ツンツン頭さんを守護りたいスレ【滞空回線は糞】 作:原石うじゃうじゃ
…絶対分かった人いないだろうなぁ。
【日常】科学の街
『学園都市』。
東京都西部を切り拓いて作られたこの都市では、"超能力開発"が学校のカリキュラムに組み込まれており。
二百三十万の人口の、実に八割を占める学生たちが、日々『頭の開発』に取り組んでいる――
七月十六日。
人口の八割が学生…ではあるものの。
その中の一定数は、かつては御伽噺や机上の空論に過ぎないとされた『超能力』に目覚めた人間。
つまり、個人の括りには決して収まり切らない脅威を体現している為、日々力に溺れた者の強盗擬きや、更にはカツアゲと称される非行。
人間をモルモットとしか思っていない非人道的な実験云々も、所詮は表に出てこないだけで、この場所では数え切れない程それが行われている事実。
ハッキリ言って治安は悪い、それが『学園都市』である。
「はうっ」
「『
昼の路地裏で、大柄な男がたった一人の少女に拘束されている。
腕を捩じられ、組み伏せられ、文字通り赤子の手をひねるかの如き手慣れた動きである。
『盾』をモチーフにした緑色の腕章、それは少女の所属する組織を証明する。
学園都市における学生で構成された治安維持組織、『
少女にとって、有象無象に過ぎない不良の対処など、仮に能力を所持していなかったとしても、簡単なことだった。
自分より年下の女に、いいようにされている。
改めて言葉にすると、とてつもなく屈辱的なそれに、不良は声を荒げ。
「畜生!殺ってやるぜ、『
「おとなしく観念してくださいな」
「生きていくのが嫌になるくらい痛い思いをさせてやる!」
『
「…さもないと腕をヘシ折りますわよ?」
「人間やめたくなるくらい苦しい思いをさせてやる!」
「どこの野蛮人ですの?」
あまりにも品のない言葉の数々に、思わずつっこんでしまう。
が、彼女の目的は別にあり、「路地裏に女子が連れ込まれた」という通報もあり、ここで必要以上に時間を使うわけにはいかない。
「さてっと」
今も尚暴れ続ける不良に手錠をかけた後、白井は路地裏の奥に向かって。
「そちらの方ー?大丈夫ですかー?」
少し間延びした言葉なのは、通報元となった少女が五体満足で、元気そうに立っているのが分かったから。
丁度ビルの影が重なって、首から上が隠れてよく見えないものの、大事にはなっていないことに、ひとまずの安心を覚え。
「『
「あへ…あへ………」
女子が一人、そこに立っていた。
灰色のプリーツスカートに半袖のブラウスにサマーセーターという、何の変哲もない中学生の少女。
その少女の足元に、六~七人ほどの不良と称される、顔つきの悪い男たちが、まるで『焼かれた』ように全身からぷすぷすと煙を上げ、倒れていた。
あ!と、目前の少女は声を上げる。
「黒子?」
「…………通報にあった路地裏に連れ込まれた女性というのは…お姉様のことでしたの…?」
御坂美琴、またの名を『
学園都市の頂点に君臨する七人の
『
改めて念を押すが、学園都市は治安が悪い。
外を歩けば不良は当たり前、二日に一度はコンビニ強盗から銀行強盗、力を持て余すが故の蛮行が数多く起こる。
だからこそ、目には目を…とまでは行かぬものの、同じ視線と立場に立てる、子供で構成される『
そんな子供ではどうしても届かない、力の足りない場合における代わりとして、大人で構成された『
そこに所属していない限り、例え二百三十万の中から、たった七人しかいない
『
「全く!学園都市の治安維持は
「とは言ってもねぇ…」
白井黒子にとって、御坂美琴とは普段の彼女への過激なアプローチからも分かる通り、特別な感情を抱いている対象である。
