黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ 作:せみふぁいなる
お気に入りも三回されたら嬉しい程度だったので…
今話もお楽しみいただければと。
神様への感謝を終わらせた俺は、予定通り本を確認しに行く事にした。
中身は俺の力に関してらしいし、部屋の探検は先に本を見てからにしようと思う。
……ぶっちゃけ、探検よりこういうかっこいい要素の方が気になって仕方ない。
俺だって男の子なのだよ。
えーっと、確か「猿でも分かる!黒の力の使い方!」とかいうタイトルだったっけ?
…この表紙が児童向けっぽいやつか?折角信仰するレベルであの神様に好感持ててたのに。こういう所だと思います、本当に。
しかも結構分厚いのがなんとも言えない。ふざけ倒して分厚くなったのか、それとも純粋に真面目に書いてあって、説明もちゃんとしているがために分厚くなったのか。
流石に後者であれ、と願うばかりだが。
…とりあえず言ってても仕方ないので、今も見守ってはいてくれているであろう神様に少し愚痴をこぼして本を手に取る。
一ページめくると目次が目に入る。どうやらふざけているのは表紙とタイトルだけらしい。いや、猿でも分かるはふざけてるに入るか…?
……入るか……。
………少し読み進めてみて分かったことだが、どうやら本当に真面目に書かれているようだ。しかも凄まじく分かりやすい。おまけに自分の大事なことだから、文字を見ていても眠くもならないと。
見直したぞ神様!……DV彼氏の飴と鞭みたいになってない?これ。
まぁそれは置いておいて、だ。本当に分かりやすく書かれているし、退屈もしないような作りになっているので、ついつい手が次のページを捲ってしまう。
うーん、厨二心をくすぐられるなぁ…。でも流石にそろそろ家の探索を…。いやでももうちょっとだけ…!
気付いたら一時間経っていた。ちょっとだけやらかしたかも知れない。
いやほら、その代わりまだ半分も読めてはいないけど、基本的なことは分かったしぃ?別にいいんじゃないかなぁって。ハハハ、そうだよ、うん。
それに時飛ばしを食らった可能性もまだある、俺は悪くない。……どう考えても俺が悪いな。こりゃ失敬。
とりあえず、俺の力についてなのだが。説明する前に、この世界における"魔法"を説明しないといけない。
まず、この世界には"魔色"という物が存在する。魔色というのは、簡単に言うと、生まれつき人に宿る魔力の色。これを略して魔色である。この魔色の種類によって、魔法の適正というのが変わる。
この魔色は人によって操れる色が違い、また後天的に変わることもない。才能みたいな物である。
魔色によって使える魔法は、大方イメージ通りである。赤は炎、青は水、茶色は土、緑は風、黄色は光、紫は闇、といった具合である。
そして、この魔色の中には禁忌とされる色が存在する。それが"黒"。
逆に、神聖なものとされる色で"白"があるとされる。
黒も白もここ二千年は出ていないとされ、もはや伝説の類になっている。絵本としても出ているらしい。
扱いとしては魔王と勇者、みたいな物か。黒が世界を滅ぼそうとし、それを白が阻止し、黒を撃退。世界は救われ、平和になりました。ちゃんちゃん。
そんなありがちな伝説である。どこの世界に行っても黒とか闇とか、そういうのは大抵悪役に回るからね。
さて、話を戻そう。俺が持っている魔色はこの黒であり、基本世界から"やべーヤツ"認定されて魔女狩りよろしく磔にされて燃やされる色な訳だが。
この本によると、どうやら黒という色は誤解されているだけで、破壊だとか、そういった負の方の力だけでは無いと。
人を癒す力にもなるだとか、守る力にもなるだとか。基本結構なんでも出来るらしい。
ゲームの方でも実は設定くらいでしか黒は出てきていなかったので、これは知らなかった。
ちなみに白は出てた。というか推しの主人公ちゃんが白だった。
……いや、正確に言うと、黒も出てはいた。なりかけだったが。
話を戻そう。
んで、結構なんでも出来る万能色なのだが、案の定というべきか。扱いが有り得ない位難しい。
