黒夜、後に白日~裏ボス転生者、周りを曇らせながら能天気に戦います~ 作:せみふぁいなる
1週間2週間も書けないのは耐えられなかったよ…。
目の前にいる親友ちゃんこと、草壁 風花ちゃんが、何か恐ろしい物を見るような目でこちらを見てくる。
俺から庇うように背負っている主人公ちゃんこと、白羽 明華ちゃんは、風花ちゃんよりも深刻な魔力切れにより、その白いセミロングの髪をゆらゆらと揺らしながら、気絶したように眠っている。
…どうしたものか。原作開始前にこんなことになっていたっていうのも驚きだし、原作開始前に出会ってしまうのはあまりにも予定外だ。
しかも目の前で自分の推しが、魔力切れとはいえスヤスヤとその可愛い寝顔をさらけ出して寝ているんだぞ?
正直鼻血が出そうだ。気合で耐えてはいるけど。
とりあえず、この鼻が決壊して鼻血が出てしまう前に、早くここを退散しなければ。
「(…私は人型にならない方が良い?)」
…そう、だな。うん。俺が何者なのかただでさえ警戒されているのに、もっと警戒されてしまう。
「(…分かった。緊張して上手く喋れる自信無かったから、少し怖かった)」
そんなところも可愛い! そして安心してほしい、基本グレイスが人型で前に出ることはあまり無い…と思うから。
人型で誰かと出会うのは、しっかり心の準備が出来てからの方が良いに決まっている。
とりあえず、だ。風花ちゃんにずっと無言で警戒されるのもそろそろ辛いし、俺としても彼女たちが心配だ。なんとかしよう。
「…あー、そんなに警戒しなくてもいい。悪いことをしようとしてる~とか、決してそういう訳じゃないんだ」
「…じゃあ、どういう訳ですか? 助けてくれたのは心から感謝します…けど、都合よく手を貸してくれて、何か裏があるかもしれないと疑うのは当たり前です」
「それを言われるとそれはそうなんだけど…。 俺は、ただ心配なだけなんだ。見た所、二人とも魔力切れだろう? そんな状態で街中を歩くのは危険極まりない。それに、魔物が次いつ、どこに湧くのかも分からない。 そんな状態のまま、それじゃあこれでサヨナラなんて俺には到底出来ない」
「…だとして、ではこの後どう助けてくれると? 家まで護衛する、とか言いませんよね?」
風花ちゃんが、絶対に信用しませんというオーラを出しながら聞いてくる。
うん、まぁ見るからに怪しいもんね、仕方ないよね。
「流石に家まで、なんてしないよ。 見知らぬ人に家の場所が知られるとか、普通に怖いでしょ」
「…じゃあ、本当にどうするんですか?」
「魔力切れで意識を失ったまま長時間放置するのは危険。 でもここから安全な場所までは距離がある…じゃあどうするかと言うとだ。……信じるのは限りなく難しいだろうが、今から渡す物を使ってほしいんだ」
少し話は変わるが、俺は普段は羽をしまっている。戦闘の時だけ、俺の本気度によって羽の枚数を決めて生やす、といった感じ。
そして、さっきは割と結構急いで来たので、4枚の羽を出してきた。
俺の羽には、魔力の出力を増やす、といった機能があるらしく、簡単に言うと羽を出した分だけ強くなる、といった感じになる。
しかし欠点もある。それは、魔力が駄々洩れになってしまい、周りの生物に威圧感を与えてしまうというもの。
人から見ると、なんかやけに禍々しいオーラが出ている…らしい。
…さて、ここまで話したところで状況整理だ。
俺は先ほど、急ぐために4枚の羽を出して来た。そしてそのまま魔物を切り伏せて、死体もろとも消した。
風花ちゃん視点だと、もう終わりだと思ったその時、突如としてあり得ない程禍々しいオーラを放った大鎌を持った変な男が、一瞬のうちにして魔物を倒し、顔を上げた時には死体が無くなっていた、とかいう訳分からん状態なのだ。
…警戒もするよね。そりゃ。仕方ない。
そして、そんな不審者からの物なんか絶対受け取ってもらえないと思うが…。
渡すだけ渡してなんとか説得しよう。それしか無い。
俺は、インベントリみたいな役割を果たす魔法、『不変の黒』を開いて、その中からある瓶を2本取り出し、風花ちゃんの元へ優しく転がす。
「それは、魔力回復促進剤。 飲んで5分もすれば、元の魔力の5割ほどが自然と回復するはず。信じてもらえないかもしれないけど、これを二人に飲んでほしい」
風花ちゃんは薬をしばらく見るが、やはりというか、此方を少しだけ睨んで一言。
「…信用出来ません」
ですよねー。そんな気はしてた。
「…毒が入ってるかもしれないから、とか?」
「はい、そうです。貴方は初対面の人から貰った薬を『はいわかりました』と素直に飲めますか?」
仰る通りで。だがしかし、これを飲んでもらわないと二人ががががが。
「だけど、どうしても心配なんだ…。―――じゃあ、全く同じ薬を目の前で飲むから、それならいい、かな…?」
「…それなら」
「よし来た」
早速俺はもう一本同じ薬を取り出す。そして、風花ちゃんの目の前で、しっかり毒が入ってないアピールをする為に飲み干した。
「……ぷはぁっ…これ量多くね…? とりあえず、これで飲んでくれる?」
「まぁ、いいです。…ですが、私が効果を確認するまで、この子には飲ませませんからね」
「それで大丈夫」
風花ちゃんは俺が渡した瓶の内の1本を開け、中に入っている薬を飲んだ。何か変な体質が無ければ、そのまま10秒も経てば順調に魔力が回復していくはず。
「…これは…」
うん、ちゃんと効果が出てるみたいだな。風花ちゃんの魔力容量をチラッと盗み見した所、ちゃんと回復していくのが見える。
いや、魔力の扱いがかなり上手い実力者じゃないと見えない設定なはずだし、別にセクハラとかにもならないはずだからコソコソとはしなくても良いんだけどね?なんか、悪い事してる気分になるからさ…
「あの、最初の説明では5割って言ってませんでしたか?不安になるくらい回復していくんですけど…。やっぱり騙したんですか?!」
はい?!その薬、そんなに回復はしなかったはずなんだけど!?
