黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~   作:せみふぁいなる

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いつもより少し短め。
急いで仕上げたので、自分で読んでて違和感がある所は後々修正します。


良いですか?落ち着いて聞いてください。

「…?…どういう状況?」

 

 グレイスが首をコテンと傾げて、今の状況を聞いてくる。

 目を擦り、寝ぼけているその姿は天使にしか見えない。ていうか天使だろこれもう。

 

 もう少しその姿を目に焼き付けたいが、流石に今はそうもいかないので、俺は今の状況を素直に伝える事にした。

 

「あ〜、グレイス。今の状況を伝える前に、まずは自分の体を見てくれないか?」

「…ん? 何もおかしい所は無い、と……おも……ぅ……」

 

 自分の体を見ている最中に、寝ぼけてどこかフワフワとしていた意識が覚醒しだしたのか、今起こっていることを理解して固まってしまったようだ。

 

 

 少しの間待っていると、脳内で整理がついた…いや、ついてしまったグレイスの体が震え始め、ギギギッと音がしそうな動きで此方を向く。

 

「……ご主人。 私、やっちゃった…?」

 

 涙目になってしまっている。可哀想なのに可愛い。 いや、可哀想は可愛い…のか…? いやいや、俺はその派閥には絶対行かんぞ。

 

 とりあえず嘘を付いても仕方ないし、正直に伝えよう。

 

「…良いですか? 落ち着いて聞いてください。 ……やっちゃってるね」

 

 それを聞いたグレイスは、「……分かった」と一言口にした後、移動して俺の膝に座り直す。何故か対面で。

 

「…私の事は見なかった事にして、続きをどうぞ」

「「無理がある(わよ)!!」」

 

 当然主人公コンビにも突っ込まれる。

 …正直に伝えても、もっと混乱するだけだろうなぁ…。

 でも、もう言い逃れもキツイかなぁ…どうしようね。

 

「お待たせしました〜、こちらコーヒーとパンケーキですね〜」

 

 あっ、コーヒー来た。

 …パンケーキは頼んだ記憶無いな?

 

「パンケーキは私です」

 

 レイゼさん、いつの間に…

 

「…以上でよろしいでしょうか? …あの、私は何も聞いてないし見てなかったので。 消すとかしないでください、お願いします。 …で、では、失礼しました!ごゆっくりどうぞ〜!」

 

 …少し来るのが遅かった理由が、何となく分かった気がする。聞いてたんですね。しかも割と前から。

 すっごい怖がってたし、あの店員さんには悪い事をした。あと消すとかはしないよ!

 

 …同じ悲劇が起きないように、防音結界だけ張っておこう。

 何で最初から張っておかなかったんだ俺。

 

 更に気まずくなった空気の中で、俺はグレイスの説明をするために口を開く。

 

「それで、この子の説明なんだけど…。 あんまりグイグイと質問はしないで欲しい、人見知りだから。 守ってくれるなら俺から話すよ」

「わ、分かりました」

「了解よ」

 

 念の為、グレイスに「自分で説明してみたい?」と念を込めて目は向けてみるが…

 抱き着いてイヤイヤとブンブン首を振っているので、まだ心の準備は出来ていないのだろう。

 まぁ、起きた直後だからそんな時間も無かったしな…。

 

 落ち着かせる為にグレイスを撫でながら、話を進める。

 

「この子の名前は、グレイス。 元々鎌があった所に居た時点で、何となく察しは付いていると思うけど…直球で言うと、グレイスは、あの鎌だ。 人型と武器型で自由に切り替えれるんだけど…今回のは多分、話に参加出来なくて暇になったから寝た結果、無意識で切り替わっちゃったのかな」

 

 そういう時もあるよね。グレイスはまだ、生まれてから全然時間経ってないし。 …だから申し訳なさそうにしないでくれ、グレイス。

 全然大丈夫だから。 ね?

 よーしよし、いい子いい子。

 

 そんな事を思っていると、目の前の二人が少し不審そうに目線を送ってきているのに気付く。…あ〜、思い付く限りだとアレかな?

