ツンツン頭さんを守護りたいスレ【滞空回線は糞】 作:原石うじゃうじゃ
唯一にして、最大の切り札であった取引。
魔術と科学の摩擦。それを焚きつけ、市場の存続の為に、『禁書目録』を手放させる。
魔神誕生のプロセス、何より『
歴史が証明する、『楽座市のためなら』という漣の無私の精神。――それに賭けたつもりだった。
漣家の『当主』が、『上条当麻からの願い』と『楽座市』を天秤にかけ、『楽座市』を切り捨てる等
本来ならば成功したのであろうステイルの持ちかけた取引は、
こうなればもう、インデックスを取り返すことは叶わない。
ルーンを刻んだコピー用紙による魔術、聖人の身体能力で振るう武器。
それらがもはや、今この場において、インデックスを取り返す為には何の役にも立たないことを、二人は既に理解している。
神裂とステイルが、抵抗をせずにじっとしているのは、それが理由であった。
「僕達が所属する組織の名は
それでも、ステイルたちの目は死んでいなかった。
その視線は、騒音を聞きつけて自室から飛び出して来た上条に向けられており、ステイルは彼と、数日振りに邂逅を果たした。
かつては上条ではなく、自分がインデックスの隣にいた。
昔の自分たちの立ち位置に、現在居座っている彼に、思うところがないわけではない。
だがそれでも――
「言ったろう。『完全記憶能力』…それによって、インデックスの脳内には十万冊を超える魔導書の知識が蓄積されている。そしてそれのせいで、脳の約八十五%が圧迫されているのさ」
「………」
だからこそ、これは最後の悪足搔きだった。
この場において、インデックスに関する、絶対的な決定権を持つ男が彼だから。
インデックスを思い、そして助けたいと真摯に思える『善人』である彼の、その心に訴える。
ただ助けたい。ステイルはたったそれだけの為に、たとえ往生際が悪いとも、情けないと後ろ指をさされようとも厭わない。
上条当麻に宿る『善意』に、賭けることにした。
「彼女には、一年より前の記憶がない。正確には消したんだ、そうしないと脳がパンクするからね」
「………」
「たとえ十万を超える魔導書の知識があろうとも、彼女は"人間"なんだ。その
「…」
「その上、彼女には『完全記憶能力』がある。街路樹の葉っぱの数、ラッシュアワーで溢れる一人一人の顔、空から降ってくる雨粒の一滴一滴、その形まで…決して忘れる事ができない」
「――…」
――奇想天外ばかりが目の前にあった。
禁書目録と名乗る少女、どう見ても神父とは呼べない風貌をした、魔術師の少年とそれからの逃亡。
上条当麻の住む世界が、変わったことは確かだった。
学園都市の当たり前が通用しない、全く別の法則の数々
ベランダでの出会いをきっかけに、上条の身の周りにそれまであった『
予約開始約八分で、初回コンサートのチケットを完売させた伝説的アイドルや、どこからどう見てもオカルトに肩まで浸かった神器。
あらゆる魑魅魍魎を目に、それまでに形成されてきた『常識』を悉く破壊され、もはや何が正しくて、どれが本来あるべきモノかも、すっかりと分からなくなってしまった。
「残る十五%しか脳を使えない彼女にとって、自分で忘れる事ができない『完全記憶能力』は致命的なんだ。だから誰かの手を借りて、定期的に記憶を消さないといけない」
だが。
だからこそ余計に。
「僕達が絆を結んだ彼女はもういない。それでも、インデックスをこのまま死なせたくない」
「お前……」
「頼む。君も彼女を思うのなら、僕達に――」
上条は、信じられないような顔をして。
「
目の前の男に、思わずそう問うた。
「『完全記憶能力』で脳がパンクする…?そんなのある筈がねぇだろ」
「――ッだが実際に彼女は」
「そもそも、人間の脳はそんなに不便なモンじゃねぇんだよ。お前は魔術師だから、脳医学の方は詳しくねぇのかもしれねぇけど…」
人間の脳とは、元々百四十年分の記憶が可能とされている。
そして、人間にとって『記憶』とは、決して一つに括れるような代物では決してないのだ。
『意味記憶』『手続記憶』『エピソード記憶』と、大雑把にあげるだけでも三つは存在する。
漫画やアニメのフィクションで、頭を打って記憶喪失になったりする場面がいい例だ。
それまでの思い出が消えたとしても、その人間はいきなり赤ちゃん言葉になったり、箸の使い方を忘れたりはしない。
では、インデックスの記憶喪失はどうだ?
