黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~   作:せみふぁいなる

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子供の時、作った料理を親に食べて貰えたら嬉しかったよね。

 

 どうも、もう原作とかあんまり気にしない方が良いのかなぁと思い始めて来た黒斗です。

 と言うのも、薄々察してはいたのだが……この世界、割とマジで俺も知らない未知の危機が、思った以上に多いのでは無いか問題が深刻だからだ。

 

 昨夜決意を固めた後、ゆっくりとココアを飲みながら考えてみたのだが、最終的に”全部後手後手になると色々な組織が出てきて本格的に手が付けられなくなりそう”という結論に至った。

 守る人・物が増えると言うことは、裏を返せば俺の弱点が増える事にもなる。あのストーカー半死男を見て思った事だが、もっと早く行動を起こされて主人公組を狙われていたら本当にマズい事態になっていただろう。

 あの時つけられていた事は分かったが、”いつから”かは……正直、分からない。悔しい限りだが。

 

 羽を出していなかったとは言え、それでも俺の鍛えてそこそこの自信がある感知能力を掻い潜れる隠密能力を、アイツは持っていたという事だ。

 

 そして、それ程の実力を持つ彼ををただの偵察として使う……しかも、監視していたと言う事は助けにも入れただろうに、簡単に見捨てる判断を取る事が出来たというあちらの戦力の巨大さ。

 

 敵は思った以上に強力であり、そんな奴らを相手に全て後手後手は世界滅亡待った無しだろう、と結論を出した。

 でまぁ、そうなると原作云々とか言ってないで、そちらの対処にリソースを割いた方が明らかにいいよなぁ、と。

 それで開幕の言葉に繋がるんですね。

 

 溜め息が出そうだが、そこは我慢。

 不安になっている所は、あまり見せたくない。男の意地ってやつだ。

 

 

 さて、そんな今朝の俺の行動だが、今語った内容を考えて居た割には、呑気に朝食の仕込みをしていた。

 いやその、後手に回るのは得策では無いけど、それはそれとして姉妹ちゃん達の朝ごはんを作ってあげたいなと……。

 そう考えたら、後は体が勝手に仕込み出していた。俺は悪くない。……強いて言うなら、勝手に動いた頭と手が悪い。いけない子だ。

 

 

 調理最中、レイゼさんには「私がお作りしますよ」と言われたが、そこはゴリ押した。

 せめて初日は作りたかったんです、許して。

 

 何気に、この世界に来て俺が自分で料理をしたのは初めてか。久々に作ったので、割と心配である。

 

 ……勿論、黒を使って"そして完成した物がコチラになります"と手は抜いていない。それじゃあなんか、心が籠ってないような気がする。

 黒は籠ってるだろうが。

 

 久々なのと、前世で自分の分を作っていただけだから、自信は無い。朝はお米派なので和食にしてみたのだが……。

 ……まぁまぁ、レイゼさんも「ご安心ください。ちゃんと美味しいですよ」って言ってたし、大丈夫なハズだ。

 ほら、現に姉妹も喜んでくれて───

 

「ごめんなさい。図々しいのは承知なんだけど……おかわりって、無いかしら…? 少し物足りなくて…」

「…お、おいひいれすぅ……」

 

 ───逆に予想以上に食べてくれていた。結構嬉しい。

 

 ただのお味噌汁と卵焼きでこの喜びようとは、昨日は初対面だったのもあって遠慮してくれていたのだろうか。

 これからはいっぱい美味しい物食べて良いからね…。おかわりもあるぞ!

 

 その可能性も考慮して事前に作ってあったおかわり分を盛り付け、また自分の席に戻る。

 姉妹ちゃん達は待ってましたと言わんばかりに手を付け始めていた。

 そして、そんな様子を見ていて俺はつい、思ってしまう事がある。

 

「……俺が作った程度のご飯で、ここまで喜んでもらって良いのだろうか……」

「……ご主人、めんどくさい性格」

「ウッ…! 最近ズバッと言うなぁグレイスは…。俺泣きそう…」

 

 グレイスの言葉がグサッと胸に突き刺さる。この言葉先端に返し付いてて抜けないんですけど!

