黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ 作:せみふぁいなる
「ここがあの女のハウスね……」
「(……相手って女なの?)」
ネタで言っただけだから気にしないでいいよ
「(……そう?)」
現在、馬鹿言ってる俺の前には、一見ただの教会にしか見えない建物。そこそこな山の奥に建てられており、襲撃に備えてか、貼られている結界はかなり高度な術式に見える。実力者がいる証だ。
明華ちゃんと風花ちゃんの特訓が終わった後、グレイスと俺は無界教とやらの宗教組織、その本部へとやってきていた。
理由は前にも言った通り。
今日である程度、この不確定要素の塊を吹き飛ばしたいから。……あわよくば滅ぼしたい。
主人公組のお願いは次会った時に叶えることにした。ごめんよ……今すぐだと俺の体が足りないんだ……。
そんな主人公組の安全はレイゼさんが確保してくれているはず。これなら安心して吹き飛ばしに行けるというものだ。
ただでさえ俺が知っている展開にならないというのに、そこによく分からない宗教組織の参戦とか、もう本っ当にやめてほしい。ストレス溜まりまくり、胃痛待ったなし。穴が開いてしまう。
ちなみに、この本部の場所を特定した方法だが……。
至極単純、非常にシンプルな話だ。ストーカー男君に、バレないように俺の魔力をこっそりくっつけておいた。ただそれだけ。
外側からはバレない特別性だ。気付くとしたら、それはあの男を分解したときだけ。
簡潔に言ってしまえば、魔力版GPSをストーカー男の体の中に埋め込んだ。ただそれだけの話だ。いやー、ちょろい。
この前「普通にバレてる可能性高いだろ俺の馬鹿!」とか思ってた俺だが、なんだかんだ必要なことはしていた過去の自分に拍手を送りたい。
……まぁ、今日俺が襲撃に来ることもワンチャンバレている訳だが。結局後手後手じゃねぇか!!……というツッコミは無しでお願いしたい。
俺にはもう、力で解決する以外の策が思いつかなかったんや……。
……さて、思考はこの辺にしておいて。
グレイス、準備は?
「(……ばっちり。……ご主人、ほんとに危ない事するの?)」
ああ、そうしないと俺の願いが叶わないから。
「(……ん~、分かった。……何回も言うけど、絶対無理しないで)」
分かってるよ、ここに来るまでの間に何回言われたと。
「(……24回)」
そんな言われてたのか……。
と、とにかく。
グレイスも準備はバッチリって事で。
グレイスを構える。
目標は、目の前の結界。コイツを破れば、何があっても後戻りはできない。
羽を出す。油断はしない、
グレイスを振りかざす。
……喰え、グレイス。
「(……ん、了解。……本気のご主人、かっこいいね)」
そりゃどうも。
無尽蔵の魔力が吸い上げられる。
……もういいだろう。恐らくこの魔力の気配で、もう気付かれている。……まぁ、関係無いが。
横薙ぎ一閃。
プリンにスプーンを差し込んだ時のように、スルッと結界に滑り込んだ。
瞬間、斬った所を中心に、結界にヒビが入っていく。
段々とヒビは結界全体に波及していき、最終的にパリーン!と大きな音を立てて崩れ落ちた。
……これからすることは、決して良い事とは言えない。俺のエゴで人を殺す。正義も悪も関係ない、殺しは殺し。
覚悟はしたはずだが、怖いものは怖いな……。もしかしたら、主人公組に嫌われるかもしれない。
おかしい話だ。本来は遠くから見れていれば満足できるくらいの気持ちだったのに、関わりを持っていくと嫌われたくないなんて感情が出てきてしまう。
まぁ、人間として当たり前の感情なのだろうが。
ふぅー……と、大きく息を吐く。
…………よし。
「(……無理は、してない?)」
大丈夫、たった今本当に覚悟を決めた。
行こう。
俺は周りを警戒しながら、ここまで大きくなくて良くないか?と思う程デカい扉を開いた。
──────────
「────フッ! はい次!」
なるべく苦しまないように、急所を一撃で貫く。
相手は悪かもしれないが、その前に人間だ。そこだけは譲れない。
「恨むならあの世で好きなだけ恨んでくれ、よっ!」
三人称で見たら、無双ゲームみたいになってることだろう。
時折エースっぽい、他の奴より強そうなのはいるが……。
流石に此方の方が強い。
飛んでくる魔法は全て斬り飛ばすか、局所的に障壁を張り防ぐ。
「魔法を斬った?!」
「バカな、教祖様からの祝福を受けた魔法が斬れるはずがない! 何かの間違いだ! もっと撃て!」
教祖様からの祝福?
