黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ 作:せみふぁいなる
自分でもちゃんと設定やプロットを見ながら書いていますが、矛盾点などがございましたら是非指摘していただけると助かります。
「よく言った、それでこそ"白"だよ」
あの人が、彼が。
圧倒的とも言える存在感を放ちながら、それでいてどこか優しさを感じる雰囲気の彼が。
私達を、助けに来てくれていた。
彼が目にも止まらない速さで仮面のナニカの爪を弾き、いつ切ったのか分からないけれど、そのまま紫の血を吹き出した。叫んでいるナニカを後ろ目に彼がこっちを向いた。
「本当に、よく言えたじゃないか。アレを克服するのは、並の人間が出来ることじゃないよ。 人生で誇っていいレベル」
優しい顔で、彼は言う。
「本当は俺が手を下したいんだけどな…。アレをやるのは、多分君の役目だ。 この子も、そろそろ何が起きたかを把握して、君と同じように克服するだろう」
そう言われて彼の羽に包まれているふうちゃんを見ると、「ぁ…ぇ…わたしは…」と、耳を澄まさなければ聞こえない声量で呟いているのが聞こえる。
「この子の心も相当に強いはずだ。 最初の狙いがこの子になってしまったからか、君より少し遅いけれど…。 それでも、この子は絶対に克服するだろう、断言出来る。 だから、そうしたら君達でアレをやるんだ」
「それまでは、一先ず俺が相手取っておこうか。 2人の番になった後も、念の為後ろに俺の大事なメイドさんを置いておくよ。 俺自身も、遠くから見てよう。 それで大丈夫? レイゼさん」
レイゼさん…?と疑問に思っていると、いつの間に居たのだろうか、私の後ろから声がする。
「はい、構いません。必ずお守りすると誓いましょう。」
「ひょわぁ!?」
「…やっぱりそうなるよね、うん…」
誰もいなかったはずの後ろから突然声がして驚き、思わず変な声が出てしまった。
うぅ、恥ずかしい…
そんな事を彼らと話していると、仮面のナニカがどうやっているのか、魔法を使う素振りも見せず再生しながら喋る。
「ググ…、き、貴様は一体、なんなのデスか!? お前のような存在、知らサレてすらいまセンヨ! イキナリ出てきたかと思えば、ワタクシのオタノシミの時間を邪魔しやガッテ!」
ナニカから感じる殺気にあてられ、思わず少し体が強ばる。
だけど正面からその殺気を浴びているはずの彼は意に返す事もなく、むしろ少し威圧して返しているように見える。
「んー、なんなんだ、と言われてもな…。 …あぁ、お前らの組織の"敵"である事は間違いないかな、うん。 後はあれかな、この"白"ちゃんと一緒で、少し特異である事くらいかな?」
「ワタクシをおちょくっているのデスか?!そんなに真面目に答える所でもないでショウ! …アァ、腹が立ちますネェ…。まァいいデス。どうやら敵でアルということは間違いないらしいデスし、今ここで貴様諸共、そこの人間を殺してヤリマスヨォ!!」
そう言うと、ナニカの仮面が縦半分に割れ、そこから夥しい数の触手が這い出てくる。
そして、這い出てきたソレらが私達を囲むと、一斉に突き殺さんと迫ってきた。
「ちゃんと返事してあげたのに、ちょっと理不尽じゃない? ──なぁ、その汚い姿で俺に触ろうとは、烏滸がましいにも程があるんじゃないか?身の程を弁えろ。『夜界』」
突然雰囲気が変わった彼が、私達の周りに少し薄暗い色の膜を貼る。
すると、一斉に向かってきていた触手が、膜に触れた途端、触れた箇所から文字通り「消滅」して行く。
「結構薄く貼ったのに、これでも効果ありと。…この程度の結界も突破出来ないのに、俺諸共この子達を殺すとな。 …想像されるだけで、不愉快だ」
隣から「ギリッ」と、少し歯が軋む音がした。
心の底から不快に思っているのが、雰囲気から伝わって来る。
「アァァぁァ!! 本ッ当になんなのデスか貴様はァ! 規格外すぎるでショウ! …イヤ待て、貴様、ソコの"白"と同じで特異である、と言っていましたネ…。 その力、まさかデスが…」
そう言われると、先程まで不快だと不機嫌になっていた彼の顔が、その言葉を待ってましたと言わんばかりに、笑顔になって行く。
「やっと気付いたのか? お察しの通りだよ、合ってる合ってる。 花丸あげちゃうね。 …で? その考えに至れたお前は、どうする?」
「決まっているでショウ?本部に伝えるのデスよ!貴様のような存在、放置して訳がナイのデス!」
「おーそかそか、そりゃ頑張れ〜。 …まぁ、当然無理なんだけどもね」
彼のその余裕な態度に、ナニカも苛立ちを隠せないでいる。…前に会った時は彼、こんなに情緒不安定というか、怖い人だったっけ?