 

「…そしたら、私が慰めてあげる」

「新手のマッチポンプ?!」

 

 ウチの子、最近甘え上手なのに辛辣だなぁ…。

 俺と関わるとストレートの打ち方が鋭くなるスキルでもあるのだろうか。速さも鋭さも攻撃力も一級品である。

 

「……美味しい物は美味しい。それじゃダメ?」

「う、それは……まぁ、確かにそうかもしれない」

「…それに、誰かが自分の為に作ってくれたっていうだけで、凄く幸せになるものだと思う。……だからご主人様はそんな事考えてないで、堂々としてればいい」

 

 …この子、俺より人生経験豊富なのでは?

 そう思ってしまうくらいには大人びている気がする。

 

 うん。どうせ俺が作ったとは言ってないし、そんな気にする必要も無かったか。

 戦闘関連以外だと、途端に自信が無くなってしまうのが俺の悪い癖だな。

 かと言って自信を持ちすぎるのも良くは無いのだろうが。

 

「……あ、ご主人が作った事なら、さっきレイゼが話してた」

 

 な、なんだってぇ?!

 いかん、グレイスに諭されて落ち着いていたのに途端にまた不安になってきたんだけど?!

 

 レイゼさんの方をバッと見ると、本人は『悪い事はしてないですよ?』と言わんばかりの落ち着いた顔で俺の後ろに立っていた。

 この人もう食べ終わってるぅ?!

 

「……ご主人様が朝から仕込みをしていた頑張りを見ていたので、つい口が滑ってしまいまして…。ですが後悔はしていません。ご主人様の高評価に繋がるのであれば、それはつまりご主人様のお役に立てたという事ですので」

 

 うぐぐ……。

 善意が元ならば、俺も言いづらい…。

 だって、それだと100%俺の為にやってくれてるじゃん…。むしろありがとうじゃん…。

 

「ですがご主人様も、なんだかんだで本当は悪い気はしていないのでは?」

「…まぁ、うん。自分の料理を人に食べてもらうのって、実は初めてでさ。作った側もこんなに嬉しい物だとは」

 

 そう。嬉しいは嬉しいのだ。

 ちょっと自信が無くて不安になってしまっていただけで、この心に感じる温かさはきっと本物だ。

 

「……ん。ご主人、いい笑い方してる」

「……?」

 

 そんなに笑っていたかと、自分の口角を触って確認すると、確かに自然と笑っていた。

 前世ではきっと、黒白をやっていた時以外はこんな笑い方出来ていなかっただろう。

 

 思い付きでした料理が、こんな感じで自分に返ってくるとは。

 人を幸せにする事で、俺もこの気持ちになるならば。俺も更にやる気が出てくるというもの。

 昨晩大きくなったはずの気持ちが更に大きくなる。メタル〇ングがメタル〇イザーになったような物だ。

 こんな短期で更に想いが加速するとは、もう既に俺は充分に幸せになれているのではないかと思う。

 

 

「……うん、よし。やる気出てきた! グレイス、今日の外出は着いてきてくれるか? ちょっとやる事が多いんだ」

「……もちろん。ご主人の武器として、頑張る」

 

 手早く残りのご飯を食べ終え、外へと向かう。一日のスタートが裏世界ではなく表世界からなのも初めてだ。

 ……あっそうだ。行く前に伝えないといけない事は伝えないと。

 

「そこの美味しそうに食べてくれてるお二人組さん、食べながらでも良いから適当に聞いて貰えるかな?」

 

 二人が食べながら視線だけ向けてくる。

 美味しいようでなにより。

 

