惣流アスカのバカシンジ制裁日和   作:筆折ルマンド

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1.Beautiful World

 

 ある冬の日。

 カーテンの向こうにチラチラと映る雪の影。

 

 テレビから流れる5分アニメの再放送。

 

 お気に入りのサルのぬいぐるみを抱いて、

 ソファに寝っ転がるアタシ。

 

 台所にはママがいて、

 シチューの香りが漂ってくる。

 

 いつか憧れた穏やかな時間。

 ──そう思った自分に驚いた。

 

 アタシの物心が付いた日

 きっとソレが今日なんだろう。

 

 薄ぼんやりと半ば眠っているような状態から、しっかりとした自我が芽生えたその日。

 

 雲間から差し込んだ光のように冴えた頭で

 アタシは思った。

 

『あの野郎、逃げやがった』

 

 ムスッとした顔

 思わず力のこもった腕の中でギュムっとぬいぐるみが悲鳴をあげた。

 

 ◇

 

 惣流・アスカ・ラングレー

 アタシの名前

 

 職業

 エヴァンゲリオン弐号機パイロット

 

 巨大ロボットで日夜、

 怪獣をバッタバッタと薙ぎ倒し

 

 カクカクしかじか(負けて、傷ついて、絶望して)

 

 色々あってアタシは死んだ。

 

 アタシは奮戦虚しく、薄気味悪い白いエヴァンゲリオンの軍勢に負けて死んだはずだった。

 

 世界は碇ゲンドウだかゼーレだかの

 数ばっかり多くて喧嘩が絶えない稚拙な知的生命体である人類の魂を一つに融合させて、使徒みたいな知恵の無い単一の生命体へ転生させる

『人類補完計画』とかいう胡散臭い陰謀によって滅ぼされるはずだった。

 

 所がどっこい

 ソコに挟まったのが、我らが無敵の『碇シンジ』様

 

 直前どころか完遂一歩手前まで世界を滅ぼした後に、急に他人が恋しくなって人類補完計画を御破算にして地球に帰還。

 

 人工物は粗方木っ端微塵にされちゃったものの、人類は生命の大元(スープ)からやる気が有れば人間に戻れるようになりましたとさ。

 

 めでたし、めでたし。

 

 ──────

 ────

 ──

 

 

 人の営みの光が途絶えて、眩しいほどに煌めく満天の星空

 

 バカみたいに大きなファーストの死体

 

 砂浜に刺さるビルの残骸に

 

 首なしのエヴァが磔になったようなバカデカい十字架

 

 地平線まで続く砂浜

 

 波打ち際

 寄せる波は血のように紅くて

 

 さっきまでアタシの首を締め上げていたバカは、膝を抱えてうつむいたまま微動だにしない。

 

 

「気持ち悪い」

 

 アンタ、自分で傷付いてもいいって言ったのよ? 

 

 他人に会いたいって、

 他人の心が分からなくてもいいって言ったのよ? 

 

『傷付いてもいいから、もう一度会いたい』

 ってアンタが言ったのよ? 

 

 ファーストとフィフスに自信満々にそう言ってたから

 会いたいって、アンタが言ったから会いに来てやったってのに

 

 ソレでこの歓迎はどういう了見よ

 

 アタシがアンタの腹の底を知ったら、軽蔑されて嫌われるとでも思ったの? 

 嫌われたのを確認する前に殺してしまえば分からないままだから、その方がマシとでも思ったの? 

 

 アタシの腹の底はちゃんと見せてやったのに? 

 

『アンタが全部アタシの物にならないなら、アタシは何もいらない』

 

 アタシが所望したのはアンタの全部よ

 

 ガキの頃から全く変わらない

 

 独りぼっちで

 その事が悲しくて、腹が立って

 八つ当たりして

 ハッと正気に戻って取り繕おうとする

 

 ガキの頃も

 さっきも

 今も

 

 性根の変わらないバカガキの

 最後の一線は越えられない甘ちゃんの

 

 そんなアンタでも良いってアタシは言ってやったのに

 

 まさか、ビビりすぎてアタシのプロポーズが聞こえてなかったとは思わなかったわ。

 

 バカすぎて呆れて何も言えない

 

「この──バカガキ」

 

 頭を足で押し出して転がす。

 起き上がりもせずバカはそのままアタシと目が合うのを恐れて膝に顔を埋めた。

 

 正に穴があったら入りたいって感じ、無様ね。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────ごめん──────

 

 

 

 

 

 

 

 か細く、微かにそんな声が聞こえた気がした。

 

 

 ハァ? 聞こえないわよバカ

 謝るならソレ相応の誠意を見せてみろっての

 

 アタシはどこまでも意気地無しのバカに呆れて、大の字に寝っ転がって瞼を閉じた。

 

 まぁ──いいわ

 どうせ何も無い場所で2人きりなんだから今更ガチャガチャ騒いだ所でどうにもならない。

 食べ物も無いし、真っ赤な海のこんな得体の知れない液体も飲みたくない。

 

 

 不満は挙げればキリがないけど、

 

 

 コイツが一緒に死ぬなら──許してやらないでもない。

 

 

 

 ──────

 ────

 ──

 

 

 で、もう一眠りしたらコレ

 

 殺してやろうか

 あの鈍チンクソバカガキシンジ

 

 

 暖かい部屋

 まるで今までの全てが胡蝶の夢であったかのような、穏やかな日常。

 

 ママが生きてて、アタシはエヴァパイロットじゃない普通の女の子。

 パパはたぶん離婚しちゃって居ないけど、ママはあんまり引きずって無さそう。

 鼻歌混じりに上機嫌に夕飯の支度をしてる。

 

 考えうる限り、最高の家庭環境

 

 ──おそらくはあのバカの仕業。

 

 冷静に考えて、あの状況から人類が復活したとして、これまでの人類の2000年は言い過ぎとしても、100年かけて作った超効率的な産業システムが全部消し飛んだら、全人類の食糧は絶対に賄えない。

 そうなったらもう、セカンドインパクトを超える地獄のような生存競争が待っているだろう。

 

 突拍子もないけど、あのバカがどうにかしたんだろう。あの砂浜もまだ半分精神世界だったのかもしれない。

 タイムスリップでもなんでも、そうでもしなきゃ人類の滅亡は変わらないから。

 

 ママが無事なのはバカシンジなりの罪滅ぼしのつもりかしら? 

 それとも誠意のつもり? 

 

 

 ……ふざけんじゃないわよ

 結局アンタ、罪悪感でアタシから逃げただけじゃない。

 

 

 サルのぬいぐるみのお腹に顔を埋める。

ひんひのふぁは──!! (シンジのバカァ──!!)

 

「あらあらアスカちゃん、どうしたの?」

 

「ううん、何でもなーい」

 

「そお? ならいいけど、もう少しでお夕飯出来るから待っててね」

 

「はーい」

 

 ──まずは日本に行こう

 ここまで舐めたマネされたのよ。いくらガキの身体だろうと1発ぶち込まないと気がすまないっての。





色々な方の考察と擦り合わせた結果、EOEラストの解釈は

「綾波、カヲルくん…。僕は…傷付いてもいいから他人と会いたい」キリッ
「しゃーないわねー、一番乗りしてやりますかー」
「アスカだ!?嫌われてるかもしれない怖い!!いっそ殺そう!!やっぱ殺すなんて無理!!」
「なんだコイツ!キモっ!!」
になりました。

この手のひら返しは確かにダサいし、キモい
のでとりあえず私の見解はコレになります。
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