ホームズなオリ主と名探偵コナン   作:ラムセス_

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時計じかけの摩天楼②

 

 パーティが本格的に始まって、ようやく森谷帝二が会場に現れた。

 

 俺の姿に気づいた森谷は「おや、ホームズさんではありませんか!」と大袈裟に両手を広げて歓迎してくれた。

 朗らかそうに見えるが、腹に一物ある人物なのは間違いない。

 というより、プライドが凄まじく高くて、他人を皆愚物だと思っている節のある系の変人だ。

 

 森谷がにっこり笑って俺に森谷の手作りらしいクッキーを勧めた。

 このクッキー、こいつの手作りかよ。

 

「どうですかな、私の作品の住み心地は」

「素晴らしい住まいをデザインしていただいて感謝しきりですよ。特に外観の安定した左右対称性は見ていて安心感がある」

 

 一応全力のヨイショをしておく。

 なんでそんな心にもないことを言うのか訳がわからない、と霊基のホームズが疑問符を浮かべているが、バッカお前。

 この手の変人は秒単位でヨイショしておかないと逆恨みされるんだよ。

 

 実際俺のことを「まぁ愚物の中でもマシな方」とでも思っている森谷は、機嫌良さそうにパイプたばこを咥えてみせた。

 

「ああそうだ、ホームズさん。せっかくなので一つ、クイズなどいかがですかな?」

「クイズ、といいますと」

「こちらの用紙を見てください。ああ、皆さんもご一緒にどうぞ」

 

 メモ用紙のような紙には三人の生年月日の情報がいくつか並んでいる。

 どうも、この三人の共通する言葉がパスワードになっているからそれを当てろという課題らしい。

 

 見た瞬間、霊基の恐るべき思考速度が答えを弾き出す。

 ほぼ視界に入ったと同時に答えを把握し、俺は頭の鈍痛に少しばかり呻いてからため息をついた。

 

 どうやらコナン君達もクイズをもらったようだ。

 そっとこちらを見上げてくるコナン君相手にニコッと笑い返して見せる。

 俺が答えを出したのがそれだけで分かったのだろう。

 キラキラした顔で悔しさを滲ませながら夢中でクイズに思考を沈めていく。

 

 緑川君が隣でうーむと意外と悩んでいるようだ。

 そして「ヒントを頼む」と清々しいまっすぐな視線。

 「生年月日に注目するといい」と適当なヒントを与えれば、緑川君はもう少しだけ悩んだ後「あ!!」と閃いたようだった。

 緑川君は緑川君で中々に優秀なんだよな、さすがは全てにおいて高い水準の能力を必要とする潜入捜査官をしていただけのことはある。

 

 しばらくして、遠目から見るコナン君は目を細めた。

 瞬間、パッと笑顔が花開く。わかった!と全身で表現しているかのようだ。

 

 そこで疑問に思ったらしく、てててと近寄って、俺の服の袖をちょいちょいと引っ張って話しかけてきた。

 

「……言わなくて良いの?僕より解くの早かったよね」

「先手は譲ろう。君の肩慣らしにはちょうど良いだろう?」

 

 むむぅ、とコナン君が膨れる。

 そこでコナン君の様子に気づいた森谷が「ぼうや、クイズの答えは分かったかな?」と話しかけてくる。

 「小僧程度にわかるはずもないか」という意思がありありと見える様子にちょっとばかり反吐である。

 

 森谷の悪意にまるで気付いていないコナン君は、そのまま「うん!桃太郎だ!!」と高らかに答えを読み上げた。

 その時の笑顔の裏に屈辱をぶちまけた森谷の顔と言ったら!

 胸がスッとする思いである。

 

 その後、コナン君は蘭さんと共に別室の展示品を見学できることになって、森谷と共にパーティ会場を後にした。

 

 森谷に恨まれたことだろうが、流石に直接的な手には出なかろうと三人の後ろ姿を黙って見送る。

 霊基がものいいたげに黙っていたのが、少々気掛かりではあった。

 

 

 

 

 

 本日、五月三日。

 明日が工藤君のデート予定日だ。彼はきちんと断りの電話を入れられただろうか。

 

 そういえば一昨日、オクトーゲンを含む大量の火薬が火薬庫から盗まれる事件があった。

 同時に黒川邸が燃える事件もあって、世間は少々賑わっている。

 

 この手の派手な事件は組織の好むところだが、爆薬を盗む必要はないのでおそらく一連の事件は黒の組織の仕業ではなさそうだ。

 というか、裏組織が派手好きって意味わからない概念だよな。

 これまでの犯行傾向からして、ジンとかいう銀髪の幹部が派手にぶちかますのが好きなのは分かっているが。

 

