事情通系胡散臭お嬢様になりたい転生トリニティ生   作:水野 四十坂Q

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スマートフォン向けアプリ、『ブルーアーカイブ』のエデン条約編読了を前提としています。スタミナもお金も要求されないしアプリさえインストールすればいつでも読めるので読んでみてね。


彼女のエデン条約編
エデン条約編:上


「あら? あらあらあらあら、あら? あなたはもしや……シャーレの先生では?」

 

 お前はデコ出しタレ目の優男! いかにも褐色銀髪娘の脚ペロペロしてそうな雰囲気! 間違いありませんわ! 毎日オフィスに水着バニーの女子を連れ込み教え子に犯罪幇助(銀行強盗)を行う最低最悪の大人! 私彼氏いますよ先生ですわね?

 えっ違う? まーたまた。まあ(わたくし)は貴方の本名なんてまるで興味がありませんの。そもそも元から存じませんし。

 そういえば最近ティーパーティーの方がゴタゴタしてるらしかったですわね! (わたくし)たち正義実現委員会はリンちゃんと先生に全てをぶ(連邦生)ん投げて蒸発したボケナス(徒会長)の失踪以降おクソほど忙しいので完全に頭から抜けていましたわ! とするともしかしてアズサがセイア様をブチ殺しに行くイベントは通り過ぎてしまっているのかしら?

 まあこれ全部脳内での独り言なんですけども。ごめん遊ばせ?

 

「うん、私はシャーレの先生だよ」

「あらあらまあまあどうもおおきに。ぶぶ漬けと飴ちゃんどっち食べなはります? それとも先生は洋菓子派でして?」

「口調が統一されてないのはわざとなのかな……?」

「そりゃもちろんだってば陽一! サッカーしようぜお前ボールな! ──そろそろ気恥ずかしくなってきたのでやめてよろしいかしら?」

「ああうん、どうぞ?」

「困惑の眼差しが如月の風のように突き刺さりますわね、(わたくし)トリニティ以外の方と会うのがとても久しぶりでして、少しおハッチャケになりたくなりましたのよ、許してくださいまし。それで、なんの話でしたっけ? 先生がナギサ様から言いつけられたので補習授業部へ向かいたい、という話でしたでしょうか? (わたくし)なら案内できますけど、いかがでしょうか? これでも正義実現委員──ゲヘナで言うところの風紀委員ですのよ。迷える子羊の案内は慣れていますわ」

「なんの話も何も自己紹介もまだのような……? でも、ナギサから話が通ってるみたいだね。よろしく頼むよ」

「あらあら流石の順応性(わたくし)惚れ惚れしてしまいますわ。嘘ですわよ? ああ、(わたくし)の名前は美奈底(みなそこ)シズムといいます。よろしくお願いしますわ」

 

 うーむ、普通に物腰の柔らかい大人ですわね! あと爽やか!

 

 

 

 

 

 

 

「アンタは!? なんでここにいるのよ!」

「なんでって……こちらの方の案内をしているだけですわ。貴方こそどうしてここにいますの? 補習授業部と伺っていますけど」

 

 まーーーさか!?!?

 あの優秀でえるるるるるりぃぃぃーーーぃとなコハルさんが!?!?

 特に何の疑いがあるわけでもなく!?!?

 純然たるテストの結果で!?!?

 補修を受けるなんてこと、ありませんわよね!?!?!?!?!?

 

 実際は正義実現委員会(わたくしたち)への牽制を兼ねているんでしたっけ? もう十年以上前に読んだテキストのことなんて忘れちゃいましたわ。なんにせよ、ハスミ先輩にもツルギ先輩にも叛意なんて無いのに、友達がぶっ殺されたくらいで疑心暗鬼に陥っちゃって大変ですわねナギサ様は。まあ死んでないのですけれど。……死んでないですわよね?

 

「お可愛いですわねコハルさん。ところで、前期のテストの点数はおいくつでして?」

「それは……アンタには関係ないでしょ! 非の打ち所のない、完璧な結果だったわ!」

「あら。それはとても素敵ですわね」

 

 コハルさんとおしゃべり出来るだけで笑顔になりますわね! この純然たるクソガキっぷりがたまりませんわ! ゴミクズの干涸らびてひび割れた精神に染み込みますわ〜〜!!

 

「あ、シズムも補習だって」

「……はい!?!?」

 

 こらそこ! ものすごいバカを見る目を向けない!

 (わたくし)テストの成績には自信がありましたのになんでですの!?!? (わたくし)といえば文武両道にして容姿端麗、月光をロンドンの霧に溶かしたようなキューティクルの髪がチャームポイントの超完璧パーフェクト一年生ですわよ!? 常日頃から仕事辞めたいとかゲヘナに転入したいとかボヤいてるくらいしか欠点ないですわよね!?

 

 先生から資料をひったくって確認してみれば明らかに成績が改竄されていましたわ! おのれナギサ! そこまでするか! 今度から様付けてやりませんからね! おクソほど高級なティーカップでおクソほど安い昆布茶ばっか飲んでいればいいんですのよ!

 

 

 

 

 

 

 我らが補習授業部のイカれたメンバーを紹介するぜ!

 

「あはは……」

 

 友達を自分のサイフとして当然のように勘定する真性のアウトロー! ペロロ狂い! あと戦車の操縦が上手い! 阿慈谷(あじたに)ヒフミ!

 

「うぅ〜〜……」

 

 自称エリート! 愛すべきおバカ! 正義実現委員会のマスコット! 下江(しもえ)コハル!

 

「先生、これはどうやって解けばいいんだ?」

 

 スパイ! 百合園セイア襲撃犯! ブービートラップとゲリラ戦なら任せろ! 白州(しらす)アズサ!

