王国に進行してくる魔族を退け、平和を守っている。
そんな彼も今年からアカデミーの一年生である。
彼のパーティメンバー、アナスタシア、イザベラ、ヴィオレッタとの学園生活が始まる。
「学園長、この度は特別に私ともどもパーティメンバーも一緒に入学することを認めていただきありがとうございます。」
「セドリック殿下、それは違います。学園は彼女たちの才能をちゃんと評価しております。」
学園長と呼ばれた男には片腕がない。王国にこの片腕のことを知らない者はいない。今から30年前、王国最強と呼ばれた冒険者パーティがいた。【銀狼の牙】、いくつものダンジョンを攻略し、英雄的な活躍を果たしたという。
彼はそこの元パーティリーダー【大剣のブラガン】。そんな彼が片腕を失ったのはSクラスダンジョン【摩天楼】でのことある。第99階層のボスモンスター【デスサイス】との戦闘中に負傷したのである。
「アナスタシアさんは、世にも珍しい神聖魔法の使い手、イザベラさんは弓術の天才、そしてヴィオレッタさんの魔法の才能、おそらくこの学園で右に出るものはいないでしょう。教師の中にも勝てるものもいるかどうか...。」
「そうでしたか、彼女たちにそんな才能があったとは、私の前ではどうにもおっちょこちょいというか頼りないもので、意外でした。」
優しい光が差し込む窓辺、老紳士と好青年が高貴なる風格を保ちつつ談笑している。もし、この光景を一般の女子生徒が目撃したらたちまち貧血を起こし、その場に倒れこむと同時にそのままミイラになってしまうだろう。
そんな、乙女ゲームのような空間を突き破るように轟音が響きわたる。
ドゴーン!!!
近くで爆発が起きたようである。
「あぁ、またあいつかぁ」
ブラガン学園長は悩みの種と言わんばかりに眉間にしわを寄せ、右手でそれをつまんでいる。
そして、興味を持ったセドリックは窓辺から爆心地を眺めると、そこには信じられない光景が移っていた。
「ドラゴンだぁ!!!!」
「きゃあー!!!」
完全な警備によって守られているはずの学園内にドラゴンがいる。そしてなぜか逃げ惑う人々の中にまるでヒーローショーに来た子供の様にはしゃぎ、飛び回っている人影がいる。
「学園長、少し行ってきます。」
学園長の返答を待たずにお辞儀をしたセドリックは5階の学園長室から飛び降りた。
「変身!」
『タカ!!トラ!!バッタ!!!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!!!』
セドリックはオーズに変身するや否や、両腕の【トラクロー】を壁に突き立て、勢いを殺して着地する。そしてすぐさまドラゴンのもとへと駆けていった。
「殿下、緊急時とはいえ壁もタダではありませんぞ...。」
学園長の疲れた独り言が学園長室に響いた。
「うわははは、私は天才だぁ!!君、見たまえ!!私は世界で初めてドラゴンの人工孵化に成功したのだよ!!見ろ!!この美しい姿を!世界最強の生物だ!!この私が生み出したのだぁ!!!ハァッピィバースデイ!!!」
「う、うわぁああ」
腰を抜かした生徒に嬉しそうに力説する男の目の焦点はあっていない。極度の興奮状態である。
「はぁ!!」
その時、ドラゴンの顔面目掛けて飛び蹴りが放たれる。
ドゴォ!!
ドラゴンは少しよろめき、頭を震わせているが、大したダメージではないようだ。
「おい君、あれは私の標本だz」
「打撃はあまり効かないみたいだなぁ、なら斬撃か。」
「セドリック様ぁ~。」
どこかで聞いたような声が近づいてくる。
「これをつかってくださぁい!」
少女の手から放たれたのは、金色の淵のメダル【コアメダル】である。
「ほう...。」
パシッ! キン!キン!キンッ!
