黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~   作:せみふぁいなる

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(2月なので)初投稿です。
あーこいつ厨ニこじらせてんなーって温かい目で見てくれると嬉しいです。


その世界に黒が生まれた日

 世界中にいる人全てを焼き尽くそうとしているのでは無いか、と。

 そう考えてしまう程に蒸し暑い日の事。

 

 そんな日に俺、暗夜 黒斗(アンヤ クロト)は、他の人は暑さで苛立っている中、すこぶる上機嫌で下校中だった。

 それはもう、思わず鼻歌が出るほどにはウキウキで。

 

 その理由は至ってシンプル、俺の好きなゲーム「最期の黒白を」の正式続編が3年ぶりに発表されたからである。

 発売から今に至るまで、クリアしても尚一つだけ本セーブのデータを残して、何回も何回も初期化してはクリアして、色んな考察を見て少ししたらまた初期化して…を繰り返してきたゲームの、続編発表である。

 

 授業中にこっそりスマホを見ていた所に突如飛び込んできた情報であったため、思わずガッツポーズしそうになった。……が、それをグッとこらえ、帰るまでその喜びを表に出さないように努めてきたのである。

 偉い。授業中にスマホを見てるのは偉くない?……それはそう。

 

 しかも、ガッツポーズこそしなくても顔には出てしまっていたので、いきなりニマニマしだした俺を見て、周りの人たちは分かりやすく引きまくっていたのだが。

 後悔は無い。……いや、ちょびっとだけある。ちょびっとね?

 

 下校時間になってすぐダッシュで学校から出て、その後は最黒続編の情報で頭がいっぱいになり、暑さも気にならなくなった結果、ある意味で無敵の人になったという訳である。

 

 最黒続編の情報による嬉しさで、俺は下校中無意識にスキップしてしまっていた。

 いや、スキップ自体は別にいいのだ。平坦な所なら危なくは無い。……そう、平坦な所なら。

 問題なのは前を全く見ていなかったことと、すぐ先にある地形である。

 

 前を全く見ていなかった結果、登下校の道にある下りの階段に足を取られ、漫画のようにずっこけた。我ながら派手に転んだと思う。ギャグマンガかってくらい綺麗に。

 

 身体が前方へ勢い良く倒れていく。この時、割と高い所からの落下だった為に、『俺はこれから死ぬのだろうか』『死にたくない』『死ぬ間際って本当に時間がゆっくりになるんだ』などと悠長に思っていた。

 

 そんな思考だけで事態が変わる訳もなく、俺の身体は地面に吸い込まれて行き、そのまま────

 

 

──────────

 

 

「───ガッ!バキッ!グチャッ! と、いうのが貴方の最期です。…な、中々間抜けだね~……。あ、最後のグチャッ! は頭が角に当たって出血した音ね」

「……なんだこの神、本当に神なのか疑いたくなってきた。 ……まぁ、はい。とりあえず理解はしました。…即死したんですね俺」

 

 目の前の後光が差しすぎてなんだかもうよく分からない見た目の暫定神様が、無慈悲な現実を突きつけてくる。

 

「新作発表だけ見てやれないって、なんて生殺しですか?!」

「生殺しもなにも、もう死んでるんですけどね、貴方。ププッ」

 

 この暫定神様、性格が神様とは思えん!!

 いや、神様はこうであって欲しいという願望の押し付けは良くないか?

 いやいやいや、それはそれとして性格が終わっているのは事実だろう。

 

「ッッはぁ〜………。それで、ですよ。 俺の死亡理由の振り返りは終わった訳ですし、いい加減こんなよく分からない空間に呼ばれた理由を教えて貰えますか?」

「あー、それね。まぁテンプレみたいなものですよ。 なんとなく察せない?」

「そんな『めんどいなぁ、察してくださいよ』みたいな口ぶりで言われても。 こっちは現世に未練ありまくりですし、死ぬ時怖かったし。 せめてちゃんと来世があるのが確定していれば良かったのに、このよく分からない空間に呼び出されて……。こっちは今不安でいっぱいなんですから! ちゃんと説明してくれないと納得出来ませんよ!?」

 

 ブーブー、と不満をぶつけてみる。

 いや、だって死ぬ時本当に怖かったし。あの人達もこんな気持ちだったのだろうかと思わざるを得ないね。

 

「あーおっけーおっけー、分かった、分ーかったから。そんな詰め寄らないで。早口で来ないで」

「じゃあ早く説明してください。 時間は有限ですよ」

「ここだと時間とかそんなのあんま無いんだけどなぁ…」

 

 そんなの知ったこっちゃない。気持ちの問題である。はよ!はよ!