 

「シズムちゃんもいるなんて、意外ですね〜。正義実現委員会の活動で単位が足りなかったんでしょうか?」

「そんなところでしてよ」

 

 ……

 

「あら、やっぱり私には少し冷たいですね……ここは親睦を深めるためにもアイスブレイク、いえ、お互いに大事なところをさらけ出して、くっつけ合って、擦り合わせて温まってみるのはいかがでしょうか?」

「……あんまり淑女がそういう、お下品な言葉を使うものではありませんわ」

「あらあら」

 

 こいつは浦和(うらわ)ハナコ。自分が優秀すぎるがあまり周囲に持ち上げられるのが気に食わなくて勝手にノイローゼになった空前絶後のナルシストですわ。

 

 ゲームで見ていた時はおっぱいでけー、以外の印象なかったけど今はコイツのこと嫌いですの! なんてったって無駄に頭がいい! ちょっと話しただけで勝手にこっちの心見透かしてきますわ! 率直に言ってキモいんですのよ貴女! あと純粋に(わたくし)より地頭よくてムカツク!

 

 というわけで(わたくし)、浦和とは極力話したくありませんの。

 

 あ、補習授業部最後の一人、幻のシックスマン、美奈底(みなそこ)シズムですわ。特技は不良の制圧。ボールを垂直に曲げる掌底で対戦相手の腰骨を粉砕骨折させますわよ。バスケはやったことありませんわ。

 

 ところで今は教室。皆様で集まって、顔合わせを兼ねたお勉強会をしているところですの。なんてったって、かの悪どきナギサから「3回の追試で全員合格を出せ」と仰せつかってしまいましたから。ちなみにまだ全員が知っているわけではないですけど、3回失敗のペナルティは補習授業部全員の退学ですわ! 学校のゴミはゴミ箱にまとめてポイ! ですわ。ナギサは私のこと可哀想と思いませんの……!? 会ったことありませんけれど。

 

 あ、浦和がコハルさんを下ネタでからかいに行きましたわね。早速お勉強会が脱線していますわ。まあでも、コハルさんをからかいたくなる気持ちだけは理解できますわね。可愛いですし。

 

「せ、先生ぇ……」

「……うん、私も頑張るね……」

 

 面倒見きれない、と言わんばかりの表情でヒフミさんと先生が顔を見合わせます。言っておきますけどヒフミさん、貴方は成績はいいかもしれませんけど問題児度合いでいえばこの中でもトップクラスですからね? 定期的に校則をお破りになってる自覚はあります?

 ま、この補習授業部でのゴタゴタは言わば『エデン条約編』における前哨戦、なんなら箸休め回とすら言っても過言ではありませんわ。(わたくし)も一時的にとはいえ正義実現委員会から外されてしまいましたし、束の間の休暇を楽しむとしましょう。

 

 

 

 

 

 な〜〜〜〜んてこと、ありませんでしたわ!

 

「オラァ!! 正義実現パンチ!」

「パンチじゃなくて発砲──ぐわあああ!?」

「不良生徒の鎮圧は最高の娯楽ですわ〜〜〜〜!! クソわよ!!」

 

 なんか知らねえけどコハルさんは休みなのに(わたくし)には普通に仕事が割り振られてきますわ! (わたくし)の現在の所属は正実から外れたのではなくて!? 補習授業部の活動は基本的に放課後にあるから対応可能とはいえ、これじゃ普段の生活に補習授業部としての活動がプラスワンされただけですわ! (わたくし)知っています! 特に報酬もスケジュールも変わらず仕事だけ増える有り様! 正実ってブラック企業だったんですわね!? そもそも服装からして真っ黒でしたわ!?

 

「アイス大福を2個食べられたから喧嘩するまでは良しとしましょう。それくらい、青春の1ページとしてはありふれたことですわ。むしろ健全で良し!! ──ただ、そっから銃撃戦に発展してんじゃありませんわよ!?!? くっっっだらねえ動機の鎮圧に駆り出される(わたくし)たちのことを考えたことはありまして!?」

「く、クソ! こいつでも喰らえ!」

「手榴弾ごときで止まると思ってるんですの〜〜!?!? ハニートーストアイス乗せより甘々ですわ〜〜!!」

「む、無念……ぐわああああ!!」

 

 生徒ボディ最高! ヘイロー最強! なんか知らねえけど(わたくし)は平均的な生徒より強いし硬いですわ! 銃弾や爆発を無視して無理やり制圧に行くクソムーブができますわよ! 痛いは痛いですけどツルギ先輩やイチカ先輩からしごかれるのと比較すれば温泉に浸かってるようなもんですわね!

 

 そんなこんなで鎮圧完了ですわ。(わたくし)は日本生まれの日本育ちで暴力とは無縁の生活を送ってきたはずなのに、ここ最近美少女GTAの世界観に順応してしまっていて嫌気が指しますわね。キヴォトスったらみんな頭のネジがぶっ飛んでしまっているんですわよ。ウッそんなことを考えていたら幼少期の記憶が……小学生の頃、幼馴染のクソバカちゃんが弾薬庫で火遊びして大騒ぎになった苦い記憶が……あれ、普通に(わたくし)じゃなかったら大事になっていましてよ?

 

「いたた……」

「あら。怪我をしてしまっているんですのね。こちらをどうぞ」

「あ、ありがとうございます……」

 

 お嬢様講座その一! ハンカチは常に忍ばせておくこと! わざとらしい嘘泣きをする時に役立ちますし、こういったシーンにおいて実益がありますわ! オージョッジョ! 生まれてこの方、ティーカップを傾ける角度から歩きの所作まで、お嬢様としての生き方を模索してきた(わたくし)をあまり舐めるんじゃありませんオジョよ〜〜!?

