015
商談が終わり、昼前にはテペス村を発つレトとベロンガ。
行きには大きな荷物を運んでいたが、帰りには大した荷物はない。
「・・・・・・と思っていたんだがなぁ」
「へへへ。行商人であるあっしが空荷でベレルリの街に帰る訳にもいかんでしょう?」
強かな笑みを浮かべるベロンガが牽く荷車を見て、引きつった笑みを浮かべるレト。空を見上げればカラスが一匹、空を飛んでいる平和な光景が目に映る。
現実を見る為に視界を地上に戻せば、そこにはテペス村で獲れた魚の干物や、アイトが仕入れたワルリオン王国の布などの荷物が積まれていた。行きよりかはやや少ないが、しかし十分に大荷物とよばれる量である。
「帰りはオレが護衛する理由もないと思うんだが?」
「そういうと思いやしたよ。帰りの護衛料はいくらくらいがようござんしょ?」
ややもすればわざとらしく会話を始めるレトとベロンガの2人。やはり様式美というものはあるらしく、そこを無視していきなり金額が決まることはない。
「売り上げの1割ってとこが妥当かな? ならば銅貨5枚ってところか? その荷物なら銀貨1枚で売れるだろ」
「分かっていてそう言うのはいじわるですな、旦那。妥当というなら利益の1割が妥当ですぜ。
仕入れに銅貨を30枚も使っているんでさぁ。銀貨1枚で売れるとしても、利益は銅貨20枚。1割なら銅貨2枚ですぜ?」
「かといって、盗賊にでも襲われて全部失ったら元も子もないだろ?」
そう言って、表情を引き締めたレトは脇を見る。
そこにはアテ運河に架かった橋があり、明らかに堅気ではない雰囲気をして更に首から上を白い顔布で覆っている男が2人、橋の上に陣取っていた。
凶暴な様相を隠そうともしない彼らは、既に刃物を抜いていた。前にいる男は大ぶりの曲剣を構え、後ろで待機している男はロングスピアを持っている。
視線を送りつつ、スラリと双剣を抜くレト。
修羅場の予感を感じ取ったベロンガは慌てて足と荷車を止める。後ろを見れば、テペス村はもう遠い。襲う側もすぐに騎士団の介入が出来ないような位置で襲うくらいの警戒はしていたようだ。
「で、ベロンガ? いくら払う?」
「・・・・・・銅貨5枚で」
「了解。交渉成立だ」
その言葉を置いたレトはゆっくりと橋の上にいる不審者たちに歩み寄る。
歩幅にして10歩ほど離れた位置で止まったレトは、前にいる曲剣を構えた不審者を眺めて眉を顰める。
「お前――ハリマンだろ?」
「・・・・・・バレたか」
ならば顔布で隠す意味はないと、その白い布を外す不審者。果たしてそこから現れた顔は、大森林に入る前にレトたちを値踏みするように見ていた不快な男であるハリマンに相違なかった。
その顔を嫌そうな目で見たレトは、いちおうの問いかけをする。
「何の用だ?」
「へへへ、分かって聞くのは野暮じゃねぇか? まあいい、こういう時のセリフは決まっている」
嫌悪感を覚える笑みを顔中に浮かべたハリマンは、次の言葉を口にする。
「命が惜しければ、有り金と荷物を全部置いていけ」
「嘘つけ、殺すつもりだろ」
掛けられた言葉を一蹴するレト。即座に言い返されたハリマンは一瞬で真顔になる。
しかしハリマンの顔はまたも下品な笑みを浮かべ直した。
「ほぅ、どうしてそう思う?」
「生かして帰す可能性があるのなら、顔を晒すことは絶対にない。顔を晒すのは必ずオレたちを殺すという意思表示だ」
レトのその言葉に醜悪な笑みを深めるハリマン。しかし、レトの次の言葉にその笑みが凍り付く。
「雇い主も当ててやろうか。ルルン男爵家、だろ?」
断定した口調と、そして正解の言葉。ハリマンは思わず愚直な反応をしてしまった。