「いや、嘘は言っていないはず。その薬は元の魔力の半分まで、魔力の自然回復力を高めて回復する代物なんだ」
「じゃあどうしてもうほとんど回復してるんですか?!まだ1、2分ほどしか経ってませんよ?!」
「り、りありー?」
んなバカな、しっかり俺が丹精込めて作った渾身の薬だぞ。黒が便利すぎて科学的な知識無しに作ったから丹精もクソもないけど!
原因も知りたいが、マックスまで回復し切った時にどんな効果が現れるのか警戒しないといけないか。めちゃめちゃ俺の責任だし。
「も、もう最大まで回復しますよ?!私爆発しませんよね?!」
「大丈夫、"自然回復力を高める"効果だからね。強制的に増やしてる訳じゃない。オーバーフローした分はちゃんと空気中に放出される。…多分」
「心配なんですけど!?」
「本当にごめんなさい!」
ど、どうなる?一応最終手段はあるが、これをすると終わる…!色々と!
「………放出、されてる…よな?」
「…です、ね。はぁぁ、良かったぁぁ……」
「いや、本当に良かった…。良くは無いけど良かった…」
咄嗟に思いついたあの手段だけは避けたかったからな。いや、本当に安心した…。
"手を繋いで俺に魔力を流させる"なんて方法、そんな事したら多少は得た信頼も、社会的地位も、俺の心臓も、全てが終わる所だった…
あっ信頼は今の薬騒動で落ちてた…。反省。すぐにでも謝るべきだ、いや本当に。
「…原因は分からないが、何故か想定より効果が高くなってしまってた…。不安にさせてしまって、そして多少は信じてくれた君の心を踏みにじって、すみませんでした…」
俺が飲んだやつはちゃんと5割分くらい魔力が生成されてたはずなのに…。そのほとんどは空気中に散らばったけど。
風花ちゃんは少し悩んだようだが、判決が出たのか、コチラを少し睨んで口を開ける。
「結果良ければ全てよし…とは、言いませんが。 まぁ、それでも結果的に見れば私の魔力は全回復した訳ですし。この件に関しては目を瞑ります。元々助けていただいた身ですし、その恩を忘れた、という訳でもないので。多少は、信じます…」
「ありがとうございますッッ!!!」
「声が大きいです」
「すみません」
許しは貰えたらしい。今のところ、大体俺のせいで騒動が起きてるから、その分で謝罪回数が増加している気がする。
…頑張って取り返そうね。
「それで、その背負っている子には飲ませて貰えそうですかね…」
「…やっぱり少し不安ですが…。背に腹はかえられないというか、このまま街中を歩くのが怖いので、飲ませる事にします」
「良かったぁ…」
ふぅ。じゃあこれで今度こそ何も無かったら、俺は用済みか。
「じゃあ、飲ませます」
そう言うと、明華ちゃんの口を開けて飲ませ始めた。
絵面がイケメン過ぎてヤバい。え、これ見ていいやつ?大丈夫?いやでも見ておかないと変な効果が出た時に大変だし…。そろそろ鼻が決壊しそうだ。
少しすると、薬の効果が出始めたのか、みるみると魔力が回復していくのが見える。……あっ、5割超えた。っていう事は…
あー、やっぱり効果が高くなってるね、うん。でも大丈夫、風花ちゃんと同じパターンなら魔力が自然と放出されてい、く…は……ず………?
さ、されない??
なんで??
「いやいやいや、おかしいおかしい。なんでされないのか、これが分からない。……どうしようね?」
「ど、どうしたんですか?何が起きてるんですか?」
「…オーバフローした分の魔力が、放出されてないんだ」
「は、はい!?」
風花ちゃんが素で驚いた声を上げる。
ど、どうする。ちょっと今日は予想外の事が起こりすぎているぞ?
