ホームズなオリ主と名探偵コナン   作:ラムセス_

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野良事件①

 

 日色ヒカルが事務員として我らホームズ探偵事務所の一員となって、はや半年。

 

 組織の活動かチラチラと怪しい動きをすることもあったが、留守中の部屋に設置していた釣り用の情報で満足したらしく致命的な齟齬は今のところ起きていない。

 この辺、初期からかなり緻密に調整していたからな。

 あまりにも収穫がないとなればこの超優秀な事務員君は何かと理由をつけて撤退してしまう。

 それは不味いし、また重い体を引きずって家事に専念するなんてごめん被る。

 

 と、いうことで各諜報機関と調整しながら流してもいい情報だけを繊細に疑念を抱かれない程度に渡していたのだ。

 この程度ならモリアーティならぬ身でも可能だ。

 おそらく日色君は「自分の力でホームズから情報を盗み取った」と考えていることだろう。

 

 悪いね、全て掌の上さ。

 

 だが本当に優秀なんだよな、彼。

 いっそのこと公安から引き抜いて俺の事務員になってもらえないかと実際に警視庁に問い合わせもしてみたのだが。

 

 「日色ヒカルなどという人物が警視庁に所属していた事実は存在しない」とそっけない返答だけが返ってきた。

 そりゃ警視庁には日色ヒカルは存在しないだろうさ。偽名だし。

 これがイギリスのMI6なら俺のご機嫌を取るために嬉々として人員を差し出したのだが。

 

 流石に他国の警察機関ともなると好感度が足りなかったらしい。

 

 ちなみに。

 俺が事務員を雇ったと聞いて、俺のところに手下を潜り込ませようとする各国諜報組織から山のように事務員希望が殺到してきた。

 なんなら日色君が違和感のない程度の「事故」に遭わされそうにもなったりな。

 全く恐ろしいことだ。

 

 自分のところの事務員を捻じ込むためには手段を問わないあたり、流石は国家の闇を司る諜報機関と言わざるを得ない。

 

 一応日色君は独力で「事故」を回避して逃げ延びたので一安心である。

 この程度の危機自分で逃げ延びられなければ俺のところの事務員はやってられないし。

 国家の闇に深入りし過ぎて後ろから撃たれそうになったことも数知れず。

 一旦推理し出すと危険とわかっても霊基を止められず、突っ走らざるを得ないのがホームズの悪いところである。

 

 閑話休題。

 そんなこんなで本日は資産家の開いたパーティに招かれている。

 

 前に俺が絵画にまつわる一族の謎を解いた関係でお礼も兼ねてパーティに呼ばれていたのだが、流石は世界的大富豪のパーティだ。

 あちらはハリウッドの有名俳優、こちらは世界的歌手に欧州の有力政治家と凄まじい顔ぶれだ。

 

 場慣れしていないのか、日色君が「お、おぉ…」と若干引いたような声を出している。

 どうやら調査によると組織ではスナイパーをやっているそうだし、こういう場には慣れていないのだろう。

 

 お、アメリカの有名女優クリス・ヴィンヤードだ。

 なんて美しい金髪を眺めていると、霊基が物言いたげに黙りこくった。

 

 ……。

 ………なるほど?

 

 霊基の「はぁ……仕方ないな」みたいな呆れたような思考と共に、肉の体より記憶が想起される。

 MI6から8ヶ月ほど前に渡されていた組織の資料に、クリス・ヴィンヤードが黒の組織の一員である旨が書かれていたとのことらしい。

 

 いやそんな前のこと覚えてないんだわ!

 

 まるでダメな奴を相手にするように霊基の肩を落とすような気配がする。

 霊基の思考はふんわりとしかわからないが、それでも断言できる。

 これ……凄い…見下されてる……!

 なに?ワトソン君の方がまだ頭が回った?

 当たり前だろうが天下のワトソン博士だぞ!?

 俺と比べんなや!

 

 などという内心での俺のブスくれ具合は外見には影響しない。

 すまし顔で腕を組む俺に対し、パリッとした紳士服に身を包んだ日色君がにやっと笑みを作った。

 

 彼はいつもは無精髭なのだが、今は髭を落とし高級そうなメーカーのスーツを纏っているとまさしく俳優か何かのようだ。

 前世の俺からしたら羨ましくなるほどのイケメン具合である。

 

 まぁ現在の俺はホームズという美形なので?別に羨ましくないけど???

 などと負け犬の遠吠えを少々添えて。

 

 ちなみに、今の俺は普通の濃いブラウンがかったスーツ姿だ。

 髪はオールバック、オーソドックスなカジュアル寄りの姿である。

 

 無手に見えるだろうが、何かあればすぐにでも機械仕掛けの虫眼鏡型の魔術礼装を具現化して戦闘態勢に入れる万全の体制だ。

 いや、後で警察への説明がつかなくなってしまうので絶対にやらないが。

 

 だが、ホームズのスキル「仮説推論」によれば、このパーティには多少の危険があるようなので念には念を入れて。

 命の危険はないようなので、具体的に何が危険かは踏み込んで考えないものとする。

 またひっどい頭痛に苦しみたくないからな。

 

「意外だな、ホームズは女性に興味がないんだとばかり思ってたが」

「ああ、少し気になることがあってね」

 

 ベルモットことクリス・ヴィンヤードを眺めていれば、それを女性への興味だと誤解したらしい日色が意外そうな顔をしている。

 

 ……いや、これは違うな。

 ホームズの頭脳が回転する。

 あれは俺の様子が気になってつい話しかけてしまったから、それを「ベルモットが美女で気になっているのか」と咄嗟に誤魔化しただけだ。

 実際に日色君にとって気がかりだったのは、俺の視線の先に金髪の潜入捜査官がいたことだ。

 

 ……ふむ。

 

 視界にはクリスの隣で側付きをしている、こちらも甘いマスクの金髪の青年の姿が見えている。

 彼が日色君とどういう関係にあるのかは知らないが───頭脳が機械仕掛けの演算機の如く回転する。ああ、頭が痛い───かなり親しい関係らしい。

 あれは前に遺産相続事件で会った公安警察の潜入捜査官だろう。

 年齢は同程度に見える。学友か何かか?

 

 こうして見ると幹部はNOCばっかだな、例の組織。

 

 なんて言っていた、その時である。

 

 キャァアアア!と女性の悲鳴がパーティ会場の和やかな空気を突如として切り裂いた。

 ガシャーン、と何かガラスのような硬質なものが割れる音。重いものが落ちる音はおそらく腰を抜かした人物が床に転けた音であろう。

 

 圧倒的事件の香りに、暇そうだった霊基が急に元気を取り戻した。

 よし行こうすぐ行こう!!!と叫んで前のめりに体が走り出そうとする。

 それを急いで急ブレーキ。無礼にならない程度にパーティ主催者である富豪さんに一言入れてから現場へと向かう。

 

 富豪さんも「おお、ホームズさん!」とホッとしたような顔をしたのでこの辺の好感度稼ぎにもなっただろう。

 

 霊基はこの辺の立ち回りが下手でいけない。

 

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