その様子を見たレトは渋い顔をしてぽつりと呟く。
「当たり、か」
「テメェ・・・・・・カマをかけやがったな?」
「まあな」
至極あっさりと頷くレト。しかし双剣を構えながら、斜に体を傾けながら。適当なカマかけではないと言葉を続ける。
「オレが大金を持っている、もしくは一攫千金を狙っているを狙っていると知っている人物は限られる。
その中でもっとも切羽詰まっている中の一人がルルン男爵家のスイツだ」
スイツという名前を出して更に様子をうかがうレトだが、ハリマンはレトの言葉に今度は反応を返さない。ハリマンがスイツという人物を知っているのかどうかをレトが伺い知れる事はなかった。同じ過ちは犯してくれないらしく、レトは心の中で舌打ちをする。
「ルルン男爵家のスイツっていうと、レトの旦那と同じく暁騎士団の団長試験に参加しているという?」
「そう。スイツも銀貨100枚を集めなくてはならない。しかし真っ当な手段では難しい。ならば選択肢に入るだろうな、強奪するという行為は」
やや後からベロンガの声が届いてくる。ベロンガはベロンガとして避けられない修羅場から少しでも離れようと努力をしていたらしい。
しかし、どうしても荷車を牽いては逃げられない。命を拾うには荷物を捨てる必要があるだろう。レトが負けた場合、ベロンガも大損だ。
自分が損をしない為にレトに勝って欲しいというベロンガの念を感じつつ、レトは口を開きながら状況を整理する。
「一方でルルン男爵家が直接的に手を下すというのは如何にも外聞が悪い。なら、依頼を出すのはスラムの盗賊ギルドだろうか。
更に言うなら、オレをマークするまでの時間も短すぎた。僅か1日でオレの動向をうかがおうとするには、前提条件を知っているとしか思えない。となればそこと以前から繋がっているという黒い噂が流れているルルン男爵家を疑うのは――」
「さえずるのはそこまでだ」
忌々しそうに表情を歪めたハリマンはそう言ってレトの言葉を遮る。その表情から真実はどこにあるかは分かりきっていたが、しかし嫌みを添えてレトは口を開く。
「訂正は?」
「――見事だと、そう言っておこうか」
お喋りはそこまで、なのだろう。曲剣を振り上げたハリマンは、その勢いのままにレトに斬りかかる。
幅が広い刃物であるそれは、受けるには足を止めなくてはならない。そうしてしまえば、後ろでロングスピアを持つ男に刺されかねない。そう判断したレトはバックステップでハリマンの攻撃範囲から逃れる。
「チェイィ!!」
そして予想通り、後ろの男からのロングスピアによる刺突。レトはその槍を右の剣で側面に当て、横に弾き逸らす。その上でレトも自分で回転しつつ、ハリマンの追撃に備える。
レトの動きは完璧だった。もしも敵が2人だけであったのならば。
「はっはー。隙、あったぜ!」
「な!?」
今度意表を突かれたのはレトの方だった。空から黒い塊のようなものが急降下して、一直線にレトへと向かっていた。
迎撃の為に用意していた左の剣を襲いかかる黒い塊に向けて突き狙うレトだが、その黒い塊はレトの剣を避けて更に懐に向かう。
その正体を看破したレトだが、もう遅い。遅すぎた。
「――カラス!!」
「レバンス、いつもの通りだ!」
ハリマンの声に呼応するよう、レバンスと呼ばれたカラスはレトの懐に入り込み、布地の部分を爪で引き裂く。
そして晒された銀貨の入ったレトの財布を器用にクチバシでつまみ上げると、そのままレトから離れて大空へと飛び去ってしまう。
「よーしよし。よくやったぞ、レバンス」
「っ!」