何か重要そうな言葉が聞こえたな。
グレイス、それぞれの魔色分の相手の魔法性質を調べてもらえるか?
「(……お安い御用。すぐ終わる)」
任せた、グレイス。
さて、現在無双ゲーム状態の俺だが。
こんな敵まみれになってしまったのは、教会に入ってすぐのことだった。
扉を開いて大広間のような場所まで歩くと、まぁ居るわ居るわ、大量の信者が。外観より広くなっている所から察するに、恐らく空間拡張が使われている。この場にいる敵では出来そうにないし、
そしてこの宗教、俺の予想以上に信者が多い。空間拡張も、恐らく増えていく信者に合わせて使われて行ったのだろう。
待機していた信者が全員武装していたということは、やはりバレてもいたらしい。
『教祖様の言う通り侵入者が来たぞ!』『我らの悲願の邪魔をする者を殺せ!』とか言ってきたので、間違いない。あと、世界滅んだら君達も死ぬのでは?それでいいの?
で、まぁ元々正面突破するつもりだったので、何も関係ないね!とごり押しし始めて、今に至る。
「しかし、本当に数が多いな!」
「(……ご主人、もう魔法使った方が早い)」
やはりか……。
建物が崩れたりしたら、重要な人物を見逃してしまうかもしれないと敬遠していたが……。このままじゃ時間を取られるだけだ、そうも言っていられないか。
「そうと決まれば、一回どけっ!」
衝撃波のように周りに魔力を出し、近くの敵を吹き飛ばす。
それと同時に、頭上に魔法陣を描く。
これ、ヘイローみたいで好きだよ。
なんだかんだでいつも特訓している俺の魔法構築速度は、今や黒絶魔法ですら二秒とかからない。
いつもカッコいいとこ見せる前に、俺のダメなところが出ちゃってる場合がほとんどだったからな。俺があれからそんなに強くなってないと思っている奴も多いんじゃないか?
例えば、俺を暗殺とか正面からとか、戦闘でどうにか出来ると思ってる、その
ハハハッ、全く本当に────────
──────あまり俺を舐めるなよ?
