ツンツン頭さんを守護りたいスレ【滞空回線は糞】 作:原石うじゃうじゃ
ステイルと名乗った魔術師から見事に逃げ切って見せた上条は、藁にも縋る思いでその場所に辿り着いた。
詳しい事情も、『魔術』のまの字も知らないであろう教師。一見すれば、そんな危険に彼女を巻き込んでしまいそうに思えるだろう。
だが、上条は以前から、この家に尋常じゃない戦力の警備員が複数いることを既に知っていた。
その為脳内の天秤はいとも簡単に、この巨大な屋敷を訪れることを選んでいた。
目の前の門を守るように立っている、二人の男も例外ではなく。
以前彼女から聞いた、これでも弱い方だという言葉が、今でも少し信じられない。
「稗田家の門番ライガ!!」
「同じくフウガ!!」
「…………」
インデックスが目を見開いている。
『禁書目録』だとか、『魔術師』とか『魔導書』とか、未だに信じられない非常識ばかりが目立っていたが。
やはりこういった面を見ると、インデックスはその辺のと変わらない、ただの人間の子供なのだろう。
二メートル…いや、下手をすれば三メートルはあるであろう巨大な肉体を持つ、二人の双子の門番。
常人の規模から逸した、凄まじい発達具合の筋肉により、ジーンズがパツパツに引っ張られており、更に上半身は裸。
強い。ただただ視覚で訴えてくる、原始時代、まだ男という生き物が優劣を決めていた、たった一つの競合競技である、筋肉。
街を歩けば二度見では済まず、不良は勿論アンチスキルですら尻尾を巻いて逃げ出す彼らは、静かに門の前に立つ、上条たちのことを見つめていた。
突如やって来た上条は勿論、まだ面識がないであろうインデックスやネロを見ても、警戒心を見せることはなく。
ただ、道を譲るように立って一言。
「上条!詮索はせん…だがお前は決して、無意味なことはしないと俺は知っている」
「行け、門は既に開いてある」
「――ッ恩に着る!」
上条は礼を言いながら、前にある巨大な門を潜り、そして屋敷の敷地内に足を踏み入れる。
近くにあるインターホンを押すとすぐ、副担任の「いますよー」という声が聞こえたが、それが聞こえるよりも先に、上条は既に敷地内に侵入していた。
今までに何度か訪れたとはいえ、それでもやはり、辺り一帯に広がる、学園都市の中にあるとは思えない光景に、静かな違和感を上条は覚えた。
ステイル、そう名乗った男と対峙した時の、常識の『外』から来たモノを見たような、怖気が走る感覚とは違う。
まるで、そう例えば――まるで
「わぁ…!」
インデックスが、声を上げて感嘆していた。
先ほどまで、凄まじい存在感と圧を放っていた門番に動揺していた姿はどこにもなく。
今度は、キラキラと目を輝かせて、まるで遊園地に遊びに来た子供のように、可愛らしい反応を見せる。
右へ左へと忙しく視線を向け、楽しそうにしているインデックスの背中を見つめながら、上条は以前授業で学んだ、歴史のことを思い出していた。
――平安時代の貴族は、広大な敷地の中に何個かの家屋を建て、用途ごとに使い分けていたという。
隅々まで手が行き届いた庭園。更には整然と並ぶ、街の一軒家と比べても遜色ない家屋の群れ。
使用人に貸し与えたり、時にここに『教え子』が泊まりに来ることも、既に上条は知っている。
知ってはいるものの、上条はやはりこうしてここを訪れる度に、この場所が庭であることを忘れて、一つの町だと錯覚しそうになってしまう。
屋敷の隅々、そして庭を歩いている時に、すれ違う稗田家の警備員もまた、初見のインデックスやネロを相手にしても、顔色一つ変える事なく、ぺこりとお辞儀をするだけ。
『完全記憶能力』、そしてそれによって蓄積された『魔導書』。
インデックスの身に隠されたいくつもの秘密。それを抜きにして見れば、この少女はただの、銀髪の珍しい女の子の一人だ。
とうとう好奇心を抑えきれずに、視線だけを動かしていたインデックスは、今度は身体の方を右へ、左へと動かして目を輝かせる。
それを視界の隅で捕らえ、再び前方に視線を戻すと。
「お久しぶりです、当麻くん」
目の前に、一人の女性が立っていた。