 

「撤収!」

 

 あ、隊長の撤収命令ですわ! 帰りますわよ! これから帰ってみんなでBDでも見ましょう! まあその前に装備の点検やらなんやらがあるんですけれども。ハァ……それもこれも連邦生徒会長が消えたのが全部悪いですわ。これでもちょっと前までは割と平和だったんですのよ? 本当ですのよ?

 

 

 

 

 放課後ですわ!

 

「……」

「コハルちゃん、そのページは今回のテスト範囲ではありませんよ?」

「!? い、いやっ、分かってたし!?!? 私は今回のテスト範囲はもう余裕だから先の範囲を予習してただけだし!?」

「流石コハルさんは素晴らしいですわね。でも、今回の追試は退学という、非常に大きなリスクを伴っていますわ。もちろんコハルさんなら万が一にも不合格なんてことないと思いますけれども……石橋を叩く気分で復習を繰り返しても、誰も文句は言わないと思いますわよ?」

「う……うっさいうっさい! そんなこと言われなくても分かってるんだから! 今はちょっと気分転換をしてただけよ! 同じ範囲ばかり見ていても飽きちゃうもの!」

 

 コハルさんはいつも通りですわね。

 

「すまない、ここが分からない」

「ここはですね〜……」

「なるほど、ありがとう」

 

 ところで浦和、貴方先程から率先して教えて回ってますけど、自分の頭の良さを隠す気ありますの? いやその精神は素晴らしいとは思いますけど。どうせ貴方追試では手を抜くんですから不信感を抱かれるだけですわよ?

 

「こ、これならなんとかなりそうです……!」

「そうだね」

 

 ヒフミさんと先生が安心していますわね。なんでも、一回目の追試で全員合格できないと合宿を行わないといけないという約束をティーパーティからさせられているとか、なんとか。大変ですわね。

 まあ無理なのですけれどね。一回目の追試の合格ラインは100点中の60点と控えめに言ってクソ甘なのですが、それでもコハルさんとアズサさんが合格するには無理がありますわ。純粋に勉強量が足りませんもの。それにそもそも、浦和が手を抜いて0点とか取ってくるでしょうから出来レースですわよこれ。

 

 さて、そんなこんなで早速第1回特別学力試験。結果発表〜!!

 

 (わたくし)、86点!

 ヒフミさん、79点!

 コハルさん、20点!

 アズサさん、35点!

 浦和、3点!

 

 2回目の追試決定おめでとう! ですわ! 予想通り!

 

「あ、アズサちゃん!? それにコハルちゃん!? ハナコちゃんは成績良さそうだったのになんで!?」

 

 ヒフミさんが悲鳴を上げてますわねー。南無。

 

「……逆に、シズムちゃんはなんでここに来たんですか? この分なら普段の成績から良いはずですよね?」

「それはこっちが聞きたいぐらいですわ!? 別に普段からちゃんとテストの成績良いのになんか宿題とか出席とか全然足りないことになってたんですのよ!?!? 毎回出してるし正実の活動がない限り出席もしてるのに!? これは間違いなく陰謀ですの! ナギーメイソンとナーギステートが結託して(わたくし)を陥れているに間違いありませんわ! ……ヒフミさんもそう思いますわよね?」

「あ、あはは……」

 

 引かれましたわ〜〜!! (わたくし)悲しい!!

 というわけで合宿決定! なんとトリニティ別館に一週間箱詰めを命じられましたわ! (わたくし)からすれば事実上の長期休暇ですわね! ヤッター!

 

 

 

 

 

 

 うおおおおん!! 今の(わたくし)は人間芝刈り機ですわ〜〜!! ジグザグマのいあいぎり並みの効率で刈り取りますわよ〜〜!!

 

「随分熱心だけど、シズムは草刈りが好きなのか?」

「実はそうなんですの! (わたくし)、園芸趣味がありましてよ! なのでこういう雑草は日頃の恨みつらみを兼ねて日常的にむしっているのですけれど、逆に最近はそれがストレス発散になっていまして! めちゃ楽し〜〜! ですわ!」

「そうか。うん、確かに単純作業をしていると心が安らぐかもしれない」

「ちなみに今の話はすべて嘘ですわ! 即興のでっち上げですの!」

「……????」

「シズム!? あんたそれやめなさいって言ってるでしょ!?」

「あ、あはは……」

 

 ていうか当時も思いましたけど、一週間しかない合宿の一日を丸々掃除に使っちゃって大丈夫ですの? ぶっちゃけ呑気に過ぎると思いますわ。アズサさんはともかく、コハルさんはガチでやべーと思っていますわよ?

 というわけで、ヒフミさんの部屋に突撃! 事前に用意しておいた模試作成用の資料を渡しつつ作成を手伝っておきましたわ! 事前に範囲が分からなかったので二人で作業する分が結局発生しますけども、ヒフミさんの睡眠時間は稼げますの!

 まあこんなせせこましい努力をしたところで、2回目の追試はナギサによる悪質な妨害が入って全員不合格になるんですけれどもね。vanitas vanitatum(ばにばに)……

 

 

 

 あ! コハルさんがエッチな漫画を浦和に取り上げられて揶揄われていますわ。(わたくし)静観。浦和とは極力関わりたくありませんの。あと慌ててるコハルさんが可愛いですわ〜。青春ですわね。

 ちなみに思ったより健全な内容でしたわ。まあ流石に首マ*コレベルで過激な内容ではないだろうと予想してはいましたけれど、NTRでも触手凌辱でもケーキ化でもないなんて、コハルさんもまだまだですわね。「上」で待ってますわよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先生の部屋にて。

 

「……ところで先生、つかぬことをお聞きしますが、ホシノさんはお元気かしら? アビドスの」

「あれ? 知り合いなんだ。元気にしてるよ」

「それは何より。ほら、あの方も色々あったでしょう? ──ゲマトリアの黒服のアレコレとか、ね?」

「──シズム」

 

 やるんだな(わたくし)!!

