黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~   作:せみふぁいなる

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レイゼさん視点です。
何時もの二分の一程度の長さなので、お気軽にどうぞ。


とあるメイドさんの内側

 

 大切な主人に頼まれた事を、嬉々として、しかし表には出さず黙々と真顔でこなす。

 頼まれていない事であっても、様々な可能性を考慮し、自らで判断して行動する。

 それがデキるメイドの仕事術という物で、それが出来て初めて、メイド道の第一歩となるのです。

 

 それはどんな者がメイドになっても変わらないでしょう。

 

 

 突然ですが、私は神の使徒です。

 この世界に転生して来た黒斗様……いえ、ご主人様の手助けとなる様に神から派遣された、有能メイド。

 

 それが私、レイゼという人物です。

 

 派遣された最初の方は、正直私はあまり乗り気ではありませんでした。

 

 当然です、自分で”この人に仕えていきたい”と決めたなら兎も角として、私は突然神に”この子のメイドさんになって助けてあげて”なんて押し付けられたのですから。

 

 それでも、相手は言ってしまえば上司のような立場。

 過去の私は渋々と言った感じで了承し、こうして黒斗様に仕えることが決まったのです。

 

 

 黒斗様が転生してすぐの頃。

 私はすぐには目の前に出ず、黒斗様の素性を少しでも理解・判断してから出ようと、黒斗様が目覚めてからの行動を監視していました。

 

 私が今後仕える事になる相手がどんな人なのか、私が仕えたいと思えるお人なのか。それを、私自身で判断したかったのです。

 

 

 結果は、今私がこうして使えている時点でお察しでしょう。

 私の予想以上に、黒斗様は良いお人でした。

 

 確かに、黒斗様はご自身でも少し認識していたように、考える事は少し苦手なお人なのかも知れません。

 ですが黒斗様は、それ以上に”優しく、人に好かれやすい魅力”がございました。

 

 かなりの頻度で、日常的に普段の感謝を伝えて下さり。そして取り繕いなんて無い、真っ直ぐな褒め言葉を届けて下さる。

 自分の心に素直で忠実、だからこその個性なのでしょう。

 『やって良かった』と、『この人の為に色んな事をしてあげたい』と、心からそう思えるお方なのです。

 

 そうして『この人なら……』と判断した私は黒斗様の前に現れ、そこから今の生活に繋がっていくという事です。

 

 最初こそ恨んでましたが、今では使徒的には神に感謝しています。

 こんな素敵なご主人様の元で、私の今までのメイド道の研鑽を遺憾無く発揮出来る訳ですから。

 

 ……それでも、神”様”と付けることはございませんが。

 私にとっての神”様”は黒斗様ですので。あんな適当で、たまに真面目なギャップで好感度を稼いでくる神とは訳が違うのです。

 

 

 さて、そんな黒斗様ですが。

 

 ……最近、少し頑張りすぎと言いますか。考えている事はメイドである私にも度々共有してくれる黒斗様ですが、どうにも共有だけで、自分で出来る事は全て自分でこなそうとしている様に感じるのです。

 

 聞かせてくださった際に、『私に出来る事はございますか?』と、遠回しに頼ってくださいアピールもしてみているのですが、結果は不発に終わり。

 『いつも働いてくれているレイゼさんに頼む程の事じゃないよ』とはぐらかされて終わってしまいます。

 

 神から聞いている情報から、黒斗様の体が睡眠不要となっている事は分かっています。

 ですが……どうしても、私の気持ちが収まらないのです。

 

 黒のトレーニングの際だって、顔が真っ青を通り越して真っ白になってしまう位には、黒斗様は恐怖を感じていたと言うのに。

 それを『今後の為』と我慢し、周りになるべく伝わらないようにするような黒斗様です。

 

 心配性なだけかも知れませんが、黒斗様は今も我慢しているのでは?と気が気でありません。

 

 そこでこのレイゼ、考えました。

 

 姉妹さん達にも、メイドになってもらおう、と。

 

 冒頭にも言った通り、メイド道というのは”頼まれていない事でも様々な可能性を考慮し、自ら判断して動く”事が出来るようになって、初めて第一歩を踏み出せた物だと考えています。

 

 主人の為になる事ならば、私はお節介だと言われようと貫き通します。

 

 それに、メイドになってもらおうと言っても、そんな本気でメイドをしてもらう訳ではございません。

 ただ『無期限で良いと置いて貰っても、何も返せないのは嫌じゃないですか?』とおもむろに言ってみるだけです。

 

 後は本人達がどう思うかです。

 

 幸い、”これから住む事になるから隠し通せない。それならむしろオープンにした方がやりやすい”とお考えの黒斗様から、裏の世界の方などの事情も教えて良いと申し付けられたのですから。

 これを利用しない手は無いでしょう。裏の方の事情を説明し、姉妹さん達にも黒斗様の心配をしてもらう……。

 中々良い手を思い付いたのでは無いでしょうか。

 

 全部黒斗様が悪いんです。全て自分でやろうとする癖だけはどうにかして下さらないでしょうか………。

 

 

 ちなみに、その件の姉妹さん達ですが。

 あの後も三分程脳の整理をする為かボーッとし、その後勢い良く私に説明を求めて来ました。

 

 昨夜に少しばかり親交を深めたので、私とグレイスには遠慮無しに来れるようになったようです。

 昨日ここへ来た当初よりかは、遥かに良い顔をしています。見ているこっちが元気を貰えそうなくらいには。

 

 黒斗様のお考えになっているであろう事を説明した所、泣きながら黒斗様と私、そしてグレイスに感謝していました。

 それと同時に、『本当に良いのだろうか』とも不安を感じていたので、私が少しばかり和らげたとは言え、ここは黒斗様ご自身に解消してもらうしか無いでしょう。

 ……先程あんな事を言っておきながら、結局黒斗様に頼らないといけないのは、非常にモヤモヤしますが。

 

 今は泣き疲れたのか、お二方ともお昼寝をしているようなので、起きたらさっき考えた事を言ってみましょうか。

 ……重く捉えられると、流石の私でも罪悪感でどうにかなってしまうでしょうし、軽めに言っておきましょう。

 とにかく今は、黒斗様への手助け要員の人手が欲しいだけですし。

 

 

 私にとっての今の生活は、使徒として天界でメイドの研鑽を積んでいた頃より、遥かに充実した日々です。

 黒斗様も、前世よりは楽しいのでしょう。この生活を守る為に、必死に頑張っているように思えます。

 

 私だって、きっとグレイスだって、今の日常を守りたいと思っているでしょう。

 だから黒斗様。……いいえ、ご主人様。

 貴方が居てこそ、この充実した日々を送れる人もいるという事に、どうか気付いてください。

 




知ってました?実は曇らせってタイトル詐欺じゃ無かったんですよ。
この程度の曇り具合では、すぐ晴れてしまうパターンもあるでしょうが。

そろそろ個人の心情を細かく書かないといかんかな〜と思い書いた次第です。
「これいる?」と感じた方はそれはそれで正しい意見だと思います。

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