オーズはメダルを受け取りベルトにある3つのスロットのうち真ん中の黄色いメダルを交換する。
『タカ!!カマキリ!!バッタ!!』
「やっぱこれ、使いやすいんだよなぁ。はっ!やっ!せいや!」
大胆不敵にドラゴンの懐に飛び込んだセドリックは前足での攻撃をヒラリとかわしながら、【カマキリソード】で切りつける。
ドラゴンの表面に見る見るうちに斬撃根がつけられていく。生まれたてでまだ鱗が柔らかいようだ。
「ぎゃああああおおん」
ドタタタ、ドタタタ、ドタタタ、
生まれて初めての痛みにドラゴンは叫び、興奮状態で走り出した。ドラゴンのスピードは非常に早くオーズの脚力でも追い付けない。
「早すぎる、っ!!」
「これを使ってくださいましっ!!」
パシッ! キン!キン!キンッ!
『タカ!!カマキリ!!チーター!!』
オーズの下半身が黄色に変わり、エネルギーがたまっていく。そして次の瞬間、
「はぁ!!」
オーズは目にもとまらぬ速さで走り出し、ドラゴンの眼前に出た。ふくらはぎの冷却孔からは、瞬間的なエネルギー消費による熱波が噴き出している。
対してドラゴンは今まで逃げていた敵が目の前に現れたことで混乱して動きが止まってしまう。
その一瞬をオーズは見逃さなかった。
「とうっ!!」
オーズはとっさに背中に飛び乗り、【カマキリソード】を突き刺す。
「ぎゃああああおおおおん」
「うおっ!!」
極度の混乱状態のドラゴンは背中にオーズが刺さったまま、再び最高時速をたたき出す。
「おあああああ!」
「「セドリック様」」
すさまじい速度で駆け回るドラゴンの勢いにオーズはしがみつくことしかできない。
「ドラゴンは馬の三倍の速度で走るの。上に乗るならこのメダルが必要なの。」
ここまでの戦闘を静観していた三人目の少女は水色のメダルをオーズに投げる。
すさまじいコントロールで投げられたメダルは、【バッタ】を押しのけベルトの3番目のスロットに入る。
「おっ!?、せいやっ!」
ベルトのメダルが変わったことに気が付いたオーズは、力を入れて飛び上がる。
『タカ!!カマキリ!!タコ!!』
再びオーズの下半身が変わり、ドラゴンの背中に着地する。今度は安定して立っている。どうやら足についた吸盤のおかげで体を支えることができているようだ。
「そろそろ決めなきゃやばいでしょ」
『スキャニングチャージ!!!』
「せいやぁああああ!!」
ドォガァン!!
ドラゴンの体は【カマキリソード】の斬撃によって輪切りにされたかと思うと爆発してしまった。
「うわぁああああ、実験動物がぁああああああ!!!!」
「ひぃっ」
「あっ!!」
「うげ」
男の大声に少女たちは三者三様の反応を見せる。
「「君、なんてことをしてくれるんだ!!」」
「「は?」」
セドリックとこの事件の元凶の男は真逆の立場のはずが、ハモってしまう。
「なぜきみがその態度なんだ。王都内にドラゴンを持ち込むなんて!!死人が出たらどうするつもりだったんだ!」
「そんなことはどうでもいい!!世界初の試みだったんだぞ!!人工孵化させられたドラゴンなんてこの世のどこを探しても居はしないんだぞ!!いったいどうしてくれるんだぁああ!!」
「な、なにを...。」
セドリックは混乱している。目の前の男は実験中に事故を起こしドラゴンを解き放った張本人である。国家反逆者として処刑されてしまうかもしれないという状況のはずである。それにも関わらず、彼はまったく反省や罪悪感が見られず、あまつさえドラゴンの死を嘆いている。
「あなた一体何様のつもりですの!!」
男が振り返ると見覚えのある少女たちが立っていた。
「ん?、注意散漫女、不思議ちゃんに...子供」
「注意散漫女...。」
「だれが不思議ちゃんですの!!」
「子供ではないの。」
思いもよらぬ出現に気を抜けてしまいそうになるのを抑え仕切りなおす。
「ふん、知らざあ言って聞かせやしょう。東西にとどろく超天才研究者。」
どこかの演劇のようなふざけた口調で男は語り始める。
「鴻上研一郎たぁ、あっしのことでぃ!!!」
文章書くのって時間がかかるのねぇ