黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~   作:せみふぁいなる

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とりあえずバイト前に書けたので投稿。
やはり厨二設定は男心がくすぐられて執筆が早くなる。異論は認める。


黒の恐ろしさ

 部屋に戻り、ぐっすりと眠ったその翌朝。

 情報の整理なども兼ねて、この世界、"最期の黒白"の世界観について思い出していこうと思う。

 

 まず、元の日本などがあった世界に似ている。ビルが建ち、車が走る。ゲームだってあるし、学校もある。現代ファンタジーみたいな世界観だ。

 

 しかし、似ているようで根本から違う。

 

 前に説明したように、魔力というものがある。これは、空気中や生物の体の中等、この世界の至る所にある。そしてそれを利用して、魔法というものを使うことができる。

 そして、前世での電気を用いて利用する物や、熱の力を使って動かしたりする物。それらは全て、魔法を利用して動かされている。

 魔法科学とでも言うべきだろうか。

 

 例えば電話機器。あれを動かすための動力は、魔力によって生み出された電気を用いて賄われている。バッテリーなども、黄色の魔色を持った人が加工し、バッテリーの中に取り込まれた魔力が電気に変換されるようになっている…らしい。原作ではそう言っていた。

 

 空気を震わせて音を伝える~とか、遠隔でも音を伝える為の仕組み~だとか、そういうのも全部魔法で解決されている…らしい。やだ、魔法って万能?

 

 と、まぁそういった世界であるため、武器や兵器なども当然のように作られている。前世での現代ではありえないような物も、魔法を使うことによって再現可能になっている。例えば、想像しやすいところで行くと二次元にあったような兵器。ビームサーベルとか、レールガンとか。あとバリアとかかな。その辺の武装が、一般兵にも配られている。

 レールガンは一応前世でも研究が進められていたりしたらしいが、魔法パワーによりこちらの世界ではマジモンのレーザーと化している。かっこいいけど怖いね。

 

 

 もちろん前の世界とは歴史も、地形、国の名前、年の言い方も。なにもかもが異なっている。

 今の年は"魔光"となっており、原作開始は魔光24年の6月となっている。

 なぜ月だけは12ヶ月で前の世界とそのまま同じなのかは分からない。運営がサボったのだろう。いや知らんけど。

 そして今はその2年前であるので、魔光22年6月となる訳だ。

 

 要するに、だ。前の世界の身近な物、そのほとんどが魔法によって動かされている世界。前の世界と似ているようで、そのほとんどが違う。それがここ、最期の黒白の世界というわけだ。

 

 さて、振り返りも終わったところで。

 太陽と月は前の世界と同じはずなのに、なぜどちらもあの空に浮いていたのか、それを知りたいのだが。

 …まぁ、レイゼさんに聞けば恐らく分かるだろう。いつでも呼んでいいって言ってたけど、時計は今早朝6時を指している、と。…流石に迷惑だろうか?

 

 しかし、あれが俺にどう影響するかも分からないからすぐ聞きたいし…。

 レイゼさんには申し訳ないが呼んでみよう。起きてるかも分からないしね、呼んでみるだけタダだよタダ。

 来ちゃったらタダではねぇよ。

 

 そう自分に言い聞かせて罪悪感を誤魔化しながら、俺はレイゼさんを呼んでみる。

 

「レイゼさん、います?」

 

「はい、こちらに。如何なさいましたか?」

「びっっっくりしたぁ…これからは後ろはやめてくれると助かるかな…心臓的に」

「申し訳ありません、それは私のメイド道に反しているのでお答えできません」

 

 あーそっか。なら仕方ないよねぇ…。

 ……メイド道ってなに?信念的な?

 

「メイド道がなにかは分からないけど分かったよ…これからは心構えしっかりしておくね…」

「そうしてくださると助かります。 それと、貴方様は私のご主人様なので、敬語は使わないで頂けると…」

「アッハイ」

 

 ハッ、しまった!なにかレイゼさんの背中からとんでもない"圧"が出てた気がして、思わず返事をしてしまった!