 ああ……勝負は今、ここで決める!!

 

「あら、どうしたんですの先生? 顔が怖いですわよ?」

「その名前を、どこで知ったのかな」

「いやですわね。(わたくし)、会った時から今の今まで、情報通アピールは散々してきましてよ? あくどいことを企んでる大人の一人や二人、知っていて当然だと思いませんこと?」

「……シズム。彼らは、危険だ。物見遊山気分なら、今すぐ関わるのをやめて欲しい。お願い」

「あら? 関わっているだなんてそんな、言いましたっけ? (わたくし)と黒服に面識はありませんわよ? (わたくし)が一方的に知っているだけですわ」

「だとしてもだ。深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを、なんて言葉もある。私はただ、生徒に危ない目にあって欲しくないだけなんだよ」

「ふんむ。当然の意見、そして心配ですわね。そういうことならご心配無用ですわ! ……そうですわね。例えば、(わたくし)が図鑑を眺めているとしましょう」

「……急になんの話?」

「例え話ですわよ。先生にも分かりやすいように、ですわ。そうですわね、ここはとりあえず……カブトムシの図鑑ということにしましょうか。外国の色んなカブトムシの写真が乗っている図鑑ですわ。最近の図鑑は凄いですわね。ただその見た目を列挙するだけでなく、その雄大さ、生態、羽を広げて飛び立つその瞬間、その羽ばたきにより巻き起こる風すら鼻に当たる気分ですわ。さて。今、(わたくし)は図鑑にのめり込んでおりました。もうメチャクチャ見入ってましたわ。警戒とか一切、ゼロで、カブトムシと目を合わせたりすらしちゃいましたわ。──ここで、果たして向こうのカブトムシは私のことを見返せる、覗き返せるでしょうか? 確かにリアルですわね。写真家と編纂した方々の努力の賜物ですわ。ですが所詮、写真ですわよ? 本当に、深淵に潜む怪物どころか生き物ですらないただのプリントアウトされたイラストにそんなことが出来るとお思いで? 無理ですわよね?」

「……それは、油断なんじゃないかな」

「いいえ。これは油断とか(わたくし)が黒服、ひいてはゲマトリアを舐めているという意味ではありませんわ。あくまで仕組みの話ですのよ。もちろん情報の漏洩だって心配ありませんわ。なんてったって(わたくし)、生まれてこの方、『ゲマトリア』なんてついさっき初めて耳にしましたもの。(わたくし)の口から出たものを初めて聞きましたわ」

「……???」

「混乱してますわね。──あっ!? ていうかもしかして、先生ってもうミカ様と話してまして!? もしかして(わたくし)、既に混乱している先生に新たな悩みの種を蒔いてしまいましたの!? ゴメンですわ!」

「いや、うん、大丈夫だよ。生徒の話を聞くのが私の役割だからね」

「お心遣い感謝感激雨あられですわ。お詫びに、そうですわね。答え合わせ(ネタバレ)を一つ。トリニティの裏切り者なんて、補習授業部には一人もいませんわよ? あと、これを信用するかどうかはお任せしますけど、黒服の覗きについてあんなに長々と解説したのはひとえにご自身の不安を払拭するためですわ。こちらはご理解いただけると嬉しいです」

 

 ぐわ〜〜〜〜〜〜!!!!!

 

 日和りましたわ〜〜〜〜〜!!!!!

 

 本当はもっと、銀行強盗の件とか、セイア様生きてますわよとか、アトラ・ハシースとか、ウトナピシュティムとか、色々、い〜〜〜〜ろいろくっちゃべってドヤ顔したかったのに〜〜〜〜〜〜!!!!!!! で、でも先生にヘタに情報出しすぎるとこの後の展開に悪影響あるかもしれませんし……なにより先生の関心は(わたくし)が黒服と接触したことにしかないみたいでしたし……

 

 うーん、まあ。

 最低限、毒にも薬にもならない程度の助言でしたが、それっぽいことはできましたし。よしとしましょう。

 

 

 

 あっ! アズサ様が抜け出していますわ! カブトムシでも取りに行くのかしら? 元気ですわね〜〜!?!?

 ……ここを追いかけたら、ミサイル発射場を特定できたりしませんかしら……?

 

 

 

 

 

 

 

 ばしゃん。

 大きな水音を上げて、プールに飛び込む。

 そのまま、底にあるタイルがあるところまで、沈む。

 深く深く。

 暗いところへ。

 水底へ、沈む。

 

 ……落ち着く。

 

 何故だろうか。キヴォトスで、生徒になってからというものの、水の底にいると随分と落ち着くようになってしまった。思考が冴え渡るというか、脳が冷えるというか。私は陸上生物で、哺乳類なのに。クジラやイルカのつもりなのだろうか? それとも、酸欠で巡りが早くなった血液が脳を高速で回すから、それを「頭が冴える」と勘違いしてしまっているのかもしれない。

 

 ……大丈夫だ。

 私が心配しなくてはならないことなど、何一つとしてない。

 先生は全ての生徒の味方の、スーパーヒーロー。オーパーツたるシッテムの箱と絶対の切り札たる大人のカードを併せ持った、原作ストーリー上における最強ぶっ壊れキャラなのだから。彼に任せておけば委細問題ない。私は、いつものように正義実現委員会で退屈な治安維持業務でもしていればいい。なにか問題があったらその時は、私がそれとなく手助けすればいいだろう。それで十分なはずだ。むしろ、過干渉は影響が怖い。

