「ご、誤解ですわ」
「嘘だ! ポチ? とか言ってたじゃん!? めっちゃ大きい高笑いとかも聞こえたもん!」
「そんなことありませんわよ。ね? 先生。あったとして、あんなのただのスキンシップの一環ですわよね?」
「モモイ」
ん?
なんか急にキメ顔始めましたわね。
なんだか、ものすげー嫌な予感がしますわ。
「シズムはね……私の女王様なんだ」
「ほらー!?」
「急に梯子外すのやめてくださいまし!? 冗談! 冗談ですから!」
すごいですわね! ものすごいペースで誤解が進んでいく! ミドリさんの視線が一番笑えませんわ!
「フッ……シズム」
「な、なんですの?」
「(無言でアルバムを掲げ、顎を少し上げた状態で振り返る)」
ドヤァ……
は、腹立つ〜〜!!!!
ブツを手に入れた途端調子乗りやがって〜〜!! ですわ!!
ていうか冷静に考えてなんで私が弁解してるんですの? 生徒と教師という立場を考えれば、本来この場で一番ヤバいのって先生ですわよね? つまり私の行動は先生を庇っているのと同義ではなくて? なぜその私がおちょくられているのかしら?
ふむ。
「いいでしょう。それなら私にも考えがありますわ」
「え?」
「えーと確か……『みんなと仲良くなれる101のモモトーク必勝法』、でしたっけ?」
「!?!?」
「本棚の奥に、メンズコーディネートについて書かれたファッション誌も隠していますわよねえ?」
「!?!?!? し、シズムさん?」
「あら、なんですか? 私、まだ何も言っていませんわよ? ……あら、でも、こうして先生にイジワルばかりされてたら、他にも口が滑ってしまいそうですわねえ? 今、この場で」
誰かの絆ストーリーで読んだ覚えがありますわ。貴方、ベッドの下に本を隠すとかいう超古典的な手法を取るタイプのオトコノコですわよね? いやー、あの先生のことですもの。きっとあんな本やこんな本もあるんでしょうねえ。ゲーム開発部の前で色々バラしちゃいますわよ?
ま、この二冊くらいしか覚えてないんですけれどもね。そもそも知りませんし。だってあくまで詳細な描写のない原作の知識を喋っているだけですから。先生の自室の本棚やベッドの下まで事細かに描写されてたらそれはそれで困るというか、開発スタッフを疑いますけれども。
ま、ブラフというやつですわ。
「──四人とも。この子は美奈底シズム。トリニティ総合学園の正義実現委員会所属で、とても正義感の強い優しい子だよ。SMプレイだなんてそんな、清廉潔白な彼女がするわけないじゃないか」
これに懲りたら二度と逆らうんじゃありませんわよ、雑魚が。
「私はむしろ、今のやり取りで疑惑が深まったよ……」
あ、あら……? 何故……?
こほん。そろそろ空気を戻しましょうか。
「始めまして。モモイさん、ミドリさん、ユズさん、そしてアリスさんですわよね?」
「アリスたちのことを知っているのですか?」
「ええもちろん。ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部でしょう? C&Cに並ぶミレニアムの武装勢力の」
「違うよ!?」
とはモモイさん。違いましたっけ?
確か……
「あら? でも、以前C&Cと交戦したり、廃墟への潜入を行ったりしていたはずでは……? あの美甘ネルさんとも戦って無事だったとも聞いていますけれども? トリニティでいうところ自警団のような存在だとばかり」
「ち、違う……いや違くないけど! 私達は部活名通りゲームを作る部だよ! ミレニアムプライスで賞も取ったし!」
「冗談ですわ。テイルズ・サガ・クロニクル2のシナリオライター才羽モモイさん、イラストレーター才羽ミドリさん、プログラマー花岡ユズさん、デバッガーの天童アリスさんですわよね? 面白かったですわ。お会いできて光栄です」
「えっ嘘、ユーザー!?」
「ええ、まあ」
そりゃまあ私、生前はブルアカやってるようなタイプのゲーマーでしたもの。TSC2もちゃんと遊びましたわよ。キヴォトスには妙に似たようなゲームもありますから、昔やり込んでたゲームもたまにやったりしますわ。愉快なパーティーゲームとか。時間がある範囲でですけれどね。
私がTSC2を知っていると言った途端、今まで黙っていたミドリさんやユズさんの雰囲気が気持ち和らぎます。まあ出会いが出会いでしたからね……これで少しでも警戒を解いてくれるといいのですけれど。
「ところで、今日はなぜシャーレに?」
「はい! 先生と一緒にゲームをしに来ました!」
「あら、そうでしたのね。お茶でも飲んでゆっくりしていって?」
「はい! ありがとうございます!」
ま、適当に紅茶を淹れるムーブで席を外すとしましょうか。私お邪魔そうですし。
ていうかなんで私が先生の客をもてなしてますの? 私も客側なんですけれども?