「昨日夏美ちゃんの方には少しそれっぽい事を言ったと思うけど、この家に泊まるのは無期限で大丈夫だよ。だから夏希ちゃんも昨日会った時みたいな顔してないで、元気出そう!」

「……え? む、無期限?! っていうか思ってた事バレッ?! えっ!?」

 

 夏希ちゃんがガタガタッ!と椅子を鳴らし、勢いよく立ち上がる。驚きの余りそこまで気が回らなかったのか、衝撃で箸が落ちるが、そこはレイゼさんがノーモーションでキャッチした。

 ナイスキャッチです。

 

 夏美ちゃんも流石に無期限とは思わなかったのか、食べる途中の動作のまま固まっていた。

 頭の上にローディング中のグルグルが浮かんでいるのが幻視できてしまう。

 

「じゃ、行ってくる。レイゼさん、二人に色々と家の事教えてあげて! この二人には裏の方も言っていいから!」

「かしこまりました。行ってらっしゃいませ」

 

 二人のことはレイゼさんに丸投げして、俺は玄関へと進む。グレイスがとてとてと着いてくるのがいつ見ても可愛い。

 あとレイゼさん、本当にいつもありがとうございます。

 

 さて、今日も一日、頑張るぞい!

 

「……ご主人、気持ち悪い」

 

 ……いいかい?グレイス。

 言葉の槍は人を貫いて殺す事が出来るんだよ。

 

「……じゃあ、私が慰める?」

「だからそれマッチポンプッ!」

 

 

 

──────────

 

 

 

 さて、本日のやる事は大きく3つ。

 まず主人公組の特訓の続き。これは今日も施設で合流し行うと事前に伝えてあるので、時間になったら来てくれるだろう。

 

 次に、前に刺客っぽい奴を送り込んできた……えー……あぁ、そうそう。無界教の、出来れば壊滅。無理だと判断した場合、ある程度吹き飛ばして戦力を削る事。

 これは最優先事項かつ、必ず慎重に行動する事を心に決めている。その時間になったら主人公組の護衛をしてもらう様、事前にレイゼさんに頼んであるが……、それでも慢心は良くない。相手は未知の存在、可能な限りで潰せる可能性は潰しておく。

 今日の襲撃はその為の敵情視察、もとい情報収集も兼ねている。原作の方の魔獣騒動はまだ少しだけ余裕があるはずなので、タイミング的に今日が都合が良い、という訳だ。

 

 で、最後に余裕があったら新しく武器の創造をする事。これは今までの簡易的な物ではなく、グレイスのような気合を入れた一振りの創造をしようと思っている。

 それと並行して、グレイスをどうにか更に強化出来ないかも試してみる。俺の力ならもしかしたら行けるやもという判断でだ。

 

 ”もしかして”の可能性から考え始めた事なので、当然グレイス本人にも許可は取ってある。少しでも危険な香りがしたらやめよう、とも話してある。

 なお、今回の創造はレイゼさんにも近くで一緒に見ていてもらう事にした。新しく創造した武器に、またグレイスのように自我が芽生えた場合に備え、自己紹介なりなんなりをスムーズに行える事。また、万が一に対しての備え等、色々な理由が詰まっている。

 

 ナニゴトモ、ジュンビ、ダイジ。オレ、マナンダ。

 

 

 さて、本日のやる事を整理し終えた所で、話を変えようか。

 

 まどろっこしくてウズウズしてる人もいるのでは無いだろうか。

 

 何故無界教を今すぐにでも滅ぼしに行かないのか、と。

 

 こんなアバウトに言ってウルトラやっべーパワーがあるんだから、そんな世界の危機レベルの危険すぎる宗教、それこそ幸せ云々の為に今すぐにでもぶち壊してしまえよ、と。

 分かる。言いたい事は凄く分かる。

 

 が、しかし。ちゃんと理由があるのだ。

 まず、さっきから言っている通り、敵は未知の存在だと言う事。原作に居なかった為に情報が少ない為、慎重に行動する必要がある。

 