 

「そんな目をしなくても大丈夫、なんか怪しい実験〜だとか、そういうのでグレイスが生まれた訳じゃないからさ。 未だによく分かってないけど…奇跡が重なって生まれたのは間違いないし、むしろこの出会いは運命だったと思ってるよ。 …レイゼさんとグレイスが居るお陰で、寂しい思いはしなくなったし。 世界と神様に感謝だね!」

 

 俺の能力で生まれました〜だなんて、そんなバカ正直に言うとワタワタとするだろうし、これくらいはぐらかして言えば良いだろう。

 

「一個だけ、聞いても良いかしら」

「はいそこの草壁さん、どうぞ」

 

「…さっき言ってた『ご主人』って呼び方、アレってアンタの趣味?」

「ちゃうわい! そんな訳が無いだろ!」

 

 そんな訳無いだろう、いきなり何言い出すんだこの娘は!

 もしそうだったら、俺は小さい子にご主人と言わせるのが好きな変態になるだろうが!

 

 …俺から『やめて』って言った事あったっけ?

 オーマイガー、俺は変態だったのかも知れない。救えないヤツめ…

 

「アッハハ! 流石に冗談よ、冗談」

「タチの悪い冗談だよ…。 せめてもう少し前振り的なのをくれ、心臓に悪いから…」

「ごめんごめん。 じゃあ、改めて質問があるんだけど、良いかしら?」

「…さっきみたいなのじゃ無いなら…」

 

 危うく変態だったと確定してしまう所だったんだからな…

 …えっ?もう手遅れ? そんなバカな。

 

「その、こんな事を聞くのは流石に踏み込み過ぎだって自分でも思うから、嫌だったら謝罪するわ。 別に答えなくてもいいから」

「お、おう? うん、まぁ、了解した」

「了解されたわ」

 

 前振り的なのくれ、とは言ったけど。そんな重そうな前振りが来るとは。

 あと結構ノリ良いのね、原作だとそんな描写あんま無かったからビックリ。

 

「えっと、アンタってパッと見だと私達と同年代に見えるけど…。 その、寂しい思いをしなくなった、とか言ってたし、普段は一人だったのかなって思って…。 …あっ!馬鹿にしてるとか、そういうのじゃ無いわよ! ただ、恩人が心配になっただけだから。 だから、仮にそうなんだとしたら、今はもう吹っ切れられたのかっていう質問だったんだけど…」

 

 ほうほう。

 つまりは、過去に何かがあって、独りになってしまったんじゃないか、と。そう思って、心配してくれてる訳だ。

 …結構踏み込んで来るなぁ、風花ちゃん…。明華ちゃんも同じ事を思っていたのか、申し訳なさそうな顔をしつつもソワソワしてるし。

 

 まぁ、ちゃんと事前に言ってくれてたし、これも嘘は言わないで答えておこうか。 少しボロを出した俺も悪い。

 安心させられるように、二人に微笑んで答える。

 

「そんな心配そうな顔をしなくても、今は大丈夫。 さっきも言った通り、今はこの二人が居てくれてるから。 …普段は一人だった、という質問にはYesと答えておこうか。 とは言っても、もう大分前の事だからね。 俺としてはもう整理も付いてるし、そこまで心配する事じゃない。 だから安心して欲しい」

 

 嘘はついていない。

 前世の事を言っているだけだし、整理が大分前についたのも本当。今は寂しくないのも本当だし、もう気にしてないのも本当だ。

 

 だから、俺の言った通り安心して欲しいんだけど…。

 う〜ん、ダメだな。悲しそうな表情が、瞬間強力接着剤でくっついてるんですかってくらい顔から離れない。

 笑顔でいて欲しいんだけど、どうすれば女の子って笑ってくれるんだ?わ、分からんぞぉぉぉ……

 

 と、とりあえず冗談でも言ってみるか?

 

「そんな顔をしなくても、君達は泣いてばっかりだった俺と違って笑顔が似合うんだから。 ニコッてしよう、ニコッて! 笑う門には福来るってね! 俺は笑えなかったから福は来なかったけど!」

 

「それを聞いて、余計に笑えないですよぉ…」

「ホントにね…」

 

 …ふむ。

 

「…これ、もしかして失敗したヤツ?」

「…ご主人、私と同じくらいやらかしてる…」

 

 グサッ!

 

「ご主人様、流石に今のは私もどうかと…」

 

 グサグサッ!!

 

「「ご主人(様)、色々と大丈夫(ですか)?」」

 

「もうやめて! 悪かったから! ジョークが有り得ないくらい下手ですみませんでしたぁ!」

 

 俺のライフはもう0よ!

 なんならオーバーキルだよ、死体蹴りだよぉ!

