計5人の兄弟分の家事を担っている。
「流石に全部って訳じゃないけどね…」
「俺はその類やったことないからなぁ…ホント尊敬するよ。」
「大袈裟だなぁ…あ、そうだ。」
ポンと手を叩く。
「なんすか」
「どうせなら1回ウチ来ない?家事手伝って貰えたら色々練習になるかもだし、兄弟の面倒見て貰えたらこっちも助かるし。」
(マジ?これってお誘い?な訳あるかボケナス。)
などとウダウダ考えながら
「まあ…行っていいなら。」
「じゃあ決まりね!今度の土曜日!」
「…了解っす。」
「じゃ、また明日!」
解散。
足取り軽く帰還する。
虹蛇 粛清部隊社屋
「どうした才蔵、何やら上機嫌だな。」
「いやぁ…ねぇ。」
才蔵は生まれてこの方、女性の家に誘われたことは無い。
仕方の無いことである。
「…お前…仮にも闇の忍者だろ?しかも粛清部隊なんてエリートだ。あんまり浮き足立つのも良くないだろ。」
粛清部隊。
闇の忍者軍団 虹蛇の中でも、組織を抜け出した所謂『抜け忍』の処理を担当する部隊。
抜け忍は三下忍者だけでなく、相当な手練が組織を抜けることも稀にある。
それに対処する粛清部隊は必然的に数多くの死線を潜り抜けた精鋭部隊だ。
「毎日毎時毎秒気を張ってたら疲れるだけだろ。」
「そりゃあ…そうだが。」
永都の言葉が詰まったので会話を切り、先のやり取りの内容を反芻する。
(まさか上谷さんから誘ってくれるとはなぁ、あんまり関わりないのに。)
学校では才蔵と春夏のグループはまた別だ。
才蔵は典型的な陰の者の集まり、春夏は女子のグループ。
基本的に交わることは無い。
(しかし、両親もいないのによくアレだけの家事やるなぁ。)
そこで
はたと気がつく。
会話の端、若干の違和感。
考えを整理しながら夜風に当たる。
意味もなく足を動かす。
気がつけば、昼にいた駅前まで辿り着いていた。
「ここは…」
無意識とは怖いものである。
意味も無いのに、ここまで遠くに来てしまった。
「…帰るか。」
踵を返す
瞬間
「…あれ?」
視界の端に人影が映る。
ただの人影なら気にすることも無かったろうが
その人影に見覚えがあった。
「春夏さん…?」
現在時刻8:30
先の違和感に拍車がかかる。
春夏はゆっくりと人通りの少ない路地へと入って行く。
「…」
できる限り気配を消し、春夏の後を追う。
その先にあったのは、人気のない廃屋。
何らかの道具やドラム缶など、幾らか物は残っているが、それでも手入れされた様子は見受けられない。
遠くから見れば、廃屋に入って行く春夏の姿が見える。
「こんな所で何を…?」
入口付近まで近付き、廃屋内に目を遣る。
廃屋の中心部に春夏はいた。
何をするでもなく、ただそこに佇んでいる。
天井、壁、床、その他感覚に頼るが人の気配は春夏以外に感じられない。
(…今なら、違和感の正体を確かめられるか。)
思い立ち、気配と足音を消すのを止めて廃屋に入る。
「こんな廃屋に何か…?」
「うわっ!?って、才蔵君か…ビックリした。」
驚いた様子、それに嘘は無さそうだ。
「いやぁ、眠れなくって…歩いてたらこんな建物があったから。廃墟の類、割と好きだし。」
「あ、そうなの…」
「そっちこそ、何でこんな所に?」
「…何と言うか、モヤモヤが晴れなくて。それ以外の理由は大体同じ。」
「…そっか。」
やはり違和感がある。
このまま話していても埒が明かない。
かくなる上は
「…一つ聞いても?」
「…うん」
「お前が…裏切り者か?」
春夏に問いかける。
否、最早カマかけでしかない。
「…才蔵君、何言ってるの?というか何の話?裏切り者って…」
「とぼけるのは辞めておけ。演技が臭いぞ。」
春夏の表情は暗闇に紛れてよく見えない。
が。
「…ならば仕方あるまい。」
春夏とは違う野太い男の声。
暗闇の中、黄色い光が2つ浮かび上がる。
「…」
「何時から気付いていた?」
「昼間から違和感はあった。確信したのはさっきだがな。良い子はもうすぐ寝る時間、弟妹の世話があるのにこんな時間に出てくるのもおかしい。それに…」
言葉は無く、顔を指さす。
「…俺としたことが」
男の顔に張り付いた春夏の顔、しかしその横顔は若干剥がれかけている。
「こんなしょうもないミスで…」