インデックスは一年より前の記憶が存在しない、これはつまり『エピソード記憶の喪失』に分類される。
そしてステイルが言ったのは『魔導書の知識に圧迫され、彼女の脳はパンクする』だ。
その上で問おう。たとえ読んだ人間を廃人にする忌み物であろうとも、それは所詮知識の一つに過ぎず、『魔導書を読んで増えるのは意味記憶』に過ぎない。
――記憶を入れる容器がそもそも違うのに、
「お前は知らないかもしれないけど。俺の副担任の…阿求先生だってな、インデックスと同じ『完全記憶能力』を持ってるんだぜ?」
「…ッ!?あの屋敷の――!」
「それに、脳の十五%で一年しか生きられない?阿求先生はもう二十歳超えてるんだぞ?お前の考えが正しいなら、あの人もインデックスも、六~七歳でもう死んでるってことになるじゃねぇか」
「…」
「それに、俺は魔術なんて一ミリも詳しくねぇからアレだけどさ。魔導書知識って全部で十万冊以上もあるんだろ?」
「
「――――」
それはステイルだけでなく、上条の後方に立っていた、神裂もそうであった。
「し、かし…実際、彼女は…あんなに、苦」
「――神裂」
動揺する神裂とは違って。
ステイルはゾッとする程に冷静な声で、言った。
「たとえ魔導書の侵食を防ぐため、防壁を貼ることはあったとしても、あくまでも魔導書は『書物』に過ぎない」
「――」
「精神の破壊や肉体の破壊は、その知識を手に入れる『副作用』に近いものだ。魔導書を『読む』ことはあくまでも、科学も魔術も関係のない、当たり前の範疇の行動」
「――――」
「人間の脳、その記憶容量を過剰に食い潰す魔術は、あるにはある。――でも、それが普通の書物に仕込むならまだしも…『魔導書』にまで仕込めるとは思えないね」
「――――――」
「おそらく後付けで、彼女の肉体に『首輪』を刻んだんだろう。少なくとも、それができる者は…」
「じゃあ、何で――」
何の為に。
「今まで、私たちは、なんて………」
「………………」
己の無知と情けなさを、どれだけ恨んでも割に合わない。
一体今まで、何度彼女を苦しめ、そして別れを経験し、無意味な時を過ごして来たのか。
何より、インデックスにそのような細工をできる者など、ステイルの知る限り、あの女しかいない。
「…クソ」
――まるで道化ではないか。
奥歯が砕けそうな程、ステイルは強く歯を食いしばる。
呆然と意気消沈する二人を前に、上条は問う。
「伯理、インデックスは…」
その問いに、伯理は亜空間の『蔵』に意識を向け。
当然、その答えも決まっていた。
「安心しろ、今は『蔵』の中を元気に走り回ってる」
「そっか、じゃあこっちに
「…手があるんだな?」
「あぁ」
上条は答えた。
「阿求先生の家で一緒に飯を食った時にさ、一瞬インデックスの口の中に、
「――ッ、なんだって?」
「今まで謎だったけど、やっと答えが分かった。さっきステイルが言ってたろ?あいつの身体に『首輪』が刻まれてるってな、もしかしたら…」
「……可能性は高い。超能力に魔術、どの分野であろうと、脳に近い場所に『起点』を作るのは共通するからな」
「なら、答えは一つだろ?」
袖をまくって、己の右腕を見せつけるように。
「
「――分かった、しかし」
確かに『
それは間違いない、しかし
確認するように、続ける。
「だがよく考えろ…インデックスの脳内には十万以上の魔導書があるんだ。管理という名目で、周期的な記憶の破壊を強要する…そんな奴が、みすみす簡単に破壊されてくれる代物を使うとは考えにくい。間違いなく、何らかの反動が来る筈だと思わないか?」
「それは……そうだな」
「それに、
