ツンツン頭さんを守護りたいスレ【滞空回線は糞】   作:原石うじゃうじゃ

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 土御門はロマン溢れる設定が多くて個人的に結構好き。
 今回もフル小説回です。


【収集】蔵

 学園都市にしても、ステイルら『必要悪の教会(ネセサリウス)』にしても、それぞれが束ねる『世界』がある。

 『現実(かがく)』と『非現実(オカルト)』――互いが互いに線引きを施し、それぞれの技術を独占しているからこそ、今の地位がある。

 『超能力者』と『魔術師』が交差すれば、どのような事態が引き起こされるか?

 学園都市、教会、科学と魔術…あらゆる事態を天秤にかけ、その上で、問うのなら。

 彼らは、一体()()()()なのだろう――?

 

「言えば、帰ってもらえるかな」

 

 漣家当主、漣伯理。

 彼は左目に顕現した仮面から、沸き上がる『玄力』によって黒い陽炎を形作る。

 それを見た瞬間、部屋に充満する『圧』のレベルが引き上げられる。

 片手をあげ、慌てる素振りも見せずに彼は。

 

「――っと勘違いするな。これは戦闘態勢じゃない」

「残念だけどその手には乗らないよ」

 

 声と同時、鋭く切り込むようなステイルの眼差し。

 

「生憎と『蔵』の詳細は把握済みだ、少しでも()()()()()()()()()()()()()()()、こっちも動く」

「……………」

 

 ――『漣』の名は、日本に深く根付いた『伝承の異能』として知られる。

 年に一度開催される、日本中の役人が集い、最高の『商品』と共に熱狂を身に纏う。

 その歴史は二百年以上続き、日本の文化を語る上でも、決して無視はできない存在でもある。

 そして、彼らが『漣』の名を天下に轟かせ、『楽座市』を育ててきた全ての源こそ、彼らが代々受け継ぐ『蔵』であった。

 動き、効力。あらゆる情報という名の武器を手にしたステイルは、『蔵』が持つ転送能力を警戒し、告げた。

 

「驚いた。想像以上に覚悟が決まっている」

 

 伯理は予め言葉を用意していたように「俺にそう強く出るんだから当然の話か」と言った。

 

「学園都市の超能力者、そして魔術師との関係性はよく知っている筈だろう?これも下手をすれば、()()()()()になることも」

「………………」

「――もしくは、()()()()()()()()()()があるからここに侵入したのか。…なるほど、だからわざわざ自室で待っていたのか」

 

 不快感などないように。

 彼は続いて、今も尚こちらに視線を向けている神裂に顔を向け。

 

「言ったろう、これは戦闘態勢じゃない。流石の俺も"魔術師"相手に真っ向からやり合うのはごめんだ」

「ならば…」

 

 神裂は答える。

 

「ならば、早く禁書目録の居場所を話せばよいかと」

「おいおい、もう少しお喋りに付き合ってくれてもいいだろ?」

 

 おどけるように言う伯理にはやはり、依然として焦りはない。

 

「特に神裂くん。君は"聖人"だ。銃弾も捉えられる動体視力と、それを回避できる身体能力…しかもこの距離だ。俺は抵抗なんてできずに一瞬で粉微塵になるだろうな?」

「……………」

 

 そして当然のように、神裂の身体的特徴を見抜いている。

 拭い切れない違和感。それにステイルは疑惑を浮かべる。

 

("聖人"は兎も角として名前まで…『漣』のコネとやらで知った情報か?それにしても)

 

 それにしてもやはり――そうステイルは思う。

 

(自室に敵。それも相手が魔術師と分かった上での、この不気味な落ち着き…何を企んでる?)

 

 『科学』と『魔術』の摩擦関係を既に知った上で。

 こうして侵入を果たしたステイルたちを相手にしても、それをチラつかせた脅しも見せる様子がない。

 言い様のない違和感を前に、ステイルは過去の会話を想起する――

 

 

 

 

 記憶は二日前に遡った。

 

『漣家邸宅には、家屋に結界が施されている』

 

 ステイルたちにとって、()()()()()()とも呼ぶべき男は、卓上に手書きの見取り図を置いて。

 全く同じ形、そして幾何学的に配置されることによる、物理的なトリックアート効果を含めた、巨大な『隠蔽』の家屋の数々。

 全部で十二個はある家屋の中、一つだけ赤いペンで丸印を付けられた場所を、指で示しながら。

 

『これは代々、当主に選ばれた漣の人間と「蔵」を、外敵から守る為だとされていてな、()()()()()()()()なんて話もあるが…今は客人を守る効果のみが機能している』

 

 一つずつ、確認させるように。

 

