黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~   作:せみふぁいなる

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結構遅れました。
ちょっと忙しくて…ユルシテ…


魔獣に含まれる魔力は魔獣1匹分…じゃない時もある。

 

 やぁ皆、俺だ!!

 人は魔力を過剰に摂取すると死ぬ!俺は癒しを過剰に摂取すると死ぬ!それじゃ!!

 

 

 嘘です、行かないから行かないで。

 

 あれから3日経ったのだが。その3日間俺は、日課のトレーニング以外はレイゼさんとグレイスに癒されていた。

 心が疲れちゃってェ…もうしばらくお外に出たく無くてェ…

 

 で、そんな生活を続けていたら当然、頭がボケると言いますか。

 少し頭がポケ〜っとし始めているかと、自分で感じる位にはなって来てしまった訳だ。

 そうまでなってくると、トレーニングにも多少なりとも影響は出てくる。そんな事態に危機感を覚えた俺は、現在久しぶりに外に出ていると言う訳だ!

 

 …ぶっちゃけ、人酔いが辛い。前世含めてインドア派だし。

 

 いくら強くなっても、誰にでも平等に襲い掛かってくる酔いを俺は許さない。

 魔法を使って治そうにも、これだけ周りに人がいると流石に誰かにはバレると思う。敏感な人は、本当に微量な魔力でも気付いてくるからね。油断は禁物なのだ。

 

 

 あ~、甘い物食べたい…このストレスをケーキとかで発散したい…

 レイゼさんとグレイスには既に把握されているが(言ってはいない)、俺はそこそこの甘党である。

 砂糖を摂取するだけで、半年は生きていけそうな感じがする。…それは言いすぎか。

 

 え?喫茶店でコーヒー飲んでただろ?

 いやいや、甘党なだけで別に飲めはするさ。あとほら、コーヒーを上品そうに飲んでた方が、なんかカッコイイじゃん? …つまりはそういうことだ。オーケイ?

 

 

 

 実を言うと、もうお目当ての店は検索してある。だから、今はそこに向かって歩いてる最中だ。

 どうやら、表立った人気は無いが、隠れた名店的な感じでコソッと営業しているらしい。

 行くしかないよね、そんなの。

 

 ふへへ、待っててね、まだ見ぬケーキちゃん。もうすぐ会えるからね!

 

 …おっと、いかんいかん。涎が出てしまう所だった。

 我慢が出来なくなってきたので、ペースを早めて少し早歩きで歩く。

 

 …やっぱ走ろうかな。人混みが無くなってきたらそうしよう、うん。べ、別に欲に負けた訳じゃなくて、人混みが辛いから走るだけなんだからねっ!

 

 

 

──────────

 

 

 さぁさぁ、到着致しました。

 本日俺の憩いの場となる予定のお店、『Sweet carpet』さんでごぜぇます。

 いやぁ、ここまで来るのは実に大変だった。

 全力では無いけど、そこそこ勢いを付けて走ったからね。

 

 なんか女の子に話し掛けてた金髪の人達を邪魔だったので正面から突破し(轢いた)、なんか目出し帽を被ってパンパンの袋を持った人達を邪魔だったので車ごと突破し(轢いた)、信号無視して突っ込んできたトラックを邪魔だったので突破し(轢き返した)、ふと目に止まった伸びる猫ストラップガチャをなんとか突破し(引いた)、道のど真ん中で部下に土下座させてるオジサンを何となくムカついたので突破し(轢いたし引いた)、そうしてようやくこの場に辿り着いたのだ。

 

 いやぁ、頑張った後の汗というのは良いものだ。なんか、清々しいというか。

 気分が良いね!

 

 そして、そんな頑張った俺へのご褒美として、本命のケーキが目の前の店の中で待っている、と。

 行かねばなるまいて!