 

「それで、ご主人様。ご用件の方は何でございましたか? 朝食でしたら既に準備してありますよ」

「それはありがたいけど、大丈夫?早起き過ぎない? それに、神様からの命令とはいえ、俺なんかにメイドとして仕えるのも不満に思ったりしてない?相手は昨日会ったばかりの人だよ?」

「別に、神からの命令で嫌々仕えている、というではありませんよ。私が好きでいるだけなので、何も心配はいりません。それと敬語が。」

「アッハイ、すみません。じゃない、ごめん。それで用件なんだけど、あの空に同時に浮いている月と太陽ってなにかなって思って。何か分かる事があったら、教えて欲しいでs…ンンッ教えて欲しい。」

 

 敬語がチラつくたびに言いようもないナニカをレイゼさんから感じる…怖い。真顔になるし。

 レイゼさんに怖がっていたら、真顔からまた笑顔に戻ったレイゼさんが話す。

 

「あぁ、あちらですか。神に説明を受けていないと混乱してしまうのも無理はないと思います。 結論から申し上げますと、この屋敷がある場所は神が屋敷とともに作り出した異界となっており、現実世界とは違う場所に位置するため、あのように本来とは違う様相となっております。 ご心配せずとも、あちらが何か悪影響を及ぼす可能性はございません。ご安心くださいませ」

 

 あ、やっぱりそういう感じなのね。予想はしていた。

 

「了解、とりあえず何もないみたいで安心したよ。 それと、まだ質問があるんだけど…この異界からは好きに出入り出来るのか、そして出た場合はどこに繋がってるか分かる?」

「はい、この異界からは自由に出入りすることが可能となっております。 こちらから窓を覗いた時に見える、あちらの門から出入りなさってください。また、出たときにどこに繋がっているかですが、現実世界にある小さな一軒家の中へと繋がっています。 あちらの世界の一軒家も貴方様が所有者となっていますので、ご自由にご活用くださいませ」

 

 一軒家の中に…。こう、その家の一室みたいな感じになっているのかな?部屋の扉を開けたらここに繋がってる、みたいな。

 …かっこいいな。それもまたロマンを感じる。

 それに、向こうの人たちへのカモフラージュもこれでしやすいし、そこまで考えて神様が作ってくれたんだろう。

 ちょくちょくある弄りというか、おふざけさえなければ本当にいい神様なのに…

 

「分かった。俺の用件はこれだけ。朝食、作ってくれたんですよね…ンンッ、でしょ? 食べても良いかな」

「かしこまりました。部屋にお持ちしますか?」

「うーん…。したいことあるし、そうしてほしいかな」

「かしこまりました、すぐにお持ちいたします」

 

 そう言うと、レイゼさんは笑顔のまま、また一瞬でいなくなった。

 …メイドさんというのは不思議だ。

 

 ささ、本当にすぐ持ってきてくれるだろうし、することをしてしまおう。

 俺は本棚まで歩くと、昨日しまった黒の本を取り出し、続きから読み始めた。

 

 

 

 あれからざっと5分くらい経ってから、レイゼさんが料理を持ってきた。あの瞬間移動みたいなのしたらすぐに持ってこれて楽だろうに、普通に歩いて良かったの?と聞いたら「出来はするがそのように持ってくるのはメイド道に反する」と言われた。だからメイド道って一体なんだとは思いつつ、とりあえず納得はしておいた。

 

 朝食はすぐに食べ終わり、また本に戻る。食器はまた普通にレイゼさんが持って行ってくれた。洗い物手伝うよ、と提案したが食い気味に断られた。仕事取ろうとしてすみません、とは言っておいた。

 圧が凄いのよ…

 

 発展形のページに差し掛かった所で、ここからは基礎を出来るようになってから読むことにし、本を閉じる。

 家の中で練習するのは色々と危ないことが分かっているため、練習場所を探したいわけだが…

 

 この世界に来てからずっとこの家の中にいたし、そんなの探せるわけがない訳で。

 

「という訳でレイゼさん、いい力の練習場所って知ってる?」

「はい。家を出て右側へ真っ直ぐ行った場所に神が創造した専用の練習場所がございます。異界全体が貴方様の庭のような物ですので、お好きにご利用なさってください」

「分かった、ありがとね」

「いえ。 では、失礼いたします」

 

 今回はしっかり構えていたのでびっくりしなかった。成長を感じる…

 え?成長を感じる所が違うだろって?うるさいなぁ、あれ本当にびっくりするんだよ?俺は褒められてもいいくらいだ。

 

 とりあえず聞いた場所へ向かうとしよう。はやく最強になりたいからね!

