言葉を喋る謎のラプチャー、トーカティブ。
それを捕獲するために虎杖たちカウンターズとユニとミハラの部隊、ワードレスは地上へと来ていた。
「地上へ到着しました。これからシフティーと連絡を繋ぎます」
「無理よ。ここら一帯の通信網はシュエンが遮断していたもの」
「通信を遮断……何よそれ!?」
シュエンが通信網を遮断したと話すミハラに驚愕するアニス。
トーカティブを捕獲するという作戦を知られる事がシュエンにとっては嫌なのかもしれない。
「……絶対におかしい。この作戦、何か裏がある」
「ええそうよ。だってこれはいわゆる秘密作戦……誰にも知られちゃいけないんだもの」
疑うラピやアニスにミハラは平然と言葉を返す。
ラピとアニスはますます信じられないという態度を取り、ネオンも先ほどからずっとだんまりとしている。
そして虎杖はと言うと。
「……あいつ、本当に反省したんかな」
「おそらくしてないわ。貴方に恐怖を感じたのは事実でしょうけど、あれくらいの事で直る性根なら今頃もっとまともなCEOになってるわよ」
「……そっか」
シュエンとは心の底からそういう人間であるとミハラは虎杖に突き付ける。
「なんなら、今は貴方たちに復讐する準備をしていたりしてね」
「ちょっと待ちなさいよ! 復讐って、そんなのあいつの一方的な逆恨みじゃない!」
「あくまで予測よ。……そろそろポイントへ移動しましょう、案内するわカウンターズ」
ミハラはユニを連れてカウンターズの前をスタスタと歩いていく。
~~~
歩き始めて20分。
どこへ向かっているのか分からないこの状況に疑問を持ったネオンがミハラに尋ねる。
「あの、私たちどこまで行くんですか……?」
「そんなに急かさないの。せっかちな人は男女問わずモテないわよ」
「いやどこに向かってるのか位は知りたいわよ……」
アニスもネオンと考えてる事は同じだったらしい。
ミハラは相変わらずどこへ向かうかも言わないまま歩き続けている。
歩いてる途中、虎杖は思い出したかの様に突然「そういえば」と話をし始めた。
「ミハラお腹痛くない? 俺包帯とかそういうキット持ってるぜ」
「そういえば撃たれてましたもんね……」
「平気よ指揮官。私、痛めつけられるの好きだもの」
ミハラが虎杖の善意を拒絶する。
(これドMってやつなのかな……)と虎杖は考えていた。
するとここまであまり喋らなかったユニが虎杖に向かって話しかける。
「ミハラはね! 痛いのが大好きなんだよ! でも他人に触られるのがキライなの! 触っていいのはユニだけなんだよ!」
(ドMじゃないのよ……)
(ドMですね……)
(やっぱドMだったんだな……)
奇しくもアニス、ネオン、虎杖の思考はこの時一致していた。
「……でも、気持ちは嬉しいわ。ありがとう指揮官」
包帯を巻かれる事は拒絶したが、受けた好意にはちゃんと感謝を示すミハラだった。
そこから更に歩く事10分。
ユニが突然声をあげる。
「あった! ミハラ、あったよ! ”足跡”!」
「偉いわねユニ、後でご褒美をあげるわ」
ユニがあったと声を出して見つけたもの。
それは途轍もなく大きな足跡だった。
「……なんだこれ? 熊の足跡よりデカくね?」
「その足跡が私たちの追ってる『トーカティブ』の物よ。トーカティブは信号が捕まらない。だから足跡を見つけられるかどうかが大事なの」
ミハラの話では、トーカティブは信号が捕まらず、足跡で追跡をするしか無いのだと言う。
虎杖にとってその足跡は、昔彼が幼い頃祖父に連れてってもらった博物館で見た熊の足よりも大きかった。
1時間後。
もうカウンターズとワードレスはかれこれ10km近くの距離を移動している。
その間にも足跡はいくつもあったものの、それは途中で途切れてしまっていた。
「ミハラ、足跡途切れちゃった……」
「……これ以上の追跡は無理そうね。戻りましょう」
「こんだけ歩いて戻るのね……」
アニスが呆れた顔でそうリアクションを取っていると。
