黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ 作:せみふぁいなる
クラウディアになりそう(?)
……なんだ…?体に違和感がある…。
自分の体じゃないみたいと言うか、思った通りに動かないと言うか…そんな違和感。
とりあえず、起き上がってから考えようか。
違和感が拭えない体で、俺は起き上がろうと目を開ける。
「…知らない天井だ…」
おっと、つい反射で言ってみたいセリフランキングTop5の内の1つを言ってしまった。
実際知らない天井なので、まだ寝ぼけているのか、朧気な頭で何があったかを思い出そうと記憶を引っ張り出す。
「んー…あー…そういえば俺、転生したんだったっけ…?」
ぼーっとしながら、自分が転生した事を認識する。
体が前世と違うしハイスペックになってるから、前の体に慣れていた俺の魂が、まだこの体に適応出来ていないために違和感があるのだろうか?
そして、今起こっている事が事実であるならばと、自分の背中に意識を割いてみる。
…それっぽい感覚があるな…
あの図の通りであれば、動かせば前に視界が向いていても見えるくらいには大きいはずなので、前に動かすように意識してみる。
すると、自分の体の事だからか、少し意識するだけでお目当てのソレ。
4対の黒い羽、その先の方が見えた。羽が見えた事で、確信する。
「とりあえず、ここは確定で転生後の世界である、という事だな。理解した」
確信が持てて安心した所で、次に自分が今どこにいるのか、それを把握する為に辺りを見渡す。
…どうやら自分が目覚めたのはソファの上らしい。ベッドでは無いのかよ、体が痛くなっちゃうでしょうが!
ワガママでしたね、すみません、ハイ。
気を取り直して、見渡して分かった事。
第一印象としては、色がちょっと悪趣味な普通の部屋って感じか。
部屋の大体は黒がメインで、アクセントとしてちょくちょく白が混ざっている。目が痛くなる心配は無いが…こう、もう少しオシャレに出来ただろう…と言いたくなる。なんだこの黒すぎる部屋。
『とりあえず黒と白にしとけば男は喜ぶんでしょ?』みたいな考えが透けて見えるぞおい。限度があるだろう限度が。
…いや、嫌いとは言ってませんけど。
いかんいかん、ついつい喋りすぎたな。
早く自分の現状を把握したいんだ、いちいち口にしてたらキリがない。日が暮れてしまう。そもそも日が昇っているのかも分からないが。
自分のいるこの部屋を探索するのが、まずは先決か。まだソファの上だし、探索しない事には何も始まらん。
そう思いソファから立とうとした時、何かポケットに入っている事に気付く。
なんだろうかと疑問に思いながらポケットの中に手を突っ込み、目当ての物を掴むと、紙の感覚がした。
乱暴に扱って"大事な物でした〜"なんてオチは洒落にならないので、優しく取り出す。
…手紙?露骨に読めって感じだな、乗った!
破いたりして読めなくなったら大変なので、ちゃんと丁寧に開ける。偉い!120点!
『転生者君へ。とりあえずこれを読めてるって事は、自分が転生した事はちゃんと認識出来た感じかな?君は正しく転生できたよ、安心して欲しい。』
神様からか。手紙だとあの間延びしたような感じじゃないんだな。
『君にしてもらいたい事とかは無いよ、自分がしたいようにするといい。元々、上司が面白がって勝手に決めた事だしね。』
これも言ってたな。俺の好きにすると良いって。勿論、ありがたく好きにさせて貰おう。
『さて、この手紙を君に渡した理由なんだけど。 一言で言うと、君の状況を説明する為だね。いきなり目が覚めて、説明も無しにどこかも分からない所にいるのは怖いだろうしね。神なりの優しさってヤツ?』
なるほど、凄く助かるな。探索は後でするとして、今はこの手紙を読み込む事に集中するか。…なんか微妙にウザイのは置いておく。
『まず、君がいる所。 まぁ見て分かると思うけど、そこは君の家。その一室だね。 住む所が無いと困るだろうからね、アフターケアもしっかりしているのさ。私って優しい!』
住む所が最初からあるのはありがたいからな。これは素直に感謝しよう。ははーっ! ………でも色はどうにかならなかった?
黒猫とか某狩猟ゲームのナから始まってガで終わる六文字のモンスターが居たら気付けないくらい黒いよ?
『色は気にしないで欲しい。 なんか介入してきたどっかの神がいてね。全く、どこの上司だろうね!私神だから分かんない!』
ほな仕方ないか…
『次にお金とかかな。とりあえず、経済が壊れないように神様ぱわーで調整しながら、困らないくらいのお金は用意してあるよ。 お金に困って好きな事が出来ないのは嫌でしょ?裏ボスっぽくも無いだろうし。 調整には結構苦労したんだから、これも感謝して欲しいね。具体的に言うと、お供え物が欲しいね』
お金に困ってる裏ボス、俺的にはギャップがあって良いと思います!
まぁギャップ云々は置いといて、お金関係で困る事が無いのは大きいな。色々と出来ることの幅が増えるだろう。これも素直に感謝です。
…後光が凄すぎて、姿とか見えなかったんだけど。
こういうのって、像とか彫ってお供え物するんじゃないの?普通に祈って置けばいい?
『よし、じゃあとりあえず最後の説明なんだけど。これが一番大事と言ってもいいかな。君の力についてだ』
待ってました!どんな感じに調整されたのか、後で自分で使うにしても強すぎて家がチュドーンとかも嫌だし、これは本当に大事ですよ。マジで。
『君の力なんだけどね、まず裏ボスっぽく世界最強だよ。カッコイイのに呆気なくやられるのは違うじゃん? たまにいる「ラスボスの方が強かったな…」みたいなアレ、私的には違うなーって思ってね。神様気もなく張り切っちゃったよ。』
ほうほう、つまり確認の時に家の中でパなすのはヤバいという事じゃな?