 

「とは言われてもねぇ、ホントにテンプレ通りみたいな物だよ。 分かりやすく言うと、私の上司みたいなポジションの神様が、貴方の死に際がマヌケで面白すぎて興味を持っちゃったみたいでね、そんなマヌケ君をその大好きなゲームの世界に入れたらどうなるのか気になっちゃったらしいの。 んで、『貴方を好きなゲームに転生させる』という仕事を振られたから、こうして担当の私がここに呼んで、色々と擦り合わせだけして送ろうって訳。おーけー?」

 

 …なるほど、とりあえず分かった。つまり、俺の死に際があまりに芸術的(笑)でマヌケすぎたから、そのお手本のようなダサさに腹を抱えた上司神様が「こいつ、黒白世界に転生させたろ!」ってなったと。

 

 ……ふむ。

 一旦その上司さんにはとてつもなく腹が立ってるが。神様ってそういう神しかいないんですか??

 

「…じゃあ未練とかないっす。生意気言ってすんませんした、行かせてください。」

「大分判断が早かったね~、自分の欲に素直なのは嫌いじゃないよ。おっけーおっけー、その言葉が聞きたかったのだよ私は」

「ウス、あざっす」

 

 九十度に頭を下げておく。

 

「さっきまでの態度が嘘みたいだねぇ…。まいいや、行ってくれるならだいじょーぶ。じゃあとりあえず転生は決定事項として、だ」

「まだなにかあるんスか?」

「なんか気待ち悪いからその喋り方はやめてね。 あと、さっき言ったでしょ? 転生するにあたって擦り合わせをしていくからさ。要するにただの確認作業だよ」

「分かりました。 じゃあ、お互いに必要な事を確認しましょう」

「話が早くなったね~…。んじゃとりあえずなんだけど、念の為もう一回確認ね。 転生する世界は、君の好きな世界である『最期の黒白』である事。これは間違いないからね」

「了解です」

 

 ここは絶対に間違えちゃいけないからな、ちゃんと俺の耳でも聞いたし大丈夫だろう。

 

「次の確認は君の記憶の有無なんだけど…まぁこれは勿論?」

「有りで、お願いします」

「これは予想出来るね。 じゃあ、確かに有りで行かせてもらうよ」

 

 自分の記憶が残っていないと、俺はなんの為にこの世界に転生することを決めたというのか。

 これで何かの間違いで記憶が消えてしまった時、それは俺とは呼べないだろう。

 

「次だね。ここが大事なんだけど〜…君、転生するにあたって、所謂憑依転生的なのが良い?それとも、オリジナルキャラを作って、その中に入るかい? あぁ、オリキャラ系が地雷だったら大丈夫だよ」

 

 ふむ、これは大事だな…

 俺は別にオリキャラ系は地雷という訳では無いし、キャラクター像と辻褄が合っていればさほど気にならないタイプだ。

 

 仮に憑依転生にしたとして、正直俺がそのキャラクターとしての行動というのができる気がしない。

 あれは、俺というモノが中に入っておらず、あのキャラクターだからこそ輝くというものだろう。俺はそう思う。

 異論は認める。

 

 さて。これを加味して俺が選ぶのは、勿論……

 

「オリジナルで、良いですか?」

「おぉ、了解了解。分かったよ〜。これもそこそこ早かったね?もっと迷っても良かったんだけど…。それでホントにダイジョブかい?」

「これで良いです。むしろこれが良いです」

「おぉ、覚悟が決まってるね〜。じゃあオリキャラを作ってその中に魂を入れるね〜。」

「ちなみに、元の俺の体は使えないんですか?」

 

