【TS】悪役令嬢転生魔王【あべこべ】   作:とんべえ

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勇者登場

「のぞき見とは品性が問われますわよ、殿下」

 

 パタリとファイルを閉じる。カルロス=オルデエルンとは十一歳ころからの付き合いで、親同士の決めた許嫁という噂がある。なぜ噂話なのかというと、私たちといってもセレスティア=バルカとカルロス=オルデエルンの両親が、酒の席でだったらいいわねぇぐらいのノリで一回話したこっきりだからだ。屋敷で働く者たちの話題のネタ以上にはなっていない。

 

「君たちは何かと目立つからね。そりゃぁ気になるさ」

 

 背が高く眉目秀麗、成績優秀、それからそれから、優れているところを数え上げればきりがない。生徒の中には“ミスターパーフェクト”と揶揄する奴もいるぐらいだ。かく言う私はどうかというと人間と比べられても困るので、たいして所見がない。しいて言うなら温厚誠実でありながら、ひょうひょうとした掴み所のない一面をも持つ人物といった具合だ。

 

「そうですわね。友達になったとお伝えしておきます」

「そっか。それは良い!」

「やはり生徒会のメンバーに?」

「うん。一年主席なら生徒会に居ない方が逆に不自然と思わないかい? ぜひ紹介してくれたまえ!」

 

 

 それから数か月たった。マオ=ユイミーはへこたれる事なく勉学にいそしんでいた。いびりや妨害に屈することなく、それどころか逆にばねにしていた。その話は生徒だけに留まらず、教師や学園長の耳にも届き、とうとう授業料が免除される特待生に選ばれた。いびりや妨害をする時間を勉学に費やしていたら、暗躍していた輩も涙を呑む始末。

 生徒会で開かれるのは歓迎会である。

 

「カルロス様、セレスティア様本当にありがとうございました」

「あーやっぱりばれてたか」

 

 あまりにあくどい場合は、生徒会が介入したのだった。カルロス=オルデエルン曰く風紀を乱すことは許されないらしい。はっ、ご立派なこった。さぞかしいいお生まれなんでしょう。実際そうだ、自分で勝手に納得する。

 

「カルロス様、そろそろ宜しいのではなくて?」

 

 私がそういうのは伝説の剣の話だ。私たちと言ってもセレスティア=バルカの事だ。なぜしつこく言うのかというと、この学園にはかつて魔王を倒した伝説の剣が存在するのだ。

 まぁ、この世界の魔王だから別だと言われればそれまでだが、やはり魔王は魔王、すっげー気分わりぃ。そのすっげぇ気分悪い伝説の剣が、マオ=ユイミーに反応しているのではないかと噂が生徒会や学園上層部でもちきりだ。

 違う言い方をすると生徒会長に丸投げしたとも言う。一般的に言えば、伝説の剣なら王子様が許されると、嬉し恥ずかしの妄想をするものだが、現実は異なる。んで全ては次期国王候補の現王子様次第という事になった。

 

「良いんじゃないかな」

 

 しれっとしたものだ。今この魔法学園の中心はマオ=ユイミーだ。あらゆる魔力の流れがこの人間をなぞっている。この王子さまはをそれを感じ取っているらしい。

 

「あの、セレスティア様、何の話でしょうか」

「そうね、勇者誕生と言ったところかしら」

 

 伝説の剣、聖なる剣、勇者の剣、言い方はどれでも構わないのだが、とにかくそう呼ばれる一振りが学園に納められている。学園の深部にある大きな岩に突き立てられているのだ。

 関係各所と話がまとまったところで、儀式が始まった。学園長をはじめとした執行部と、カルロス=オルデエルンをはじめとした生徒会、他には国王の代理である聖騎士が城から、その他大勢。

 それらがマオ=ユイミーの一挙手一投足に注目する。確かに伝説の剣が共鳴していた。まるで呼び寄せるかのようだ。念のためと腕が立つ者が引き抜こうとしたがびくともしなかったが、さて。

 

 マオ=ユイミーが勇者、ね。私はこうやってぼーっと見とるだけかい。邪魔するべきではないのかい。なんで立ち合いまで参加しているんだ。

 

“ユニークスキルあべこべ”

 

 なんかこう、もうどうでもよくなってきたわ。さっさと終わらせてくれ。

 

「まさか女が勇者などと」

「前例はあるそうですぞ」

「一般人もですかな?」

「記録では先々代が一般人だとなっております」

「一般人上りで女の身ともなると今回が初ですな」

 

 城からやってきた官僚たちの思惑が交差する。するとマオ=ユイミーと目が合ったので私は力強くうなずいた。その手が柄に触れると強い光が迸った。しゃらんと鈴の音のような音がする。抜いた。確かにマオ=ユイミーが伝説の剣を抜いた。ここに勇者が現れたのである。

 

 

 魔法学園では、マオ=ユイミーのカリキュラムに変更が加えられた。剣の訓練である。カルロス=オルデエルンのつてでやってきた剣の達人の指導の下、日々忙しく、顔を合わせる機会が流石に減ると思ったら逆に増えた。

 

「ご恩は忘れません!」

 

 こうして、生徒会の書記として、魔法学業をこなしつつ、剣の鍛錬に励むという毎日を送っている。そしてまた、それが卒業まで続くのだろうと誰もが思っていた。この時までは。

 

遥かの北の大地に魔王が現れたのだ。

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