黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ 作:せみふぁいなる
あの日以降、俺は原作開始時期まで外の世界を暇つぶしでうろつき、もとい探索を済ませていた。
いやー、この世界に来てから約1年半、ずっと屋敷で寝ては特訓寝ては特訓でゲームとかしてなかったからさ。ついついゲーセンとか本屋に、勝手に足が進んでしまった。
その間、あの日みたいに原作キャラと話すような事は無かった。そんな頻繁にあっても困るし、いい事だね。
ただ、見かけるだけなら結構あった。そして、原作キャラ同士の絡みを生で見れて幸せな気持ちになったりもしていた。
やっぱりさ、好きなキャラ達の幸せそうな顔を見れると俺まで幸せになるんだよね…。
しかし流石に、ただ暇つぶしをしていただけでは無い。そこは安心してほしい。
例えば、原作には表記すら無かった組織が怪しげな事をしていたので、放置してたら不味いような気がして処したりした。ゲームの世界にそのまま入り込んだ、という訳では無いと神様にあの時言われたから、こういうのも可能性として考えてはいた。
人の行動を操ったりとか、流石に出来ないし。…出来ないよな? ちょっと怖い。
しかし、改めてその現場を見た時少しだけ不安になった。例え自分が強大な力を持っていたとしても、予想外の出来事は起こるもので。
ソレに気付けず、また対処も出来なければ、"ハッピーエンド"になんて辿り着けない。
全員が幸せな結末に辿り着く事が俺の幸せなんだから。その目標を達成するためならば、俺は永遠に頑張れるぞ!
…でも、あの潰した組織の大きさ的に、気合いだけじゃやって行けない場面も出るだろうなぁ…。
頭が良い訳でも無いし、レイゼさんの力を借りる事が多くなりそうだ。頭が良かったら階段でスキップして転んで死ぬ、とかいう間抜けすぎ死因にはならないのだよ。
少しナイーブになっていたが、ともかくだ。俺は原作開始まで、そうやって過ごしていた。
それと一応ついでとして、原作前なのにも関わらず明華ちゃんと風花ちゃんがあんなにピンチになっていた理由も探っている。
聞き込みによって大体の予想は立てられたので、後は本人から確認するだけなのだが、鼻血とキョドらないかどうかが心配である。
事前にグレイスを撫でて落ち着いていけば、ワンチャンあるかもしれないという策に出ようとは思っている。多分無理だが。
立てた予想だが、風花ちゃん達が居た場所の近くの街で聞き込みをした所、どうやら「風花ちゃん達が居た場所は、当時原因不明の魔物の大量発生により避難警報が出されていた」「発生場所から少し離れた所で、立ち入り禁止にも関わらず風花ちゃん達が入って行くのが目撃されていた」という喫茶店のマスターの情報から、恐らく何らかの理由で風花ちゃんと明華ちゃんは魔物の集団のいる場所へと侵入、そしてとてつもない数の魔物に囲まれある程度は撃破。
しかし、まだ魔物が残っているのにタイミング悪く魔力が尽きてしまい、逃走。こんな所だろうか。
この"何らかの理由"の部分は、流石に分からない。何か大事な事情があるのは分かるが…。
この世界の魔物は、単体だととても弱い。それこそ、この魔法が発展した世界では、一般人ですら倒せる程に。
そして、魔物は基本群れもしないし、出現する時はその大抵が1.2匹なのだ。
しかし、仮に群れを成してしまった場合は一気に危険度が跳ね上がる。前世の感覚で分かりやすく言うと、百単位の象の群れが、敵意を持って街を破壊しながら人間を襲っている…とか、そんな感じだ。
おまけに、この世界は魔法の世界。当然魔物も魔力を用いた戦闘をしてくるわけで…当然、辺り一帯は地獄絵図になるということだ。
そんな危険すぎる場所に、何故か二人は自分から入って行ったのだ。事情も分からないし、心配するなと言う方が無理だろう。
何?第三者からの心配なんて余計なお世話が大半だろって?…お黙り!俺は傲慢だろうとなんだろうとお節介を焼きまくるぞ! 結果が良くなるならな!