「猿も木から落ちる…ケアレスミスは極力無くすのが秘訣だぞ。」
「全くだ…次からは気をつけるとしよう。」
男の身体から眩い光と衝撃が発され、廃屋の屋根が破壊される。
暗闇を照らした光はだんだんと弱まっていき、その光が収まった先には
「…鎌忍者か。」
男と同じく黄色く光る巨大な複眼、月明かりに照らされ鈍く輝く緑の装甲、そして両腕の鎌が取り付けられた篭手。
さながら人型に押し込めた螳螂の様。
「俺は組織を抜けた…ミスを咎められる謂れなど無い。故にこの失敗は、貴様を消して帳消しとしよう。」
右手にはどこからとも無く現れた2枚の手裏剣、その腕は常人には見きれぬ程の速度で振るわれ
「ぐッ…!」
才蔵の心臓へ的確に突き刺さり、後ろ向きに倒れていく。
「…ふっ…あはははははははッ!!!粛清部隊は精鋭揃いと聞いていたが、この程度かッ!!」
物言わぬ骸の前で高らかに笑い声をあげる鎌忍者。
「ミス2つ目だ」
「ッ!?」
声。
それは正しく、確実に心臓を撃ち抜いたはずの男の声。
「貴様…何故…!?」
骸に走り寄るが
「ぐおっ!?」
それは小規模に爆発を起こし、小さな丸太に形を変える。
「身代わりの術…!?」
「正解」
「ぐぉあッ!?」
背後からの切りつけ。
「クソがぁッ!!」
即座に振り返り、篭手の鎌を振るう。
が、身を翻し容易く回避。
「己の力を過信しすぎるな…。無駄な油断が先の事態を引き起こす。」
「だが確実にッ…!」
撃ち抜いた。
だがその言葉を発する前に
「実力差を測りきれないか。ならこれ以上は話しても無駄だな。」
講釈を諦め、懐から黒い物体を取り出す。
「それは…瓢箪…?」
鎌忍者の言葉を気にもとめず、栓を開け瓢箪を傾ける。
そこからは液体が溢れ出すことはなく、その代わりに流れ出した黒い羽根は才蔵の腰周りを周回し、凝固して金属質なベルトとなる。
「貴様…まさか…!?」
同時に飛び出した黒い板を手に腕を振り抜き、前蹴りの後胸の前に構える。
「…変身」
ベルトに装填、取り付けられた二つのクナイをクロスさせたようなパーツに手をかけ、高速回転。
《キツネビ!オニビ!シノビ!》
その背後で組み上げられた巨人は黒い鴉の形を成し、吐き出された装甲が才蔵に装着される。
《クロ・シノービー!見参ッ!》
壊れた屋根から漏れ出た月光が、その黒い躯を照らす。
黒光りする身体、両手足に巻き付けられた縄"スリンガー"、首に巻かれた黒いマフラー、そして紫に輝く瞳。
「影に隠れて影を討つ…"仮面ライダークロシノビ"。」
「粛清部隊の黒いシノビ…貴様だったのか…!」
「そういうこと。」
一言の後、鎌忍者の前からクロシノビが消える。
「なッ!?」
振り向くがその姿は見えない。
「せっかくデッカイ複眼があるんだ、もっと全方向を見ることだな。」
上空からの声。
翳る月光。
見上げる先のクロシノビ。
「よッ!」
両腕からスリンガーが伸び、鎌忍者の身体に巻き付く。
「なッ!?」
「よっこいっ…しょおッ!!」
そのまま上空に振り上げられ、壊れた天蓋を更にぶち破る。
「戦場は広い方がいいよなぁッ!!」
「ぬあぁあッ!!」
上空からのジャイアントスイング、解放され外の地面に叩きつけられる。
「…っと。ここの方が戦いやすいだろ?」
降り立った先は障害物など無く、開けた広場の周りに数本木が生えているのみ。
「…フッ、良いのか?敵に有利なステージでッ!」
ゆっくりと立ち上がった後、再びの手裏剣投擲。
しかし
「よっ」
クロシノビは容易く回避、太腿に手をかざし、鋼の刃が出現。
「クナイ!?」
「そぉいッ!」
鎌忍者以上の投擲速度、鎌忍者の心臓目掛けて飛んでいく。
「ちぃッ…!こんなものッ!!」
右手の鎌で振り払う。
が
「ばぁ!!」
「のわっ!?」
クナイ投擲を囮に背後を取る。
即座に印を結び
「忍法!火遁の術ッ!」
《インフェルノ忍法ッ!》
クロスした腕から凄まじい業火が放射される。
「ぐォあぁぁあぁ…ッ!!」
最早物理的推力を持ったそれは鎌忍者を容易く押し出し、遠く吹っ飛んで道路のド真ん中に叩き付ける。
「…なんのォ!!」
鎌忍者もまた印を結び
「忍法!風遁の術ッ!!」
両腕の鎌に風を集め
「はァッ!!」
振り抜くと同時に、二つの見えない刃がクロシノビに襲いかかる。