 

 練習用に黒の本を持ち、レイゼさんがいつの間にか用意してくれていた外出用の服を着る。

 本当にいつの間にか置いてあった。メイド怖…

 

 外へ出ると、気持ちいい風が少し吹いている。

 風とかあるんだ…

 

 一日ぶりの外なので、気持ちのいい日光…月光?割合的には太陽の方が多いから日光で。日光を浴びながら大きく伸びをすると、俺はそのまま出て右側の方へと歩き出した。

 

 

 

 真っ直ぐ歩いていると、遠くの方にそれらしい建物が見えてきた。なんだろう、雰囲気は闘技場だとか、そういうのに近い気がする。そのまま闘技場っぽいところへ向かい、5分ほどで到着。

 

 ワクワクが止まらないうちに中へ入ると、想像通りというか。中は本当に闘技場のような作りになっており、かなり広い。これなら抑えられなくなっても被害はあまり出ないだろう。

 しかも、出入り口の横に書いてあった看板を見る感じ、施設が壊れても自動で直るし、暴走によって瀕死になっても、普通に治るらしい。これも神様パワーか…恐るべし。

 

 

 中央の方まで歩いて、本を取り出し、開く。

 基礎の基礎、黒の力の出し方、操り方。それらをとりあえず今日で出来るようになりたい。

 

 本には、「自分の中にある魔力を外へ出すには、魔力の操作ができるようにならないと危険。操作出来るようになってから外へ出さなければ、そのまま君の体内にある無限ともいえる魔力が外へ垂れ流し状態になり、膨大な黒の魔力が辺りを侵食していく」と、かなり怖いことが書いてあったので、まずは操作から。

 

 

 操作は簡単らしい。自分の中を血のように流れている魔力を感知し、その流れの途中に新しく通れる道を作るようなイメージで、魔力を出したい場所へ誘導する………こ、こんな感じ、か?

 

 試しに魔力を手に誘導してみると、手が心なしか温かい気がする。これは出来てるってことでいいのだろうか。

 体内の魔力の操作は簡単で、自分の魔力を出したい場所へ誘導してあげるだけ。だが、体外に出た魔力の操作は体内だけではなく、外にある魔力の影響も受けてしまう為、難しくなってしまうそうだ。

 

 体内は行けたんだし、体外も余裕だろうと、俺はそう思ってしまった。そう、"しまった"んだ。

 

 

 つい魔力の通り道に出口を作ってしまったが最後。

 想像して気を付けていたはずの可能性から「なんとかなるだろう」と目を背けていた俺は、この力の恐ろしさを目の当たりにすることになる。

 

 

 右手から出た黒の魔力。手を空へと向けていたからか、そのまま出た勢いで空へ向かっていったと思えば…

 

「………へ?」

 

 少なくとも見える範囲の空全てが、ものの5秒ほどで暗く、黒く染まっていた。

 前世では暗黒物質、またはダークマターと呼ばれていたか。光すらも吸収し、そこになにもないように思わせるほどの黒。先ほどまで空に浮いていた月も太陽も、空自体すらも、その全てが最初から無かったかのようになってしまっていた。

 

 

 ヤバい、とにかくヤバい。見える範囲を黒く染めたというのに、まだ自分の手からは魔力が染め足りないとばかりに勢いよく出ている。

 とにかくこれを戻さなければと焦るが操作が難しく、まるで暴れ馬のように言うことを聞かない。

 

 魔力の戻し方も本に書かれていたはずだ。使い慣れていない左手でなんとか本を捲ろうとするが、焦りすぎて体がマトモに動かない。

 早く、速く、はやくしなければ。

 

 どうする?どうすれば良い?どうしたら良い?そんな考えばかりが浮かんでは消え、そして体が一瞬だけ思考停止して止まる、その繰り返し。

 

 そんな自分の右手に、ふと手が添えられる。

 そして右耳から、自分を落ち着かせるためか、優しい声色で、この場所で唯一自分以外にいる人。

 レイゼさんが、ゆっくり話しかけてくれた。

 