 

 ここは、暗いなあ。

 そして、静かだ。

 何故わざわざ学校のプールをここまで深く作ったのかと疑問に思ってしまうくらい、ここのプールは底が深い。容積がある。金持ちだから大は小を兼ねる理論で無駄に大きく作ったということだろうか? 管理の手間もあるしそもそも大きすぎるものは何かと取り回しに難を抱えがちだ。物事には中庸という概念があるのだぞと、声を大にして言いたい。

 そういえば、大きいといえばこの前ハスミ先輩と一緒に食べたパフェがとても美味しく……

 ああ、そろそろ限界か。酸欠で思考が乱れ始めているな。どれくらい潜っていただろうか? 我ながら、随分と長く潜水できるようになったものだと関心する。真空の宇宙空間ですら数分生存できる生徒の体であれば、ここからでもずっと長く生きていられるのだろうとは思うが、脳に障害が出ては困るし、何よりシンプルに苦しいのは嫌だ。そろそろ上がるとしよう。

 

「……〜〜!! ……、〜〜!!」

 

 ……ん?

 そういえば、何やら声が……

 

 目を開ければ、そこには見慣れたピンク髪が。

 

 

 

「ぷはっ」

「はっ、はっ……あ、アンタ、何してんの!? 死にたいの!?」

「……え? あ、ああ。ごめんなさい。心配してくださったんですのね。その、(わたくし)、こう見えて潜水が特技ですのよ。たまに、やらないと落ち着かないというか、無性に飛び込みたくなってしまって……」

「は、ハァ!? 特技!? ただ潜ってただけってこと!? ずっと浮かんでこなかったし、水の中でも死んだように目を瞑ってたからすごい怖かったのよ!?」

「……その、本当にごめんなさい」

 

 あ〜。

 (わたくし)、成長してませんわね。

 昔も似たようなことやっちゃいましたわ。アホで可愛い幼馴染ちゃんの前で潜水を披露したら、5分以上も上がってこなかったからか、ギャン泣きさせてしまいましたの。もうちょっと、過去の失敗から学んでくださいまし?

 

「ふ、ふん! 元気ならいいのよ! ていうか心配して損したわ! 今度は助けてあげないんだからね!」

「……ふふ。ありがとうございます。コハルさんは優しいですわね」

「ハァ!? ちょっと、助けに来た人に対してなんなのその態度……ってちょっと! 撫でるな!」

「よしよし」

「こいつ……!!」

 

 

 

 

 

 

「……なんだか、シズムちゃんって大人びていますよね」

「……あら? そうかしら?」

 

 ちょっと意外ですわね? これでもバカっぽい仕草には気を使っていましたのに。もっとペロロ様みたいな顔した方がいいかしら? 殺されそうですわね。

 

「はい。私と違って、一年生なのになんだかむしろ年上みたいで……なんというか、率先して騒いでいるのに、その実内側では一歩引いて全体を見ている、という印象でしょうか? もしくは、あえて元気そうに振る舞うことで、一線を引いている……? ──あっ、ごめんなさい」

「いえいえ。気にしてませんわよ」

 

 ヒフミさん!?

 あなたも浦和属性の持ち主ですの!? ちょっと勘弁してくださいまし! 人にはパーソナルスペース(誤用)ってものがありましてよ!?

 

「で、でもすごいですよシズムちゃん。まだ1年生なのに2年生用の問題も分かっちゃうんですね。正義実現委員会の活動だってあるのに」

「ふふん。まあコハルさんほどではありませんが、(わたくし)も正義実現委員のエリートですのよ。予習・復習はいつも完璧ですの。これくらいちょちょいのちょいですわ」

「それなのに補習授業部に入れられたんですね……」

「ちょっと!? その件を引き合いに出すのはやめてくださいまし! だいいちあれは陰謀だと──」

 

 

 

 

 

 第2回!特別学力試験ですわ〜〜!!

 なんと! 今回の(わたくし)たちはひと味違いますわよ! 直前の模試で全員合格判定を出していますの! つまり余裕のよっちゃんってことですわね!

 まあ今回は恐らく全員回答不提出になるのでしょうけど。何故なら会場はゲヘナ学園自地区ですし、会場に爆弾が設置されていて答案用紙が消し炭になるようセッティングされているからですわね。おのれナギサそこまでするか。正しく悪鬼羅刹──いえ、ナッギ羅刹の所業ですわね。ていうかエデン条約で慎重な時期とか言ってるくせに(わたくし)たちをゲヘナに送り込む神経が理解できませんわ。本当にまともな判断できてますの? いやできてないんですけどもね?

 

 というわけで、現在(わたくし)たちは「正義実現委員会が襲撃してきた」という誤報を広められつつ、ゲヘナ屈指のテロリストこと美食研究会と結託してゲヘナを荒らしていますわ〜〜!!

 ……本当に大丈夫なんですのこれ? マジで外交問題じゃありません? ナギサ? ナギサ? お前本当に大丈夫ですのよね? なんだかんだセイア様不在の今はお前が最高権力者なのですけれど、ヒトラーとかポル・ポトみたいなムーブしませんわよね? この辺は(わたくし)も原作記憶曖昧ですし滅茶苦茶不安なのですけれども?

 

 いやていうかイオリさんつえ〜〜!! ちょっと強すぎますわ。本当にギャグキャラですこと? アズサさんと(わたくし)で組んでいるのに普通に押されてるんですけれども? (わたくし)これでも正実1年なら戦闘力最強で通ってるんですけれども?