それは憧憬であり、欲情であり、そして明確な好意。
しかし、たとえ普段のアプローチが過激であろうと、彼女の『芯』とも呼ぶべきものは、間違いなくヒーローであり。
黒子が美琴に向ける言葉には、普段のおふざけは一切ない、一組織の人間としての軽い警告のようなものでもあった。
「仕方ないじゃない。
「…権限のない学生が暴れると睨まれますわよ?」
「なら、ああいう不良
「はぁ…」
困ったような顔をして、白井は言葉を区切った。
「しっかし『学園都市』ってのも名前負けしてると思わない?」
「え?」
美琴が視線を向ける先では、未成年の癖に一丁前に煙草を口に咥えている先ほどとは別の不良。
それが、新型の二足歩行型警備ロボに注意されていた。
不良の抵抗は一瞬で。
「学園都市内ハ終日全面禁煙ヤンケシバクヤンケ」
「は?んだこの――」
「シャアッ」
ドゴッ!と、超音速のパンチによる風圧が炸裂し、不良は壁まで吹っ飛び衝撃で失神KOされた。
あんなフィクションでよく見るシンプルな見た目のロボットの癖に、パンチ力はしれっと3トンもあるのだが…彼らは全員特注の『手加減』プログラムが施されているので心配はない。
「…街中にセキュリティつけて、それにトンチキロボットまでいるってのに、あの手の原始人が絶滅しないんだもの」
もはや当たり前のその光景に、美琴はすぐに興味を失って、そのまま歩きながら言う。
科学技術の最先端が詰まった実験都市。間違いなく人類史の一ページに名を刻むそんな場所で、こうも前時代的な異端者が数多く存在する。
そのことに呆れしか出ない。そんな意見を白井も肯定し。
「どれだけ科学が発展しても、罪を犯す人間は出てきますわ。――だから『
「…黒子」
「だ!か!ら!治安維持活動はわたくし達に任せてくれればいいんですの!」
「とは言われてもねぇ…自分で
白井は頭を抑えた。
「いくらお姉様が
「あーこのクレープ美味しそー」
「話を逸らす際のテンプレートをまんまなぞらないでくださいまし!」
白井の小言もどこ吹く風な美琴。
彼女の興味は既に、『
「いらっしゃい」
純白のコックコートに、同じく純白のコック帽。
いかにも『パティシエ』といった見た目の男性が、笑顔で美琴を歓迎する。
「ん?その制服、嬢ちゃん常盤台か!しかも…」
「そうよ、サービスでもしてくれる?」
「はっはっは!強気だなァ嬢ちゃん!気に入った!だが…生憎俺は相手が常盤台だろうと『
「あら、おじさん分かってるじゃない」
珍しい。自分をレベル5と知った上での、この反応は新しいと美琴は思った。
近くに白井がいることも忘れ、クレープ生地が鉄板の上で円形に延びていくのをじっと眺める。
クレープの制作。それは見ているだけで食欲を唆るし、何より生地が熱され、クレープ生地独特のあの香りがまた良い。
何よりこうして、視覚と嗅覚両方で食欲を刺激するのだから、見なければ損というものだろう。
常盤台のエリート、学園都市の頂点の選ばれし七人の一人、なんて肩書に似合わず、美琴は割と俗っぽいのである。
「黒子は?どれにする?」
「わ、わたくしは
嘘だ。
本当は年頃の女の子らしく、体型を気にして我慢しているだけで。
「あーダイエット?」
が、そんなことを特に気にしない美琴が、ズバッと切り込んでくる。
「別に必要ないんじゃない?」
「その油断が怖いんですのよ…」
「えー勿体ない、このクレープ美味しそうなのに。ほらほら?」
「あーっ!やめてくださいまし!わたくしが目と耳を塞いでからお召し上が…」
美琴のクレープから逃げるように、身体をくねくねと動かしていた白井が止まる。