 いつも通りメールで送られてきた事件依頼を捌いていけば、霊基が「もう少し骨のある事件が欲しい」などとぼやき出した。

 全く碌でもない霊基である。

 なお、追加情報が欲しい場合もメールか電話で各国捜査機関に伝えており、この辺が安楽椅子探偵たる所以である。

 

 送られてきた書類の山は覚えた後緑川君に処理させるとして。

 家も以前と比べて広くなったし、セキュリティも万全なので多少書類をとっておくことも可能となった。

 なので緑川君の仕事も多少は楽になっている……と、思いたい。

 

 ちなみに、この家は庭も含めて完璧なシンメトリーである。森谷帝二の趣味だね。

 防音室も備えており、そこで時々霊基の趣味であるヴァイオリンの練習もしている。

 

 そんな感じでPCをカタカタ言わせていると、俺のスマホが無機質な着信音を奏でた。

 画面を見れば、どうやら蘭さんからのようだ。

 

「ホームズです。どうしました?」

「大変なんです!すぐ警察病院へ来てください!コナン君が爆弾で怪我をして…!」

「!」

 

 俺は息を呑んだ。

 一体全体何に関わったんだ彼は!?

 

 親代わりというか、もしもの際の連絡先として蘭さんには電話番号を教えていたのだが、まさかこんな形で役立つことになるとはな。

 

 俺が急いでコートを羽織りバッグを用意していると、奥から料理中だった緑川君が出てきて「どうしたんだ?」と問いかけてきた。

 

「私は警察病院へ向かう。君はどうする?」

「何があったんだ?」

「コナン君が件の爆弾犯にやられた。軽傷らしいが、頭を打っていると」

「ッ俺もいく!」

 

 俺たちも地味にお世話になることが多い警察病院だ。

 位置はよく分かっている。

 暗殺未遂で緑川君がよく生傷を作っているのもあって、客としては向こうもお馴染みの顔だろう。

 まぁ、俺はさりげなく物理系の指向制御平面を管理する魔術で防いでいるから基本無傷なんだけどな。

 

 デミ・サーヴァントに極めて近い俺は、英霊の力を一つだけ継承して自己流に昇華する憑依継承(サクスィード・ファンタズム)を使用可能だ。

 

 そこで、俺は霊基のスキル「天賦の見識」を魔術に適用。

 どちらかといえば真実を追うためのものではなく、神秘の真髄を知るために用いて魔術師としての腕を磨いた。

 

 つまり、本来より魔術に多めにスキルポイントを振ったホームズ的なサムシングである。

 

 なおホームズ自身は「取れる手段が増えて二度お得」ぐらいの気持ちらしい。

 俺を足でこき使おうとしているのが手に取るようにわかる。

 このヤク中探偵がよぉ!!

 

 警察病院へ行けば、年配の看護婦さんに「あらホームズさん。また事件ですか?」と話しかけられた。

 

「ええ、まあ。今回は知り合いの子を見舞いに来ただけですが」

「あら、じゃあ面会窓口で用紙の記入をお願いしますね」

 

 まだまだ客としてはともかく日本の警察関係者としては俺は新顔で、顔パスとはいかないらしい。

 安楽椅子探偵なので相談や資料等の付き合わせは結構関わってきたが、顔を直接合わせる機会は少ないしな。

 

 手続きを済ませてガラリと横開きの扉を開けると、部屋にいる人間の視線が一斉にこちらを向く。

 

 毛利一家の他、目暮警部と白鳥警部補の姿もある。

 ちょうどなにやら話し始めたところのようだ。

 

 「お構いなく」と一言いい相手とご一緒すれば、コナン君の口から事件のあらましを聞くことができた。

 

 事件を聞く限り、例の火薬庫から火薬が盗まれた件と同一犯によるものの可能性が高い。

思考が高速で回り始める。

 ずきりとした鋭い痛みが魂を侵食する。

 

 険しい顔をする毛利さんの隣で、ひとつ咳払いした目暮警部が俺と体を向き合った。

 

「………ホームズさん、あなたのご意見を伺いたい」

「およそ察しはついている、が。まだ確証がなく。ただ少なくとも」

 

 俺は言葉を切った。

 霊基の方針で確証のない言葉はおいそれとは話せないからな。

 もどかしいが、次で狩るために罠を張るべきか。

 

「次の犯行はもっと派手で、もっと自己顕示欲を強く示すものとなるかと」

 

 お得意の「まだ話すべき時では無い」を決めて、俺は瞳を伏せたのだった。

 

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