 

 ウキウキで扉を開けて店内に入ると、そこでは甘い香りとオシャレな店内がお迎えしてくれる──

 

 

「ガアァアァァァ!」

「誰かッ!たすっ…助けっ…!」

 

 ──という訳では無く、むしろ血と絶望の香りが鼻についた。

 上機嫌で扉を開けた俺の目に入った店内の様子は、とても凄惨なものとなっていた。

 …主に魔獣のせいで。あのさぁ……

 いきなり過ぎないか?外装はなんとも無さそうだったのに…

 

 店内の壁はボロボロ。そこにあったであろうはずのケーキは見るも無惨な姿で辺りに散乱し、壊された椅子やテーブルで床は埋め尽くされている。

 そして、そんな廃墟のようになってしまった店内の真ん中では、制服を着ている事から恐らく店員であろう人間を持ち上げ、大口を開けて今にも食い殺さんとする魔獣の姿があった。

 

 ───っ、ふぅぅぅ。

 色々と言いたい事はあるが、とりあえず怒りに任せて羽を一瞬だけ6枚解放し、ストレス発散も兼ねて全力で魔獣に踵落としを御見舞いする事にする。

 

 足を目いっぱい上げてぇ!はいっ! いっち、にーのっ! さァァァァァんッッ!!!

 

「うわっ?! いったた…」

 

 魔獣は声を出す間もなく潰れたトマトのようになり、パァンッという破裂音と共に、ドス黒い液体が見境無く辺り一帯を汚す。

 少しやり過ぎてしまったようどす。美味しそうに潰れてはりますなぁ、ホホホ。

 

 掴まれていた人は今の踵落としの衝撃で少し吹き飛び、尻餅を着いたらしい。しばらくお尻をさすっていたが、少しすると摩るのをやめて元の魔獣が居た場所を見る。

 怪我をして痛いだろうし、こっそり治してあげる。主人公組が特別なだけで、この魔色を見せびらかすつもりなんて無いし。

 

 …元魔獣、現潰れたトマト〜ケチャップを添えて〜の姿を見て目を点にしている。…なんか、グロ画像を見せてしまったみたいで罪悪感が湧いてくる。

 反省はしてるけど後悔はしてない。

 まぁほら、店が崩落しない程度には加減したからさ、ね?許して。

 

 

 さて、そろそろ俺の魂の叫びを口に出して良いだろうか。…良いよな?良いな、ヨシ!!

 血の匂いとケーキの甘い匂いが混ざった、大変鼻によろしくない空気を大きく吸い込み、肺を膨らませる。

 

 充分にチャージが完了したタイミングで、俺の魂を解放するっ!!

 

「──俺のぉっ! ケーキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ひぅっ、ビックリした! どうしたんですか、いきなり叫んで?! 耳痛いんですけど!」

 

 すっごい楽しみにしてたと言うのに!

 タイミング悪すぎだろうがよぉ、オォン?!

 見ろよ、ケーキの姿を! これケーキ君泣いてるよ絶対、俺には分かるんだ!

 いちごソースがケーキの血に見えてきたよちっくしょう!

 

「やっぱり死体も残さないで滅すべきか…。 魔獣め、今から潰れたトマトから無にランクアップさせてやるから有難く思えよこの野郎…」

「それランクアップなんですか?! と、取り敢えずその手から出てる物騒な魔力を止めませんか?! お話なら聞きますから!」

 

 むぅ、店員であろう人から必死に止められる…。コレは大罪を犯したというのに…。

 

 ただまぁ、うん。さっき魔獣に殺されかけてた時の顔より必死な顔で止められると、流石にこのまま無にするというのも忍びないというか。

 ちょっと冷静になってきたので、魔力を取り敢えず霧散させる。

 

 真の強者は感情に振り回されないって言うしな!うん!

