ホームズなオリ主と名探偵コナン   作:ラムセス_

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シェリー①

 

 最近、シェリーと名乗る組織幹部が幼児化して、そのまま阿笠博士の家に転がり込んだらしい。

 

 コナン君から聞いた話だが、やっぱり阿笠邸のファンキーさは世の中とは一線を画していると思うなどする。

 流れ着いた反社の幹部をそのまま住まわせるとかおおらかさの桁が違う。

 

 一応、俺もシェリーの名は以前から聞いてはいた。

 未だ入院中の宮野明美や降谷零から「妹/知り合いの娘さん」として話には出ていたし。

 

 それに加えて、ジンの会話を盗聴すると時折話題に上がっていたりもしたのだ。

 なんか粘着質な香りのする「シェリー…!」という喜悦に満ちた声とかを聞くと、気持ち悪いタイプの片思いかよ、なんて思ってはいたが。

 

 シェリーの本名は宮野志保、だったか。

 組織の幹部にして研究員。

 

 実力主義の組織において幹部に至れるということはよほど優秀な研究員だったのだと思ってはいたが、まさか人間を若返らせる薬などというものを開発するとは。

 まさに人類史に名を残す大発明と言っていい。

 

 ……とはいえ、服毒自殺未遂とはな。

 俺はそうなることなんて想定もしていなかったが、霊基はわかっていたはずだ。

 宮野明美が「死ぬ」ことで、妹が後追い自殺をすることぐらい。

 

 それとも、死ぬか幼児化するか、霊基としてはそのどちらでも良かった?

 つまり、組織の薬の開発者を遠ざけられれば、それでよかったと。

 

 ────アポトキシン4869は裏社会の手にあるには危険すぎる。そう思わないかな?

 

 霊基の思念が頭に響く。

 俺はしばし考えてから「まぁ、わからなくもないがね」と嘆息した。

 それで宮野明美がどれほど嘆くのか、関係者達がどれほど悲しむのかを考えなければの話だが。

 

 

 

 と、そんなわけで本日の俺は阿笠博士の家を訪ねている真っ最中である。

 

 広田雅美こと宮野明美が生きていることは、すでにシェリーには伝わっている。

 

 それはそれは、シェリーはひどく号泣したらしい。

 コナン君に縋り付いて感謝と恐れと喜びが混じった声で延々泣き続けたというし、コナン君もどんな流れで話したかは知らないが軽率に教えすぎである。

 

 そして俺にも感謝の言葉を伝えたい旨、姉と早く再会したい件について述べているらしく、それが俺が今回阿笠邸へ行く理由にもなっている。

 

 宮野明美のお見舞いに連れて行くには、警察病院でも少し特別な区画に入らねばならないからな。

 俺が緑川君を通して公安へ連絡を取ってから行く必要があり、コナン君とシェリーだけではお見舞いができないのだ。

 

 まぁこれも防犯のため。仕方ないと思ってもらうとして。

 

 ちなみに阿笠邸に行くに際し、俺は徒歩道をトコトコ歩いて行っている。

 緑川君に車で送ってもらうのもいいが、気候もいいし最近は暗殺も少なくなってきたからな。

 一応通り道の狙撃ポイントも警戒しているし、横に止めたミニバンに引き込まれそうになった時のために強化魔術もかけてある。

 

 無問題、無問題。

 

 10分ほど歩いてたどり着いた阿笠邸のドアのチャイムを押せば、すぐに家主である阿笠博士が顔を出した。

 

 厳つい防護ゴーグルをつけた阿笠博士が俺の姿を認め、ニカッと子供のように笑った。

 

「おお!ホームズ君か!よく来てくれた!今新しい「薄型ヘルメット君Ver5」を作っているところでな!」

「それはそれは。ああ、失礼するよ阿笠博士」

 

 とりあえず家の中に入れてもらえば、すぐそこはラボ兼リビングが広がっている。

 阿笠博士の家はかなり特徴的な作りになっていて、楕円形の建物をそのまま大胆に使った間取りは広く開放的だ。

 柱の側には大型のTVがあって、そこを中心に子ども達がよく遊んでいる。

 

 今はコナン君を含めて子ども達は誰もいないようだ。

 シェリーは地下の研究室か?

 

 隣の実験室からリビングの端に溢れるように出しっぱなしになっている道具類を越えて、阿笠博士がズンドコ何かを取りに突き進んでいく。

 そして開きっぱなしのドアから実験室に入り、一つのかつらのようなものを持って帰ってくる。

 

「どうじゃ!最新型の薄型ヘルメット君は血糊付き!撃たれた瞬間血飛沫が飛び出す!クッション性も上がっておるから今度は頭蓋骨骨折なんて大怪我もせんはずじゃ!」

 

 見せてくれたそれは、かつらが付いたごく薄い硬質プラスチックのようなナニカであった。

 内側が奇妙なゴム状になっていて、ここで衝撃を吸収するようにしたのだろう。

 

 ………うーん、さすがは阿笠博士。

 もしこれが本当に言っている通りの効果なら、普通に衝撃吸収性を含めたあらゆるスペックが明らかにバグっている。

 俺の指向制御平面魔術に近いレベルの代物だ。

 っつーか血糊はどこから湧くんだ。無から出てくるわけじゃあるまいに。

 

 俺が手渡された「薄型ヘルメット君」を見ながら称賛の言葉を色々考えている途中、奥から階段を上がる音が聞こえてきた。

 

「博士、少しコーヒー貰うわよ……ッ!」

 

 音の主は小柄な少女であった。

 年は小学一年生かそこら。赤みがかった茶髪で、歳に見合わない理知的な様子。

 少女はこちらを見て瞬時に身構えた。

 そして俺の顔をメディアか何かで見て知っていたのだろう。

 そのまま俺の顔を見てすぐに警戒を緩めたように見えた。

 

「おお、まだホームズ君に紹介しておらんかったな。ワシのところに住むことになった灰原哀君じゃ」

「なるほど。よろしく頼むよ、灰原君」

「……よろしく」

 

 怯えるハリネズミのような様子で少女は恐る恐る握手のための手を差し出した。

 警戒心がものすごく高い上に人見知りのようだ。

 それは長らく野生だった猫のようにも見える。

 下手に手を出せばシャッ!と唸られ逃げられることだろう。

 

 しかしそれでもここに残ってくれるのは、姉の居場所を知るのが俺だけだと知っているがゆえのことか。

 

「コナン君から聞いてはいるだろうが、君の姉をこちらで保護している。君も待ち望んでいたようだし、よければこれから彼女の元に案内しよう」

「……江戸川君も一緒に行くことはできるかしら」

「もちろん。彼にも連絡はしておいたから、もうすぐ来るはずさ」

 

 どうやら自分だけ行くのは危機感が先立つようだ。

 流石、自分の身を守るための警戒を怠らないあたり、どれだけ疑心暗鬼が常の環境にいたかがよくわかる。

 

 それでもそろそろと近づいてきたあたり、俺の実績は役に立ったようだった。

 




・シェリー
 まだ全力警戒体制だったころの灰原さん。
 「この人が…お姉ちゃんを…」と若干の感慨深そうなモノローグを発していた。

・コナン君
 どうしてお姉ちゃんを助けてくれなかったのよ!のターンで「オメーの姉さんは、生きてる」「嘘!嘘よ!」「確かに、俺だけじゃ…助けられなかったさ」などとかなりの修羅場になった。
 それでも信じてもらえるあたり、主人公力の賜物である。
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