異世界オーズ   作:cicada

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ディオス王国第二王子、セドリック・フォン・ディオスは仮面ライダーである。
王国に進行してくる魔族を退け、平和を守っている。
そんな彼も今年からアカデミーの一年生である。
彼のパーティメンバー、アナスタシア、イザベラ、ヴィオレッタとの学園生活が始まる。


第一話「王子とアカデミーと無茶苦茶な男」その2

人間歴800年3月。この日、王都グランポリスの人々は歓喜していた。

この国の英雄第二王子セドリック・フォン・ディオスが辺境の村を救い、帰ってくるのだ。

 

「キャー!セドリック様ーっ!」

「こっち向いてー!」

 

馬車に揺られ、民衆に手を振る姿はまさしく王族である。

 

「ふふ、アナスタシアさん。そんなににらんでもあの手のファンを払いのけるのは無理なことでしてよ。」

「むぅ、でもぉ」

「セドリックに夢中になるのは仕方がない。誰でもそうなるの。」

「むぅ、ヴィオレッタさんまでぇ。」

「イケメンで礼儀正しく、王族で英雄ともなればだれからも好意を向けられるに決まっていますわ。」

 

3人はセドリックに心酔しているらしく如何に彼が素晴らしいかを議論している。

そうこうしているうちに馬車は王城へと到着し、国王様との謁見をすることになった。 

 

「セドリックよ、此度の活躍、まことに大儀であった。」

「お役に立ててうれしゅうございます。父上。」

「まさか、【オーズ】の力を使いこなすだけではなく、人民を救い、その後ダンジョンまで攻略してしまうとは。王として、いや父として誇らしい。」

 

父である国王サーベリウスは満足そうに語りかける。 

 

「いえ、私などまだまだです。やはり【コンボ】なるものを使うと体がもちません。これからも精進してまいります。」

「うむ、そんなお前にちょうど良い話がある。」

 

サーベリウスが右手を上げると、宰相が何やら文書を取り出し読み上げる。

 

「王国の勇者である第二王子セドリック・フォン・ディオスはこれまで王国に多大な貢献をしてきた。この度、さらなる成長のため、王立魔法アカデミーへの入学を決定したことを発表する!」

 

王立魔法アカデミーとは、王国中に存在している様々な分野で天才を集めた学術研究施設である。魔法の天才、学問の天才、剣術の天才、弓術の天才、あらゆる才能の開花と育成を目的としており、貴族の権威もそこには及ばない。

そこに王族の勇者が入学を許可されるた。それはつまり、家柄、能力、評判ともに最高クラスの存在が誕生するということである。

 

「父上、ありがたき幸せ。」

 

この日、民衆はさらに歓喜し、酒場では一晩中宴会が続いた。

 

 

 

~~~入学式当日~~~

 

「セドリック様ぁ、どこですかぁ~」

 

なんともアホっぽい声を響かせ走る少女は、どうやら校舎内で迷っているらしい。

学校の廊下で走っていれば当然、

 

ドンッ!ガシャーン!

 

「ふえぇ、いたたた。」

 

どこかのアニメで出てきそうなセリフをナチュラルに吐いている横で、男が一人震えていた。

 

「オーマイガー!!!貴重なサンプルがぁ!!」

 

廊下にはガラス片、ドロッとした培養液、白っぽくなっている肉片が散らばっている。

 

「き、ききき、君ぃ!!いったいどういうつもりだぁ!!これは貴重なドラゴンの脳組織だぞ!!しかも、よりにもよって魔法野のサンプルだ!!これを手に入れるために一体どれだけの労力をかけたとぉおおお!!」

 

相手はこれまでの人生で怒鳴られたこともないのであろうゆるふわ系の少女である。

それにも関わらず、男の怒りはエスカレートしていく。少女の顔色はみるみるうちに青ざめていき、目には涙を浮かべている。しかし、男は止まることなく怒鳴り続けた結果。

 

「おい、聞いているのk…。」

 

すでに少女は姿を消していた。あまりの剣幕に少女は逃走を選んだようだ。無理もあるまい。国の英雄の次女として権威のあるアカデミーに入学して気が張っている最中にこの剣幕である。とうに彼女のキャパシティを超えていた。

 

 

「どぉこ行ったぁ!!!」

 

 

その日、校内にマッスルエイプが出現したという噂が飛び交ったそうだ。

 

 

 

 

~~~その次の日~~~

 

「はぁ、退屈なオリエンテーションを抜け出してきて正解でしたわぁ」

 

少女は背伸びをしながら中庭のベンチでお昼寝モードに突入してしまっているようだ。

そこに、

 

「にゃーお」

「ねこちゃん、ですわ~♡」

 

入学式までの高貴なたたずまいは一体どこへ行ったのやら。洋服が汚れるのもお構いなしに地面に寝転び、言葉遣いも赤ちゃん言葉になっている。

 