 …振り回されまくってたのは、無かったことにしよう。

 

「…ホラ、止めたけども…」

「はぁぁ、良かったぁ…。 お店ごと消されて、もうお菓子を作れなくなるかと…」

「流石にそんな事はしないが?!」

 

 全く、俺をなんだと思っているのか。

 

 …いきなり魔獣を弾き飛ばしたと思ったら、膝を着いて大きい声で叫ぶキチガイか。どうやらそう思われても仕方ないらしい。

 客観的に見れるならもうこういう事しなきゃ良いのでは?とか思ってる奴、それは違うぜ。

 一時の感情に振り回された後、冷静になっていって俯瞰して見れてるだけだぜ!! やっぱり強者とは程遠いじゃないか(呆れ)

 

「あっ、申し遅れました。私、このお店の店員をしております、泡田 菓折と言います。 …見えなかったので多分ですけど、あの魔獣を、その…”アレ”に変えた方、ですよね?」

 

 そう言い、気まずそうにプルプルと震えた手で、暫定ケチャップ君を指差す。

 ここでシラを切る理由もないので、頷いて肯定しておく。

 

「あ、やっぱりそうですよね…。 や、やり方はどうあれ、助けて頂いたのは事実です! ありがとうございました! あともう少しで、もう二度とお菓子が作れなくなる所でした…」

 

 あ、死ぬ所だった〜とかじゃなくて、お菓子優先なのね。

 原作には居ない子だけど、どうやら中々個性的な雰囲気がするなぁ。

 あ、やり方に関してはごめんなさい。ついこう、カッとなっちゃって…ね?

 

「それだけお菓子作りに精を出してるなら、魔獣がお菓子作りに邪魔になる事なんて分かり切ってるんだから倒せば良かったのでは?」

「勿論、私も抵抗はしたんですよ? タダでやられる訳にはいきませんし。…ですが、あの魔獣、普通の強さでは無かったと言いますか…」

「…一撃で殺っちゃったから、俺は分からないや。詳しく説明して貰えます?」

 

 すんません。正直違いが分かりませんでした。

 これが強者を目指している者の姿か…?本当に…?

 

「はい。 普通の魔獣って、基本は一般の人でも対処出来る位の強さじゃないですか。 でも、あの魔獣はそうじゃなかったんです。 例えるなら…そう、対魔局の方々が出てくるレベルと言えば分かりやすいでしょうか?」

 

 対魔局。正式名称は対魔獣公共安全局…だったっけ?確かそんな感じの名前だった気がする。

 彼らは、特定の時期にだけごく稀に出現する「例外魔獣」の対処を担っている他、通常の魔獣による被害が、何らかの事情によりその場の人達で止められない時に出動する。

 

 まぁ、大体魔獣専門の警察、と認識して貰えれば間違いはないと思う。

 

 そんな”彼らが出てくるレベル”という事はつまり…だ。

 

「それは、このお店に突如として”例外魔獣”が湧いたって事…で、合ってるよね?」

「はい。私では、どうする事も出来ませんでした。 幸いな事にお客様は居なかったので、被害としては店内の設備等だけで済みました」

 

 あぁ、うん。こりゃストーリー進んでるね、絶対。

 例外魔獣で確信した。

 

 なんかちょっと早くない?もう少し後に、主人公二人組の方で初めて出会う事になると思ってたんだけど。

 うーん、今後の予定をまた変えるべきだなぁ。頭使いたく無いんだって、俺馬鹿だから。 やーい、バーカバーカ!…すんません馬鹿で。

 

「ケーキの事は悔しいけど、助けられる人は助けられたし…。 それに、その話を聞いてやる事も出来ちゃったし、俺は帰るとするよ…はぁ…」

 

 溜息をつきながらトボトボと歩き出す。

 せっかく甘い物を食べられると思っていたのに…。

 

 入口辺りまで歩いたタイミングで、泡田さんが思い出したように声を上げる。

 

「あっ、そうです! ちょっと待ってください、お話しておきたい事があったんでした!」

「へ? あ、はい。待ちます」

 

 言われた通りに待ってみる。

 何かご用でしょうか。今後の予定なんて後でも決めれるしね、この際何でも手伝いますよ、えぇ。

 

「その、先程大声を出していた時に、『俺のケーキがぁぁぁぁぁ!!』って言ってたじゃないですか」

「その節は驚かせたみたいで、すみません。 以後気をつけます、はい」

「あ、いえ! 責めている訳では無くてですね?! 実は、まだキッチンは使えるんです。 荒らされたのはこの表側だけなので…」

 

 ……おっと?