 

「トリニティ生だろうと、正義実現委員会だろうと、ゲヘナで暴れるなら容赦しないからな……! 覚悟しろよ!」

「おほーほほほ! 割と申し開きもない状況なんですけれども、正義実現委員の侵攻という部分だけ訂正してほしいですわ〜! 今回は色々間が悪かったんですのよ〜! 誤解、というやつですわ〜!」

 

 それもこれも全てナギサが悪い!

 いやまあ、元を辿ればベアトリーチェが一番悪いんですけれどもね? 許さん、許さんぞ陸八魔ベアトリーチェ……

 

「黙れ! こんなところまで来て散々銃をぶっ放して誤解なんて通るわけないだろ!」

「ひ〜!! 今回だけは見逃してくださいまし! 風紀委員会様のご寛大な処置を期待していますわ……あら、アズサさん」

「シズム。準備が出来た。3カウントで行こう」

「合点承知の助ですわ! カウントはお任せします!」

「OK。3、2、1……ゴー!!」

 

 イオリさんはガチの最強勢を除けば上澄みも上澄みのキヴォトス準最強格……ですが! トラップに死ぬほど弱いという明確な弱点がありますわ! そしてこっちには正面戦闘はそこそこ強い(わたくし)にゲリラ戦のプロことアズサさん! (わたくし)が時間を稼いでアズサさんが罠に嵌める! 多少苦戦こそしましたが、情報アドバンテージも相まって負ける要素なんてありませんわ〜! イオリさんのバーカバーカ! 今度ブラックマーケットでアルバム見つけたら即刻先生に送りつけてやりますからね!

 

「覚えてなさいませ〜〜!!」

「ゲホッゲホッ……クソッ!! 逃がした!!」

 

 ……とまあ、なんとか逃げ切れましたわ。逆に、浦和のサポートとアズサさんがいてなんてここまで苦戦させられましたの? 頭おかしいですわ。

 

 あ、ちなみに答案用紙は温泉開発部に爆破させられていましたわ。ナギサ、お前温泉開発部動かせるパイプあるならもっといいやり方が色々あるんではなくて?

 

 そして……ハァ……第3次特別学力試験の時期がやってきましたわ。

 ついに始まりますのね。

 エデン条約が。

 裏切りと絶望、そして信頼と希望の物語が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シズムちゃん」

「なんですの、浦和」

「……私のことはいつまで経っても名前で呼んでくれないんですね」

(わたくし)、貴方のことが個人的に嫌いでしてよ。なのでそんな馴れ馴れしく呼ぶ気はありませんわ、浦和。それで? わざわざ二人っきりで話なんてするんですから、話したいことは別にあるのでしょう?」

「シズムちゃんに嫌われてるのはちょっと悲しいですが……そうですね。本題に入るとしましょう。──シズムちゃん、あなた、何を知っているんですか?」

 

 ……………………………

 

 はあ。

 

 憂鬱ですわ。

 

 ッッッシャァ!!!!

 謎の事情通ムーブキタコレ!!!!

 今まで貯めに貯めた(わたくし)の謎の情報屋ムーブ108個、余すことなく見せてあげますわ〜〜!!

 

 くらい、状況と相手が違えば言えていたのでしょうけどね。

 

 ハァ……

 

 よりにもよって、あの浦和に、よりにもよってこのことを聞かれるとは。いえ、聞いてくるとしたら間違いなくこの女であるとは思っていましたけれどもね。

 

「別に、何も隠し事なんてありませんわよ。(わたくし)はただの、普通の、トリニティ総合学園1年生で、正義実現委員会のメンバーですわ」

「ですが、それだけでは説明がつかないことがいくつかあります。アズサちゃんがアリウス出身であること、知っていましたよね?」

「……知りませんでしたわよ。初耳でしたわ」

「一切、表情が動いていなかったのに?」

「あら、ごめんあそばせ。(わたくし)、こう見えてこのキャラは作っていますの。誰からも見られていない時は気が緩んで無表情になってしまうのですわ。アレでも内心驚いていたんですのよ? アズサさんの戦闘技術は確かに目を見張るものがありましたけど、まさか、アリウスなんてところから送られてきたスパイだなんて思うわけありませんでしょう」

「では、どうして2年生、ひいては3年生のテスト範囲まで理解し、解くことすらできるんですか? 私のような、常に学校にいる生徒であれば理解できなくもないですが、シズムちゃんは普段、正義実現委員会としての治安維持活動や事務作業まで行っていますよね? いくらなんでも、知識を入れる時間が存在しないはずです」

「それを貴方が言いますの? (わたくし)、貴女ほどではないとはいえこれでも天才であると自負していますの。BDなんて4倍速で流せば十分ですわ。時間ができてできて退屈でしょうがなくて、それで暇つぶしに3年生の範囲まで見ていたんですのよ。こんな形で役に立つとは思いませんでしたけど。お力になれたようで何よりですわ」

「……トリニティ総合学園の1年生は、まだ入学してから日が浅いです。それに、シズムちゃんの1日あたりの可処分時間を考慮すれば、当時の私でも厳しいと思います」

「あら、(わたくし)って随分と頭が良かったみたいですわね。褒めてくださっているのかしら?」

「……シズムちゃん」

「単に、(わたくし)の出来がいいからですわよ。それで説明は全部ですわ。それ以外話せることはありません。だって、それしかありませんから」

「……わかりました。話を変えましょう。合宿中、先生とお会いになっていた時がありましたよね。あれから少し先生の雰囲気が変わりました。どんな話をしたんですか?」

「恋バナですわよ。普通のことではありません? 先生も男性ですから、誰か気になる方とかいませんのー、って話をしにいっただけですわ。ちょっと雰囲気が変わったというのも、その誰かを意識した結果なのではなくて?」