……良く考えたら、俺が入り込むことで斜め上の結末に行って結果が良くならない可能性も存在するなこれ。盲目的に突き通すのも良くないらしい、反省。お黙った皆さん、すみませんでした。
確実に結果が良くなっていくように、計画的に、慎重に行こう。俺の介入が必要無い、またはする事によって何か良くない事が起きそうなら姿を見せない。ここの線引きはまた今度しっかり決めるとして、とりあえず守っていこうかと思う。
話を戻そう。
とにかく、これは原作の方でも話に出ていなかったから、遠回しに、少しでも良いから事情を把握しておきたい。
俺という転生者、かつバリバリに原作改変を起こそうとしている奴がいる時点で、原作通りにことが進むなんてもう期待していない。変な奴らの件もあったし。
そこを知っているか否かで今後の対処、もとい手助けの速さなどが変わる。もう原作開始時期なのだから、ゆっくりしている暇は無いかな。うーん、過去の俺に「ゲーセンなんて行ってんじゃねぇバァカ!」って叫びたい。 しかし時は戻らない訳でして。
覆水盆に返らずってな、ガハハ。 笑えん。
……さて、そんなくだらない事を言っている間に、そろそろゲームでいうチュートリアル戦が始まる頃合いだ。
ここからは後戻り出来ない、全てが一発勝負の"現実"。改めて覚悟決めてけ?
"皆の為"なんて美徳ではなく、"自分の為"に世界を巻き込む覚悟を決めると、チュートリアルの舞台となる魔剣士育成校へと気配を消して飛び立った。
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原作となる『最期の黒白』は、3Dハイスピードアクションゲームだった。レベル・体力・攻撃力・魔力量・技量・素早さ。 これらが数値として上がる物で、更にスキル・1つ上のハイスキル・使用可能魔法の欄が別で存在する。
体力はHP、攻撃力はATK、魔力量はMP、技量はINT、素早さはAGI、とまぁ一般的なステータスとなるのだが。
他のゲームと比べて異色な点はDEF、要するに守備力が無いことである。敵からのダメージをその数値分だけ低減、とか。そういう物が無いのだ。
HPは増えるが、当然敵の攻撃力も高くなっていくので最後の方は3.4発ほど受けたら倒れてしまう。それなのにハイスピードアクションなので、それはもう難しかった。
しかし、当然初心者向けのイージーモードもあったし、何より大事なのが先程も言った「スキル」だ。
基本この世界では、後天的にはスキルは授かれず、生まれつき一人一つあるものなのだ。
しかし主人公ちゃんは特別なので、条件を満たせば何個でも後からスキルが手に入る。俺は恐らく無理だ、取得条件を試してみたけどダメだった。まぁ、そもそものスペックがヤベェのでそこは気にしてないが。
このスキル、当然様々な種類がある。
素早さUPや体力UP等の普通のスキルから、体力が半分以下の時に技量が20%UP、とかの条件付きスキルまで。
膨大な数のスキルがあるのだが、その中に"存在しない守備力の代わり"となるスキルがあったりするのだ。
致命的なダメージを貰った時に、5秒間無敵になりHPを50%回復、とか。
このスキルとステータスにより、様々なビルドで好きな主人公ちゃんを育成し、ストーリーをクリアしていく、というゲームになっている。
で、だ。なんで今この話をした?と思われたかもしれないが。
安心して欲しい、ちゃんと理由はある。
というのも、チュートリアル戦に向かったは良いのだが、パッと見た感じ主人公ちゃんのステータスがどうもおかしいと言うか。
当然最初は何もスキルは無く、チュートリアルの最中にこの先大事になるスキルを取得して勝利、という展開なのだが。
この主人公ちゃん、そのスキルを既に習得しているっぽく、更にハイスキルである『セラフ・オーラ』を纏っているのだ。その効果は、「1度攻撃を受けた時、次に当たった攻撃が無効化される」という割と重要で壊れているスキルだ。
それと、ステータスもチュートリアルにしては高く、レベルが12程ありそうな感じがする。
そして、そのせいかチュートリアルが一瞬にして終わってしまったのだ。驚いて気配遮断も解いてしまって、主人公ちゃん視点だと「なんか倒したと思ったら、いつの間にか後ろにいて戦闘を見ていた変人」になってしまった。
親友ポジなので、当然のように明華ちゃんの隣に風花ちゃんもいる。オマケに気配遮断が解かれた瞬間に気付かれた。…気配感知が、上手デスネ。戦闘センスあるよ。
さて、現在の状況はいい結果とも悪い結果とも言えないような微妙な状況だ。いや、どちらかと言うと悪いか? レベルとスキルは多分、魔物の群れの時なんだろうけどね…。普通に気配遮断を解いた俺のミスだね…。
そろそろ、現実逃避をしてないでいい加減に腹を括るべきか。ずっとジト目で2人ともコチラを見ているし。怪しい奴の十八番、逃走をするべきか?