「その余裕な顔、いつか崩してみせるのデスよ! ココは一時撤退と…ナニ?ワープゲートが開かない?」
困惑しているナニカを見て、彼は愉快そうに言う。
「ぷふっ! 言ったじゃないか、無理だけどって。 対策済みに決まっているだろう?」
「ナッ…! どこまで規格外なのデスか貴様は! ワープの妨害なんテ聞いた事もありまセンよ!?」
「えっそうなの?ワープを使える人は大体出来ると思うけど…。 …あぁゴメン、そうだよな、弱いもんな。 知らなくても無理はないよ、うん。いやぁドンマイ!」
「ドコマデモイラつく奴デスねぇェェェ??!!」
嫌なことを言われた八つ当たりなのか、可哀想に思えるくらいナニカを煽っていく。
…そもそも、ワープってすっごい高等魔法だから、使える人自体が極少数だと思うんだけど…。
さて。彼がナニカを抑えている内に、私は私のする事をしよう。
彼は、ふうちゃんの意識がそろそろ目覚める、とか言ってたけれど。やはり心配なものは心配なのだ。
私は、そっとふうちゃんの元に寄り添い優しく抱き締めると、最大限に柔らかい声でふうちゃんに語り掛ける。
「大丈夫、大丈夫だよ、ふうちゃん。 もう怖くないから」
「めいか…。 わたし…いきてる、のよね…?」
ある程度時間が経ったからなのか、ふうちゃんは既に半分程は恐怖から回復しているように見えた。
私よりも自分を強く持っている彼女が、それでも半分しか回復していないと言うのは、つまりそれ程に強い"死"の予感が彼女を襲ったのだろうと予想出来る。
そんなモノを周囲に振り撒いていた元凶が、直接爪を突きつけ狙ってきたのだ。 それでも気絶までしていないのは、逆にそれ程ふうとゃんの心が強いという事の証明でもある。
「うん、私達、二人とも生きてる。生きてるんだよ。 えへ、また助けて貰っちゃった」
「たすけて…アイツに…あの人に…?」
「そうだよ。今時間を稼いでくれてるから、後は私達であの変な仮面を倒すだけ。 しかも、心配だからって後ろの方で見てくれるんだって。 …だから、ね? 二人で、頑張ってみよ?」
「……そう、よね。私だって、守られてばっかりじゃ、いられないわよね。 ───よし、完全に目が覚めたわ。 アイツに目に物見せてやろうじゃないの!」
「流石! それでこそふうちゃんだよ!」
どうやら完全に回復したらしい。やっぱりふうちゃん、心が強いよね。沢山ある良い所の一つだよ!
と、そこで彼もふうちゃんの回復に気付いたのか、煽りを中断し私に話しかけてくる。
「あっと、お目覚めみたいだね?それじゃあ、一旦のお守りはここまで。 …ここから先は、君達が、ね?」
彼が少し申し訳なさそうにしつつもコチラを見てくる。
「は、はい。…あの、今回も助けて頂いて、ありがとうございました。また救っていただいてしまいました…」
「私も、ありがとうございました。その、今まで貴方の事を信じられていなかった私が言うのもなんですけど…」
そう言って私とふうちゃんが一緒に頭を下げようとするが、彼はそれを急いで止めてくる。
「おーっととと、待って待って。頭を上げて! …あー、自分勝手で感謝されるような動機じゃないから、頭を下げられると俺が罪悪感に駆られるというか…。 それと、俺の事は信じない方がいいよ。 ていうか、こんな如何にも怪しいヤツを信じられる訳がないだろうし。…でも、感謝の気持ちは受け取っておこうかな」
笑顔で彼はそう言ってくれた。
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、少し悲しそうな笑顔に見えた気がする。気のせいだろうか?