『そもそも。漣家が市場という、今やネット通販で全てが事済む現代社会で売買の覇権を握ったのは、全てがこの「蔵」の…初代当主が作った亜空間のおかげと言ってもいい』

『初代だって?』

 

 ステイルは眉をひそめ。

 

『確かに「蔵」の利便性は目を見張るものがあるが、結局は()()()()()()()で…、……………あぁそうか、()()()()()()だね?』

『その通り。歴史上他に例を見ない――「()()()()()()()」それが「蔵」だ。二百年もの間、ずっと受け継がれ、「商品」を蓄え続ける…もはや生きた倉庫とも言えるだろうな』

 

 ふざけた力だ。

 勿論。誰でも簡単にそれを引き継げる訳ではないのは分かるが、それでもそう吐き捨てざるを得ないだろう。

 血と血の関係性だけでも、ましてや才能だけでもない。

 それ以上に強い、先祖代々の『繋がり』があったからこそ、初代から受け継がれた『蔵』は、現代でも途切れることなく生き続けている。

 どこまでも無私に、ただ『受け継ぐ』為に、生きる一族…

 

『漣家は基本「蔵」を継承すると簡単な結界術は例外として、それ以外の戦闘能力のほとんどを失う。…とされている』

『……随分曖昧な言い方じゃないか』

『悪い、流石にそこらはこっちも把握し切れてないんだ。だが「蔵を継承した当主は戦えない」これは間違いないと思っていいだろう。二百年の歴史の中で、例外が初代当主だけだからな』

『……いや、それだけでも充分だ。本人に戦闘能力がないのなら、想像以上にやりようはある』

『あと、これが最も重要なことだ』

 

 そう最初に言ってから。

 現地の協力者は、瞳の奥に一際、強い光を宿してから。

 

『――「(とう)」の連中には気を付けろ』

 

 

 

 

 意識を過去から、現実に戻したステイルは問う。

 

「…『禁書目録(あの子)』についてはどこまで知ってるのかな?()()()

「……………」

 

 決して言われ慣れた肩書きではないだろう、それを告げられ。

 僅かに一瞬、眉を動かしてから、彼は言った。

 

「なるほど、()()()()()を君たちに渡した人間が、誰の事か分かったよ」

 

 怒っている訳でもなく。

 まるで「仕方がないな」とでも言いたげな、想像以上に軽い呟きだった。

 

「これでも俺は毎日忙しいんだ。市場への介入や個人の取引、後はお客様の声を聞く為に真摯に出向いて感想を聞い…」

「質問に答えろ」

「……つれないねぇ」

 

 怒気を強めた言葉だったが、それに臆することはやはりなく。

 

「頭に十万冊以上の魔術の記憶を秘めた『動く魔法図書館』…だけじゃあ納得しないだろうな」

「……………」

「だが、所詮それらは『原本(オリジン)』ではなく、頭に蓄積されただけの『記憶(コピー)』だ。仮にその全ての魔導知識を手中に収めた所で、()()()()()には遠く及ばないだろうな、超絶者には届くかもだが…」

「っ」

 

 ――情報通りに。

 そして、やはりこちらの()()()()()()()()――

 

「常人なら目を通しただけで廃人が確定する知識。…『魔導書』なんて大層な名前を付けられておきながら、商品としての価値は無に等しく、そして何とも唆られない……まぁ、評価としてはこんな感じか」

 

 魔術師にとって、ある種知識の宝とも表現できるそれを、心底どうでもいいと、そう切り捨てる伯理。

 

「…随分、語るじゃないか」

「言葉を飾るのはやめにしようか、君たちがわざわざ危険を承知の上で、ここに来た目的は嫌でも分かる」

「……………」

 

 長すぎる問答と、未だ明確にしない返答によって、戦意が僅かに揺らいだところで。

 

「君たちの交渉目的とは、()()()()()?」

「――うぅん……?」

 

 ――インデックスが、そこにいた。

 まるで最初から、そこに眠っていたかのように。

 神裂のいるすぐ隣の机、その上で、インデックスが眠っていて、そして目を覚ました。

 

「――っ」

 

 呼吸が、間違いなく止まった。

 ステイルも、神裂も、部屋にいた魔術師の二人は、まるで心臓を直接握りしめられたかのように。

 特に、一番インデックスの近くにいた神裂の反応は顕著なもので。

 音にもならない、呼吸未満の吐息を吐きながら、ゆっくりと手を伸ばし。

 

「あれっ?ここって…?」

「――ッ…」

 

 スゥと、何の感触も存在しない、虚空を指で刺すだけだった。

 神裂の前で起き上がったインデックスは、神裂の指が触れるよりも早く踵を返して。

 部屋の壁の方に向かって歩き出し、そしてそのまま、壁にぶつかることなく()()()()()