「ぐえ」
ギリギリで避け損ね、仮面に少し傷が入る。
「いいねぇ、それよ。」
「見えなければ避けられまいッ!!」
無数のカマイタチを射出、再びクロシノビに迫る。
が
《忍法キリステェッ!》
クロシノビは腰に下げられた刀を抜き放ち
「ふんッ!はァッ!そいやぁッ!!」
全ての刃を叩き斬る。
「なんだとぉ…!?クソッ、まだだぁッ!!」
腕を振り抜くと同時に
「射出ッ!!」
両腕の篭手から鎖鎌が伸び、鎌が飛び出す。
「うおっ!?」
鎖が刀を絡め取り、クロシノビの手中から弾き飛ばした後篭手に戻る。
「…やるじゃないか。その調子だ!」
「巫山戯んなッ!!」
再びの鎖鎌
しかし
「馬鹿の一つ覚えかぁっ!?」
跳躍によって回避、両腕から伸びたスリンガーが鎖に巻き付く。
それによって鎌の軌道が変化し─────
「ぬおぉッ!?」
鎌忍者に深々と突き刺さった。
「こっちは1回見てんだ、同じ手は食わんぞ。」
淡々とした言葉と共に印を結んだ後、ベルトのパーツを回転。
《ジ・エンド忍法ッ!》
クロシノビの脚部が紫に輝き、跳躍。
「ッ…!!」
本能的に危険を察知、空中のクロシノビに再び空気の刃が迫る
しかし。
「ハァァァァァァァァッ!!!」
迫る刃を打ち砕きながら直進し
「ぐぉぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
光る一撃が鎌忍者に炸裂。
弱々しい光と共に、鎌忍者の姿から男の姿に戻る。
元の姿は春夏とは似ても似つかない若い男。
「ぐぅッ…!」
「さて、話を聞かせてもらおうか。」
「話…だと…?」
「何故組織から抜け出したのか…教えてもらいたい。」
組織から抜け出した抜け忍を易々と見逃す程我々の組織…『虹蛇』は甘くない。
凡ゆる情報の流出を防ぐ為、昨夜の抜け忍と同じく才蔵のような粛清部隊が差し向けられるのが基本だ。
「俺達が来るリスクを背負ってまで、やりたい事なんてあるのか?」
「…簡単な話だ、あの組織じゃ俺は天下を取れない。」
「天下…ねぇ。」
「俺は散々あの組織…虹蛇で窮屈な思いをしてきた。上の奴らに散々媚びへつらってまで得た忍術も、貴様みたいな奴には通用しない。」
「まあ…そうだな。」
基本的に、虹蛇内部での忍術修行は固定化されている。
それ故に腕前の上がり幅は個人の資質に左右される。
「虹蛇の支配が完了しないということは、そうなるに足る理由がある。もしそれがより強力な忍者ならそいつに教えを乞う。…そうで無くても、俺にあった修行法さえ見つければ俺は更に上に行ける。俺の力で現代を支配出来るかもしれない。出奔したのはそれが理由だよ。」
「…成程。その割には、基礎的な所で未熟さが目立つ気もするが?」
「それはまあ…その…」
「…良いか、重要なのは基礎だ。基礎的なものが成り立ってなきゃ、それを土台にした応用は扱えない。それを肝に銘じておくんだな。」
「…そうだな、貴様の言う通りだ…。」
そう言った男はゆっくりと立ち上がり、手をパチンと鳴らす。
「そうと決まれば明日から!否、今からでも一から鍛え直してやるっ!!」
何やらやる気を出している様子。
「…まあ決意を新たにしたところで。」
「ああ!」
「粛清の時間だ。」
「…え?」
クロシノビの両腕からスリンガーが伸び、男を捕縛。
「え!?ちょ、貴様ァッ!!」
焦る男を後目に印を結び、ベルトを回転。
《ディメンション忍法ッ!》
巻き取られた男を中心に黒い空間が展開し
「やめろォォォォォォォォォォォォォ…」
その空間の消失と共に、痕跡も残さず男は消えた。
「…さてと。」
クロシノビから才蔵に姿が戻る。
「こりゃ、修行法の改善を上申した方が早いかもなぁ。」
言葉を吐いた後、再び少しの違和感に襲われる。
「…あの建物に、一体何が?」
男はそもそも才蔵には気付いていなかった。
なら才蔵を誘き寄せるために廃屋に向かった訳ではない筈。
では何故男はあの廃屋に向かったのか。
あの廃屋に、抜け忍に関わりのある『何か』があったのだろうか。
再び踵を返し、廃屋に向かう。
「…こりゃあ、やらかしたか…?」
廃屋があったはずの場所。
しかしそこには"少し開けた空間"のみが残っていた。
ベルト音声のフォントとか後でいじるかもしれんです