先ほど扱い方のページを見ながら十分ほど格闘していたのだが、もう全然操れなかった。しかもこの体、能力は世界最強にしてくれたと神様が言っていた。つまり、暴走したら俺もろとも周囲が粉々になるかもしれないのだ。
勿論、その考えに至ってからすぐに力を扱う練習はやめた。流石に、場所が場所すぎるからね。俺諸共部屋が吹き飛ぶとか嫌すぎる。
さて、ここまで長々と話してしまった訳だが。
結論、"黒"すげぇ。以上。
今は練習出来ないし、そもそもちょっとのつもりで本を読み始めたのに一時間も経っちゃってるんだから、そろそろ家の探索をするべきである。
この本はそれが終わって、ここがどこなのか把握してからだ。
さあ、そうと決まれば行動はすぐだ。ていうかすぐしないとまた心が変わって本を読み始めるかもしれん。こういう時に自分を信用してはいけないって、俺は前世で学んだ。夏休みの課題とかな。
本を戻して、今後俺の部屋として使うだろう場所からとりあえず出る。
そして、扉を開けてすぐ目に入った光景を見て、俺は圧倒された。
「―――ふぅ……。……広すぎでは?」
いかん、一人なのについ声に出してしまった。廊下の時点でこんだけ広いとか、俺屋敷にいるの?これ。
うーん、でも止まってても始まらんし。迷子にだけならないように気を付けて、いざ!
はい、迷いました。
ぶっちゃけこうなることを予想はしてた。広すぎるだろ、普通に。
だがしかし!ただでは転ばないのが俺! 迷いつつやけっぱちで探索してた時に、リビング?って言えばいいのか?こういう大きい建物の事が分からな過ぎてなんて言えばいいのか分からんが、とにかく広くて複数人で集まって生活できそうな、そんなスペースを見つけたのだ。
そして、その部屋にカレンダーがあるのを見逃さなかった俺は、今は原作より前なのか後なのか、それとも原作真っ最中なのか。それを知る為にダッシュで駆け寄って確認したのだ!
で、結果から言うと、原作開始の二年前であることが判明した。この二年で頑張って修行して世界最強になれという神様からのメッセージか?
正直、今の状態で原作の真っ只中ですなんて言われてもどうすることも出来なかったので、心から安心した。今の状態だと、怪しい雰囲気だけ出しときながら力が暴走して目の前で自滅していくよく分からない人になってしまう。
……それはそれで出オチキャラとして面白そうではあるけど。
それと、俺の部屋の窓はカーテンが閉まっていたので分からなかったが、外の景色が変というか。空に太陽と月、両方とも浮いているのだ。
原作でも流石にこんな事はなかったし、どういうことだろうか?異界か何かか?……まぁ、詳しいことは後で。
今はもっと大事なことがある。
原作開始前、という点で安心できたのは良いんだけども。
「…迷子なのは変わらないんだよなぁ…」
そう、迷子なのは変わらないのである。どうしようね、これ。某童話よろしく、パンでもちぎって置いておけば良かったか…?
「もう誰でもいいから助けてくれないかなぁ…」
いや、マジで。
「どうかされましたか?」
「ん? いやー、迷子になっちゃってさぁ……。本当広すぎだって。マップでもあればいいのに…」
「この屋敷のマップでしたら、こちらにございますよ」
そう言って、この屋敷の構造が分かりやすく描かれている紙を手渡してくる。
「あ、本当に? 助かったぁ…。ありがとね、いや本当に」
「いえ、ご要望通りにしただけですので。では」
「うん、じゃーねー」
いやー、助かった。これで安心安全に探索できるな。
………さて、と。
「……誰?」
ちょーっと不安で心が弱ってたから何も不思議に思わなかったけどさ。
いや、誰?なんで俺も普通に受け答えしてるの?
しかも初対面なのに友達感覚で話しちゃったよ、失礼すぎるだろ俺。
「いやいやいや、誰だったんだよ。マップはくれたけども! ……え? 幽霊? そゆこと?」
でも幽霊の割にはやけにリアルだったな…。…じゃあ幽霊じゃないか?
「いやいやいや、流石の俺でも余計に混乱するんですけど?!」
ここには俺しかいないとばかり思ってたんだけど?!
そうだ、もう一回呼んだら来るかもしれない!!誰か分からないけど!
