黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ 作:せみふぁいなる
…その通りですハイ。落ち着いたらちゃんと書き直して心象とか細かく表現します…
あれからの俺はちゃんと適度に頑張れていた…と思う。
レイゼさんとグレイスには何も言われなかったし、きっと大丈夫。
戦って戦って戦って、一日休んだらまた戦って…と繰り返していた。
そんな訓練がやっと実を結び始めたのか、たまにレイゼさんに勝つことが出来始めていた。魔法・能力ありの試合なら、勝率は5割を超えている。我ながらこの力、強すぎる…!とも思うが、制御が大変なので見逃してほしい。
また、あれから少しレイゼさんとグレイスは過保護気味というか、心配性になった。
これくらい大丈夫だと言っても、レイゼさんは服を無理やり捲って確認してこようとする始末。…元々は俺のせいなので、あまり強く言えないのが最近の悩みである。
俺だって前世含めてもまだまだ健全な男の子である、恥ずかしいものは恥ずかしい。レイゼさん、普通に美人だし可愛いし。いくら時間が経っても慣れないに決まってるだろ!
グレイスの方は、少しでも疲れたような素振りを見せると「…ん、無理は良くない」と無理やり休ませようとしてくる。戦闘訓練中もよく「…疲れてない?無理してない?…ホントに?」と言ってくる。
気持ちは嬉しいし、他は今まで通り天使みたいな子だから、気にはならない…と、言えば嘘になってしまう。
いや、気になるでしょそりゃ。こんな天使みたいな子が凄い心配そうに「大丈夫?」って言ってくれるんだぞ。そういう意味では凄く気になるだろ!男の子なら!
ちなみに、束縛だとか、そこまでは行かないので、俺としては負の方の意味で気になるようなことは無い。
……あ、ごめん。やっぱり一個あった。ナイフ持ったまま服を捲ろうとするのだけは勘弁してほしい。痛いのには多少慣れただけで、痛いものは痛いし怖いものは怖いのだ。
さて、そんな心配されながらも戦闘訓練をする生活を続けて、七月ほどの時間が経過し。
ついに俺は、レイゼさんに安定して勝てるようになり、合格を貰ったのだ。
長く苦しい戦いだった…。(肉体的にも精神的にも理性的にも)
そしてだ。魔法も出来るようになった、肉弾戦も出来るようになった、近接戦もかっこつける余裕が出来るほどには出来るようになった。
つまり、これでようやく……
「俺が求める俺が"完成"した…って事だよな?」
「えぇ、その通りかと」
「…ご主人、頑張った。えらいえらい」
レイゼさんが肯定し、グレイスが労わるように頭を撫でてくれる。…天国か?頑張って良かったと、既に実感している。
それにしても、気合を出して適度に頑張れていたおかげか、意外と早く終わったな。大変よくできました、俺。
さて、努力の甲斐あって時間が余っている今の俺には、するべきことが一つある。
「あと5ヶ月ほど時間が余ってるのか。…事前に外に出て色々と確認しておくべきか?」
そう、今まで理想のスペックを追い求めていたせいで、俺はこの世界から一瞬も出たことがないのだ。
何してんだコイツ。何してんだろうね。
こっちとあっちの世界で本当に時間がずれていないかとか、そもそもどこの地にいるのかとか、その他諸々の確認をしていかないといけない。
本当ならもっと最初の方にしておくべきことである。だが、浮かれていた当初の俺はそんな事はせず、黒マニュアルを読みまくっていた。
本当に何してんだコイツ。
「外に出て何か不都合があっても、それを解決できる力はついたしな。──よし、行くか!外の世界へ!」
「…ご主人、外に出るなら私も連れてく。 なにか危ないことあったら、心配」
「それならご主人様、私も着いていっても良いでしょうか?なにかお怪我をするような事態になるかもしれません。 それに、私が着いていればなにか困るようなことは無くなるかと」
「あー、最初は一人で行こうと思ってたんだけど…。あぁ待って待って、連れて行かないとかじゃないから!泣きそうにならないで!一緒に行こう!その方が楽しそうだしなぁ~!」
涙目になったレイゼさんとグレイスは、一緒に行こうと提案した瞬間に涙が引っ込んで満面の笑みに変わった。え、演技だったというのか…?
