【TS】悪役令嬢転生魔王【あべこべ】   作:とんべえ

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終わり良ければ総て良し?

 遅い。とついこぼしてしまう程に魔王討伐隊のスケジュールが遅れていた。一週間毎に届いていた定時連絡は、徐々に内容が薄くなっていった。

 噂によると討伐隊の連携が今になって悪くなっているらしい、それが原因ではないかと言う者もいる。

 最新情報を見ると膠着状態という言い方が正しいだろう。北の魔王軍団の進撃が始まり、それを押し返すまでは良かったのに何故だ。

 戦はさっさと終わらせるものだ。ただでさえ軍団を維持するだけでも血税を費やしているというのに、これ以上の支出を認めては追加徴税も考えなくてはならないぞ。大問題になる。

 領主である父も一応は気にしてはいるが、他の爵位持ちの目もあって大っぴらには動けない。ふーむ。一喜一憂していては度量がとわれる、か。

 

「埒があきませんわね、エルシィを呼びなさいっ!」

「はい。ご主人様ここに控えているですにゃ」

 

 いつからそこに居るのかはこの際問うまい。

 

「北の国ゴウダッドに行きますわよ。用意をして頂戴」

「分かりましたにゃ。長旅になるのでそのように致しますにゃ」

「言い出しておいてなんだけれども、止めないのね。貴女は」

「どんな御用も受けたら成し遂げよと言われていますにゃ」

 

 視察に行くと申し出たところ父は歯切れが随分と悪かったが、反対しなかった。生徒会をしばらく休むとカルロスに伝えたら、これまた歯切れの悪い、了解を得た。誰かがやらねばならない状況でちょうど手を挙げたのが私だったらしい。

 なので都合よく武装商隊の客車を借りる事が出来た。一か月はかかるだろうと思っていたが、最近石畳の道が作られたため一週間程度でゴウダッドに行ける事が分かった。

 

 しかしこの陽気な空気は何だろうか。客車があるのは百歩譲れるとして、商隊の面々を見ていると、観光客やら商売人やら、軍属ではない一般人の多いこと。一般人の学生までいやがる。

 

「戻りましたご主人様」

 

 猫耳メイドのエルシィだ。商隊の様子を見るようにと頼んだのである。

 

「どこも活気づいていますにゃ。一山当てようって連中ばかりですにゃ。いやー、懐かしいですにゃ。冒険者だったころを思い出しますにゃ」

 

 冒険者だったなんて聞いた事ねぇよ。まぁいいけどさ。

 

「それでエルシィ、物資はどうだったのかしら」

「軍事物資は消耗品ばかりですにゃ。それも特定の何かが多いと言う訳もないですにゃ。まんべんなくまんべんなく」

 

 ふーむ。担い手含めて武具が積み荷に無い、つまり武具の損耗がないという事になると、落ち着いた状態で安定していると考えてしまうのだが、ならば勇者マオ=ユイミーは今何をしているのだろうか。討たれた死んだとは聞こえてこないが、よもやどこかで道草喰ってるんじゃねーだろうな。

 

「ご主人様、出発ですにゃ」

 

 笛の音が鳴るとごろごろと木製のタイヤが音を立てる。これから一週間座りっぱなしだ。北方の国ゴウダッドまでには、交易都市があるが、状況次第では休んでもよかろう。

 

 

 

 ゴウダッドに到着して早々に無頼の輩が絡んできた。

 

「多勢に無勢、だがバルカ家のメイドである以上、主を置いて逃げるわけにはいかんにゃ!」

 

 キシャーとエルシィは戦闘状態だ。だもので眠りの魔法を使った。全員素人だったようでぐっすりだ。

「ご主人様。いつ覚えたかにゃ。身もふたもないにゃ」

 

 水属性の魔法は癒しや治癒など人の内部に干渉しやすい特徴を持つ。基本を押さえておけば三年生の聖職者コースで覚える眠りの魔法など容易い。

 

「エルシィ。バルカ家の紋章を探しますわよ」

「分かりましたにゃ」

 

 宿屋・道具屋・武器屋・教会・飲み屋、墓場、瓦礫となった建築物、一通り流すと幾つかあるうちの一つ、騎士団詰め所を見つけた。隊長らしき男には見覚えがあった。バルカ家に代々使える武官の一人だ。

 

「セレスティア様、何故ここに」

「視察ですわ」

 

 慌てて腰を上げる騎士たち。完全に休暇中状態だ。だらけてやがる。

 

「大きな戦があった、この事は直ぐ分かりました。今どうなっているかを教えてくださいな。一体北の魔王は、勇者はどうなりましたの?」

 

「実は、」

 

 北の魔王の襲撃を予知していたゴウダッドの領主は、準備をしておいて一応は抵抗したらしい。だが魔王の軍団に耐え切れず一度はこの街を放棄し逃げたそうだ。その後、周辺国の討伐隊と合流しゴウダッド奪還作戦を決行。

 まとまった数の軍団だったそうだが、各国からの派兵であるため統一的な作戦はできずに消耗戦がしばらく続いた。そこに登城したのが勇者マオ=ユイミーである。魔獣や魔族何のその、片っ端から倒していったそうだ。

 各国から派兵された討伐隊は彼女をリーダーに祭り上げ、北の魔王の軍団を押し返し、とうとうゴウダッドを奪還することに成功したのだ。

 

「なるほど。無事北の魔王を倒したと」

「それが、あと少しのところで裏切り者が出まして」

 

 事実マオはあと一歩のところまで北の魔王を追い詰めたらしい。嫌な韻なので口にしたくないのだが、ライフル分隊が勇者を襲ったのだそうだ。連射ができる奴で両手持ちの奴、アカデミーで見たアサルトライフルを持つ連中。

 

「何の取引があったわけかわかりませんが、連中は地下迷宮にまで引き下がり膠着状態が続いています」

「勇者以上の存在感を示したかった、そんなところでしょう」

「ただの銃士隊がですか?」

「将来的な話ですわ。鉄砲の有能性を世界に広めようとした」

「なるほど」

「して勇者は?」

 

 死んだのかと聞けなかった。

 

「今は地下迷宮、つまりダンジョン攻略隊のリーダーとして探索をしております」

 

 無事か。あーもう、冷や冷やさせやがるぜ。

 

「全員連れ戻します。冒険者ギルドまであるようなら彼らに任せても問題ありません」

「バルカ家が魔王討伐を放棄したと思われるのはよろしくないかと」

「宜しい。では最低限の人数を残してあとは帰国させるように」

「はい。分かりました」

 

遠くでマオ=ユイミーの声がする。

 

「セレスティア様ー! お久しゅうございますー!!」

 

完全に一般人に戻っていますわね。これはもう淑女作法からやり直しですわ。

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