異世界オーズ   作:cicada

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第三話「白虎と未練とカンドロイド」その2

 

「聞きたいことが山ほどありましてよ!!!!」

 

イザベラの大声が研一郎の研究室に響き渡る。両手を腰についたイザベラは研究室の外壁の修理をしている研一郎にキッとした目を向ける。その後ろには、関わりたくなさそうな目でこちらを見ているアナスタシアと研究室を興味深そうに見まわしているヴィオレッタも立っている。

 

カンッカンッカンッカンッ

 

チラッとイザベラたちを一瞥した研一郎は再び壁の修復作業に戻る。半壊した研究室の修復作業は膨大で、切りが悪いので手を止められないというわけでもないようだ。

 

「ちょっと、無視しないでいただけるかしら。」

「ふん、今日は王子君はいないのか?」

 

ジト目をしたイザベラの追撃に観念したのか、研一郎はトンカチを置き、作業用グローブを外してイザベラに返答する。

 

「大けがをして寝込んでいますわ。あれだけの戦闘の後ですもの、変身解除後すぐにバタンですわ。それなのにあなたときたら、さっさとあの黒い乗り物で行ってしまうんですから。あの後も大変だったんですわよ!ダンジョンを降りてきた怪人に見つかりそうになるわ、前衛不在で王都まで帰らなきゃいけないわで死ぬかと思いましたのよぉ!!」

 

 

イザベラの口調は怒りとともにエスカレートしていき、長台詞を言い終わる頃には完全に怒号に変わっていた。

 

「でも死んでいないじゃないか。よかったな。」

 

そんなイザベラを研一郎は気にするでもなく、感想を述べる。イザベラの顔は般若のように変わっていき、ついに堪忍袋の緒が切れる。

 

「こぉの男はぁ!!!」

『スリープ』

「はぅっ…。」ドサ

 

風系統魔術『スリープ』、強力な魔物を眠らせ、戦闘を回避するための魔法である。ヴィオレッタがイザベラに放ったのはその数十分の1の威力のものである。死にはしないだろうが、イザベラは今日はもう起きないだろう。

 

「ヴィ、ヴィオレッタさん!?」

「話がそれたの。」

 

いきなりのフレンドリーファイアに混乱するアナスタシアを後目にヴィオレッタは研一郎に問いかける。

 

「あの怪人はなんなのです?」

「あぁ、それかぁ。…【グリード】、と呼ばれていたらしい。」

バサッ

 

研一郎はヴィオレッタたちの前に資料を広げる。それは『摩天楼』からヴィオレッタが持ち帰った古文書だ。あの後、ヴィオレッタからこの古文書を受け取った研一郎は、古代文字の翻訳を行い内容を解読していた。研一郎が示したページには4体の怪人と一人の人間の姿が描かれている。

 

「古文書によると、グリードとは欲望のエネルギーを集めた【オーメダル】なるもので構成されているらしい。」

「「【オーメダル】...。」」

 

メダルといえば王家に伝わる【コアメダル】しか知らないアナスタシアとヴィオレッタはオウム返しをしてしまう。

 

「【オーメダル】には【コアメダル】と【セルメダル】の二種類存在し、【コアメダル】はグリードの本体に【セルメダル】は体組織兼エネルギー源になっているらしい。よって、グリードの目的はこのメダル集めということになるようだな。」

「確かに、あの怪人もコアメダルを狙っていたのです。」

「こいつ、【カザリ】だな。ネコ科系メダル【ライオン】【トラ】【チーター】を本体とするグリードで、狡猾でずるがしこい性格とあるな。」

 

 

研一郎はページを一枚ずつ手に取り、グリードの説明をしていく。

 

「他にも、昆虫系メダルの【ウヴァ】、重量系メダルの【ガメル】、水棲動物系メダルの【メズール】そして、鳥系メダルの【アンク】がいるようだな。」

「さ、最後のひとは人間じゃないんですか?」

 

アナスタシアは相変わらずビクビクしながら研一郎に質問する。

 

「腕をよく見てくれ、古文書のページが破れていて解読しきれなかったが、このグリード【アンク】は不完全な状態で人間に寄生している状態とあった。まあ、この人間がまだ生きているとは思えないがな。」