「(…ご主人、飛んでくる前は凄くカッコよかったのに…)」
うん、グレイス。その自慢の切れ味で俺を刺すのをやめてくれ。心の臓にクリーンヒットしちゃってるから。
一応内面は表に出さず、グレイスを持って、無駄にカッコイイ戦闘服を着て無言で立っているので、いい加減向こうも痺れを切らしたのか、コチラに問いかけてくる。ヤメテ!心の準備がまだ出来てない!一応手助けが必要そうなら少し手伝うだけで、本来はバレる予定じゃ無かったんです!
「あの、そこで何してるんですか?」
明華ちゃんが聞いてくる。アッアッ、良い声ですねあばばばばば。推しの声が生で聞けて幸せとです。でも話せはしないのでやめてください。
「…その鎌。もしかして、あの時の人ですか?」
風花ちゃんが気付いてしまったっぽい。うごごご、もう会話をするしか無いのか…。
仕方ない、俺の心のためにもすぐに会話を切り上げるしか無い!でも何かと都合が良くなる気がするから、一応あの時は出来なかった裏ボスムーヴだけしておこう!
「その"助けてくれた人"で間違いないよ。 いやー偶然だね、こんな所で会うなんて」
「…本当に偶然なんですか?」
「もちろん! 元気そうでなによりだよ」
風花ちゃんが疑わしい目で、明華ちゃんがよく分かっていない感じで見てくる。
「あの時助けてくれた…? って言う事は、貴方が風ちゃんが言ってた『魔力切れの私達を助けてくれた人』なんですか?」
「多分それで合ってるよ。 初めまして、その後体に大事無いかな?」
本当に何事もなさそうで良かった。あの薬、何か副作用とかが出ちゃったら怖かったからね。
一応安全性は確かめたハズなのにあんな事が起きちゃったから、何か副作用とか出てるんじゃないかと心配だったんだ。
「その節は、本当にありがとうございました。 お陰で、今こうしてふうちゃんと一緒に居れてます。体の方も、特に何も起きてないです」
「…あの時は、ちゃんとお礼言えませんでしたから。私からも改めて、ありがとうございました。」
2人が頭を下げてお礼を言う。…イヤイヤイヤ、この2人に頭を下げられるのは何か違う。解釈違い的なあれで違う。
「ちょちょ、頭を上げて?気持ちは受け取るけど、そこまでしなくていいよ」
「いえ、しかし…」
「大丈夫だから、ね?俺としては、ただ通りすがりで助けたようなものだし。」
「…そこまで言うのでしたら…」
明華ちゃんが頭を上げると、それに合わせて風花ちゃんも頭を上げてくれた。ふぅ、良かった良かった。
「それで、結局なんでこんな所に居たんですか? 見たところ学生では無さそうですし、やっぱり偶然では無いですよね?」
あ、はい。やっぱバレますよね。まぁ、ここで意味深な事でも言っておけばそれっぽくなるでしょう。
「んー…そこの白い髪の子」
「…私ですか?」
「うん、君。最近、スキルの事とかで悩んだりしてないかな?」
「…何で分かったんですか?」
「…さぁね。ただ、君のその悩みの種は、君の判断次第で『世界を変えうる』という事、そしてそれはどうなっても『運命』である、という事は確かかな」
「…? それは、どういう…」
「あの、めいちゃんにそんなよく分からない事言うのやめてください。 あと、あの時の焦りすぎてどこか格好つかなかった貴方は何処へ行ったんですか?」
その言葉で人を傷付けることもあるんですよ!
今はもうあそこまでは焦らないと思うから!成長したから!…したかなぁ…?
「少なくともこの場ではその俺は出ないかなぁ…。次に会うことがあったら見れるんじゃないかな? 具体的に言うと、来週とか」
「来週…? ちょっと詳しく話してください」
「そうしたいのは山々だけど、残念ながらもう時間だ。危なくなったらちゃんと逃げなよ? いのちだいじに、だ」
そう言って俺は、某何処にでも行けそうなドアよろしく何処にでもワープできるゲートを開くと、不安そうな2人を置いてその場を後にした。
「…あの顔、罪悪感がすごく湧いてきてヤバい…。でもこうやってなんかよく分からないポジに居ると何かとやりやすいから仕方なくもある…。このモヤモヤ、嫌だなぁ…」
そして更に言うならば、あれはストーリーとは関係無い裏ボスと言うよりは、割と黒幕寄りの発言でもあったので、そこも失敗ポイント。
うーん、やっぱりそう上手くは行かないね。しっかり時間をかけて考えねば…。
「…そんなご主人でも、私は構わない」
「俺が気にするんだよね!」
この子は可愛いなぁもう!考え事なんて吹き飛んじゃうね!
クモラセタイ…クモラセタイノ…
-追記-
5/31、読みやすくなるように少し文を調整しました。読みやすくなってると嬉しい。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!是非気が向いたら、感想・評価よろしくお願いします!