 幻影、もしくは虚像に近い何かであろうことが、一瞬で理解できた。

 こちらのことなど何も知らずに、虚像のインデックスは、壁の向こうで笑う。

 

「あ!ゲラコビッツ!」

「ふるるるるる…インデックス?何故ここにいるるる?」

「目が覚めたら知らない空間だったんだよ!」

「…エ〇ァでも見たるる?」

 

 楽しそうだった。

 つい数日前に、ステイルが思わず零したその言葉を、神裂は思い出した。

 行き場を失った手を、未だ引っ込めることができていない神裂とは違って。

 インデックスは、今も楽しそうに、誰かと笑っている。

 

「『下見会(プレビュー)』…これは知らなかったかな?俺の『蔵』に()()してあるものを、現実世界に投影してある」

「……………」

「勿論、禁書目録(インデックス)だけじゃない。我が漣家に所属する約五百の人間…その全てが対象さ」

 

 今度の映像は、部屋全体に及んだ。 

 ステイルたちの視界には、限界なく広がる、無限の真っ黒な空間と、そこにいくつも収納されている『商品』…そしてそれを整備している『人間』がいた。

 

「緊急搬出用扉は例外として、それ以外の部外者がここに干渉するのは不可能。…だからこそ脅しをかけに来たんだろうが、そうはいかない」

 

 ――何故。

 ここまで、ペラペラと喋り続けられるのか。

 何より、今までに一度も、彼が焦る様子を見せていない理由とは。

 それこそが、命を釣り合い(ベットする)に出した自己防衛。

 

「俺が完全に絶命する前に。――()『蔵』にいる人間を…インデックスを必ず道連れにして殺す」

「ッ――!」

「試してみるか?その刀で、魔女を狩る炎で、俺の心臓を止められるか?」

「……………」

「それとも、インデックス諸共やるのか?」

 

 神裂、ステイルの順に視線を向けて、そう問う伯理。

 目に見えて分かる挑発。

 だがステイルは、僅かに煙草を口で揺らしてから言った。

 

「いいや、君はインデックスを傷つけることはできない。ハッタリだ」

「ほう?それは何故かな?」

「君がインデックスを保護しているのは『上条当麻からの依頼』だからだ。そうだろう?お前は競売人で…何より()()()()を重要視する」

「………」

 

 ――それは、実際に当たっている。

 ほう、と僅かに言葉を零した伯理。

 ステイルは、続けてサラリと告げる。

 

「そして、それが弱点でもある。――『学園都市に住む競売人』であるお前が、『禁書目録』が持つ()()()()()()()()()()()。それは僕達『魔術師』との関係を示唆する、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「………」

「君は競売人として、インデックスを害せない。そしてインデックスを匿い続ける限り、君は永遠に、僕達魔術師によって『秘密』を吐露される可能性に怯え続ける」

「………………」

「仮に、そんな風評が広まったとしようか。その時…果たして君は、学園都市で『楽座市』を()()()()()()()()?」

「………………………………」

 

 博打もいい所だ。

 勝算なんて、明確にあるわけじゃない。

 ただ歴史が証明する、漣家が見せる『楽座市』の執念。それにステイルは賭けた。

 たった一つ。

 たった一つ、かつては親友だった少女と、己に誓った覚悟とも言える信念の下。

 『時間制限(タイムリミット)』が来るよりも前に、インデックスを回収する道を、彼は選んだ。

 

「…なるほど、それ(楽座市)を取引に出されると、こっちもかなり困ったことになるな」

「随分遠回りしたが、もう一度答えを聞こうか?」

「そうだな…なら俺に危害を加える度に、『蔵』にいる適当な従業員を絞め殺すというのはどうだ?」

「………………おいおい、今更価値のない人質作戦かい?随分甘く見られたものだ」

「少なくとも、お前たちは無関係の人間の命を賭けられる人間じゃない。そう()()()()()()()こそだよ」

「――くどい」

 

 いつの間にか、剥き出しになっていた巨大な刀身。

 約二メートルはあるそれを、軽々と手に持つ神裂と、そして席から立ちあがったステイルは、最後の選択を迫る。

 

 これ以上の時間稼ぎは不要だろう。

 

 ステイルと神裂、そして伯理がこの会話を初めてから、もう――

 

()()()()()()()()()()()()()()()?」

「………………」

「君が『蔵』を使って、『何か』を呼ぶよりも先に、こっちが動く。それにお前にはもう、戦闘能力がないことも分かっている」

「………………………………」

「またくだらない話をするって言うなら、まず先に舌を…」

 

 

 

 

 ――十分経ったのだから。

 

 

 

 

「当主。コーヒーができたぞ」

 