「(…ご主人が言ってた最終手段、するしかないと思う)」
グレイス!?しばらく喋らないなーって思ってたら、俺が現実逃避してた事を無慈悲に突き刺して来たね!
「(でも、そうするしか無い)」
や、やっぱそうなる?そうなっちゃう…?
「(…早くしないと、魔力が許容限界まで溜まって爆発する)」
だああああ、もう!元は俺のせいなんじゃ!やってやらァよ!!下げる頭はいくらでもある!!
「(…いくらでもは、無いと思う)」
お黙り!
俺は、急いで明華ちゃんの手を掴む。
「あの、何してるんですか?!私の親友に触らないでください!」
「ごめん!本当にごめん! 後で誠心誠意謝るから、今だけ許して欲しい!」
「ダメですよ?! せめて簡単で良いので説明してください!」
「説明は簡単、この子のオーバーした分の魔力を俺の方に移す。 ただそれだけだ!」
「何を言っているんですか?死にますよ、馬鹿なんですか?!」
風花ちゃんがそういうのも無理はない。この世界、自分の適正外の魔色を体に取り込むと、その魔力の制御が出来なくなって体調が悪くなったり、酷い時には死んでしまうのだ。
だが、しかし!無策でそんな事をするような俺ではない!
「大丈夫、ちゃんと死なないようにするし。むしろごめんなさい、助けたいとか言ってこんな騒ぎを起こした挙句に、女の子の手を無理やり掴んでしまって」
「それは本当に怒ってますからね!」
掴んだ手から明華ちゃんのオーバー分の魔力をコチラに移す。
明華ちゃんの魔色は"白"。非常に希少な色であり、そして俺の"黒"と対となる色だ。普通なら、磁石の同じ極同士のように弾き合うだろう。なんせ正反対の色だからな、適正が無いと尚更だ。
だが、それは普通ならの話。
最初の方の修行中にレイゼさんから教えてもらったのだが、どうやらこの体、多少の白適性も付いているらしく。
もちろんあくまで多少であり、使いこなす〜とかになるとまた別だ。
だが、割と地獄だった魔力操作の修行を終えた俺にとって、この多少なりとも適性がある、というのが大事なのだ!
確かに黒より圧倒的に操作は難しくなるが、そんなの黒絶魔法に比べたら些細なものだ。
俺はオーバー分のみを全て取り込むと、手の方に魔力の出口を作ってやり、そこに上手いこと白魔力を循環させる。
うーん、一歩間違えたら爆発、までは行かなくても足がもげるような危険な作業。ドキドキしちゃうね! もげても治せるけど。
そうこうしてる内に出口の方へ循環させることに成功し、放出しても問題ない空の方へ手をかざすと、一気に発射した。
人除けしてくれるってレイゼさんが言ってたし、多分大丈夫。
「……凄い……」
「これで、一先ずは大丈夫だと思う。もう薬の効果は切れてるみたいだし」
明華ちゃんの処置は終わった、直に目を覚ますはず。じゃあ、後俺がやる事はたった1つだ。
…心からの謝罪をして、この場を急いで去る事だ。
いやだって、明華ちゃんって主人公ちゃんだよ?俺の推しなんだよ?目を覚ました時に話せる訳がないだろ、普通に。こんな事をしておいて、謝るだけ謝ったら相手の言葉も聞かずに退散とか、これ新手の通り魔だろ。一体誰がこんな事を…。…俺か。
「(ご主人、早くしないとあの子起きるよ?)」
おーっとそれはまずい。やる事は決まった訳だし、早くしなければ。
心をしっかり込めて、頭をバッと下げる。
「この度は、心配とか言いながら不安にさせて、挙句の果てに殺しかけてすみませんでした!あとその子の手を半ば無理やり掴んだのもすみませんでした!」
「本当ですよ!?」
「その子の魔力は無事に回復したので、そろそろ目を覚ますと思います!ではそういう事で!すみませんでした!!」
そう一方的に告げると、羽の力でその場から離脱する。
飛べよぉぉぉぉぉぉ!!!!
「あ!あの、名前はなんで…行っちゃった…。せめて名前は聞いておきたかったな…。」
これでひと段落付いたか…。いや、本当に申し訳無いことをしたな…。とりあえず、落ち着いたのでレイゼさんの気配の元へ行く。
あの後、予想外の事があるとすぐ焦ってしまうのは直した方がいいとレイゼさんに少し怒られた。どうやら魔法を維持しながらこちらの様子を確認してくれていたらしい。
とりあえず今日のやる事は終わったので、公園に行ってレイゼさんとグレイスと一緒に少し雪遊びして帰った。
雪遊びをしたのは小学生以来だが、存外楽しかった。
でも、雪玉に魔法をかけて白いはずの玉が黒になって飛んできた時はビビった。
この世界の雪合戦は恐ろしい…。
風花ちゃんはポニテです。あと緑魔色です。ポニテな理由は私の癖だから。それが全てです。
-追記-
5/28、見やすくなるように少し手を加えました。「こんなんじゃ見づらいよ、ヤバいよヤバry」って人は是非教えてください。気合で直します。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!是非気が向いたら、感想・評価よろしくお願いします!