「おう、それじゃあインデックスも――」
「…待て」
思わず、ステイルは声を上げた。
目の前で、まるでこれから一仕事…なんて感覚で、いそいそと準備を始める彼らに向けて。
「君は、自分で何を言っているのか分かってるのか?」
記憶を消せる、
勿論、ある程度オカルトに入れ込んでいる漣家とは違って、上条当麻という人間には、そんな事情は知ったことではないだろう。
猶予があるから、待つことなんてできないから…といった反応からではない。
「俺の右手は、神様の奇跡だって殺せるんだ」
この力があれば。
思えば、このような時をずっと待っていたかのような、そんな気すらするのだ。
異能であるなら、それらは全て消せると豪語しておきながら、不良からは逃げるしかなく、同年代の女子からモテることもない。
しかしそんな、役立たずだと
己の手で、殺せるのだ。
「だから、俺――」
「――――」
ステイルは、何も言わなかった。
ただその目を見開き、最初にインデックスの『完全記憶能力』に関する嘘を、突きつけられた時以上の、衝撃。
じっと、静かに上条の。
「……………」
――その背後に立っていた、インデックスを見た。
「イン、デックス…?」
神裂は、今更どんな顔をして会えばいいのか、とか。
久しぶりに、たとえ覚えていなくとも、あなたに会えて…なんて。
聖人の肉体が、そして他ならぬ、インデックスとかつて絆を深めた『経験』が、目の前の異常を認識する。
「――馬鹿な」
次に、口を動かしたのは伯理。
その言葉を言い終えた瞬間、彼の鼻と口から、まるで噴水のように、赤黒い血液が垂れ流される。
絶対的な優位性を誇る亜空間『蔵』で、彼はずっと目を凝らし続けてきた。
他愛のない会話を続けていた時も、四六時中ずっと、
だが、
「
今起こしてはいけないものだと、充分過ぎる程に理解していたから。
「クソッ…!」
だからこそ、伯理は鮮血を吐きながら、『自動書記』の奥に潜むモノを睨む。
左目の仮面には、ヒビが走り。
そして、脳に直接スタンガンを打ち込まれたかのような、あまりにも重すぎる頭痛が、彼を襲った。
――おそらく、『蔵』に入った時から、
これでは『威葬』はおろか、『蔵』の転移もまともに使えない。
まるで
インデックスの異変、それの原因はおそらく一つ。
「俺は、
――彼らの目を盗み、『蔵』の中で牙を研いでいたのだ。
『さぁどう出る。"
大聖堂の奥で、悪魔は笑った。
1936:名無しの転生者
待て待て待て!!??
俺らが長話してる間に何が起こった!?簡潔に説明しろ!?
1937:名無しの転生者
ドラゴンブレスが…!
ちょい待て待て、あの『羽』のこともあるから、首輪を破壊するのは屋外って流れだったよな!?
1938:名無しの転生者
やっべぇぞ…漣家の家屋が破壊されてる
これじゃあワンチャン『羽』が…
1939:名無しの転生者
マジで何があった?早く説明してくれ
1940:ボトル
すまん!当主は今『蔵』で上条のサポートをしてるから話せん!
今でもかなり無茶をしてる!下手をしたら脳の神経が焼き切れるっていうのに…!
1941:名無しの転生者
小瓶ちゃん…!
1942:名無しの転生者
待て、てかまだペンデックスの首輪に触れてねぇだろ!?なんで今起動してんだ…!?
1943:豆博士
…完全にやられたるる
遠隔操作の危険性自体は、既に伯理と共有してたるるが…
どうやらあの悪魔は、こっちの予想を完全に超えてきたみたいるる
まさか最初から、既に遠隔操作を施していたとはるる…!
1944:名無しの転生者
…!遠隔制御霊装か!フィアンマが使ってた!