「「悲しかったのは本当(です)。」」
あ、そうなの…。あとグレイス、人型でも心を読めるようになったのね。お兄さんもうあんまり驚かないよ…。
「さて、そうと決まれば早く行くか!」
「…ん、楽しみ」
「あまり目立つようなことはしないでくださいね、グレイスさん」
「…善処する」
「しない、とは言い切ってくれないのね、グレイス…」
そんな話をしつつ、パパっと準備を済ませた俺たちは、外の世界へ行くための門をくぐった。
なんか視界がグネグネして、ちょっと気持ち悪いな、これ…。
視界グネグネゾーンは2秒ほどで終わり、光が見えたと思った次の瞬間、気が付けば前の世界の一般的な家のような所にいた。
後ろを振り返ると、真っ暗で中がなにも見えない部屋があった。
「察するにこの扉から出てきたのか。…中が真っ暗で何も見えないな。 誰かこっちの世界の人に開けられたら、一瞬でなにか不審な部屋だって疑われそうだ…。 一応、見られないよう気を付けるべきか?」
他の部屋はなんでも無いのにこの部屋だけ真っ暗っていうのは、流石に不審である。
神様ご自製の世界とか、普通にバレたら面倒な事になるだろう。
「その辺りはお任せください。 仮に人が来ても、見られないよう徹底致します」
「あー、そう言ってくれるなら、レイゼさんに任せようかな」
「ありがとうございます」
やだ頼もしい。この絶対にやり遂げてくれるという安心感よ。
さて、レイゼさんの頼もしさにキュンとした所で、俺は家の探索を開始する。
探索とは言っても、本当にごく普通の家であるらしく、特にこれといって何かあるわけではなさそうか。
強いて言うのであれば、一年半放置していたにしては、ホコリ一つもなく、綺麗すぎるということだけだ。大体理由は想像がつく。多分…
「レイゼさん、定期的にこっちに来て、この家の掃除してた?」
「はい。 勝手ながら、いつこちらに来てもいいようにと、毎日掃除しておりました。…ご迷惑でしたか…?」
「いやいや。 感謝こそすれ、迷惑だなんて微塵も思わないよ。ありがとう」
「──でしたら、良かったです…」
レイゼさんがそっぽを向いて耳を赤くする。照れてるところも可愛い。
散らかされて怒る人はいても、掃除されて怒る人なんて稀だろう。唯一誰にでもあるとしたら、母親に勝手に部屋を掃除されていた思春期の子だ。
「お母さん!勝手に掃除しないでって!」「じゃあ普段から自分で片付けしなさい!」なんて会話はあるあるだ。
「じゃあ、家の中には特に何も無いってことで、いざ真の外へ!」
「…ごー」
グレイスが我先にと玄関へ走る。
………。
「グレイス、手繋いでおこっか」
「…んー、ご主人がどうしてもって言うなら…」
「どうしても、ね?」
「…じゃあ、繋ぐ…」
グレイスを引き留めて、左手で手をつなぐ。
あの調子だと一人でどこかに行って迷子になりそうだからね、うん。信用していないという訳じゃないけど、どこか心配というか。
俺も人の事言えないくらい心配性なのかも知れない。
……ところで、恋人つなぎになっているのは、触れないでおいた方が良いのか?
…まぁ、いいか。
「では、いざゆかん!」
気合を入れて、「バァンッ!」と効果音が付きそうな勢いで扉を開ける。
まず最初に感じたのは体が震えるような寒さ。…あ、そっかぁ。一月だもんね、そりゃ寒いよね。
「ただいまの気温は-2度、体感温度は-5度ほどといったところでしょうか。」
「道理で寒い訳だね!」
あちらの世界では常に快適な気温・天気であるために、失念していた。だがまぁ、とりあえず時間の齟齬は無いことは確認できた。ヨシ!
すぐに「バァンッ!」と扉を閉め、冬用のコートとマフラーを、グレイスには猫耳がついたもこもこのジャケットと手袋を創って渡した。
やはりこの力、万能すぎる…!
あと二人とも可愛すぎてヤバいね。思わず鼻血が出そうだ。この調子で主人公ちゃんに会ったら、俺興奮しすぎて出血多量で死ぬんじゃないか?
さて、気を取り直して…。
「い、いざゆかん!」
…さっきより遥かに温かい。やっぱり上着って大事。
グレイスは周りを見てはしゃいでいる。可愛い。…そうか、生まれてから雪とか道路とか、ありとあらゆるものが初見だもんね。是非この機会にいっぱい好奇心を満たしてほしい。
レイゼさんは…
「?」
いつも通りっぽい。…いや、よく見たら雪を見てそわそわしてる。我慢してるってコトォ?!可愛い!
「レイゼさん、我慢しないでグレイスみたいにはしゃいでもいいんだよ?」
「ん。 レイゼも私と一緒に遊ぶ」
「い、いえ。 今は先に、ご主人様の用事を済ませた方がよろしいかと。それに、周りに人が寄り付かない魔法はかかっていますが、それでも公園で遊んだ方が健全だと思いますよ」
「…レイゼ、公園で遊びたい?」
「っえ? あ、いえ、そういう訳では…」
「…なら仕方ない、今は見るだけで我慢する」
「あの?グレイスさん? 決してそういう訳ではないですからね?」
レイゼさんが顔を赤くしながらグレイスに抗議している。この光景、癒されるなぁ…。もうこれ回復魔法でしょ。
「さて、じゃあレイゼさんも公園で雪遊びしたいみたいだし、用事はパッと終わらせようか!」
「ご主人様までですか?!」
レイゼさんの抗議を無視し、俺は自分含めた3人に認識阻害の魔法をかける。もちろん魔法とは便利なものなので、俺たちは互いを認識できるが。
……魔法で寒さ無視できたんじゃね?って思った人は間違いだ。
そうすると、冬服を着たレイゼさんとグレイスが見れないからな!