苦労して集めた17枚の銀貨が奪われてしまった。もう手の届かない空へと舞い上がるカラスを忌々しそうに見上げるレトに、その動揺を突くべく後ろの男のロングスピアが迫り来る。
「チェチェチェ、チェイィィィ!!」
狙いは、眉間に心臓それから腹の三連撃。更に最後には腰を入れて追撃する見事な連撃であり、生半可な者だったらあっさりと殺されていただろう。
しかしレトも暁騎士団の団長試験にここまで生き残っているのは伊達ではない。眉間への攻撃は屈んで躱し、心臓への突きは半円を描くような足さばきで回避する。そして最後に残された腹への刺突は左の剣で思いっきり下から掬いあげて、上に逸らした。
残ったのは、槍を大きく上にズらされた無防備な男が一人。
「手加減は、しない」
無表情でロングスピアの男の眼前まで一飛びに近づいたレトは、その胸に右の剣で一衝きにした。
「ガ・・・・・・」
白い顔布の口の部分、吐き戻した血で赤く染め上げながら、顔すら見せなかったその男は絶命する。右の剣に刺し貫かれたその男はピクピクと震えながら後ろに倒れ込んだ。
そしてレトが一人を殺したのを隙と見たハリマンは、自分の仲間が殺された光景を見て醜悪な笑みを浮かべた。彼にとって仲間が一人死ぬ事はどうでもよく、レトを殺して依頼料という利益を独り占めする喜びの方が勝っていたのだ。
ニタニタと笑いながら幅広の曲剣をレトに向かって振り下ろすハリマン。レトの双剣は片手ずつで扱うが故に、重量を抑える為に長さはそれほどでもない。
右の剣を未だに顔も知らない男に突き刺している今、レトは左の剣を振るってもハリマンには届かない。
「旦那!!」
ベロンガの悲鳴染みた言葉を聞きつつ、レトは冷静だった。冷静に、残った左の剣を振り上げて、
「俺にそれが届くかぁぁぁにぃぃぃぃ!?」
ハリマンに向かって、投げつけた。
そもそも剣を投げるという発想がなかったハリマンは、大きく仰け反って飛んできた剣を回避する。回避、してしまった。
飛んできたレトの双剣を手に持った曲剣で弾く事が最善策だったにも関わらず、である。必然、体勢を大きく崩したハリマンは剣を振るうどころではない。そればかりか、後ろに向かって尻餅をつくように倒れ込み、そのままの勢いで地面に後頭部をぶつけてしまう。
「ぎゃ!!」
脳天に響く衝撃に、一瞬だけ視界を揺らしたハリマンはそれでもすぐに立ち直って上半身を起こして敵対するレトを目で探す。
そして、探すまでもないと現実が突きつけられた。ハリマンが晒した大きな隙をレトが見逃す筈もなく、血の滴ったレトの剣が額に合わされたのだ。
その先には言うまでもなく、無表情のままのレトがいた。
「へ、へへ・・・・・・」
「動くな」
笑いながら、地面に落ちた曲剣を指で探すハリマンに向かって冷徹に声をかけるレト。その冷たさにハリマンの指の動きが止まる。
しかしハリマンの笑みは止まらない。この期に及んで、その表情から笑みが消える事はない。
その様子を見て、レトの表情が警戒に染まる。
「何がおかしい?」
「お、俺をこのまま殺していいのかって話だよ」
「・・・・・・殺さない選択肢があるとでも思っているのか?」
どんな命乞いをされようとも、ハリマンをここで殺すのは決定事項だ。レトがハリマンを生かしているのは、レバンスと呼ばれたカラスが持ち去った銀貨袋の行方を聞き出す為である。
だがしかし、ハリマンはレトが思うよりも尚更の外道だった。剣が突きつけられながら、なおもニヤニヤと笑うハリマンが選んだのは。
命乞いではなく、脅迫だった。
「西にある、丘の上の孤児院」
「!!」
