ホームズなオリ主と名探偵コナン   作:ラムセス_

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明日は用事があるのであなたに投稿を前倒し。
明日の投稿はお休みです。



世紀末の魔術師③

 

 大阪中を走り回り、無事エッグを取り戻した功労者であるコナン君。

 しかし今現在、彼は思いっきり毛利探偵に拳骨を受けて蹲っていた。

 

「コラァッ!また勝手に抜け出しやがったのか!蘭が心配してただろうが!!」

「いでっ!?ご、ごめんなさーい」

「まあまあ、俺もついとったさかい、堪忍したってな…なぁくど、やのうてこっここコナン君!」

 

 鶏のように口ごもった服部君からコナン君の本名がはみ出ている。

 ツッコミ待ちなのかコレ。

 一番バレちゃいけない人種にコナン君の正体がバレてて面白すぎる。

 

 所々擦り傷だらけの二人は、擦り傷でぼろぼろの服のまま顔を見合わせて誤魔化し笑いを続けている。

 服部君が視線を天井に向けたまま早口で話を逸らした。

 

「しっかし不思議なこともあるもんやな!あんだけ派手に転けたら俺らかて無事で済まへんのに」

「うん。平次にーちゃんに大きな怪我がなくて本当によかったよ」

「……バイクで転けたんだってな。ほんと注意しろよ。そのままお陀仏になるやつだって多いんだからな」

 

 そうして命を失った知り合いもいたのかもしれない

 真剣な表情の毛利探偵に、はーい、と二人が神妙に返事をする。

 

 確かに、使い魔の目を通して見たときは本当にヒヤッとしたものだ。

 キッドを追っていたせいで周囲の注意が不十分になっていたのだろう。

 服部平次のバイクは横から出てきたトラックと接触しそうになり、ギリギリで避けた状態で派手に横転した。

 

 あわや大惨事、と言うところだったのだ。

 

 彼らが擦り傷だけで済んでいるのは、コナン君に付けていた使い魔の奮闘があったからだ。

 

 俺の命令を待たず勝手に動き出した影Aが、咄嗟にアスファルトに叩きつけられる服部君の下に潜り込んで実体化。

 クッションの役割を果たして代わりに消滅したのだ。

 

 俺の使い魔「ベイカーストリートイレギュラーズ」はコナン君をベースに作られている。

 つまりこれはコナン君の本心であり、友人を守りたいと願う彼の心底からの友情の現れだ。

 

 使い魔が一体消えてしまったのは残念だったが、彼らの若い友情を垣間見てほっこりした俺たちなのである。

 ……いや、ホームズは「フーン」ぐらいの反応だったが、それはそれ。

 

 傷ひとつないエッグを持って帰ってきたコナン君達を鈴木会長は感謝感激と言った様子で迎え入れた。

 

 一応傷がないか確かめるためにエッグは急遽東京に持ち帰ることになったが、二人は鈴木会長と一緒に海路で東京へと向かうことになったらしい。

 

 ひとしきり二人が毛利探偵に怒られた後、話は俺の方に移ったようだ。

 コナン君がこちらを見てわずかに首を傾げた。

 

「ホームズさんも鈴木財閥の船で東京に帰るの?」

「……いや、私はやるべきことがあってね。今日の新幹線で帰るつもりだよ」

「そっか」

「なんや。ホームズさん、キッドの暗号も最初から分かっとったんやろ?」

 

 むすっとした服部君の様子は「勝ち逃げする気か?」とでもいいたげで実に若々しい。

 さっき心配した和葉ちゃんにめちゃくちゃ泣かれて焦ってたのも含めて、青春してるって感じがとても良い。

 

 俺は「急な仕事があってね」と言って軽く服部君を宥める。

 今、ホテルのチェックアウトと荷物のまとめ、切符の用意等々を緑川君にやってもらっているからな。

 若干名残惜しいが撤退は決定事項だ。

 

 ひとまず少しだけ沈黙した後、コナン君と視線を合わせる。

 

「だが気をつけるといい。これは捜査2課にも昨晩伝えたが、スコーピオンがエッグを狙っている可能性が高い」

「スコーピオン?」

「決まって右目を狙撃する暗殺者にして、ロマノフ王朝の遺産を狙う盗賊だよ。おそらく今回キッドが狙われたのもスコーピオンが関わっている」

「……わかった」

 

 俺の声のトーンから、多くの人の命がこれまで奪われてきたのを理解したのだろう。

 コナン君も真摯な光を灯した瞳で俺を見つめ返した。

 

 するりと。

 一応、消えてしまった影の代わりにもう一体コナン君の影に入れておく。

 流石にスナイパーライフルとかは突き抜けてしまうだろうが、拳銃ぐらいなら影でも肉壁になるだろうからな。

 

 「健闘を祈る」と言い置いて、俺は鈴木近代美術館の一室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 その朝、小泉紅子は同級生を目の前に険しく片眉を吊り上げた。

 