物音は勿論、気配の前兆とも呼ぶべき、『匂い』や『気配』といった、明確に表すことはできない、人を察知する何か。
それらを一切遮断した、"静"の動きのまま、目の前の女性は、やはり足音を立てることなく。
上条に一歩、近づいて。
「それに、晶くんも」
そう付け加え、上条の背後に立っていた赤尾の方を見た。
そして再び視線を動かして、俗に『日本庭園』と呼ばれる光景に夢中な、インデックスの方を見る。
「彼女は?」
インデックスは振り返って答えた。
「インデックス。魔法名ならDedicatus545なんだよ?」
「なるほど、Dedicatus545さんね」
「いやそっちで呼ぶのかよ」
「冗談よ」
上条のいやいや…といった反応に、表情筋を一つも変えることなく、そう返した。
再び、変わらぬ無表情のまま。
「シノビジョークよ」
「……………」
反応に困る上条。
唯一、そのシノビジョークなるものに、真面目に反応を返したのは赤尾だった。
「あの……
「なんでしょう?」
「…案内、お願いします」
「分かったわ」
くるりと方向転換をし、赤尾の言葉を皮切りに、先ほどまでのやり取りは一切なかったかのように、てくてくと歩き出した。
交友関係を広くしたくて、最近はよくこういったジョーク(?)をよく口にするようになったらしいが、正直その行動がいい方向に働いているとは思えない。
この屋敷に専属している。という行動範囲の狭さも相まって、もしや彼女の冗談の才能は、一生このままなのではないだろうか?そう思わずにはいられない。
相変わらず、足音の一つも立てずに歩く彼女の背を追いかけていると。
(……………ん?)
不意に、漠然としていた視界の動きが、ピタリと止まった。
金縛りにあった…とまでは行かないが、それでも何か、目が何かを捉えたように、動きが鈍く、自然とその方向を見つめている。
自分でも最初、何を見ているのかが分からないくらいには、自分の身体である筈なのに。
己の視線は、庭園の中でぽつりと立っている、一人の少女に集中していた。
「当麻さん?」
隣を歩いていた赤尾も、上条の視線がある場所に集中していることを見抜く。
そうして顔を、同じくその方角に向けて、沈黙した。
キャップ帽を深く被っている為、目元まで影で隠れて全貌は把握できない。
だが何故だろう。
髪を帽子の中に丸め、収納しているからなのだろうが、髪が見える部分は本当に僅かで。
だというのに――凄まじい既視感を覚えた。
(どこかで見たような………)
街中で出会った?
それとも、学校での知人?
そのどれにも該当しない既視感。それを刺激する謎の少女は、先ほどからあちらこちらへ奔走していた、インデックスのすぐ隣に立っていて。
口元だけでも分かる程、優しい笑みを浮かべながら。
「こんにちは」
と、透き通るような声でそう話しかけていた。
インデックスは、それに素直に答えた。
「こんにちはなんだよ」
キャップ帽を被った謎の少女は、インデックスと視線が合うようにしゃがんで。
「あら可愛い、もしかして外国の子かな?」
「見ての通り教会の者です、あ、ちなみにバチカンの方じゃなくて、イギリス清教の方」
「せいきょー?…でもイギリスは知ってる!国旗がユニオンジャックの場所だ!」
「想像以上に浅い知識の返答が来て驚いてるかも」
チラリと一瞬、意味深に上条の方を振り返って見たインデックス。
おい。と内心でそれに突っ込みを入れつつも、上条はインデックスの前に立つ少女の顔を、じっと見つめて考える。
どこか。
やはり、どこかで――
インデックスと視線の高さを合わせる為、しゃがむ姿勢になった少女。
ほんの僅かとはいえ、インデックスのより下。そこから見上げるように、顔を上に向けることで、光が帽子の下に直接入り込む。
特徴的な、星を宿した――
「――あ」
――テレビ。
たとえ不幸で金欠だろうが、補修で完全下校時刻まで拘束されようが。
街中を歩き、巨大なスクリーンは勿論、ファミレスや電化製品を取り扱う店で、店内BGMとして何度も聞いた。
もはや、学園都市では知らぬ者はいない、生きる伝説である――
「いや、まさかそんな…」
「あーっ!