「あぁ、それね。死んだ後でも魂は別の世界に適合させた体であれば持ってけるんだけどね〜。 死んだ後の体…まぁ直球で言って死体。…は回復させても、土台となる魂が既に剥がれてるから安定しなくてね。そのまま塵も残らず消えちゃうのさ。 じゃあ魂を入れたらって思うんだけど、それだと何故か魂諸共壊れちゃって。多分体の方の状態に引っ張られるのかね〜?」

 

 怖っ。そんな恐ろしい事になってしまうのか、俺の体。

 

「まぁそんなこんなで、どうしても別の世界に到着した時に壊れちゃうのさ。だから、ごめんね?」

 

「いえ、よく分かりました。 それに、元の自分の体であの世界を生きれる気もしませんし、なんとなく気になったから聞いただけなんで」

「気にしてないならいいよ〜。じゃあ最後の確認だね」

 

 そう言って神様は、真っ白なキャラシートのテンプレっぽい紙を取りだし、ヒラヒラと揺らした。

 

「そのオリキャラ、どんな感じにする〜?」

「やっぱそうですよね。とは言っても流石にこれはスグには決まらないなぁって感じ…」

「まぁゆっくり考えなよ〜。私はここでお茶飲んでるから〜」

 

 後光のせいでどんな風に飲んでるかすら分からないんだけど。もはや本当にそれ飲んでる?ってレベルだよ。

 っとと、そんな事を気にしてる場合じゃない、頑張って決めないとな。

 

 取り敢えず確認したい事をすぐ聞く事にする。

 

「このキャラクターをどんな感じにするかって、制限とかありますか?」

「基本はないね〜。自分がしたい事の為に、好きに決めちゃっていいよ〜。まぁでも、流石にこれはやり過ぎってラインはあるからね〜。例えば神様になりた〜いとか。 そのゲーム内でも神様であって、こちらになにか影響を及ぼさないなら良いんだけどね〜。そうとも確定しないからさ。……実際下克上を仕掛けてきた前例とかもあってさ、ゴメンね」

「了解です。 あくまで常識というか、ゲーム内での設定を考えてるような感じですね」

 

 まぁ、仕方ないだろう。だが制限すると言う事は、自分達で与えた力なのに負けかけるからなのだろうか?

 それとも、単に対処してたら仕事がその分遅れてしまうから?

 ………凄く後者っぽい。

 

「アハハ、大正解だよ。まぁだから、もし君が鍛えたりとかしてそれぐらい強くなっちゃっても、私がなんとか説明するから。ただ、ここで与える力ではそれぐらい強いのが出来ないってだけ」

 

 ……この人実はいい神様?

 ……ええい、騙されるな俺。

 

 取り敢えず説明された感じ割と何でも良さそうなので、ゆっくりと考えてみる。

 俺は心に未だ厨二病を宿しているから、幾らでも妄想は湧いて出てくる。

 とは言っても、俺が特に好きな設定系はもう既に考えてあったりするが。

 

 …こんな風になれたらな〜とか、男なら一回はするでしょ?

 アレのお陰である。過去の俺に感謝。

 

 

「でしたら、もう既にある程度決まってます」

「お〜、もうかい? 話が早くてコチラとしては助かるけど〜、これは時間をかけて考えた方がいいんじゃないかい?」

 

 この神様、やっぱり優しいのか?

 ふ、ふんだ。だ、騙されないもんね!

 

「ああいえ、大丈夫ですよ。生きてる時にいっぱい考えてたので。ある程度は妄想というか、構想は固まってたんです」

「学生あるあるがこんな所で役立つとはね〜。暇な時間も捨てたもんじゃ無いね? 現実からの逃走による思考の暴走も役に立つ時が来るんだね〜」

 

 無駄にウザイ。そういう所だと思いますよ。

 それでもって、なんかこの神様下界について詳しいな。

 暇かよ。

 

「暇だよ〜。私の担当範囲的な意味で」

「心を読んでくるテンプレやめてください。……思い返せば、さっきも地味にやって来てたな」

「会ってすぐに思考盗聴だと、なんか見慣れてるじゃ〜ん? 展開的な意味で」

「別にさほど変わらないと思いますよ。展開的な意味で」

 

 あちゃ〜、と神様が手を額に当てる。

 

「たはは、こりゃ〜手厳しいね〜。君はツンデレかな?」

 

 やっぱりこの神様下界在住だろ。そう言われても俺は驚かない。

 

