ホームズなオリ主と名探偵コナン   作:ラムセス_

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十四番目の標的③

 

 現場に急行すれば、間抜けにもまだ犯人は路地の隅の方に隠れ潜んだまま家主が出てくるのをじっと待っていた。

 

 少し離れたところに静かに車を止めてもらい、歩いて犯人の背後から近づいていく。

 

「どうも」

「ッ!?!?」

 

 至近距離になってから後ろから声をかければ、男は動揺のあまり肩を飛び上がらせながら振り返った。

 

「な、何……ですかね」

「先ほど、他人の車に乗り込んで何をされていたのですかな?」

 

 ニコッと笑って問いかける。

 目だけは男から逸らさずに、じろりと覗き込むように。

 男はひゅっと息を呑んだようだった。

 

 しかし、見たことのない顔である。

 毛利小五郎の経歴はざっと洗ったのだが、強く関わりのある人間としてピックアップされたリストにはいなかった。

 やはり本命は毛利小五郎とは別件か。

 

 瞬間、男は脱兎の如く逃げ出した。

 「待て!」と肩を掴んだふりをして接近すれば、もちろん振り解かれてそのまま転げるように逃げ出してしまう。

 

 どこかに車を止めてきたのか、横道から来た緑川君が咄嗟に追おうと走り出したが、軽く手で制して止める。

 ここから先は逮捕権も絡んでくる。

 警察に任せるべきだろう。

 

 訝しげな顔をする緑川君に、さっき軽く揉み合った際にスリとった目薬を目の前で揺らして見せる。

 もちろん指紋を残さないように手袋をしたままスッたからな。

 ここから被害者である辻さんの指紋と犯人の指紋が見つかれば完璧だ。

 

 俺はわざとらしく肩をすくめた。

 

「おや、あの男、何か落としたみたいだ。これは……目薬、かな?」

 

 緑川君がうわぁ、と言う顔をした。

 流石に俺がスりとったことに気づいたらしい。

 

「今さぁ……」

「落としたらしい。緑川君。落としたんだよ」

「了解。落とした、ね」

 

 公安として違法捜査に覚えがある緑川君は、それ以上何も言わずに嘆息しただけだった。

 

 これ以降は流れ作業だ。頭を使わなくて助かるが、まぁ妥当に警察に連絡か。

 と、その前に。

 

 家から出てきた被害者でプロゴルファーの辻弘樹が、何も知らずに車に乗り込もうとしているので声をかける。

 

「失礼、辻弘樹さんですか?」

「ん、誰ですかあなた」

 

 不審そうな表情だ。

 まぁそりゃ知らん男二人組に声をかけられればそんな反応になるのも仕方あるまい。

 もしかしたらマスコミか何かかと疑っているのかもしれない。

 

「私はエドウィン・ホームズ。探偵です。こちらは助手の緑川」

「…!ああ、あの海外の名探偵!え、本物ですか?」

 

 驚きつつもまだ警戒をとかない様子だったので、名刺を取り出して渡すこととする。

 イギリスではどちらかと言うと社交の場で使うぐらいでビジネスではあまり使わないんだが。

 日本に合わせてたくさん作るようになったのだ。

 

「……信じられない。名探偵さんが僕に何かご用ですか?」

「この場合、私の地位はあまり関係がありませんのでそう深く考えなくても問題はありません」

「というと?」

「先ほど、不審な男があなたの車に侵入して目薬をすり替えていました」

「!!!ど、どういうことですか!?」

 

 流石に動揺したらしい。

 辻さんは驚いて心配そうに車を覗き込んだ。

 

「この通り、男が落としていきました。貴方の目薬ではありませんか」

「ええ、僕のものです。そんな……一体何が狙いで……」

 

 気味が悪かったのだろう。辻さんは不安そうに眉を顰めている。

 知らん奴が自分の使ってる目薬を謎の薬品とすり替える、なんて気持ち悪いし不安になるのも仕方あるまい。

 

「男が何者なのかも気になりますが、まずは男を追うよりあなたに伝えることを優先させていただきました。男を取り逃して申し訳ありません」

「いえ。……伝えてくださりありがとうございます。おかげで助かりました」

「いえ、お力になれたようでよかったです。ひとまず、すり替えられた目薬の方は警察に届けたほうがいいでしょう」

「そうします。電話しますので少し待っていてください」

 

 

 

 電話して二十分後。

 現場に駆けつけたのはパトカーで、どうやら目暮警部と毛利探偵が慌ててすっ飛んできたらしかった。

 地味にコナン君も一緒だ。

 

 何故小学一年生が捜査一課の刑事と行動を共にしているのか。

 何故誰も何も言わないのか。

 その辺りは謎に包まれているのである。

 

 目暮警部が目を険しくしたまま車から降り、辻さんを見て声を張り上げる。

 

「無事ですか辻さん!!」

「ええ、ここのエドウィンさんが目薬がすり替えられたことを教えてくれましたから。何も起きてませんよ」

「そうですか……それはよかった」

 

 そのように安堵の息をついてから、目暮警部は「エドウィンさんはどうしてここに?ウチでも貴方に相談しようかとは思ったのですが、貴方は大変忙しい身でしょう」と話を続けた。

 まぁ案件はぎっしり詰まってるから暇じゃないけどな。

 今回は阿笠博士が被害を受けているから話は別だ。

 なるべく早く解決してやりたい。

 

 事情を知るコナン君も同じことを知っているので、「エドウィンさんは阿笠博士のことが心配だったんだよね」と言ってくれる。

 

「そうでしたか…では、エドウィンさんも例の連続傷害事件を調査していたのですかな?」

「ええ。十一の次をしらみつぶしに回っていたのですが。まさかこうもピンポイントでビンゴに当たるとは」

 

 少し白々しかったかもしれないが、俺がそのように肩をすくめれば目暮警部は信じたようだった。

 「ご協力感謝いたします。これで事件がひとつ、未然に防がれました」といって深々と頭を下げた。

 

「防犯カメラをこちらにて精査させていただきますので、後ほどエドウィンさんにもご確認をお願いします」

「ええ、もちろん。目撃者は私たちだけですので。それと、これが証拠の目薬です。犯人が素手で触っていましたので、おそらく指紋が残っているかと」

「!!それはありがたい。回収・調査させていただきます。辻さんもそれでよろしいですかな」

「え、ええ。お願いします」

 

 そしてひとつ、帽子を被り直して目暮警部は眦を強く宣言したのであった。

 

「………後は我々の仕事です。犯人は絶対に捕まえますので、ご安心ください」

 




・メアリーさん
 今日10:00から打ち合わせの予定でホームズの家にく予定だったが、途中で緑川君から連絡が来てキャンセルになる。
 「姪っ子を紹介してもらいたかったのだが」とぶつぶつ文句を言うメアリーさんである。
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