 ガチャ、と。

 まるでそれまでの、緊迫した空気なんて知らないように、平然とした態度でドアを開けて、入って来た少女。

 ステイルと神裂は、一瞬だけ、その『異常』に視線を、意識を向ける。

 その一瞬で、既に印は組み終えた。

 

「――ナイスタイミングだ、ユミツ」

 

 両手を使い、結んだ印に力を注ぐ。

 

 ――二種類。

 

 『蔵』ともう一つ、漣家に伝わる『異能』の象徴が、吹き込まれた命を芽吹かせる。

 たった一つしか宿すことのできない筈の、漣家の能力。

 長い二百年の歴史の中で、二つの能力を宿すことができたのは、初代のみ。

 歴史の中の、異類の存在。

 

 世代を超えた、()()()()()()()

 

 『蔵』だけではない。

 漣伯理の身体(なか)には、二つの『異能』が眠っている――

 

「――威葬」

 

 衝撃を生み、司る。

 たったそれだけ、そしてシンプルながら、今この瞬間において、窮地を脱する会心の一手。

 濃縮された『玄力』が、そのまま大気を揺るがし、衝撃波となって、聖人である神裂の身体を遠くに飛ばす。

 家屋の壁が空中で分解される。

 その光景は、それは本来決して人に向けてはならない、破壊エネルギーそのものであるということを暗に告げていた。

 

「――ッしま…」

 

 しかし、神裂にダメージはない。

 聖人の肉体は、この程度の衝撃など簡単に耐えられる。

 だが一番の問題は――彼に()()()()()()()()()こと。

 

「攻守交替だ」

 

 神裂が距離を離してしまったことで、それを止められる者は誰もいない。

 虚空に浮かぶ、黒い気泡のような反応。

 それが始まり、終わるのは、ステイルが動くよりも早い一瞬であった。

 

 最も危険で、そして避けるべき事態――『蔵』の発動。

 

 そこから、既に『登録』を済ませた、彼の抱える最高戦力たちが集う。

 

 眼帯をつけた、上半身裸の弓使いの男。

 軍服を思わせる衣装と、巨大な鎌を手にする少女。

 自身の身長を超える、巨大な槍を携えた少女。

 

 己の最高戦力である()()を呼び寄せ。

 漣家が誇る特殊部隊『(とう)』を、背後に配置する『カッコつけ』に成功した伯理は得意げに。

 

「勝手に家に上がったんだ、土産くら…」

 

 バッと振り返って、フリーズ。

 一、二…と、指を使って丁寧に数え。

 再びもう一度、一つ…二つと数えて、フリーズ。

 

 四人呼んだ筈なのに、何回見直しても()()しかいない。

 

 その現実を受け入れられず、頬をひくつかせて。

 

「おい…ギンコはどこだ?ドライバーの方じゃないぞ、濤の方のギンコだ。…どこだ?あいつはどこだ…?」

 

 衝撃のあまり『漣家当主』の口調を忘れた伯理の問いに、槍を携えた少女が答えた。

 

「体調不良です!」

「違うっすよ、あの人また勝手に修行しに行っちゃったっす」

「説明ご苦労です天弓くん。…はぁ…だからって()()()()しますかねぇ…なんというか……」

 

 槍を携えた少女の言葉を、天弓と呼ばれた男が否定する。

 鎌を手に持つ少女…柊シノアもまた、今ここに何故かいない、"月侍"のことを思い、ため息を吐き。

 伯理もまた、目に見えるように落ち込み。

 

「…コーヒーいるか?」

「いる!」

 

 いつの間にか隣に立っていた秘書、ユミツから淹れたてのコーヒーを貰い。

 やけ酒の要領で、それをぐいっと勢いよく飲み干した。

 唯一、置いてけぼりなのはステイル。

 

「…………一体何を見せられているのかな」

 

 誰も、それには答えなかった。




 幻想槍
濤に所属している少女。
持っている武器がこれまた他メンバーの例に埋もれず厄介なものなので、普段持ってるのは特殊能力のないプレーンの槍。
それでも強い。しかしいつかは自分の武器を思いっきり振るいたいと思っている。
見た目はストライク・ザ・ブラッドの姫柊雪菜。

 月侍
かつて外国の紛争地域を巡っていた少女。
腕を見込まれ濤にスカウトはされたものの、あまりにも仕事をしないので、当主からは最近ネタ抜きにクビを考えられている。
なお、本人はまだそれを知らない。
見た目は異世界サムライの月鍔ギンコ。

上条さんの記憶はどうなる?

  • 答え①ヒーローの上条は突如記憶が甦る
  • 答え②仲間がきて光の羽から助けてくれる
  • 答え③忘れたまま。現実は非情である。
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