あと、魔法に頼りすぎると堕落していく気がするからね。心構えは大事である。
「これで飛んで、空から俺達がどこに居るのかの大体の把握と、俺が知っている上での重要な施設や建物の有無や無事の確認をしていこう」
今のところ俺はなにも介入していないし、多分ちゃんと原作通りだろうけど。
万が一があっては困るので、ちゃんと確認していこうと思う。
まず、俺達がいる場所の確認だが…。これは飛んですぐ分かった。
原作で主人公ちゃんが通っている学校、『国立魔剣士育成校』がすぐに見えたからだ。
よってここは、主人公ちゃんが住んでいる街と同じであることが分かる。これは良い立地だ。姿を現しやすいし、関わりやすそうだ。
しかも校舎自体からは遠めの位置なので、関わりつつもすぐに姿を消せば誰にも場所はバレない。神様分かってるぅ!
さて、次に重要な建物・施設だが、まず学校は真っ先に確認できた。そしたら後はいつかのイベントで主人公ちゃん達が行くだろうプールと、普段よく行っているであろうスーパーの確認だが…。
……遠目で見ても問題は起きて無さそうか。良かった良かった、一安心である。
俺が原作との乖離が無いか確認していると、グレイスから俺に声がかかった。
「…ご主人。 あれ、なに?」
「ん?どれどれ……あぁ、あれは魔物だな。街中にも何故か湧くんだ、あいつら。 とは言っても、そこまで強くはないぞ?」
「…弱いの?」
「あぁ、魔法が一般化してる世界だしな。 一般人でも勝てるはず」
「…じゃああれはなに?」
そう言ってグレイスが魔物の向いている方向を指さす。…んーと、あれは……
「…魔力切れで倒れている人と、その人を背負って追いつめられている魔力切れの人だな」
「…魔法使えなくても、倒せるの?」
「いや、余程格闘が出来る人じゃないと無理だったはず…」
「…じゃあ、あれってまずいんじゃ?」
「…そう、だな。そうなるな」
うん、そうだな。魔物の目の前のあの子、泣きながら必死に魔法を撃とうとしてるもんな。
………なるほど。
「グレイス、武器形態!」
「…ご主人なら、そう言うと思ってた」
「私は人除けの魔法を近くに貼っておきます」
「ありがとう、レイゼさん!」
俺は鎌になったグレイスを持つと、もはや瞬間移動なんじゃないかと思うレベルの速度を出し、魔力切れの子をかばうように着地。攻撃の構えを取っていた魔物の腕を切り飛ばす。あっぶな、間に合った…。
「あ、え…?」
「…混乱するのも分かるけど、今は何も見ず、聞かず、伏せていてくれ。すぐ終わるから」
それだけ言って、俺は魔物に向き直る。
魔物は、自分の腕がなくなったことに気付き、叫んでいる。…うるさっ!いつまで叫んでんだコイツ!
「…はぁ。とりあえず、死ね」
声が余りにもうるさいので、グレイスに風を纏わせ、一振りする。
それだけで、纏わせた風の刃によってズタズタに引き裂かれて、魔物は絶命した。
「あぁ、うるさかった…。『同化』。」
返り血でグレイスと俺が汚れてしまったので、魔力に返り血だけ同化させて、その同化させた魔力だけを弾け飛ばした。俺の開発した、お手軽血液掃除方法である。
全く、うちのグレイスを汚い血で汚すとは。消滅させてやろうか。
とりあえず俺がいたという証拠が残っても後々めんどくさくなるかもしれないので、本当に死体を消滅させつつ、俺は後ろで伏せている女の子に声をかけた。
「もういいよ、魔物は消滅させた」
肩をたたくとビクッと体を震わせるが、すぐに顔を上げてこちらを見た。
周りを見て安全だと気付いたのか、やっと肩の力を緩める。
「あ、あの……助けてくれて、ありがとうございました 」
「あぁ、別に気にしなくていいよ。あれくらい手間にもならないから」
実際あの程度、本当に手間にならないし。この子たちが無事なら、それでよかっ…た……。
……。助けることに集中してて顔とか見てなかったけどさ。今改めて見ると、なんか見覚えがある見た目してないか?
…背負われてるの、主人公ちゃんこと、白羽 明華ちゃんじゃない?これ。んでもって、背負ってる方、そんな主人公ちゃんの親友である草壁 風花ちゃんじゃない?
…あー……これは、ちょっと流石に予想外かなーって……
「あの、どうかしました…?」
「あぁいや、なんでも無いよ。いや、本当に。」
目の前の風花ちゃんが少し警戒の色を目に浮かばせている。
……ホンットどうしよっかなぁ……。
やっと主人公ちゃんの名前出せたよ!やったね!
明日からしばらく忙しいので、次の投稿は一週間後とか二週間後になるかもしれません。悲しい。
-追記-
5/26、読みやすくなるように調整しました。地の文が少ないんじゃないか?
ここまで読んでくださりありがとうございます!是非気が向いたら、感想・評価よろしくお願いします!