ホームズなオリ主と名探偵コナン   作:ラムセス_

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緑川唯

 

 今日も今日とてバリバリ仕事を進めるバリツ探偵ホームズなり。

 

 失踪した前事務員の代わりに新たに探偵事務所へと入った緑川唯、という体裁をとりながら我が事務所に戻ってきた日色君も事務員としていい働きをしている。

 

 ちなみにだが、彼の新しい名前は「日色ヒカルの反対なら緑川唯だろう」と勝手に俺が考えたものだ。

 それで公安を通し、日本国より正式に認められているからして、誰も文句のつけようもない。

 緑川君はこうして、偽造であって偽造でない正式な身分を手に入れたのである。

 

 カバーストーリーとしては下記の通り。

 高校を出た後すぐに憧れの探偵となった緑川唯は鳴かず飛ばず。

 地元で細々と猫探しなどをしながら燻っていたのだが。

 俺の事務員募集の張り紙を見て「世界的名探偵の側で働ける」と飛び込んできた、という流れである。

 

 その後の緑川君用の各種変装道具はメアリーさんがいろいろ手配してくれた。

 アフターサービスだ、とのことだが恐らくはメアリーさんの独断だろう。

 ありがたいことだ。

 これは俺も融通を利かせてMI6に協力せねばなるまい。

 

 ちなみに、変装を緑川君に施すのは俺自身だ。

 ホームズは変装の心得もあるからして。

 彼に教え込んで今後は自分だけでできるようにはなってもらうつもりではあるが。

 まぁ俺の変装術のレベルにはどう頑張っても辿り着けないだろう。

 

 Fate/GrandOrderという現代伝記物の登場人物「英霊ホームズ」は、神秘を用いた変装術の使い手であるからして。

 

 宝具「空屋の冒険(エンプティー・ハウス)」。

 

 変装宝具として、本人の能力までも模倣できる埒外の神秘だ。

 ほぼ怪盗KIDの上位互換たる力であり、石川五エ門に変装すれば4割程度ではあるものの剣技の模倣も可能だ。

 

 まあ、自前のバリツで戦った方が強いから、前に追い詰められて拳銃装備の19人に囲まれた際は特に何も宝具は使わずに切り抜けたのだが。

 

 MI6から渡された特殊な化粧道具や装備品などの山を見ながら、部屋の奥、衝立の向こう側で緑川君が困ったような声を出した。

 メアリーさんが後ろを向いて衝立の横の壁に寄りかかっている。

 

「俺、MI6に渡せるような情報は持ってないぞ?」

「こちらも万年人手不足でね、君ほどのエージェントならば引く手数多だろうさ」

「はは。お誘いは嬉しいが愛国心はそこそこ程度にはあるんでね」

「だろうな。でなければ諜報員失格だ。……まぁ、今回はホームズに恩を売るのが本題だ。気にすることはないさ」

 

 などと和気藹々と話をしているが、メアリーさんなどはちらっとこちらを流し見ている。

 

 これは「この貸しはきちっと返してくれるんだろうな?」という言葉にしない圧である。

 言われずとも頭脳で返すので心配しなくてもいいのだがな。

 どうせ彼らの渡す謎ぐらいになってくると頭痛もマシマシだろうが、それはそれ。

 恩知らずにはなりたくないし。

 

 ああ嫌だ。

 俺自身への健康被害はない程度に抑えてはいるが、今後本格的にモリアーティ教授との頭脳比べなんてことになったらと思うと。

 きっと俺自身の魂に不可逆な損耗を与える羽目になるだろう。

 

 ホームズの霊基の扱う魔術で多少は軽減できているが、本来デミ・サーヴァントなんて奇跡に近い不可能たる所業なのだ。

 

 とはいえ実際、今の俺はデミ・サーヴァントに極めて近い。

 受肉した英霊に近しいこの肉体に、転生者としての俺の魂が入っている状態だ。

 普通は俺の魂など英霊の力の前に消し飛んでいるが、俺の転生者としての魂の強度がそれに拮抗した形だ。

 