「……シズムちゃん」

「なんですの、まだ追求したい事項がありまして? 第3次特別学力試験も眼の前ですし、ティーパーティーによる妨害もあるみたいですから、(わたくし)も休んでおきたいんですけれども」

「……シズムちゃん、悩みを誰かに話したくない気持ちは分かります。私も、それが分かるからこそ無理矢理にでも聞きたいとは思いません。特に私は嫌われちゃってるみたいですし。ですが、せめてあの三人には話してあげたらどうですか? この一週間の合宿、間違いなくシズムちゃんは楽しそうにしていました。きっと、みんなとの親睦も深まったはずです。アズサちゃんは悩みを吐露できました。私も救われました。……なのに、シズムちゃん一人だけが苦しいままなんて、寂しいじゃないですか。だから、誰かに話してあげてください。アズサちゃんでも、コハルちゃんでも、ヒフミちゃんでも、先生でもいいです。みんな、優しいですから」

 

「──ハナコ」

 

 あえて、名前で呼ぶ。

 

 窓の外へ体を向ける。(わたくし)の左側に位置するようになった彼女を、横目で眺める。

 

「──!」

「認めましょう。ええ、忌々しいことに、貴女の感受性、そしてその頭脳は極めて優れていると評さざるを得ませんわ。確かに、(わたくし)は貴女がた全員に対して隠し事をしています。ですが、世の中には話しても解決しない悩みも、むしろ話したからこそ状況が悪化することもあるんですのよ。ですから(わたくし)は、絶対に、話しませんわ」

「……そうですか」

 

 どうして泣きそうな顔をしていますの。

 

 ずっと前から思っていましたけど、貴女、妙に(わたくし)に馴れ馴れしいですわよね。嘘と偽りは貴女の最も嫌いとするところではごさいませんでして? 理解に苦しみますわ。

 

「ご安心なさい。(わたくし)は貴女がたの味方ですわ。今は話すことができずともいつかは知ることになるでしょうし、決して、悪いようになりませんから」

 

 ええ。

 所詮、(わたくし)なんて、変化が怖くて、世界の隅っこでうずくまってるだけの、風見鶏ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとう、補習授業部……そして先生。あなたたちの勝ちってことにしてあげる」

 

 いやー……大立ち回りでしたわね。

 

 ナギサを気絶させて保護し。

 ナギサをぶっ殺しに来たアリウス生徒を撃退し。

 ミカ様が大量のアリウス生徒と共に乗り込んでくるものの、我らが補習授業部、そして応援に駆けつけて下さったシスターフッドの皆様の力を合わせて撃退しましたわ! アズサさんにボコボコにされるナギサの姿には胸が空く思いでしたわね! ざま〜〜!!

 

 その後もミカ様がセイア様の生存を知って本格的に逆らう気を失いました。そもそも、セイア様がアズサさんにぶっ殺されたとミカ様が思い込んだのが今回の騒動の発端ですしね。アズサさんへの詰め方ヤバかったですわね。モンペみたいでしたわよ?

 

 (わたくし)? (わたくし)はなんか、ミカ様から多めに銃弾もらって倒れてますわ。ひどくありませんこと? (わたくし)ってそんな怪しくないですわよね? まあでも一番被弾した分、補習授業部の被弾を抑えられたと考えればラッキーなのでしょうか? 一発あたりのダメージが一番小さいのって(わたくし)でしょうし。

 

 とまれ、ナギサに対する諸々の容疑がかけられたミカ様が連行されていきます。いやー、一件落着、完全にシナリオ通りですわね。このまま行けば先生にはちょっと、ちょーーーーっと生死の境を彷徨ってもらいますが全てが丸く収まる大団円へ迎えるでしょう。少なくとも調印式に関しては。まあ全部が終わったら菓子折り持ってくついでに仕事でも手伝ってあげましょうかしら。

 そして第3次特別学力試験ですわね! 笑っても泣いてもこれが最後ですわ! ていうか、これって私が突然窓から狙撃されて気絶したらそのまま全員不合格ですの……? 地味にプレッシャーがヤバいですわ!

 実際のところはそんなアクシデントもなく、結果は

 

 (わたくし) 98点

 ヒフミさん 94点

 アズサさん 97点

 コハルさん 91点

 浦和 100点

 

 でしたわ! 結局のところ一度も浦和に勝てなかったのが腹立ちますわね〜〜!! ま、全員90点取れて合格したのでオールオッケーですわ!

 アリウス、ティーパーティの問題は全てこれで解決! 補習授業部の退学の話もナシ! 全てクリア! これぞ真のハッピーエンド! ですわね!

 

 

 

 

 

 そんなわけないでしょうが!

 これからエデン条約調印式がありますのよ!? あの後ろにはベアトリーチェ率いるアリウスがいて、それはもう滅茶苦茶大規模な戦闘になりますし先生は何回か死にかけますわ! しかもベアトリーチェは色彩を呼び込んでキヴォトスを崩壊させる儀式を裏で準備していますから、計画が狂ったら何をしてくるかわかりません! キヴォトスが崩壊したらそのまま(わたくし)たちもデッドエンド!

 は〜〜〜〜〜〜、胃が痛みますわ〜〜〜〜!!!!

 ……先生、脇腹撃たれた程度で死にませんわよね? いやほんと、死んだら全て終わりなんですけど大丈夫ですわよね……?? 死んだら呪いますわよ……??

 

 そういえば、結局ミサイルの発射場は特定できませんでしたわね。

 

 

 

 

 

 

 

 いや〜〜、すごい熱気ですわね〜……

 これ本当に平和条約の会場ですの? なんかもう敵対心バチバチなんですけれども?