 ……さて、下らない話はここまでにして、本題に戻ろう。

 

「ンンッ! それで、『ぼくのかんがえたさいきょうのきゃらくたー』なんですけど」

「はいは〜い。どんな感じだい?」

「とりあえず、一旦四対の羽が欲しいです。カッコイイので。勿論色は黒でお願いします」

「形は?」

「こう…堕天使的なので…」

「あー、伝わったよ。こんな感じだよね?」

 

 頭の中に神様がイメージを流し込んでくる。便利だなー。

 流し込んでもらった通り、まさしくコレ!と言える見た目である。

 背中から三対で六枚、少し下の腰辺りから横に生えるように一対で2枚の計八枚。

 羽は一枚一枚、俺の身体が少し小さく見える位には大きめ。

 

「はい、こんな感じで。 …欲を言えばあと少しだけ大きいとベストです」

「理由は勿論?」

 

 そんなの決まっているだろう。

 

「カッコイイので。それ以外の理由が要りますか?」

「だよね〜。それで、他には?」

 

 これも既に決まっている。

 全て覚えているのだ。過去荒れてた時に書いた黒歴史ノート、その内容を。

 …あの黒歴史ノート、見つからないよね?俺の部屋なんて誰も入らないだろうし、平気だよね?

 

 ヤバい、心配になってきた。こんな事ならあのノートは燃やして処分しておくんだった!!

 

 …一旦、今は何も考えない事にした。

 早く要望を神様に伝えてしまおう。

 

「このキャラクターのポジションと言いますか、立ち位置的な話なんですけど。 俗にいう、裏ボス的なポジションに立てるようにしてほしいな、と」

「ほうほう、具体的には?」

「悪という訳では無く、でも作中で最も強い。主人公の事を助けたり、時に敵対する謎のキャラクター…みたいな。 そうなれるような手助けと言いますか、何かが欲しいなと」

「おー、いいね〜。妄想ここに極まれりだね〜」

 

 こういうキャラに一番憧れてたんだよな〜。

 謎に溢れた、作中最強のカッコイイキャラ。

 その憧れになれると言うのだから、コレを利用しない手はあるまいて。

 

 主人公ちゃんと敵対してみたいという願望は、あのルートで行けば多分叶うし。

 

「こんな機会もう無いですし。 最大限使いますよ、欲深いので」

「私もそれでいいと思うよ〜。 他には何かあるかい?」

 

 ん〜、他か〜……。

 あっじゃああれにするか。

 

「では最後に、武器と魔法を好きに創造出来る…みたいなありがちな能力って付けれます?」

 

 武器の方はギル〇メッシュさんの宝〇庫的なアレでも使ってみたい。

 

「お安い御用だよ〜。これで全部でいいかい?」

「はい、後はあっちに行ってから自分で鍛えてどうにか再現します」

「気合い入ってるね〜…私、そういうの嫌いじゃないよ〜?」

 

 神様が俺の要望通りのイメージ図を作ってくれている。そしてそれをボーッと見る。

 この間暇だしね、仕方ないね。

 

 …グッ、ボーッとしてたらさっきの黒歴史ノートのダメージがッ…!

 ボディーブローのように、内側からジワジワと効いて来る…!

 

 

 

 体感で三十分程経っただろうか、神様が出来上がった資料集的なのを見せてくれる。その三十分間、神様が頑張っている横で、俺はその辺をのたうち回ってダメージを軽減しようと試みていたが。

 

 ……うん、イメージ通り。流石神、仕事の出来が凄い。惚れそう(直球)

 

「惚れても良いけど、私はそう簡単には靡かないよ〜。…さて、じゃあ設定資料も出来たから、君にここでしてもらうことはもう無いかな〜。後は任せて寝てな〜」

 

 おぉ、心強い。

 ではでは、お言葉に甘えて寝るとしますか。

 

「君の次の人生に、幸がありますよ〜に」

 

 その神様の言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。

 




別の作品の方は頑張って書いてます。
ユルシテ…

-追記-
4月24日、展開は変えず、少し文を整えました。少しは読みやすくなってると良いなって。

8月14日、更に少しだけ手を加えてみました。もう少しだけ読みやすくなってると嬉しい。

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