 一応ホームズとしては普通の両親から生まれている。

 しかし英霊としての強度により、幼い頃から病も怪我もほとんど経験してはいなかった。

 

 まぁ、霊基の「仮説推論」による膨大な情報の渦に常に悩まされて吐きそうになるのは昔からだったが。

 

 今後のことを思うと若干ブルーな俺を横目に、メアリーさんと緑川君は和やかに会話を続けている。

 

「我が祖国ではコイツの名を知らぬものはいない。ロンドン橋を中心とした大規模テロから連続猟奇殺人まで、いくつもの謎を鮮やかに解決した稀代の名探偵」

「ああ、俺もニュースで見たよ。国民的英雄だとか言ってたな」

「そうだ。とはいえ我々のような諜報機関からは、それ以上に恐れられてもいるのだがな」

 

 全ての謎を明かす物語上の探偵、ホームズ。

 善悪の区別なく真実を白日の元に晒す、巨大な怪物と。

 

 霊基がニッコニコで腕を組んでいる。上機嫌だ。

 褒められるの好きだからな、ホームズ。いや俺も嫌いではないけれど。

 

 ごほん、と咳払いして俺は部屋にあったアンティークの椅子に優雅っぽい仕草で座った。

 

「その手の称賛は嫌いではないが、謙遜の手間が増えるので私の前ではしないように」

「お前がそんなタマか?当然のことだとしか思っていないだろうに」

 

 メアリーさんのピシャリとした声で指摘した。

 いやいや、霊基はその通りだが俺は分不相応の賞賛に顔真っ赤だから。

 メディアでも散々凄まじい謳い文句で紹介されてるけど!

 俺は一般的な日本人だから困るんだよ!

 

 もう一回咳払いして、ひとまず主題たる組織の情報に話を戻す。

 組織幹部スコッチからは一通り情報を聞かねばなるまい。

 

 公安からも多少は連絡があったのだが、あそこは基本排他的だからな。

 俺に対して冷たいというか、「勝手にやってくれ、ウチはウチでやる」という意思が透けて見えるのだ。

 

 緑川君が困ったように笑った。

 

「話せないことも多いぞ」

「話せるだけでいいさ。現場の生の情報が得られるのは、これはこれでかなり得難い。特に幹部たちの人物観なんかは計算の齟齬を少なくする」

「そう、か」

 

 話をすり合わせていけば、だんだんと彼の仕事範囲が明らかになってくる。

 ライ、ベルモット、バーボン、ジン、テキーラ、ウォッカ、キャンティ、コルン、ピスコ……。

 なんともまぁ、酒が飲みたくなってくるメンツだこと。

 

 だが生の声、人物像などの情報を補強されて霊基の頭脳はフル回転している。

 今、密かにFBIでは組織の要であるジンの捕縛作戦が行われているのだが。

 俺はFBIの人員は知らないものの、堅実に攻めれば意外と成功率は高そうだ。

 

 そういえば、緑川君は自分の生存を誰にも伝えるつもりはないらしい。

 自分のお兄さんにも、親しい仲であろう同じ潜入捜査官、バーボンにも。

 

 経緯を聞く限り、同じ場にいたライが恨まれていることだろうに。

 乱入した謎の海外組織こと、MI6も同様で、もしかしたら外国嫌いにもなったかもしれない。

 緑川君に聞く限り、バーボンは執念深い性質だというのに。

 怖や怖や。

 

 黙々と考えていれば、自然と体は両手を顔の前で静かに合わせるようなポーズをとった。

 メアリーさんがクスッと笑って、心底おもしろそうに八重歯を見せた。

 

「お前ほど、そのポーズが似合う人間はこの世に居ないだろうな」

 




次回、ライのNOCバレの予定。
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