いや、別に最初からする気は無かったけど…
『力の操り方とか、そもそもどんな力なのかとか。手加減、または調整の仕方とか。 そういう基礎的な事から応用に至るまでの全てを書いた本があるから、詳しくはベッドの横にある棚、そこの下から3番目の段にある「猿でも分かる!黒の力の使い方」を見てね。ここで書くと、ただでさえ長いのにもっと長くなっちゃう。神的にもめんどくさい』
便利な本を作ってくれたらしい。猿でも分かるの部分は無視だ、恐らくバカにしてるという訳でもないだろう。…無いよね?
まぁとにかく、これは家の探索が終わった時に見よう。
あと、めんどくさいと書く必要はありましたか…?
『説明はこんな所かな。最後に、私からありがた〜い言葉を授けよう。』
…相手は神様だしな、先入観は無しにしてちゃんと見るか…。なんかいちいち鼻につくような言い回しだけど。
…いやごめん、先入観無くすの不可能だわコレ。染み付いて離れん。
『いいかい?君は、君の大好きなゲームの中に転生した訳だ。 でも、君は厳密に言うとゲームの中に入ってる訳では無い。 あくまでここは"ゲームの中"ではなく、ちゃんとした"生きた世界"である、という事を覚えていて欲しい。 勿論君はこの世界の住人として存在しているし、ゲームの中にいた登場人物達も、ちゃんと自分の意思を持って生きている』
…………予想以上に真面目な文だった。ちゃんと神様は神様だったのか。
『嬉しい、楽しい、悲しい、寂しい。色々な感情があって、色々な想いを持って。彼ら彼女らは、"生きている"。レギュラーキャラクター以外のモブ枠だった子も、登場すらしていなかった子もそうだ。そして、もう一度言おう。君は、この世界に、確かに、"存在している"。』
………………うん。そうなのだろう。
『この世界で生活していく中で、いわゆる"原作"に関わっていく事もあるだろう。むしろソッチがメインかな? しかし、原作に関わる事によってこの世界がおかしくなったら、とか。原作通りにしないといけない、とか。 そんな事は考えないで欲しい。経緯は上司の気まぐれではあるけど、それでもどうか好きに生きて、楽しんで、幸せになって欲しい。神様からのお願いだ。』
………………………書き綴られている言葉の、その全てがスルッと胸に入り込んでくる。
実際、少し心配していた事だから。
『しつこいようだけど、何度でも念押ししよう。君が原作に関わっても、それによって未来が変わっても。それはそれで、この世界の"物語"となり、紡がれていく。ここはゲームの中では、無い。 君がどんな選択をしても、どんな結果になっても、その選択に後悔だけはしないように。君の選択によって、この世界の物語がどのように描かれて行くのか、私はいつでも見ていようと思う。』
『どうか、君の次の人生に、幸がありますように。』
……………………………言われた言葉を整理し、飲み込み、ふぅ…と息を吐く。
あの神様、ちゃんと神様なんだな……
こんな熱い激励送られたら、その通りにしない訳には、いかないよな…?
未来の俺が苦悩するであろう事を、全てこの「ありがた〜い言葉」が吹き飛ばしたからな…
この手紙は、俺の心に確実に響いた。
いきなり真面目になったと思ったら、俺が心の片隅ですこ〜しだけ思っていた事を見抜いてきて、しかもそれをあの姿が見えないレベルの後光で照らしてきて。
…ここまで言われちゃあね。やるしか無いでしょう、えぇ。やってやりましょうとも!
少し熱くなった目頭を擦り、頭を上げる。
「この世界で、俺は幸せになってやろうじゃないか!」
前の世界に未練なんて無い。家族と仲の良かった友達には罪悪感はあるが。
神様曰く世界最強のこの力を使って、俺は俺の幸福を掴み取って見せよう!
後悔だけはしないようにな!
「そうと決まったからには、やる事があるな。第一に本の確認。そして、家の探索。なにが家にあるのかの把握は大事だしな。次に、今が原作前なのか途中なのか、その確認。これも何気に重要だ。」
やる事がいっぱいあるな。
でも、しかし。あぁ、本当に…
「楽しい」
あの手紙のお陰で、不安なんて、少なくとも今は無い。
転生当日にして、心の底から、この世界を楽しもうと思う事が出来るんだ。
勝手にニヤつく頬を抑えもせず、天井を見上げ、俺は言った。
「神様、本当にありがとうございまぁす!!!!」
彼?彼女? ……まぁどちらかはどうでもいい。ともかく、神様への感謝を、俺は高らかに叫んだのだった。
手紙がヒラヒラと花びらのように舞い、床へ静かに落ちる。
床に落ちた手紙は、まるで見る者を心の底から安心させるような、淡く優しい光を放っていた。
そんな手紙の最後に、静かに文字が追加されていく。
『私だって、たまには真面目になるよ。お気に入りの子の前では特に、ね。 お供え物、忘れないでね〜』
それは、調子を崩さない神からの。
少しウザいけれど、それでも優しさを隠せていないような。
そんな性格が垣間見える、暖かい追記だった。
これから先、この主人公君が「俺は存在していても良いのだろうか…」とか思い悩む事は無くなりました。賛否は両論かもしれないですが、この作品ではこうなります。
あと、考えはこうなっても結局これから先、関わっていく中で主人公君の周りは曇ります。へへ…俺はやるぜ…
そしてこの神様、少し弄ってくるだけで善良すぎる…!
-追記-
5月1日、展開は変えずに文を整えました。少しは読みやすくなったハズ。
8月14日、更に整えました。不自然になってない……よね?
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