「大丈夫です、ご主人様。私もおります。まずはゆっくり深呼吸して、落ち着いてください。」

 

 まだ焦っている自分の心を歯を食いしばって押さえつけ、レイゼさんの言う通りに深呼吸する。

 空の景色とは裏腹に、澄んでいる空気を自分の肺の中に取り込む。

 

「そうです。落ち着いたら、自分の体内の魔力をしっかりと感じてください。感じたら、右手の先にある魔力の出口をゆっくり閉じてください。ゆっくりで大丈夫ですので。慌てないで」

 

 右手の魔力の出口を、言われた通りゆっくりと閉じていく。

 先ほどの慌て具合から想像がつかないほど、頭が冷静に動いているのが分かる。自分でも驚きだ。

 

 閉じ終わると、右手から出ていた魔力が出なくなっていた。

 

「閉じたら、次は左手に入口を作りましょう。 大丈夫です、心配しないでください。出口が作れて、入り口が作れないはずがありません。 入ってきた魔力が入ったときに逆流しないように、しっかり流れに沿って取り込んでください」

 

 入り口の作り方も、本で見たはず。思い出せ。

 

 左手に魔力が入れる穴を作り、体内の魔力を穴から出ないように、そして外の魔力が入ってきやすいように流す。そうすると、自分と適正がある外の魔力が勝手に入ってくる。

 

「落ち着いて、入ってきた魔力を全て受け入れて、体内で流してください。基本は変わりません」

 

 レイゼさんに言われたことを落ち着いてすれば、いつの間にか空が元に戻っており、安心感を覚える澄んだ青の色へと変化していた。

 太陽と月の明かりが、今の自分には眩しく思えた。

 

「あとは入り口を閉じれば終わりです。 お疲れさまでした」

 

 入り口を閉じて、心を落ち着かせるようにもう一度深呼吸をする。

 その間、レイゼさんが背中をゆっくりとさすってくれる。優しい…

 

 

 

 ……危なかった。レイゼさんがいなかったら、きっとあのまま焦りっぱなしで大変なことになっていた。

 

「……レイゼさん、ありがとうございます。来てくれていなかったら、きっと大変なことになってました…」

「いえ、ご主人様がお困りになっていたら、それを助けるのもメイドの務めです。それと、敬語が」

「アッハイ、スミマセン」

 

 自惚れと楽観的すぎたが故に起きた事件だが、まだ練習は始まったばかりだし…少し怖いが、操作と出力は安定されるべきだ。どうしようか…

 

「でしたら、私も一緒に練習にお付き合いいたしましょうか?」

「えっ?いいんでs…いいのか?」

「はい。お一人ですとまだ不安でしょうし、私と練習しましょう」

「あ、ありがとう…なんで俺がまだ不安って分かった…?」

「顔に書いてありましたので、不躾ながら提案させていただきました」

「俺って顔に出やすいタイプなのか…?」

 

 とりあえず、レイゼさんには特大の感謝をしよう。割と一生分の恩を感じている。

 

 …本当に焦った。この力の恐ろしさは身をもって分かったんだし、レイゼさんの力も借りて、慎重に練習しようと思う。

 

 ちなみに、結局この後三回ほど暴走させてしまった。

 

 違うんです…本当に扱いが難しいんです…。レイゼさんに謝ったら「黒は特に扱いづらいですし、仕方ないですよ。諦めないでください」と、慰めまで頂いてしまった。

 

 絶対この二年で扱いきって見せてやる!俺の今世の目標のために!あと手伝ってくれるレイゼさんのために!

 

 

 とは言いつつ、この日は心身共に疲れ切ったので寝た。レイゼさん、夜伽の提案はやめてください。しないので。

 

 …え?毎晩提案する?やめて!自分の体は大事にして!こんな情けない厨二病野郎にそんなことしないで!




メイドさんってさ、ロマンと可愛さ、その両方を兼ね備えたパーフェクト属性だと思うんですよね。もちろん他の魅力的な属性も同率で一位ですけど。
皆違って皆いい!

-追記-
5/7、見やすくなるように修正・加筆しました。
…見やすくなってると良いな…(希望的観測)

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