一度席を外してから戻ってきてみれば、ゲーム開発部と先生が各々自由な形で寛いでいました。
今はどうぶつカートで遊んでるみたいですわ。パーティゲームの代表格ですわね。
あ、アリスさんがカーブに合わせて体を傾けていらしてよ。かわいい。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ」
めーっちゃ手持ち無沙汰になりましたわね……先生もゲーム開発部に混じって遊び始めましたから、その横で私だけ仕事をしても、って感じですし。
お菓子とゲーム開発部が遊ぶ光景をお供に紅茶でもしばきましょうか。
あ、あら……愉快な大乱闘パーティゲームが始まりましたわね……私ブレーキ。ちょっと、ちょーーっと混ざりたくなりますけれども我慢ですわ。私このゲームに関してはオタクですので混ざった瞬間空気をぶち壊す自信がありましてよ。
「シズムはゲームをしないのですか?」
とはアリスさん。一人ポツンとしてる私を気づかってくれたのでしょうか。お優しい方ですわね。
「いえいえ、お気になさらず。私はここで見てるだけで十分ですわ」
「でも、なんだかシズムはウズウズしてる気がします! 歴戦の武闘家の気配です! シズムはきっとあのゲームに詳しいです!」
「あらあら……」
か、カンが鋭いですわね……
ふむ。
まあ、一戦だけなら……
「あ。えーと、シズム……さん」
「シズムでいいですわよ。私も混ぜてもらっていいかしら?」
「もちろん! じゃあこれ終わったらね!」
「ええ。よろしくお願いしますわ」
このゲーム、基本的には最大4人までを想定しているので、先生も合わせて5人いる今は一試合ごとに一人休む形でローテーションを回してるみたいですわね。私は次の番、と。まあそろそろ終わりそうですけれども。
次のメンバーは……あら。
花岡ユズ……いえ、UZQueen。
……
……ふーん。
オラオラオラオラ!!
スマッシュ!! B技!! スマッシュ!! B技!!
脳みそが溶けますわ〜〜!! たのし〜〜!!
「わ、ちょっと、待って!?」
「逃がしませんわ〜〜!!」
「ああ〜!!」
全自動で動くお助けキャラの攻撃で拘束されてたモモイさんのキャラが私のキャラにボコされて場外へ消し飛んでいきましたわ。最高。真の意味で愉快なパーティゲームですわね。ドリャドリャ鳴いて剣振ってる単細胞鈍重おじさんもこういう使い方する分にはキャラランクSSSですわ。
「あっ……ちょうどいい位置」
「ホアッ!? ちょっ、ぬぐぁ!! やめてくださいまし!?」
あっあっあっものすごい勢いでダメージが蓄積していく! なんなんですのこのユズとかいう女! アイテムあり通常ステージですからアドリブコンボですわよね!? 抜けられないんですけれども!? ちょっと!? ……あ、死んだ。
ぬ、ぬぐぐぐぐぐぐ!! 今日という今日は許しませんわよUZQueen!! いつもいつもいつもいつもいつも私のレート吸っていきやがって!! 積年の恨み、晴らさせてもらいますわ!! 生徒ボディによってブーストされた反応速度とボタン捌き、ここで披露して差し上げます!! ガチャガチャガチャ!! 単細胞鈍重おじさんだからテクニカルな動きとか全然できませんわ〜〜!!
リザルト!! ユズさん一位私二位ミドリさん三位モモイさん四位! クソわよ!