「さっきの人ー! まだいたらちょっと来てもらっていいですかー!?」
「お呼びでしょうか?」
「いぃいい後ろぉ?!」
普通にびっくりした。なぜ後ろから?
「何か失礼でもありましたか?」
「あ、え? あぁ、うん。 何か失礼とかがあったとかじゃないんだけども……」
「でしたら他に何か必要な物がございましたか?」
「あるっちゃあるかな、君が誰なのかとか……」
俺の言葉に少し不思議そうにしながら、目の前の女性が答える。
「? 貴方様のメイドにございます」
「??????????????」
いや、見るからにメイドさんの見た目はしてるし、それは分かるんだけどね?
ちょっと神様ぁ?!これどういうことですか?!
頭を抱えていると、目の前のメイドさんが更に喋る。
「これは失礼しました、自己紹介がまだでございました。 私は貴方様の専属メイドとして、神より遣わされました。レイゼと申します。これから、よろしくお願いいたします」
あー、うん。ちょっと頭がクールダウンしてきた。とりあえずあの神様の仕業であるということね。
…せめて言っておいて、神様。ホントに……。ビックリしちゃったよ……
「…うん、とりあえず君が誰なのかは分かったよ、ありがとう。 俺は暗夜黒斗。神様に言われてしっているとは思うけど……。まぁ、よろしくね」
内心ため息をつきながら言う。今の一瞬で心的に疲れちゃってェ…
でも、もう少し細かく聞いておこう。情報は大事!いつでもしつこく自分に言い聞かせる!
「それで、専属メイドって言ってたけど、この屋敷?には、他にも人はいるの?」
「いえ、貴方様と私以外には人はございません。ご安心ください」
あ、今もちょっとビビってるのバレてたのね。恥ずかしさで顔が赤くなるよ。
「分かった、ありがとう。もう一個質問良いかな?」
「なんなりとお聞きくださいませ」
うーん、なんか言葉遣いがむず痒い。前世でこんな言葉遣いされたことないしなー、緊張するな。
「じゃあ質問なんだけど、専属メイドって言っても何をしてくれるの?」
「はい、貴方様のご要望は全て従うようにと仰せつかっております」
はい?
「す、全てって、あの全て?」
「はい。文字通り全てにございます」
聞き間違いではないらしい。
「た、例えば?」
「…家事などの身の回りの事から、お客様が来た時のおもてなし。ご要望とあらば、邪魔な存在の排除。それから、夜伽など、文字通り全てでございます」
「あっはい。 排除と夜伽は頼むことはないかな…。じゃあ、さっきこの屋敷のマップをくれたのも?」
「はい、マップが欲しいと仰っていたので、お渡しした次第でございます」
頭が爆発しそう。物理的にも、精神的にも。
「おっけー、とりあえず分かったかな…。ありがとう、もう大丈夫」
「かしこまりました。なにかご用命とあれば、いつでもお呼びください」
そう言ってメイドさん…いや、名前で呼んでおくか。長い付き合いになりそうだし。レイゼさんは、いつの間にか目の前から姿を消した。
どの世界のメイドさんもこういう芸当出来るのかな…。もう瞬間移動じゃん。
何かどっと疲れた気がする。とりあえずマップをレイゼさんに貰った訳だし、部屋に帰ろう。
詳しいことは明日!疲れた!寝る!
レイゼさんに聞けば多分月と太陽の謎も分かるし、まずは身を休めよう!
ただ歩いていただけなのに何故か限界レベルで疲れた俺の体は、ゆっくりと自分の部屋にあった、ふっかふかそうなお布団目指して歩き始めるのだった。
「…結局、レイゼさんに敬語使えて無かったくないか…? 反省しよ…」
頭クールダウンしたと思ってたけど、普通に出来てなかったねこれ。
書き始めはプロットにいなかったハズなんですけど。ガイドというか、そういう感じの人がいたら便利だなぁと思ってたらメイドさんが生えました。見た目は正統派黒髪ロングで想像してます。
-追記-
5/4 読みやすくなるように少しばかり文を直しました。…読みやすくなっているという自信はない。
8/16 更に少しばかり文の追加・削除を行いました。数字は漢数字で統一するよう決めたので、そういう細かい所も直してあります。
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