ホームズなオリ主と名探偵コナン   作:ラムセス_

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ホームズという印象

 

 安室透は使用人達の人混みに紛れ、かの名探偵の消えていく後姿を目で追った。

 

 安室が今回の殺人事件に巻き込まれたのは偶然だった。

 バーボンとしての任務中、この資産家の金の流れを調べる必要が出てきて使用人として紛れ込んだのだが。

 まさかこんな事件に関わることになろうとは。

 

 己の存在が大きな騒動にならずに済んだことをほっとするとともに、「ホームズ」というビッグネームに視線は自然と彼の後を追っていた。

 警察組織の内部で、彼の名前は非常に有名だ。

 

 エドウィン・ホームズ。

 彼の本名は実際はあまりよく知られていない。

 

 彼があまりにも「シャーロック・ホームズ」そのひとであったため、皆が皆彼を探偵小説の主人公と同一視するからだ。

 世界最高の頭脳、探偵の具現、真実を明かす者。

 

 彼を表す言葉は数あれど、直に言葉を交わした今、安室はそのどれもが力不足であったと感じてならない。

 

 降谷零としては、彼のことはよく知っていた。

 彼が世界唯一の諮問探偵と呼ばれているのは、彼が世界で唯一、国際刑事警察機構……インターポールに正式に国際犯罪および国際犯罪者に関する情報のデータベースを閲覧する権利を認められているからだ。

 

 また、192の加盟国において捜査資料の閲覧、各国警察への助言が許されている。

 イギリス政府からは外交特権が与えられており、正式に捜査協力をする場合は認証を受けて正しく人類の英知として発言や行動が尊重されることとなる。

 

 逮捕権こそ無いものの、犯罪捜査においてほぼ全ての権限を有する彼は、正しく小説に描かれる「探偵」そのものなのだ。

 警察庁がインターポールに職員を派遣している関係で、降谷も特例中の特例たる彼の情報は知っていた。

 

 だが、彼の詳しい情報を得たのは組織に潜入してからだ。

 

 組織が最も警戒する存在。

 組織内での彼への警戒はかなりのものだ。

 すでに幾度か計画や末端組織を潰されていることもそうだが、なにより彼から特段に注意を払われているせいもあるだろう。

 じわりじわりと睨めつけられるように組織に近づく彼。

 

 普段は一刀両断に真実を明かす彼にしてはずいぶんと慎重な、逆に言えば甚振るような動きで組織を追い詰めてきている。

 本拠所在地はおろかRUMや「あの方」の正体すら知られている可能性があるらしく、幹部たちは常にその動向を恐れつつ監視しているらしい。

 ジンいわく、「未来予知じみた頭脳の人外野郎」とのこと。

 

 話には聞いていたが、たしかに人間とは程遠い。

 先ほどの事件は怨恨と思惑と偶然が重なった、動機こそ平凡だがその内容は実に複雑なものだった。

 遺産を巡る思惑と、8年前の事件と、下働きとして来ていた佐伯さんの出生が絡み合った連続殺人。

 

 安室達は組織の任務での情報収集として事件前から今までこの屋敷に滞在していた。

 それなのに事件は防げず、引っ掛かりは覚えるもののピースの足りない、いや、足りすぎる現状に手をこまねいていた。

 

 それを、現場にふらりと現れたこの男は一時間足らずですべて解き明かして見せたのだ。

 話も伝聞、証拠類も一覧を見て現場をちらりと確認しただけ。

 

 一時間のうちほとんどは遺留品の確認と事情聴取として話を聞いていた時間に過ぎない。

 一通り話を聞き終わると、ひとつ頷いて彼は滔々と推理を披露し始めた。

 

 劇的ではない。

 

 教師ができの悪い子供たちに算数の基礎を教えるように、当然の理の如く真相を明かしていく。

 語り口は分かりやすく、あれならばあの場に居る全ての人間が事件の概要を理解できただろう。

 

 名指しは最後に行われた。

 犯人は真綿で首を絞められるように追い詰められていき、顔を土気色に染め上げていた。

 一連の犯行を真横で見ていたかのような詳細すぎる推理の切れ味は、聞いているだけで脳裏に当時の状況が流れてくる錯覚に陥った。

 

 これが、現代の「シャーロック・ホームズ」。

 

 安室は緊張にこわばった筋肉に力を入れた。

 彼と目が合った瞬間、臓腑の裏の裏まで覗かれた心地がしたのだ。

 

 国を超越し、真実を違うことなく映し出す公正な鏡のようなそのあり方。

 間違いなく組織壊滅を目指す己の味方であるのに、何故だろうか。

 本能にほど近いところが、その昆虫のような視線を恐怖していた。

 

 

 後ろ姿がチラリ、と振り返り、人混みの背後にいる安室を的確に捉える。

 

 カメラアイの如き無機質な視線が、降谷の全てを測定している。

 ぱちり、と瞬きひとつする姿に感情の色は何一つ見受けられなくて。

 

 そしてそのまま、何も言わぬまま「ホームズ」はもう一度聴衆から背を向けて、何事もなかったかのように去っていった。

 

 ぞっと、背筋が凍る思いがした。

 あれは己を見ていた。何か気取られたのか、いやまさか。何の動きも見せてないのに。

 だがあの視線は一体。

 

 高速で思考する頭脳の裏で、安室は彼の世界一有名な諮問探偵「シャーロック・ホームズ」を推察した。

 

 推理を通して見るかの男は、まるで事件を解明する装置の如き、感情の薄っぺらさを持っていた。

 酷薄さと言い換えてもいいだろう。

 彼にとって感情は不要なもので、優しい嘘すら白日の下に晒すやり方は善悪すらも踏み躙る。

 

 全ての不明を白日の下に晒す、無機質な巨大演算機。

 

 安室から見たホームズは、そのような男であった。

 





・ホームズ成り代わり主
 ただの一般人。
 霊基はキャスター。オリジナルホームズの性格として善にも悪にも依ってない。
 その霊基に影響される形で、相手の知能が高ければ高いほど「こいつは事件解明のためのマシンだ」という第一印象を与えてしまう。

・工藤君
 ホームズフリークには霊基のそれしか見えていない。やったーホームズだー!
 中身が一般人?そんなわけないだろいい加減にしろ!!
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