 

「──それで?」

 

「ひぅ、突然目つきが怖い…。 ンンッ、それでですね。 助けて頂いたのに、大声を出す程に求めていたであろうケーキを食べられないのは、非常に酷な話だと私は思うんです。 ですので、ケーキは流石に直ぐには作れないですが…。 それでも、簡単なお菓子は直ぐにお作り出来るので。 お礼も兼ねて、宜しければ食べていかれませんか? 私としても、ココのケーキをそんなに求めてくれていた事が嬉しいんです」

 

 奇跡的に無事だったメニュー表を床から拾い、泡田さん…いや、神様が問い掛けてくる。

 後光が差している幻覚が見える。なんだこれは、神々しすぎるぞ!真の神様はここに居たのか?!

 

 その、魅惑的な問い掛けに俺は…

 

 

「ハイ!! 喜んで!!!!!!」

 

 勿論、出来る限り満面の笑みで了承を返した。

 

 

 

 

「そういえば、例外魔獣相手によく耐えましたね? 普通なら抵抗する間もなくやられると思うんですけど…」

「──お菓子の為なら、私はなんでもします。 えぇ、なんでも…」

 

 な、何をしたんだこの人は…

 お菓子の為を想って覚醒したのか、それとも本当に手段を選ばずに迎撃したのか…

 

 どちらにせよ、菓子狂いである事は間違いないと思う。

 

「後はこれをオーブンで焼けば完成です。 それまで、お茶でも飲んでゆっくりお待ちください」

「そうさせていただきます、神っ…泡田さん」

「神…? あと、何故突然そんなかしこまっているんですか?」

 

 危ない、心の中で呼んでる方のを言いそうになった。

 流石に口に出す程愚かではないぞい。ギリセーフだ、多分。

 

 ゆっくりと丁度いい形の瓦礫に座ってお茶を飲んでいると、お店の扉が開く。

 あんな事があった後なので、少し警戒しながらどんな人が入ってくるか見る。

 そして、その扉を開けた人はすぐに分かった。

 

 綺麗な緑をしたポニーテルの髪。

 学校帰りなのか、制服を着ており、右手にはカバンを持っている。

 もう片方の手には、引っ張ってきたと予想がつく友人の手が。仲がよろしいことで。お兄さんまた尊死しそうだ!

 そして、その友人の髪は鮮やかな白。ポニーテルの子と同じく、制服を着ている。

 

 そして、その二人は店内の惨状を見て困惑の表情をしている。

 少しでも何が起こったのかを把握する為に店内を見渡し、とうとう緑のポニーテルの子が”ソレ”を見つける。

 

 未だに掃除されていない暫定ケチャップ君の死体…ではなく、これも同じく未だに掃除されていない、グチャグチャになって辺りに散乱したケーキの残骸。

 その姿を。

 

 ”ソレ”を発見した途端、彼女は体を震わせ、瞳からは透明な液体が少し零れる。悔しそうに拳を握り、とうとうその子は膝を着いた。

 そうして、心のままにその子は叫んだ。

 

「私のッッ! お菓子がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ソコなの、ふうちゃん!?!?」

 

 はい、お察しの通り。入って来たのは主人公二人組こと、明華ちゃんと風花ちゃんです。

 

 風花ちゃんが、叫んで少しスッキリしたのか、俺の事を見てくる。

 …睨んできてない?えっ、何?

 全然怖いが?

 

 何故かコチラを睨みながら、風花ちゃんが口を開く。

 

「アンタがやったのね!? 絶対に許さないわよ!!」

 

 あー、ね? 睨んで来た理由はそれね?

 

「おっけー、少し落ち着こう。 …なんでそうなった?!」

 

 こればっかりは普通に誤解だ!!




読み方は泡田 菓折(あわた かおり)です。
安直に泡立て器とお菓子から名前を取りました。
忙しさが少し治まったら、色々と過去の文に手を加えたいと思ってます。
編集が出来次第、活動報告とXにて順次報告致します。

-追記-
6/10、自分の納得いってない部分や違和感のあった部分などを修正しました。読みやすくなってると嬉しい。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!よろしければ是非、感想や評価の方お願いします!作者のモチベーションUPに繋がります!
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