「ぐ、ぐぎぎぎぎ……」
「いやシズム結構上手くない!? ひょっとしてこのゲームやり込んでた?」
「えっ、ああ……いや、まあ。その、私、中等部の頃は結構ゲームをやっていましたのよ」
中等部というか、生前ですけれどもね。
「そうなの!? トリニティの生徒ってそういうの全然やらないイメージあった! TSC2も遊んでくれたみたいだし、ひょっとして割とゲーマー? 初代TSCも遊んでくれてたりする?」
「いえ……ごめんなさい。私、インディーズはよほど話題になってないと触らない程度のライト層でして……」
「あっ、そうなんだ……」
ショボーンとしないでくださいましモモイさん! 実は知らないから遊んでいなかったんじゃなくて原作で散々クソゲークソゲー呼ばれてたから触らなかったとか言えませんわ! 原作プレイ時「ダクソとか信奉してるタイプのやつが作った系列の典型的なクソゲーだな……」なんて思ってたりとか、決して言えませんわ! 私超心苦しい!
ま、これで対戦もおしまい。中々楽しかったですわね。紅茶でも飲んで一息つきましょう。
「あ、あの……」
あら、ユズさん? なんでしょうか。
「もしかして、シー・タイスさん……ですか?」
!?!?!?!?
「な、なななな、なんの、こ、ことかしら? わ、私、存じませんわ」
「めっちゃお茶溢れてるよ……」
「誰? それ」
「うん……たまにランクマッチで会う、結構強い人」
「やっぱり! シズムは歴戦の武闘家だったのですね!」
「い、いえ……? 違いますけれども……? どなたでしょう……? その、しー、たいす? とかいう変な名前の方は……? 私の名前は美奈底シズムですけれども……?」
「ユズはどうしてそう思ったの?」
「あ、えっと、はい……その、読みのパターンとか、要所の動かし方が、そっくりだなって……マッチングする時は違うキャラでしたけど……あと途中から急に動きが良くなってたので……」
はぁー!?
読みのパターン!? 要所の動かし方!? そんなんに個人のクセが出ると思ってますの!? 言っておきますけど、私そういうのは可能な限りランダムになるように散らしてますわよ!? キャラの動かし方なんてのも、結局ある程度キャラの特徴に沿って『正解』が生まれるのだからみんなだいたい似たようなものになるのではなくて!?
そんなん根拠足り得ませんわよね!? 証拠不十分で不起訴ですわ! 裁判官!?
「あっ! じゃあじゃあじゃあ、私二人のタイマン試合見てみたい! シナリオのインスピレーションになりそう!」
「ちょっと?」
「アリスも見てみたいです!」
「あの、私まだ同一人物だとは一言も」
「私も見てみたいな。シズムがゲーム得意なんて意外だったし」
「先生?」
「いいんじゃない? ちょうどみんなでやるのも飽きてきた頃だったし」
「あの、ミドリさん?」
「決まりだね! 私ジュース持ってくる!」
えっ!?
あの全一ゲーマー、UZQueenとタイマン!?
で……できらぁ!!
く、クソ! クソクソクソクソクソクソクソ!!
カス!!
ゴミ!!!!
うんち!!!!!!
なにかがおかしいですわ!! レフェリー!! レフェリーお呼びになって! ドーピング! ドーピングしてますわよこれ絶対!
画面では私の愛機たる高身長細身イケメンキャラが一生ボコられてます!! オンラインなら二割近く勝ててるからオフの
はあ!? 今のディレイ掴み初めて見せたんですけれども!? なんで回避合わせられますの!? 脳みそゴースティングしてます!?!?
「お、お慈悲!! お慈悲くださいまし!!」
「え、えぇ……」
「み、見事にボコられてるね……」
「グロい……」
ゲージ!! ゲージ溜まりましたわ!! 死ねいUZQueen!! は? 二連ジャスガキショすぎません?
リザルト。
「……」
「あ、あの、シズムさん……?」
「死んでる……」
「……わよ」
「え?」
「
「いやさっきも負けたし時の運とか関係ないくらいボコボコだったじゃん……」
「そこ! うるさいですわよ!」
「え、えーと、よろしくお願いします……?」
「はい!! 対戦よろしくお願いします!!」
一回負けたからなんですの!? こっちは!? ちょうど!? 指が温まってきた頃ですし!? 正実で忙しかったブランク分がちょうど抜けきってきたぐらいですわ!! 今にも吠え面かかせてやりまりすからね!!!!
1-10でしたわ!!!! クソわよ!!!!
……どことは言いませんけど、怒られそうですわね?
半分と半々年くらいエタらせている連載を書くべきなのに、息抜きだったはずのこちらばかり書いてしまっている
評価・感想・誤字報告ありがとうございます。