 次に、これも前述したが、敵の戦力はかなり大きいだろうと予測出来る事。羽を出してない俺は、それでもレイゼさんを探知出来るくらいはある筈なのだ。それを掻い潜る奴を簡単に捨てられるかと問われた時、俺なら即ノーと答える。

 

 最後に、俺が尋問で敵側の情報を得た事がバレた可能性が割と高めだと言う事。

 あの時、ストーカー口悪男を八割殺しして、なんとかカモフラージュ出来ないかと画策した訳だが。……冷静に考えると、これ相手視点は不自然以外の何物でもないよね。

 結界は俺が張ったものだから自由にコントロールが出来る……筈なのに、何故か八割だけ殺して結界を解除し、その場からまだ余力を残している感じで悠々と去る。

 ……何故殺さなかったのかと思われるに決まっているだろう。過去の俺は何をやっているんだ?アホなのか?

 

 うぐぐ、いくら人間の命を完全に絶つ事にはまだ割とビビってるからって……。

 ……え?八割殺しは良いのかよって?

 それはホラ、完全には死んでないし……。四肢は残ってるし……。我ながら倫理観が変な事になってきている自覚はあるのだ、許せサ〇ケ。

 

 っていうかバレてそうなら八割殺しした意味が無くなるよね。

 ゴメン、ストーカー口悪男。別にこれなら半死でも大丈夫だったわ。これこそ本当に許してくれ〇スケ。

 

 

 こんな事考えてたらもう時間である。主人公組はーっと……

 あ、いた。……なんか変なオーラ出てない?何あれ、風纏った狼とすげぇオーラの天使が見えるんだけど…。昨日の圧が進化でもしたのかな?

 周りの人も怖がってるのか離れちゃってるじゃん。俺も怖い、助けて。

 

「あー、えっと……。お二人さん? お、おはよう?」

 

 歩み寄り手を振ってみる。

 …気付いてもオーラは無くならないらしい。怖ひ。

 

「あ、黒斗さん。おはようございます。今日は頑張りましょうね!」

「今日はアンタに課されたメニュー、全部余裕で突破出来そうな気がするわ……フフフ……。合格を貰えたら、一体何を”お願い”しようかしら…?」

「怖っ!怖い! 白羽さんは目が笑って無いし、草壁さんは純粋なオーラが凄いし! 何?戦闘民族なの?! こっから金髪になるの?!」

 

 髪浮いてきてますけど?!

 やる気出すだけでそんな事になる世界だっけな?!

 ……思い返してみると、結構そうだったかもしれない……。

 

「私はこの髪色のままよ。金髪になんてなる訳無いじゃない」

「じゃあ伝説の方じゃん! 余計ヤバいじゃん!」

「…ほら黒斗さん。ツッコんでないで、早く受付しに行きますよ!」

 

 明華ちゃんが、早く行こうと腕を引っ張ってくる。

 今日無事に合格ラインまで行ったら、俺は一体どうなるんだろうな…?せめて無界教に攻めれる位の時間は欲しいな……。




どうも、また少し遅れました。コイツ反省しねぇな?
初感想を貰えてモチベが爆上がりしたにも関わらずこの遅筆、お恥ずかしい限りで。

矛盾点等の指摘がございましたら、遠慮無しにお願い致します。見て貰えているという実感は、何物にも代えがたいと思った次第です。

あと自分で書いててなんですけど、黒斗君はおバカ寄りです。考えるタイプのおバカです。……一応もう一度念を押します。彼はおバカ寄りです。情に割と流されやすいタイプのおバカです。ご了承ください。
メインウェポンの常備をしてない時点でぶっちゃけすぐ分かりますが。
あと作者もおバカ寄りです。

ここまで見て下さり、ありがとうございます!よろしければ是非、評価・感想の方お願い致します!作者のモチベーションに繋がります!
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