何かに気付いたユニが、壁の方までタタタッと歩いていく。
「見て見てミハラ! ここから壁を伝って移動したみたい!」
「壁面を踏んで移動……? あり得ない。そんな事ラプチャーには不可能なはず……」
「ラプチャーは基本四足歩行だものね。壁を歩くなんて芸当無理よ」
ラピとアニスが壁を伝うなど不可能だと言う中、ミハラは1人ユニを肯定した。
「トーカティブは壁を伝って移動するという事が分かったわね。お手柄よ、ユニ」
「えへへ! じゃあご褒美ちょうだい!」
仕方ないわね、と言いながらミハラはユニを連れて向こうへと歩いていく。
ユニがミハラの隣に座ると、ユニはミハラのふくらはぎを思いきりつねった。
ギュウウウ……とつねられる彼女の姿はカウンターズにとっては見てるだけでも痛そうな絵面だったが、本人たちはどこか幸せそうだ。
「……何やってるの? あれ」
「師匠、私たちは何を見せられているんでしょうか……?」
「愛にも色んな形があるんだ……きっと」
「ミハラ、気持ちいい?」
「ああっ気持ちいいわ……! もっと強く……!」
「「「「……」」」」
ユニとミハラの高度なプレイを、カウンターズの面々は黙って見ている事しかできなかった。
作戦開始から3時間が経過。
トーカティブの痕跡はもうどこにあるかも分からず、手がかりは完全に途絶えてしまった。
「……痕跡が見当たらないわ。どうしようかしら」
「これ以上先はエブラ粒子の濃度が高いわ。引き返すべきよ」
これ以上進めば危険だとラピがミハラに警告する。
ミハラは虎杖に全て任せる、と言わんばかりに。
「指揮官。どうする? 撤退するか、それとも進むか」
「んー……別に今日見つけないといけないって訳じゃないし、撤退しても……」
虎杖がそう発言した直後、彼の携帯に着信がかかる。
ここでは通信網が遮断されているとミハラは話していたが、じゃあ誰が……
虎杖がそのまま携帯の着信に出ると。
『おい、聞こえてる?』
「シュエン……!」
「「「!」」」
声の主はシュエン本人だった。
どうやらミハラの予想通り、彼女の言葉からは虎杖本人を小馬鹿にした態度が見受けられる。
あの時の謝罪は100%表向きのものだったという事になってしまった。
「……何の用だよ」
『お前、アークでテロを計画してるでしょ?』
「? 何言って……」
『とぼけても無駄よ。お前の部屋から見つかったんだから。それに書類にはお前の鉄屑やお前のサインがあった。これってそういう事よね?』
「なんだよそれ、知らねーよそんな書類」
『とにかく私は見たんだから。もし今の追跡に失敗したらこの書類をアーク全体にばら撒くわ。ちゃんと追跡が終わったら仕方ないから私がもみ消してあげる。分かった? 猿頭。じゃあよろしく』
「……」
通話はそこで終了した。
ニケ達は虎杖をちらちらと見て心配する様子を見せる。
「……追跡、続けるしかなさそうね」
「……ああ」
虎杖たちはこのまま帰る事は出来ない。
いや、出来なくなった。
ここで撤退すればシュエンに完全なデマをでっち上げられ今度こそ追放されてしまうからだ。
虎杖は怒りをグッとこらえ、前に進む事を決意した。
追跡開始から1日が経過。
夜寝てる間にはユニが虎杖の体をベッド代わりにしようとしたりと色々な事があった。
そのせいもあってか、起きてからユニは虎杖の腕にべったりとくっつき虫の様にくっついている。
「ねえ指揮官! 腕ギューってしていい? いいよね!?」
「俺のでいいならいくらでもしてくれ」
「やったぁ!」
ユニが虎杖の腕を抱きしめると、次第に彼の腕からミシ、ミシミシという音が聞こえてくる。
最初は平気そうだった虎杖も流石に少し痛かったのか抵抗するも、ユニは離れようとしない。
「あー痛くなってきた! 流石にそろそろギブかも!」
「え~やだ~! もっと遊ぶの~!」
「指揮官様も痛がったりするんだ……」
「師匠が悲鳴を挙げるなんて中々見れない光景ですね!」