美琴がその異変に声をあげるよりも前に、白井は恐る恐る、指を店員の名札に向けて。
「よし、吉田…パティ…シエ…??」
「?おうそうだけ――」
「――ッ!わたくしにもおひとつ!!お姉様のと同じのをッ!!」
「え、どうしたの急に」
先ほどまでの態度が一変し、目を突如として輝かせた白井に、美琴は思わず圧倒された。
「ま、まさかこんな恵まれた機会が訪れようとは…!今日の出店はここの学区でしたのね…!」
「はっはっは!こっちこそ、まさか今日初めての客があの『
「本当にラッキーでしたわ…!まだ周りは気づいていないようですし…」
一人、置いてけぼりの美琴。
「…有名なの?」
「当然ッ!『ベスト・オブ・ザ・イヤー・パティシエ』は勿論、他にも数多くの賞を受賞した学園都市が誇る有名なパティシエですのよ!その日によって店を開く学区がランダムなのと、あっという間に客が集まる人気っぷりもあって、こうして一番乗りで食べられるなんて一体どれ程の――」
「へ~…」
新しくクレープを作り始めた吉田を他所に、興奮冷めやらぬままの白井。
美琴はそれを聞き流しながら、既に手に持っているクレープを口に運び、そして納得する。
なるほど、これは確かに美味しい。
料理とは科学。なんて言葉があるように。
学園都市で発展する科学は、機械工学や生物学に限らず、人間の味覚にフォーカスを当てたものだって存在する。
人間の平均値として感じる『美味しい』という感覚をデータに、もはやサプリメントとそう変わらない、成分の一つ一つまでこだわった代物。
これは、そんな『小細工』を一蹴する、積み重ねられた経験を基にした食の芸術なのだろう。
「確かに美味しいわね」
「パティシエ冥利に尽きるな」
立派な髭を揺らしながら、彼は笑った。
新しく作り終えたクレープを白井に渡しながら、視線を街路に向け。
「にしても、この街はやんちゃな子供が多いな」
「え?……って、あぁ…また能力者騒ぎ…」
「どうせすぐ捕まるってのに、よくまぁ暴れるもんだわな」
美琴は最初、彼が言っていることが何のことか分からなかったものの、振り返った次の瞬間には、その発言の真意を理解した。
もはや今日だけでも、何人見たか分からない能力者の暴走。それがあっという間に鎮圧され、先ほど暴れていたであろう能力者の少年たちが連行されているのが見える。
それが『刀』をモチーフにした赤い腕章と、まるで『
『
(私としては
実際、彼らのおかげで学園都市の治安は大分マシにはなっている。
美琴はレベル5として、有象無象など取るに足らない、隔絶した戦闘力を持っているからそう思えると、そう自覚自体はしている。
能力者の暴走を抜きにしても。不良の多くは無能力者が多いが、いくら無能力とはいえ、不良たちの数の暴力は恐ろしいし、精々がレベル1~2が一般的な学園都市の学生にとって、数の暴力というシンプルな脅威は決して侮れない。
どうしても、事件に対して遅れてからの対応が当たり前の『
両者の事件解決速度には違いがあり、そして一般人からの評判は、当然――
「やっぱりとんでもないとこよね、
「うんうん…」
美琴の零した言葉に、吉田は力強く頷いた。
ボナパティ
クレープ、パフェ、大福、ケーキ、マカロンから大福に至るまで。
あらゆるスイーツ製作はお手の物な転生者、ゲリラ的に様々な学区で露店を展開する為、希少性やら味のクオリティやらで客の倍率はえげつない。
コテハンの元ネタはフランス語の「ボナペティ(召し上がれ)」と「パティシエ」をかけたもの。
見た目は転生したらスライムだった件の吉田薫。
上条「死ぬっ」
告別式「やるっ」
作者「えっ」
どうせ復活するとはいえ(無慈悲)どんな展開になるんですかね最新刊。