「ちょっと待ってほしいの。あの怪人、グリードの目的がメダル集めなら、カザリはコアメダルを目指して行動するということなの?」

「あぁ、そうだな、つまりこの王国の中で一番コアメダルが集中している王都、もっと言えばこの学園をねら、う、、はず、、。」

 

3人に緊張が走る。狡猾な性格、超人的な身体能力を持つ怪人、それが情報収集を始めたら王家に伝わるコアメダルの存在をすぐに知るだろう。摩天楼の事件から約1週間、十分な時間がたっている。もしかしたら、すでに王都内に侵入しているかもしれない。3人の思考は一致していた。

 

「ど、どうしましょう。」

「見つけないといけないの。」

「実験のチャンスだなぁ。」

 

やっぱり、一人だけ違うことを考えていた。

 

 

 

「これを使おう。」

 

研一郎は複数の銀色の円柱を取り出した。摩天楼の時に使用したものと似ているが、あの時使用した青色の差し色が入ったものではなく、赤色の差し色が入っている。

研一郎が操作すると円柱は変形し、タカの形になった。

 

『タカー、タカータカー。』

「これはカンドロイド。こいつがグリードを探してくれる。おい、王都中を回ってグリードを探せ。」

 

研一郎の命令をきいたタカは、うんうんと頷き飛んで行ってしまう。

 

「さて、これで良し。行くぞ、取り巻き共。」

 

研一郎はメダジャリバーを担いで研究室を出る。そしてそのあとをアナスタシアとヴィオレッタもついていく。

 

 

~~~~~~

 

 

ここは学園の保健室。摩天楼の事件で怪我を負ったセドリックが、療養のために寝かされている。そして、その周囲にはセドリックの寝顔を眺めている女子生徒が取り囲んでいる。セドリックを起こさないように、しかしハァハァとあらい息使いを隠さずに野獣のようなまなざしを向けている。

 

「セドリックさまぁ、なんてお美しいお顔でしょうか。」

「わたくし、お抱えの画家を読んで一枚描いていただきましょうかしら。」

「うへうへへへへ、セドリック様のくちびるぅ、うへへへへへへ」

 

ばたぁん!!!

 

勢いよく開かれた保健室の扉の音に、これまでその部屋を満たしていた異様な雰囲気が吹き飛ぶ。入室した研一郎はセドリックに群がる女子生徒をかき分けてセドリックの元へとやってくると、セドリックの胸倉をつかみ、、、

 

「おきろおおおおお!!!」

「うわぁああ!!」

 

研一郎の絶叫にセドリックが飛び起きる。セドリックの体の傷はほとんど回復している。これはアナスタシアの回復魔法によるものである。よって、今セドリックが無理をしても死ぬことはない。しかし、回復魔法では蓄積した疲労や魔力は回復しない。つまりセドリックには休養と睡眠が必要であった。

 

「仕度をしろ、実験だ。」

「へ?」

 

セドリックは混乱した。まだ疲労が残っている状況で無理やり起こされて、一発目に「実験だ」である。理解できるほうがおかしい。

 

「ちょ、ちょっと何なのよあんた。」「セドリック様には休養が必要なのよ。」「そうよ、保険医の私が保証するわ。」

 

変態の集団が何か言っているが、もちろん研一郎は気にしない。

 

「この間の怪人が王都に現れるかもしれない。」

「な、なに!!」

「ちょっと、あんた無視すんじゃないわよ!」

「ええい、モブはだまっとれい!!!」

「な、モ、モブ。。」

 

研一郎の言葉を聞いたセドリックは飛び起き、ベッドのわきに置いてあるオーズドライバーとコアメダルを手に取る。

 

カンカンカン、カンカンカン

 

「見つけたようだな。行くぞ王子君。」

 

保健室の窓をたたいたのは、タカカンドロイドである。どうやらカザリを見つけたらしい。セドリック、アナスタシア、ヴィオレッタの三人の顔には緊張に満ちた表情が浮かび、研一郎の顔には笑みが浮かんでいる。

四者二様の4人は王都に現れた【グリード】、カザリのもとに駆け出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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