「そうしていただけると、助かります。…あの、よければなんですけど、これが終わったらご一緒にお茶でも如何ですか? ここまで助けていただいているのに、私達は貴方の事を全然知らないな、と思いまして…。 ど、どうでしょう?」
少しでも了承して貰える可能性を上げるために、上目遣いで彼を見る。
あの時私達を見てた理由とか、この日に会うことが分かっていた訳とか…色々と聞きたい事がいっぱいだ。
本当に悪い人では無さそう?だし…。ただ、理由を知りたいだけ。
…それと、少しだけお友達にもなりたいかな、なんて。
「ぐっ、こんなの断れる訳が…。 で、でもなぁ、この後はアレがアレだからなぁ……。 ……オーケー分かった、分かったから泣きそうな顔をしないで! 終わったらゆっくり話そう!ね!」
よく分からない理由で断ろうとして来たので、涙目になって対抗した。
この人になら効くかなぁ、なんて思ってしてみたら、本当に効いてしまった。
…………意外とチョロ、げふんげふん。からかい甲斐がありそうな人だ。
「ありがとうございます! 言質は取りましたからね! では、よろしくお願いしますね!」
「んなっ、一瞬で涙が引いた…? え、演技だったのか…? 恐ろしい子…」
「…ふーん、めいちゃん…」
驚いた顔でコチラを見る彼を尻目に、何か怪しいモノを見る目で私を見てくるふうちゃんと、仮面のナニカに向き合った。 …まだバリア越しだけど。
「…はぁ、仕方ないか…。 じゃあ、そういう事だから、仮面クン。 ここからは俺じゃなくてこの子達が相手するから、頑張ってね〜」
「一応空気を読んで喋らず待ってやったのに、なんデスかその言葉遣い!」
「敵なのに空気読むとか、それでいいのか、お前…。 ハイハイ、アリガトー。これでいい?」
「オマエはいつかゼッタイ殺してやるのデスよォォォォ!!」
私達と対応が違いすぎるような気もするけど…。どれだけ不快だったんですか…
「まぁ、お前の境遇も可哀想だなぁとは思うけどねぇ…。 …ま、いっか。 じゃあ、一旦さよなら!…あ、結界はあと10秒で無くなるから」
「お茶の事、忘れないでくださいね!」
「忘れない忘れない、だから安心して行ってきな」
「私も、少しは貴方…いや、アンタのこと信じるからね!」
彼は振り返らず、手を振って答えながら遠くへと飛んで行った。
…どうやってあの速度で飛んでるのかも、聞いてみようか。
「サテ、邪魔なヤツはヤット居なくなったみたいデスね…。この結界が壊れたその瞬間が、貴方達の最期デス」
「そんな事はないよ!さっきまでの私達じゃ無いって、その身で分からせてあげる!」
「守られてばっかりじゃいられないって、そう決意しかばっかりだもの。簡単には殺られないわよ?」
「ククッ、さっきまで動けもしなかった人間が何を言うのデス? スグに殺して差し上げマスヨォ!」
結界が無くなると同時に、真っ直ぐ私達へと突っ込んでくる。
私達が自分より下だと思い込んでいるからこその、馬鹿正直な特攻なのだろう。
しかし。
「どうせ突っ込んで来ると思ってたわよ!」
「侮りすぎじゃないかな?」
当然それを見越していた私達は、阿吽の呼吸で魔法を繰り出す。
「彼ほど早くは出せないけど!『白光鎖』!」
「あいつとは比べない方がいいと思うわよ!『風牙』!」
少しだけ構築に時間がかかってしまった為、お互いナニカの特攻を避けながら発動する。
私が発動した白光鎖は、白い鎖を召喚して相手を拘束する、単純な魔法。
ふうちゃんが発動した風牙は、空気を圧縮して牙のような形にし、それを飛ばして相手を貫く魔法。
この前発動した大技的なのは、少し構築だったり詠唱だったりに時間がかかるので、このような単純な魔法がメインウェポンとなる。
「グッ、少しだけ痛いデスが…。まァ、コンナノはかすり傷デスねェ」
ダメージを少し与えられはしたようだけど、すぐに鎖は解かれる。
まぁそうだよね…。
まだまだナニカは油断しているらしく、ハイスピードで、ひたすらその長い爪を使い切り裂こうとして来る。
「やっぱり、あと一段階は魔法を強くしない、と!いけないみたい!だ、ね!」
「少し時間はかか、る!けど、仕方ないかしらね! ──あっぶな!?」
時々当たりかけ、耳元で金属が風を切る音がする。
その音に気を取られているとまた次の突進が来るので、余裕がある今のうちになんとか対策を立てなければいけない。
時々肌に爪がかすり血が飛ぶ中で必死に避けながら考えていると、ふうちゃんと目が合う。
以心伝心、幼い頃から一緒にいるので大体考えている事は伝わる。
ふむふむ…そういう事ね!任せて!