「お前がそこに執着しているのは調べ上げているんだぜぇ? もしも俺がこのまま戻らなかったら、どこが襲撃されるんだろうなぁ?」
「キサマ・・・・・・」
「そうだな、俺の相棒を殺した慰謝料としてこれから毎月銀貨3枚を寄越すなら――」
「ニネエを、襲うつもりか?」
ブワリと膨れ上がるレトの殺意に、ハリマンの声が止まる。そして反射的に再度曲剣を探し始めてその指の、元となる肩にレトの剣が深々と突き刺さった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
肉が裂かれて骨に到達した刃物の痛みと冷たさに、ハリマンが絶叫をあげた。
それを無視してレトは朗々と聖句を詠いあげ始める。
「我に寄り添う妖しき化生、その残酷なる無邪気な業をここに顕せ」
「お、俺の肩、肩がぁぁぁ!!」
無事な方の手で刺された肩を押さえて転げ回るハリマン。そんな彼を見ながら感情が抜け落ちた表情で、しかしながら瞳には殺意を漲らせながら口を開き続けるレト。
「酔わせよ、うたた寝、酩酊させよ。深謀なる知恵を沈め、真なる心を浮かばせ晒せ。『ティプシロン・リアル』」
「よくもよくもよくもぉぉぉ!! 孤児院の奴らは嬲り殺しぃぃ・・・・・・いい?」
血走らせた目でレトを睨むハリマンだが、すぐにその表情がトロンとしたものに変わる。
レトが唱えた神秘術の効果は、その聖句の通り。考える力を奪い、真実を吐露させる為の神秘術。精神が安定している相手には抵抗されてしまう程度の神秘術だが、肩を射貫かれて痛みに心を乱したハリマンにはあっさりと浸透してしまう。
「ハリマン、質問だ。どうすればお前が企てた孤児院の襲撃を防げるか?」
「・・・・・・スラムとベレルリの街の間にある俺の隠れ家、そこに弟分のデニが居る。3日以内に俺が帰らなければ、そいつが孤児院を襲う」
「オレの銀貨もそこに送ったのか? すぐに向かえば取り戻せるか?」
「そうだ。ただ、全額取り戻すのは無理だ。俺たちの取り分は銀貨10枚。それ以上はルルン男爵に渡す手はずになっている。レバンスが隠れ家に銀貨袋を届けるのは今日の夕方になる。今から向かっては間に合わない」
ハリマンの言葉に歯を噛み締めるレト。しかしここで悔やんでも何も事は進まない。
正気を失っている時間も無限ではない。聞かなくてはいけない事はまだある。
「では、お前の隠れ家について詳しく教えろ」
「隠れ家の場所は――」
そうして正体を失ったハリマンは隠さなくてはいけない事を洗いざらい吐いてしまう。隠れ家の場所、合い言葉。そして自分が
一言も聞き漏らす事無くそれを自分の耳に入れるレト。
それらの事を聞き終えた時が、神秘術の時間切れだった。瞳の焦点が戻ったハリマンだが、自分が何を語ってしまったのかは覚えていたらしい。
顔を真っ青にさせて、ただただレトの事を見上げる。彼が見るのは、無表情のままで自分を冷たく見下ろす紅い髪をたなびかせた青年。その顔にいつも浮かべている優しさは、ない。
「た、助け――」
命乞いをする時間も与えなければ、返事を投げかける慈悲もない。
レトは容赦なく、今度こそその額に合わせた刃先を思いっきり突き込む。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
ハリマンの断末魔は、青空の下に長く響いた。
それを聞いたのは、無表情のレトと顔を青ざめさせたベロンガ。
最後に残されたのは、希望の全てを失って命を絶たれたハリマンの暗い顔だけだった。
その後のレトの動きは迅速を極めた。