 

「うぅ、俺のジョークセンスが無いばっかりに……。 あっ、二人は本当に気にしないでいいからね。 あんな風に言えるくらいには、本当に気にしてないから」

「わ、分かりました…。 あの、これからは私達もいるので、もっと寂しく無いですからね!」

「そ、そうよ! …だから、もうああいうブラックジョークはやめてよね。本当に」

「はい。すんませんでした」

 

 明華ちゃんの気遣いが染みる…

 

 

「さ、さて。 とりあえず、話しておくことはこれくらいかな?うん。 …レイゼさん、後は何かあったっけ?」

「そうですね…あぁ、あれは伝えておいた方が良いのでは? 本日の件も、私が居なければ相打ちとなってしまっていた訳ですし」

 

 あぁ、うん。確かにそうだね。

 

「じゃあ、これだけ伝えて、今日は解散にしようか。大事なことだし」

「大事なこと、ですか?」

 

「あぁ。 …というのもだ、今日は君達二人に加勢する事が出来た訳だけど。 いつも加勢出来る訳じゃないって事を覚えておいて欲しいんだよね。 そりゃあ俺にだって目的はあるし、可能な限り手助けはしたいと思っている。 …が、しかし。当然俺の体は一つしかないからな、いつも助けられる、という訳じゃ無いんだ。 だから、二人にはもっと力をつけて欲しいと思ってる。 俺が居なくても何とかなるように」

 

 そこまで言って、俺は席を立つ。

 なお、グレイスは抱えたままである。当然だろ!?

 

 2人は何か言いたげにしているが、立ったまま構わず話を続ける。

 

「またどこかで出会った時、頼んでくれれば何時でも稽古はつけるよ。 だから二人共、頼んだよ。 …あぁ、今日の代金はこっちで全部支払うから、気にしないでね。 それじゃあ、また会おう!」

 

 ついでに防音結界も解除しておく。いやぁ、魔法って便利だ。

 

 こうして、俺にとっての実質初仕事は、なんだかヌルッと終わった。

 帰った後は、いっぱいグレイスを撫でて、まだちゃんと根に持っていたレイゼさんを構った。

 またすぐに次の敵は出てくるんだし、今の内に癒されておかねば!!

 

 

──────────────

 

 今日は濃い一日だった。

 ふうちゃんも、色々な感情と疲れがごっちゃになって、よく分からない顔になっている。なんて言うんだろう、虚無顔…?

 この前SNSに流れてきた、全てを理解したハムスターみたいな顔になっている。 少し面白い。

 

 でも、疲れはしたけれど、あの人…黒斗さんの事を今日で結構知れた気がする。ちゃんと信頼出来る人だとも思えた。

 

 でも、あの時一瞬見えた悲しい顔の正体が分かって、少しモヤモヤもする。気にしてないとは言ってたけど、それならなんであの時、あんな顔をしたのか。

 何か重い過去を、まだ引きずってる証拠だと思う。だから、私達も居るってしつこくアピールしたのだ。

 

 黒斗さんも最後に、強くなれ的な事を言ってたし……。

 …うん、決めた。私はあの人の事も、いつか絶対に救う。

 

 私の身の周りの人は、物理的にも、精神的にも、絶対に救ってみせる。

 その為にも、黒斗さんが言っていた通り、頑張って強くならなきゃ!

 

「よ〜し、ふうちゃん! そうと決まれば特訓だよ!」

「へ?! な、なに?どういう流れ?」

「私達も強くなるんだよ! ふうちゃんも、守ってもらってばっかりで悔しかったんじゃない?」

「それはそうだけど…。 ───あぁもう、分かったわよ! とりあえず、まずは学校で一番になれるくらいには強くなるわよ!」

「そうこなくっちゃ! じゃあ早速、私の家にごーごー!」

「ちょっと、押さないでめいちゃん! なんか前より力強くないかしら?! …あっ、ご馳走様でした! 美味しかったですまた来ます!」

 

 しばらくは自分達で努力して、行き詰まったら黒斗さんが言ってた通りに、稽古をつけてもらおう!

 

 守ってもらってばっかりじゃ、居られないからね!

 

 

 

「あ、ありがとうございました〜……。 ………凄い事聞いちゃったかも…。 わ、私、本当に消されないよね。 …今日は背後と窓に気を付けないと…」

 




咳が少しずつ良くなってきたよ!やったね!

黒斗君は、前世で長年独りでした、とだけ。

-追記-
6/10、前書きにもあった通り、見やすくなるように文を修正しました。これで少しでも見やすくなってると嬉しいなって。

ここまで見て下さりありがとうございます!気が向いたら是非、評価や感想お願い致します!指摘なども大歓迎でございます!
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