 あっ見てくださいまし風紀委員長さんがいますわ! フワフワでちっちゃくてとてもお可愛いですわね〜〜!! ♡♡♡ファンサして♡♡♡ (わたくし)、本当はこんなトリニティ総合学園とかいう無駄に陰湿な学校じゃなくて、ゲヘナ学園に行きたかったんですのよ! それで可愛らしい風紀委員長さんを眺めながら働くつもりでしたの! こんなツヤツヤでフサフサの羽根さえなければ! 生まれさえ……生まれさえ違えば……!!

 あっ見てくださいましイオリさんがいますわ! あっすぐこちらに気が付いた! あっ滅茶苦茶睨みつけてくる! 怖いですわ〜〜〜〜!! わ、(わたくし)みたいなか弱い一般女学生を睨みつけて楽しいんですの……?? ほ、ほらそこにツルギ先輩とかいますわよ……?? 睨みつけるなら彼女の方が適任ではなくて……??

 

 ところで先生はどこにいるのでしょう? そろそろ「時間」のはずなので、流石に念の為近くに行っておきたいのですが……あ、いた。あっ一緒に見ちゃいけないもの見えましたわ! 空に黒い点! 黒い点がどんどん大きくなっていますわね! あれ巡航ミサイルでしょう? これ間に合います? いやまあアロナがいるので安全といえば安全でしょうが、いや私は行きますわよここで決めましたわ時間がありませんもの! 間に合ってくださいまし──!!

 

「お前、どうし」

 

 ごめんなさいませ隊長! ワンチャン人命がかかっていますの! ッシャオラ(わたくし)の健脚見せてやりますわよ!

 

「シズム!? どう──」

「伏せてくださいまし!」

 

 押し倒す。

 着弾。

 轟音。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あいたたたた……

 

 ふっ、無事ですわね……?

 わ、(わたくし)、腹が……!?

 安いもんですわよ、命の一つや二つくらい……

 

 なんて、嘘ですわよ! (わたくし)はピンピンしておりますわ! ちょっと体の節々が痛みますけれども! イチカ先輩のしごきに比べたらマッサージ機程度の刺激ですわね!

 

「……ご無事かしら?」

「ああ、うん。シズムこそ大丈夫……?」

「屁でもありませんわ。それより、早くここから出てくださる? 先生が出ていただけないと(わたくし)動けませんわ。脚が潰れていたりはしませんわよね?」

「うん。平気。守ってくれてありがとう」

 

 なんでかっていったら(わたくし)たちに向かって崩れ落ちた瓦礫を背中で受け止めているからですわね! (わたくし)が動いたら先生が潰れちゃいますわ! ていうか、アロナ、お前のバリアはどうしましたの? 先生を守れないならお前なんてただの仕事サボり魔のクソ野郎ですわよ?

 うおっあっぶね。崩れ落ちた拳大の岩が先生の顔面に直撃するところでしたわ。すんでのところで払い除けます。マジで危ないから早く出てくださいまし〜〜!! 貴方(わたくし)と違ってこんなチンケな石ころ一つで死にますのよ〜〜!?!?

 

 そして……おお。惨憺たる有り様ですわね。風紀委員、正義実現委員両方とも大量の生徒が倒れていますわ。同じ場所で仲良く寝ているのだからこれでエデン条約調印完了ということにならないかしら? ダメ?

 動けるのは(わたくし)と先生と……そしてシスターフッドのヒナタさんに、ツルギ先輩ハスミ先輩の両翼ですわね。順当に強い人だけ残ったという印象。イチカ先輩もいれば死ぬほど頼りになったのですけれども。無い物ねだりですわね。

 

 うーむ……周囲には戒野ミサキ率いるアリウス生、しかも追加でユスティナ聖徒会の複製(ミメシス)! ツルギ先輩が暴れ散らかしていますけれども、複製(ミメシス)は無尽蔵なので無意味ですわね!

 

「ユスティナ聖徒会……!?」

 

 ユスティナはシスターフッド関連の存在なので、ヒナタさんが解説してくださいますわね。

 サービスですわ。ちょっとだけ補足してあげましょうか。

 

「追加で言えば恐らく、あれは調印式の契約を利用した複製体ですわ! 撃っても撃っても手応えがないのはそのため! 多分ですけれども、ほぼ無尽蔵に湧いてきますわよ!」

「し、シズムさん、何故あなたが聖徒会を……?」

「どっかの本の片隅で読みましたわ!」

「ですが状況は理解しました。要するに、倒せないということですね。そして私たちが現状優先すべきは──先生の脱出」

「つまり撤退戦、ということか」

「さっすが先輩方! 話が早くて助かりますわ〜!」

 

 まあ普通に押されてるんですけれどもね! このままじゃヤバいですわ!

 ていうか記憶が違わなければ原作とあまりにも展開が同じ過ぎませんこと!? 一応こっち(わたくし)1人分戦力多いんですのよ!? うそ、(わたくし)の戦力、ショボすぎ……!?

 

「──先生!」

 

 あ! 風紀委員長! ゲヘナの風紀委員長が救援に来てくださいましたわ! 聞けば、風紀委員長が先生を連れて脱出してくれるそうですわ! 超頼もしいですわね〜〜!! 正義実現委員会はその間、ミサキ達の足止めをお願いしたいとかで! ……あっ、はいはい(わたくし)先生が心配なのでついていきたいですわ! ……ダメ?

 

 はー…

 先生。

 ここ、 マジで山場も山場、難所、RTAで言ったらリセットポイントですからね? 本当に頼みますわよ? あとアロナほんまにしっかりやれよな? 頼むぞ?

 

「先生」

 

 ちょっと手元が忙しすぎて目を離せないので、前を向いたまま。

 

「どうか、ご無事で」




息抜きとして書いたものの想定より長くなったため一旦投稿。
多分今日中に完結します。
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