「かわいいでちゅねぇ。どぉこから来たんでちゅかぁ?教えてくださる?教えてくれないなら吸いますわよぉ。吸ってしまいますわよぉ。うへへ、うへへへへ。」

 

残念令嬢ここに極まれりである。

 

「に゛ゃーお゛っ」

 

猫は自分にかまう人間には寄り付かないというが、やはりお気に召さなかったようだ。

猫は少女の腕から抜け出し、すぐ横のテラス席にいる男の元へ駆け寄り彼が机の上に置いている手の中に吸い込まれていく。よほど落ち着くのか、ゴロゴロと喉を鳴らし男の手に頬ずりをしている。男も猫の行動を当然のように受け入れつつ、本を読みふけっている。

 

「き、きていましたの?」

「ちょっとだけ」

 

少女は問題を抱えてしまった。今までの醜態を見られていたかもしれないという可能性。もしかしたら、今来たところでちょっと猫とじゃれていただけと思っているかもしれない可能性。コンマ5秒のうちにあらゆる可能性を考えて質問する。 

 

「い、いつからですの?」

「『はぁ、退屈なオリエンテーションを抜け出しt』」

「最初からじゃありませんのぉ!!」

 

少女は有名な侯爵家の一人娘であり、幼いころから英才教育を受けてきた。幼い少女にとってそれは重圧であり、淑女として行動の反動であの残念な人格が形成されてしまったのである。

 

「もうおしまいですわ。こんな醜態を殿方の前でさらしてしまうなんてぇ。もうお嫁にいけませんわぁ~。」

 

男は少し少女を見てみた。おいおいと泣いている仕草をしているが、涙は出ていない。

 

「なんですの、その残念なものを見るような眼は。」

「いや別に」

「これはもう、殿方にセ・キ・ニ・ンをとっていただかないといけませんわね♡」

 

なんのつもりか少女は男にすり寄ってきて、つつましやかな胸をこすりつけてくる。

どうやら、むちゃくちゃな理由をつけてゆするつもりらしい。

 

「なんのことを言っているかわからないが、私がここで午後のティータイムを楽しんでいる最中に君がやってきて、私の友達に乱暴をはたらいたんだ。私にはなんら責任取るべき事項は存在しない。君が途中で繰り広げた摩訶不思議な言動については安心したまえ、こんなどうでもいい話をしている時間は私にはない。以上だ。」

 

今までの淡白な返答とのギャップに少女は固まってしまう。

 

「失礼する。」

 

男はゆったりとした足取りでその場を後にする。

男がいなくなってしばらくしたころ、

 

 

「なぁんなんですのぉ~~~!」

 

 

その日、マッスルエイプに続きバンシィの目撃情報がうわさされるようになった。

 

 

 

~~~さらに次の日~~~

 

男は図書館にいた。自分の研究に必要な文献を調達しに来たのである。探しているのは、魔物と魔法に関する文献である。彼の専門は魔法に関する基礎研究であり、魔法が発動する原理を研究している。中でも、人間以外で魔法を発動できる存在である魔物の生物実験から魔法という現象を検証している。

 

「ここら辺にあったはずだが、どこだぁ?」

「ちょっと、」

「ん?」

「ちょっと、邪魔なのです。」

「幻聴か?」

「ここなのです。」

 

姿が見えないのに声が聞こえる。幻聴に違いない。最近は研究に根を詰めていたからとうとう参ってしまったようである。

 

「ここなのです。」

 

声のする方向を向いてみると10歳児くらいの少女が立っていた。

 

「なぜ、子供がいる?」

 

当然の疑問であった。ここは王国で最も権威のある研究施設兼学び舎である。子供がいるはずがないのだ。

 

「子供じゃないのです。私は18才、成人済みなのです。」

「...そういう設定か?」

「失礼なの。」

 

よく観察してみると面白そうな本を持っている。

 

「その本、『魔物の分布と地形について』そのテーマに興味があるのか?」

「少し気になったの。」

「ちょっと待っていろ」

 

子供であろうとなんだろうと学ぶ意欲もった者には惜しみない協力をしたいと思うのが学者というものだ。

 

「ほら、『魔物大全』『地方の特殊な魔物について』『ドラゴン系統特殊魔法について』etc...」

「ま、待ってほしいの。」

「さらに、おまけをして『闇系統魔術の特異性について』『光魔法の可能性』もつけておこう」

「持ちきれないの」

「入門書としては、『四大魔法の基礎』『魔力捜査の心得』『魔法生物学へのいざない』とかがいいだろう」

「お、重いの」

 

少女は大量の資料を抱え、ふらふらと歩いていく。体格に見合わない荷物をもつ少女に周りの人々は心配の目を向けている。

対して男は「いいことしたな」と満足気であるが大事なことを思い出したようである。

 

「しまった、私の分の資料を全部渡してしまった。」

 

 

 

 

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