1945:名無しの転生者
待て待て待て
『蔵』が突破されたってのはどういうこった!?まさか『玄力』を…
1946:名無しの転生者
いや、伯理の『蔵』を突破するのは実はそう難しいことじゃない
原作カグラバチでも、妖刀勾罪と剣聖による人格への干渉によって、京羅の『蔵』は崩壊してたしな
ペンデックスの持つ魔力質量を利用すれば、そんな小細工なくとも簡単に『蔵』のキャパオーバーを引き起こして脱出できるんだろう
1947:名無しの転生者
どうすんだよ…!?本当なら対自動書記の為に何人か転生者集める予定じゃなかったのか…!?
1948:ボトル
「ッらぁあああああ!!!!」
「第三章第二節。Index-Librorum-Prohibitorum──禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の貫通を確認。再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能――」
――ッ!よし!『幻想殺し』がまずは一回当たった!
1949:名無しの転生者
クッソ!本来の流れでペンデックス降臨ならこれでゲームセットだったのに…
1950:名無しの転生者
赤い魔法陣に触れたらオッケーじゃねぇのかよ…!まさか層みたいになって『幻想殺し』を中和してんのか…!?
1951:ボトル
当主の限界も近い…!
これ以上無理をすると本当に不味いぞ…!
1952:名無しの転生者
ここで『蔵』を失うのはあまりにも損失がデカい…
1953:座高鎌
あぁクソ――!
こうなりゃもうヤケクソですよ!しーちゃんをフルスペックで使います!
1954:幻想槍
――こっちも『雪霞狼』解禁です、魔術ならむしろ好都合…!
1955:ボトル
どうせこのままだとジリ貧
短期決戦だ、私も赫子を使うぞ
1956:名無しの転生者
四鎌童子に雪霞狼…これなら…!
1957:名無しの転生者
てか伯理の方は?蔵は大丈夫か?
1958:豆博士
こっちはまだセーフるる
ペンデックス…いや、遠隔で、それもインデックス越しとはいえあのコロンゾンが直々に組み上げた即席の魔術るる
術者の精神以外ではほとんど影響の出ない筈の『蔵』も、流石に無傷とはいかなかったるるが…時間さえあれば復元自体はできるるる
1959:名無しの転生者
良かった…!
1960:名無しの転生者
コロンゾンって誰!?
いやそれより!今どう!?行ける!?
1961:座高鎌
あーっもう!しーちゃんの感知がキモイことになってます!避けるのが思ったよりキツイ…!
1962:眼球弓
俺は何も出来ないから非戦闘員の避難を徹底するっス
1963:名無しの転生者
地獄絵図…!なんだよこの弾幕…!?
1964:名無しの転生者
まだ死んでないのが奇跡…!でもいつまで続くか…!
1965:名無しの転生者
おい!新しい戦力をそっちに送れないのか!
1966:名無しの転生者
無理だ、さっきから伯理はかなり無茶をしてる
威葬で
1967:名無しの転生者
こんな状態で蔵なんて使ってみろ、間違いなく脳味噌が逝っちまう
1968:名無しの転生者
…ペンデックスを相手にできて、しかも近くにいる戦力は――
クソッ、絶対に間に合わない距離だ…
1969:名無しの転生者
ワープ系の移動手段を全部『蔵』に任せたツケか…!
1970:名無しの転生者
ヤバい押され始めた…!
1971:名無しの転生者
不味い不味い…!
1972:市場男
いや…大丈夫だ
向こうがこっちの動きに合わせて能力を変えるなら…
1973:名無しの転生者
……おい待て
1974:名無しの転生者
アンタ何をする気だ?まさか…!
1975:市場男
…こっちも『同じやつ』を呼ぶだけだ
次回禁書目録編が完結。そしてとうとう幻想御手編が開始です。
多分今までの倍は他作品キャラが出ると思います。
上条さんの記憶はどうなる?
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答え①ヒーローの上条は突如記憶が甦る
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答え②仲間がきて光の羽から助けてくれる
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答え③忘れたまま。現実は非情である。