ありえない――そう言い切る前に、上条の疑惑を完全に肯定する、別の少女の叫び声がこだました。
ギョッと、謎の少女――アイは顔を引き攣らせ。
それに抗議するように、頬を膨らませて言い返した。
「ちょ!チクるのはなしでしょ!?サボってませーん!ちょっと休憩してただけですー!」
「にしても二十分以上はサボりでしょー?つーか何の休憩よ?」
「トイレ!トイレ休憩だもん!個人のトイレ時間にいちいち首を突っ込むのはマナー違反なんだよ!?」
「アイドルがトイレ休憩を盾に反論するのは駄目じゃね?」
「アイドルも〇〇〇するもん!」
「ウケるー、トレンド一位確定じゃん」
ウェーブを効かせた金髪の少女は、アイの乙女らしからぬ言葉に、腹を抱えて爆笑し。
「ってか冗談抜きにいい加減戻らないと不味いっしょ?タメイキ先生もうカンカンじゃね?」
「…まだセーフ!前に怒られた時は三十分越えだったからだし!」
「……もしかしてワザと怒られようとしてんの??マゾなの??」
「違うもん!心美の意地悪!ギャル!」
「それ悪口になってなくない?」
未だ現実を受け入れられぬまま、目の前でギャーギャーと言い合いを続ける二人。
上条は先ほどまで感じていた筈の、有名人が目の前にいるという驚きは消え失せ、ただただ意味が分からない。そういった困惑の状態に陥っていた。
二人の間に挟まり、謎の言い合いに巻き込まれているインデックスもまた、現在の上条と同じように、ただ困惑の色を顔に浮かべていた。
…女三人寄れば姦しい。なんて言葉はあるが。
どうやらそれは正しかったようで。
「こんなとこにいたの?アンタ」
「うげっ!」
ポンと、肩に手を置く音。…もはやここでは瞬間移動が当たり前のように、いつの間にかアイの背後に立っていた女性。
勿論、彼女も例に洩れず、足音は勿論、そこに現れるまでに一切の気配がなかった。
「…待って先生」
「ギルティ」
「嫌だーっ!シスターちゃん助けて!私を守って!」
「えーっと…勉強頑張るんだよ?」
「うわーん!!!」
ズルズルと首元を掴まれ、引っ張られていくアイ。
まるで毎日テレビで見る、あの輝かしいアイドルがされていい扱いではないのだが、もはや今、ここに突っ込む者はいない。
上条は一言。
「…学園都市って凄いなぁ」
先ほどまで頭にあった、魔術やら何やらの懸念がこの瞬間だけ。
頭から完全に消失した故の、空白の呟きであった。
フー☆ライ@ツインズ
二身一体、同じ血、同じ筋肉、同じ感性を持つ為か、掲示板に書き込む時も二人一緒。
実はスイーツ巡りが趣味。休日は様々な学区のスイーツ店を訪れ、周りを阿鼻叫喚の渦に巻き込んでいる。
専用の食べ歩きイ〇スタは、最近フォロワー数が百万人を突破した。
見た目は北斗の拳のライガ&フウガ。
シノのん
稗田家専属の警備員。
休日はバイクをかっ飛ばすのが趣味。最近はそのバイクも、他転生者の力で魔改造を重ねており、一種の兵器となっている。
ジョークの才能はない、そして本人はそれを自覚していない。
見た目はカグラバチの炭。
パーフェクト・ギャル
神の祝福(本人はそう言ってるが真偽は不明)である美貌を持った完璧少女。
最近はライガ&フウガとスイーツを食べ歩くのが趣味で、同時にライガ&フウガの見た目で勘違いし、出勤してきたアンチスキルの誤解を解く役をこなしている。
見た目は斉木楠雄のψ難の照橋心美(完璧美少女ギャルモード)。
砂息
普段は阿求の補佐をしている為、戦闘能力も高め。
護衛は勿論、家庭教師的な仕事もしていて疑似的な教師の役割を全うしている。
そしてしれっと彼女も『原石』、彼女の吐く息は好きなように砂へ変質させられる。
見た目はウソツキ!ゴクオーくんのタメイキ。
……改めて見ても我ながらキャラ選に癖がありすぎますね…
上条さんの記憶はどうなる?
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答え①ヒーローの上条は突如記憶が甦る
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答え②仲間がきて光の羽から助けてくれる
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答え③忘れたまま。現実は非情である。