撃つ魔法は、広域殲滅汎用魔法。
名を、シンプルに『
超絶シンプルな、何をするのか分かりやすい名前。俺は気に入ってる。
範囲は、本来ならば地図から日本が消えるくらい。名前に負けない範囲をしている。
が、俺はそんな無差別に殺したいわけじゃない。少し範囲を絞って、この教会全体にしておく。
この魔法、一般の人に気付かれないようにするとか、そういうのはまず無理だ。俺の顔は割れないだろうが、世間はざわめくだろうし、一部の人は俺だと気付くだろう。あのカフェの店員さんとか。
まぁ、そんなの関係ないが。
「あの魔法を撃たせるな! 今なら防御も出来まい! 何をしてもいい、総員、魔法の発動を阻止しろ!」
もう遅い。
既に完成している。
「お前らを殺したら、次はこの範囲に入ってない地下に反応のある
ストーカー男君の反応もする。解放した後、一体どうなったのか気になっていたんだ。……十中八九、碌なことにはなっていないが。実のところ、あまり悪い奴には見えなかったのだ。あの状態にしてしまった責任もあるし、出来ることなら助けてあげたい。
頭上の魔法陣から魔力を開放する。
すると、俺がいる場所を中心として、円形に
「なっ、なんだこれは!? なにがどうなっている?!」
「触れても特に何か起こる気配はありません!……が、何か嫌な予感がします! どうしますか?!」
幹部であろう人に指示を仰ぐ部下。
指示待ち人間は昇進できないぞ。どうしたらいいかなんて一目瞭然だろうに。
「こッ、攻撃! 攻撃だ! 発動者を殺せば、魔法も中断されるやもしれない! もはや逃げられそうにも無い! 総員ッ、攻撃を続けろ! 我らの祝福された魔法ならば、格上相手でも数を撃てば障壁なぞ容易く割れる!」
正解。これは俺は殺さないと発動の阻止なんてできやしないし、もう逃げられもしない。この魔法は、内側から逃げられないように自動で結界も張られる。格上相手には通用しないだろうが、格下相手には悉く刺さる。広域殲滅汎用魔法たる所以だ。
幹部であろう人は、冷静に判断できる辺り割と有能らしい。幹部なだけはある。
指示された通り、敵から様々な魔法が飛んでくる。
火球、水弾、風弾、土の槍、光弾、闇玉、etc…。
まだ性質が分かっていない以上、当たってやる道理もない。
魔力を発散させ、
これが魔力量の暴力という物だ。
自分の弱点を認識できたのだから、それを直そうとするのは当然。もう油断はしない。
「ば、化け物め……!」
「……これが伝説にしかない、"黒"の力なのか……」
……俺が悪役みたいで、少し解せない。
いや、大量に殺してるし、相手から見たらそら悪なんだけど。
……ちょっと心にダメージ。グレイス、帰ったら撫でさせてくれ。
「(……ん、当然許可)」
……ありがとう。
さて、俺が心にダメージを負っている間に、魔法の拡大が終わった。
あとは、もう大体察しが付くだろう。
この範囲内を、
「……私達はここまでか。教祖様、どうか我らの悲願を成し遂げてくださると信じています……!」
こう覚悟を見せられると、本当に俺が悪役でしかない。
……いやいや、世界を無に帰そうとしているあっちの方が悪だから。大丈夫、大丈夫……。
胸の奥から少し湧いてきた罪悪感を振り払い、発動する。
「『
発動してすぐ、視界を黒が包む。
360度、どこを見ても何も無い。あるのは、どこまで続いているのかも分からない"黒"だけ。
そのまま五分ほど経ち、やっと黒が消えていく。
その視界が晴れた時、自分で発動しておいて、自分のしたことにドン引きすることになる。
「……これは……裏で試しに撃った時よりも悲惨だな……」
そこには、
今の俺の行いにより、何人いたのか正確には分からないが、恐らく四桁は超えたであろう人が
この人たちにだって、家族などは居ただろうに、死体すら無いのだから弔いも出来ない。
行方不明として処理されるのだろうか。
唯一の幸運は、周りに民家等が無いことくらいだろう。
「……心が痛い」
「(……性質の解析、今終わった……けど、少しだけ休む?)」
「本当なら、早く教祖とやらの所に行きたいが……」
「(……無理は、ダメ)」
「……そう、だな。覚悟したした言っても、結局こうなるんだから、救えない奴だよ。……ほんの少しだけ、心を整理する時間をくれ」
本当に、いつも優柔不断で、カッコいいところも見せられなくて、挙句自分がしたことでこんなになって……。
救えない奴だ。
いつも照らしてくれる太陽が、今だけはとても眩しくて、やめて欲しいと心の底から思った。
いつ主人公は曇らないと言った?
いっぱい人殺していっぱい曇ってね(満面の笑み)
なるべく同じ文字は使わないようにしたいけど、くどいって思われていないか少し心配。
そういうのがあったら本当に遠慮なしに言ってください!!気合で直します!!
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