事情通系胡散臭お嬢様になりたい転生トリニティ生 作:水野 四十坂Q
ぐう。
「あ」
「ん?」
「……」
おや。
あの後どうぶつカートやどうぶつパーティ、おいでよ配管工の森やリバイバルキッズなど遊んでいた私たちでしたが、唐突にお腹の虫の声が。……いえ、誰のかということを考えるのはやめておいてあげましょう、彼女の尊厳のためにも。
「そろそろお昼にしよっか」
「うん。気が付かなかったけど、もうとっくに12時過ぎてたね」
こういう時は先生とミドリさんが率先して動いてくれますから助かりますわね。
「あ! はいはい! でしたら私、ジャンクフードが食べたいですわ! ピザパ! ピザパやってみたいです! トリニティだとそういう機会がありませんの!」
「賛成です! アリスもピザが食べたいです!」
「いいけど、ピザくらい別にトリニティでも食べられるんじゃないの?」
「違うんですのよ! 私はジャンクフードらしい、チェーン店のやっすいピザが食べたいのですわ! トリニティで出てくるのは『ピッツェリア』って感じのであって別物ですの! あれ! コーラとポテトとピザをみんなで囲むやつ! あれがやりたいですわ!」
ハンバーガーもピザもトリニティにありますけど、基本なんかオシャレな照明で照らされたレストランで、いい感じにオシャレな盛り付けで出てきますからね! いい加減私、マクドナルドやサイゼリヤの味が恋しくてよ!
あ、先生がほんの一瞬「ピザか……」って顔しましたわね。アレでしょう。元日本人の感覚から言わせてもらいますけど、ピザって普段の食事としては結構お高い部類に入りますからね。人数もいますし。
「まあここは言い出しっぺとして私が支払いましょう。このジグゾーピザとかどうでしょうか? D.U.ならデリバリーしてくれるらしいですわよ」
「あ、いや私が持つよ」
「いや別に気にしなくていいですわよ……貴方からしたら生徒に支払わせたくないんでしょうけど、私お金持ちですし」
バカみてーな紅茶風呂とか入ってますからね、トリニティ。私も一個5000円するプリンとか食べちゃいますし。そもそも正実のお給金からしてめちゃくちゃ貰えるので、もう単純に物価が違うんですのよね。
「いやそれはちょっと」
「めんどくさいですわね貴方。奢ってやるって言ってるんだからそこは気持ちよく奢られておきなさいな。モモイさんを見習いなさいな」
と、モモイさんを見やれば。
「マジ!? ありがとー!」
うーむ。あっぱれ。いい意味で子どもですわね。眩しい。
「というわけで、皆さん何食べます? 私はこの辺のマルゲリータとか照りマヨにしようと思ってますけれど」
「はい! アリスはこれが食べたいです!」
アリスさんは4種盛りのミックスピザですわね。手持ちのスマホを使って入力していきます。
他には、モモイさんがペパロニとシーフード、ミドリさんがはちみつチーズとマルゲリータ、ユズさんがバーベキューピザ。性格出てますわね〜。
「じゃあ私はシーフードとガーリックシュリンプを一枚ずつで……」
「はい。シーフードとガーリックシュリンプのハーフハーフとサラダですわね」
「あれ!? 私だけ言うこと聞いてくれない!? なんで!?」
「なんでってそりゃ貴方……普段から昼食は一個100円の菓子パンで済ませてるからでしょう。こういう時くらいバランスよく食べなさいな」
「横暴! 横暴だ!」
「支払い私ですから。はい注文〜」
「あぁ〜!」
みんなでつつく分のポテトとサラダ、あとドリンクを適当に追加しまして。あとはみなさんの要望を満たす感じにミックスとかダブルとか頼んでおきましょう。
「というか皆さんはもっと食べなくていいんですか? 遠慮なさらなくていいんですのよ?」
「いや流石に一人で二枚はちょっと……」
あれ……?
べ、別に私が食べ過ぎということはありませんわよね……? キヴォトス、基本的に運動量が多いのでピザ二枚くらいでちょうど釣り合いが取れる程度ではなくて……? あ、あの……?
「太るよ」
「先生、それ言っちゃうんだ……」
「は!? 太りませんけど!? 正実ならこれぐらいが標準ですけれども!? 別に私が特別食べるというわけではありませんけれども!? いや、といいうかこれはアレですから。どうせ皆さんでシェアして食べるので王道どころのマルゲリータは多めに抑えておこう、という配慮ですから」
女性にいちいちそういうこと言うんじゃありませんわよ!! カスが!!
というかなんか貴方、私に対してノンデリ野郎と化してきていませんか? あんまり調子乗ってるとぶっ飛ばしますわよ?
そんなこんなで楽しくお喋りをしていたら、あっという間にピザが到着。みんなで食べましょうか。
おいし〜〜! この分かりやすい味付け! 塩分、油分、糖質! たまりませんわ〜〜!!