「…?どうしたんだよ、そんな顔して」

「白き罪人。放課後、校舎裏へ来なさい」

「お、おう…?いいけど、何かあったのか」

「ここでは話せないわ」

 

 紅子は黒羽快斗の影をさりげなく踏み潰した。

 ジタバタと足の下で魔法生物が暴れている。

 これは同級生、黒羽快斗の影に潜んでいた他の魔女の使い魔だ。

 

 見たところ、この影の製作者の魔女としての腕前は紅子より随分と格が落ちるように思える。

 

 だが、事象の理解に関しては非常に緻密だ。

 ここまで軽量かつ知的な使い魔を使役するのは紅子であっても骨が折れることだろう。

 

 特に特徴的なのは術式で、正確に体系化、簡略化されて万人に使いやすく神秘が編み直されている。

 そこまで深くも厚みがあったりもしないが、工業化されていると言うべきか。

 

 あえて言うなら「現代魔法」とでも言うべき節操の無さで、執拗なまでに規格化された魔法らしからぬ呪法であった。

 

 使い魔はジタバタと暴れつつ、無機質な目線を紅子へと向けている。

 ネームタグ付きとはまた、紅子に敵意がないと示すためのものだろうが随分と舐めてくれたものだ。

 

 やきもきする授業時間を終えて夕方になった途端、紅子は黒羽快斗の手を引っ掴んでさっさと校舎裏まで引っ張って行った。

 

 なお、同じく同級生の青子がきょとんとした様子で二人を見送っていたが、それはともかく。

 

 紅子は校舎裏につくや否や、きっと黒羽快斗を睨みつけた。

 

「貴方、どこで他の魔女に目をつけられたの」

「まじょ………魔女ォ!?!?他って、お前以外の魔女ってことか!?」

「そうよ。これを見なさい」

 

 ずるりと魔法的に黒羽快斗の影から使い魔を引き摺り出すと「名探偵!?」と黒羽が悲鳴を上げた。

 

「ちょっ、待っ、これ名探偵だろ!?どうして名探偵の影が自立して動いてんだよ!」

「魔法よ」

「……………なるほど?」

 

 黒羽はくしゃくしゃな顔をして黙りこんだ。

 魔法以外に何があろうか。

 

 そのままバチリと基底を握り潰せば、ジタバタもがいていた影の使い魔は「ピィ!」と悲しげな声をあげて煙と消えてしまった。

 ドン引きしたような顔で黒羽快斗が「名探偵が消された…」などと呟いている。

 

 詳しい説明をしてもいいが、魔法の基礎を嗜まぬものに説明しても意味がない。

 紅子は首を振って端的に答えることとする。

 

「これは光の魔人を元に量産された魔女の使い魔よ。末端であり端末。術者の目でしかないわ」

「じゃあつまりなんだ、名探偵がコピー量産されたみたいなもんか?」

「そうなるわね」

 

 黒羽は両腕で自分をかき抱いて震え出した。

 想像してみてだいぶ怖かったらしい。

 

「うっそぉー……紅子でさえ世界観間違えてないかってレベルの存在なのに、それが名探偵のとこにもいるのかよ!?」

「気をつけなさい。敵対する気は無いようだけれど、油断していい相手ではないわ」

「うっす」

 

 「名探偵のくせに魔法に浮気したのか…」と不満げにしているが、これに関して紅子は語る口を持たない。

 向こうの魔女が出てきたなら紅子も応戦する。それだけだ。

 

「ん?つまり待てよ、これ俺の正体がバレたってことか!?」

「光の魔人がこれを把握してるかはわからないけれど。最低でも向こう方の魔女は知っているでしょうね」

「ヤベェだろそれは!ん、待てよ、魔法使って見てても証拠にはならねぇ……いややっぱヤベェわ」

 

 顔を青くしたり顰めたりと忙しい黒羽を置いて、紅子は考えを巡らせる。

 

 逆算するに、黒羽快斗が使い魔に憑かれたのは8月23日の夜だと見ていい。

 謎の銃撃から魔法でもって黒羽快斗……白き罪人の身を守ったのも同時刻だとすれば。

 既に相手方は黒羽が紅子のウィークポイントだと知っていると思われる。

 

 だが、相手もこちらとの敵対を望んでいないのは確実。

 赤魔法の正統後継者として魔法戦で負ける気はさらさらないが、紅子とて好きで敵対したいわけでもない。

 

「……おーい、どうしたんだよ」

「いいえ、問題なくてよ。早く戻りましょう」

「あっちょっ、まだ俺事態が飲み込めてない…待てってぇ!?」

 

 踵を返す紅子に、黒羽は慌てて後を追う。

 

 自然と早くなる足取り。緊張に震える肩。

 そう。

 紅子は「おばあさま」以外初めて見る魔女の存在に、焦りとも高揚ともつかぬ不可思議な感覚を覚えていたのだった。

 




・ホームズ主の魔術
あえて言うなら混沌魔術(ケイオスマジック)に近い。
「天賦の見識」を魔術に適用して体系化・最適化している。

次回はたぶんベルモット編
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