「普通の人ならユニを引いたりするんだけど……彼はユニを拒絶したりしないなんて、変わった人ね」
そう言われると、カウンターズの3人は一同に顔を合わせて。
「……変な人ではない」
「そうよね、ちょっと身体能力がおかしいけど変な人じゃないわ」
「師匠は優しいんですよ!」
「……そう。やっぱり良いチームね、貴女たち」
ミハラが少し微笑みながらも、カウンターズに賛美を送る。
6人で仲良く談笑しながら歩いていたその時。
『見つけた』
──────機械音の様な声が、彼らの後ろから響き渡る。
いる。何かが。
人間じゃない何かが、確実に。後ろにいる。
虎杖が振り向くと、そこには。
薄気味悪く笑う怪物の顔があった。
良く見ると足の形は、先ほどユニが発見した足跡のものと同一だった。
「こいつが……!」
「トーカティブ……!」
その生物はあまりにも巨体で表面はごつごつとしており、これまでのラプチャーとは一線を画す存在。
『そこの人間モドキ。まずはお前から殺す』
そう言い放つと、トーカティブは一瞬でラピの目の前に移動し、彼女を建物の壁に叩きつける。
「……ッ!」
幸い受け身を取っていたため大したダメージは受けなかったが、ラピはひたすらそのパワーに唖然とする他無かった。
「ここで現れたからには必ず捕獲するわよ……!」
ミハラが青い波長を肉体から出しては、自分の腹部をえぐり取る。
『なるほど……感覚交換か……! ならば!』
トーカティブはミハラの能力を瞬時に分析。そしてそれを逆手に取ろうと自分の肉体を破壊し始める。
トーカティブの痛みを全身に受けミハラは地面に倒れ、ひたすら苦しそうに体をくねらせていた。
「ミハラ……! ミハラをいじめるな!」
激昂するユニがトーカティブに攻撃を仕掛けるも躱され、逆に尻尾で薙ぎ払われてしまう。
『人間モドキ共がラプチャーに勝てると思ったか……! バカめ!』
既にユニとミハラは倒れ、残ったのはカウンターズの3人と虎杖を含む4人だけ。
トーカティブは虎杖を凝視すると、虎杖に交渉を持ちかける。
『人間。俺と共に来い。そうすればお前に危害は加えない。クイーンはお前を待っている』
トーカティブは虎杖にのみ興味がある様子で、こちらの仲間になれば何もしないと公言する。
それを眺めていたアニスとネオンは只々不安だった。もしも億が一、虎杖がトーカティブ……ラプチャー側に行ってしまったらと。
(せっかくここまでやってきたのに、私たちを置いていったりしないよね……!? 指揮官様……!)
(師匠……!)
「指揮官……!」
「「……!」」
ニケたちが揃って虎杖を見つめている。
『さあ答えろ人間。あと10秒以内に答えなければお前の仲間の人間モドキを1つ1つ潰していく』
「……悪い、皆。俺はもう答えはずっと決まってんだわ」
そう言うと虎杖はトーカティブの方にスタスタと歩いていく。
「嘘でしょ……!?」
「……指揮官……!」
「師匠……!」
『答えは決まった様だな』
「ああ、決まったよ。俺のお前に対する気持ちが」
『……何?』
トーカティブが言葉を発したその0.5秒後。
「『黒閃』!!!!!」
黒い呪力の火花が弾け飛び、トーカティブの肉体に大きな傷を与える。
「指揮官……!」
「指揮官様!」
『ガッ……貴様……!?』
「わりーな。こっちは仲間とお前を捕まえるって決めてんだ。わざわざお前なんかに着いていく義理ねーんだよ」
『いいだろう……! そこまで言うのなら殺してでも連れて行ってやる!』
「行くぞラピ、アニス、ネオン! このお喋り野郎を捕まえるんだ!」
「「「エンカウンター!」」」
カウンターズvsトーカティブの戦いの火蓋が切って落とされた。
一方その頃。
「ようやく見つけたぞ……異端者め」
白い髪をした少女が、彼らの戦いに介入しようとしていた。
いつも感想を読みながら執筆しています!とても励みになっていて自分も書いていて楽しいです!
これからもよろしくお願いします!