「流石に動きが単調だよ!せい!」
「ガッ?!これハ、重イ…!?」
ナニカの動きを止める為、魔力で強化した蹴りを放つ。
見事急所に命中したのか、その場で腹を抑え少し立ち止まる。
やった!成功! 後はこの稼いだ時間で…!
「ふうちゃん!今だよ!」
「言われなくても!障害を切り刻む檻となれ!『嵐刃・牢』!」
この少しの時間で魔法の構築を完了していたふうちゃんが、構築していた魔法を放つ。
次の瞬間、動き出そうとしていたナニカの周囲に、風の刃で出来た檻が現れる。
「どうかしら? 私だって優秀な魔剣士なんだから、上級魔法くらいなんて事ないわよ!」
「でも私達、魔剣士って言いつつまだ剣は習ってないよね」
「うっ、それはそうなんだけど…。あぁもう! そんな事はどうでもいいから、めいちゃん! 早く決めちゃって! 魔法の維持だって大変なんだから!」
「勿論、言われなくとも!」
ふうちゃんに言われてから早速、上級魔法である『神技白絶』を構築していく。
んんっ、やっぱり構築が難しい…けど…! 早くしないと、ナニカが檻を破壊するのが先だ…!急がないと…!
「コノ程度の檻、スグにでモ…!」
「そう簡単に破壊させる訳がないじゃない!『風牙』!」
少しでも檻を突破される時間を稼ごうと、ふうちゃんが追撃を仕掛ける。
「ギッ、案外鬱陶しい檻デスね…。 アノ黒羽に消耗させられたので、あまり使いたくありませんデシたが…そうは言ってられないようデスね。 行きなサイ!『絶望の触腕』!」
ナニカがそう言うと、私達の周りから嫌な雰囲気を纏った黒い触手が、無数に生えてくる。
これは、ちょっと…魔法構築、間に合わないかも…
「こんな気持ち悪いのに意識を割かないで、めいちゃんは魔法構築に集中してなさい!」
「ふうちゃん?!でも、風の檻を維持しながらだと、ふうちゃんが危ないよ!
「いいから!こんなの、あの大量の魔物に比べたらヘッチャラよヘッチャラ! 今回こそは、ちゃんと守りきるんだから!」
「ふうちゃん…。 …分かった。私を守って!」
「勿論! 親友でしょ?」
ふうちゃんはそう言うと、周りの職種の撃破を始めた。
幸い一体一体はそこまでなようで、これならナニカと私の時間勝負になりそうだ。
「あと、四分の一くらい…!」
「あーもう、倒しても倒しても視界には触手触手触手! もういい加減飽きたわよ気持ち悪い!」
もう少し…!もう少しで…!
「……! 出来た! ふうちゃん、私の近くに!」
「分かったわ!」
それと同時に、ナニカも檻の破壊を済ませてしまう。
「全く、手こずりましたネェ…。デスが、これでもうオシマイデスヨォ!」
ナニカが、爪を構えて猛スピードで迫ってくる。
お願い、間に合って…!
「『神技』!『白絶』ッッ!!」
「そうはさせまセンヨォ! シネェェェ!」
ナニカが息がかかる程の距離まで近付いてきた所で、私の視界は真っ白に染まった。
…スピード的に、あの爪は間違いなく間に合わずに私の喉に届いたはず、なんだけど…。
痛くない…?
その白く染まった視界が元に戻った時に、その疑問の答えは出た。
「私を忘れてもらっては、困りますね」
喉元に届いていたであろう爪を、すんでのところで止めてくれていたメイド服の人が、私の視界に入った。
「…貴方は、確か…」
「レイゼです。 ご主人様のご命令により、必ずお守りすると誓いましたので、行動させていただきました」
肝心のナニカは、爪だけ残って、他の部分は全て魔法によって灰になっていた
どうやら、私は…
またまた守られた、らしい。
これからまーた少しだけ忙しくなるので、折を見て投稿して行きます。次回から、また黒斗君に視点は戻ります。
-追記-
6/7、見やすくなるように文の調整をしました。投稿遅れまくってるのにゼンゼロ面白くて止められません。ゼンゼロおもちろ〜い(反省の色無し)
ここまで見てくださり、ありがとうございます!気が向いたら感想や評価を是非よろしくお願いします!