ベロンガから護衛料の銅貨5枚を要求した上で、可能な限り早くベレルリの街へと帰還する。行きは3日かかる距離を2日で踏破する急ぎようだった。
「すまないが、オレはここで離脱するぞ」
「へ、へい。旦那。ご武運を」
息も絶え絶えについてきたベロンガとはベレルリの街にある西のアーチで別れる。荷物を大量に乗せた荷車をひくベロンガはどう考えてもこの先では邪魔になるからだ。
そしてレトは長旅で疲れて休みたがる体を無視し、ハリマンから聞いた隠れ家へと駆ける。鬼気迫る表情で街を走るレトに、人々は驚きと困惑の表情を見せてくるが、レトはそれかかずらわっている余裕はなかった。
ベレルリの街と北のスラムの境にある、緩衝材のような混沌とした地帯。ハリマンから聞いた隠れ家はそこにある。
通りを走り抜け、目的の家に辿り着く。ハリマンから聞いたとおりの、特徴が少ない家。
(・・・・・・落ち着け、落ち着け)
そこでいったん息を整えて態勢を整えたレトは、入り口のドアをノックする。トントントントンと軽く4回、ドンドンと強く2回。
ハリマンとその弟分であるデニの間でのみ使われる合図。他の者が知るはずのないノックの仕方に、果たしてあっさりとドアは開かれた。姿を現したのは、小汚い様相の陰湿そうな若者。
「へへへ。お帰り、アニキ。首尾良く――」
「――ああ、首尾良くここまで辿り着けたよ」
冷厳な目で睨み付けながら、抜き放った右の双剣をデニの喉元に突きつけてレトが言う。
完全に油断していたデニは、身動き一つ取れずにその剣が喉元に迫って止まるのを見るしかない。
「デニ、だな?」
「ひっ・・・。な、なんだ、テメェはよ!?」
「レト・レスター」
レトの名乗った名前を聞いたデニは顔色を変える。
「テメェがレト? じゃあハリマンのアニキは・・・・・・?」
「殺した」
対して顔色一つ変えることなく言い切るレト。対してデニはあまりに短絡的で、直情的で、そして愚かだった。
「よくも、よくもよくもよくもハリマンのアニキをぉ!!」
自分の喉元に剣を突きつけられている事を忘れていたのか、はたまたただの脅しだと思ったのか。激昂してレトに掴みかかろうとするデニに、レトは全く容赦をしない。冷たい瞳のまま、至極あっさりとデニの喉を衝き抜く。
「――っ、ぁぁ、ぅぅ、ぁ」
声を出す機能と呼吸する機能を失ったデニは、そのままその場に崩れ落ちて喉を押さえながらパクパクと口を動かすのみだった。
家の出入り口で敵対者を殺したレトだが、周辺の住民は恐ろしげに見てくるだけレトを咎めようとはしない。
スラムに近いここは人の殺し殺されは珍しくもない、ということなのだろう。
「ふぅ」
襲撃の可能性があったデニを始末したことでようやく孤児院とニネエの安全は確保したレトだったが、宣言された通りに銀貨は全て戻って来なかった。
家捜しして見つけたレトの銀貨袋に入っていた銀貨の枚数は10枚であり、7枚の銀貨はもうルルン男爵家に渡ってしまったのだろう。
もしもルルン男爵家を襲撃してそれを奪え返してしまえば、傍目にはレトの方が強盗である。ルルン男爵家とハリマンやデニとの繋がりも、ルルン男爵家が知らぬ存ぜぬを通してしまえばそれまでである。
ハリマンの証言があるとはいえ、それだけで他人を追求できるものではない。賊の戯言と言われてしまえばそれまでで、追求する対象が貴族ならばなおさらだ。
レトとしては奪い返した銀貨10枚と、ハリマンたちが蓄えていた銀貨2枚が手元に残るのみ。ルルン男爵家に渡った銀貨7枚は歯噛みしながら諦めるしかない状況となっていた。
随分と軽くなってしまった、重量のある銀貨袋。それを抱えて無力感に打ちひしがれるレトだった。