ここでインド人を右に、ならぬコーラをひとつまみ! ぷは〜!! 口内の油を炭酸で押し流す爽快感! やっぱこれですわね!
あらアリスさん、これも食べます? あらあらいい子ですわね、笑顔が眩しいですわ〜!!
……じとり。
あら?
何やら視線。ミドリさんがジト目で私を見てますわね。
まあ、これはアレでしょうね。
「──別に、取ったりしませんわよ。安心なさいな」
「……その、すみません」
「なに、ミドリ。ほんとはもっとピザ食べたかったの? これ食べる?」
「お、お姉ちゃん。そういう話じゃないから……」
「?」
あらあらうふふ。モモイさんにはまだ早かったかしら?
──!? いや、ていうかもしかして今、私とても胡散臭いお嬢様になれているのではなくて!? 今なら事情通ムーブをするだけで『要素』を『満たせ』るのでは!?
「──みなさん」
「あれ、どうしたんですか?」
「ふっ……」
目は少しだけ伏せて。腰を後ろに引き、背筋を伸ばす。左手はももの上に置いて、右手で紅茶……はありませんからコーラを。締まりませんわね。
音の抑揚と、敢えて一切喋らず静かな時間を作る「テク」によって視線は完璧に集まりましたわ。あとはそれっぽいことを喋ってドヤ顔するだけ。
「実は……」
──アリスさんって、無名の司祭が作ったAL-1Sという兵器で、それはもう調月リオにバレていますの! しかも彼女はセミナーの予算を横領して対アリスさん用の要塞都市を建造してぶっ殺す気マンマンですわ!
──あ、無名の司祭というのはかつて存在した、名もなき神々という勢力の一派ですわね! あとで並行世界のシロコさんが侵攻して来るのですけれど、その時に詳しく知れますわよ!
──先生は特に黒服とベアトリーチェを警戒していると思いますけど、まだ顔を合わせていない地下生活者という者には気をつけた方がいいですわ! 結構エゲツないことしてきますからね! オフィスのセキュリティはもうちょい強化した方がいいと思いますわね! ちなみにホシノさんは過去に亡くなったアビドス生徒会長の話で揺さぶられて闇落ちしますわ!
「……ペンギンって、短足に見えるでしょう? あれって実は骨格的にはちゃんと長い脚があって、短く見えるのは羽毛の中に収納してるだけらしいですわ。つまり、常に膝立ちしてる生き物なんですのね」
「いや、何の話!?!?」
ぐわ〜〜〜〜〜!!!!
日和りましたわ〜〜〜〜〜!!!!
いや、だって、こんなタイミングで急に超重要情報話せるわけなくないですか……? ライナーじゃあるまいし……
普通に考えて、前回あんなにいい感じの雰囲気とタイミング作れてたのに言えなかったんですから、今だって言えるわけないと思いません? そうですわよね? 私何も悪くないですわ(自己弁護)。
「なんか急にめちゃくちゃ改まったからすごい大事な話が来るのかと思ったのに、なにそれ!? ペンギン!?」
「シズムってそういうところあるよね……」
「い、いやいや。大事な話でしょう? ほ、ほら。ゲームを作るときの参考資料になるかもしれませんですし。いるじゃないですか。どーでもいいエフェクトの部分を鬼の首取ったように取り上げて『リアリティがない!』っていう輩」
「いるけどさあ……いや今の雰囲気で出す話じゃなくない……?」
「あ、アリスさん! 助けてくださいまし!」
「シズムは困っているのですか?」
「助けなくていいと思うよ……」
「じゃあまたね!」
「ええ、また機会があれば」
もう夕暮れ。四人で帰るゲーム開発部を見送ります。
私もそろそろ帰りましょうか。明日はまた正実の活動やらなんやらがありますし。
「では、私もこれで」
「あれ、帰っちゃうの?」
「イヤそりゃ帰りますわよ……女子高生ですわよ……?」
「こ、この書類手伝っていってくれるとうれしいなー、なんて」
「やりませんわよ。遊んでた貴方の自業自得でしょうに」
「そんなあ」
「……」
私ジト目。ですから私にはそれ効きませんからね……?
「はあ。まあ、チナツさんやハスミ先輩、ユウカさん辺りに今度手伝ってもらってくださいまし。それでは」
「うん。もう暗いし、気をつけてね」
「誰に言ってますのよ」
そんなこんなで。
私なりに休日を満喫しましたわ。
というわけで「毒にも薬にもならない話」終わりです。あとは一つくらい書けるネタ残ってるんですが、そっちはホントのホントに気が向いたらということで。ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
……ところで、『とまれ』ってあんまり一般的な表現じゃないんですかね……?『ともあれ』と同じ意味で使ってたんですが……ChatGPTにも「古文的表現」って言われましたし……