この世界は残酷だ。それでも、メスガキは強かった。
「ねぇ、雑魚プロモーターお兄さん、次の依頼ってどこ?」
「その呼び方は外だとしないで欲しいな。せめて雑魚は付けないでくれないかな?」
「え~、お兄さんが雑魚なことは、一目瞭然。周知の事実。未来永劫変わらないよ」
「俺だって努力はしているんだぞ」
「ざ~こ、ざ~こ」
ガストレアが発生し、世界が終わりに向かってから10年。人類は、破滅を免れるのに必死だった。化け物との戦争により、人々は疲れ果てていた。治安、民度共に戦前の水準まで戻らなかった。
ガストレアの血を引き、常人以上の身体能力を持つ呪われた子供たち。その身体能力故に、少女たちはガストレア退治を請け負う民間警備会社の一員となっている。未熟だけれど、強力な身体能力を持つ少女であるイニシエーター。そんな超常の少女を導くプロモーター。二人で一つのペアなのだ。
「ヘイ、SHIRI。遅いぞ。早くしろ」
「俺の尻を揉んでも、原付は早くなんねぇぞ」
「この雑魚原付やめて。原二スクーターにしなさいよ」
「金がないんだよ」
「働けぇ!」
「働いてるわ!! 今も依頼に向かってるんだよ!!」
プロモーターである嘉手納伊予と、イニシエーターの須垣明香。彼女たちは、現場へと向かっていた。嘉手納は高校を中退し自営業の嘉手納民間警備をやっている。10歳の明香も義務教育をガン無視し不登校だ。嘉手納は明香を学校に行かせたかったが、彼女は全く行きたがらなかった。
「ざこおにーさんが遅漏だから、依頼が終わってるんですけど~ もうガストレア死んでますよ~ 遅すぎぃ!」
「お前、言動をなんとか出来ないのか? お前の中身、おっさんなんじゃないか?」
「それって、あなたの感想ですよね? なんか、そういうデータとかあるんですか?」
「明らかにおかしいだろ。お前、幼児じゃないだろ」
「……うるさいですね」
明香の言動は、おっさん臭かったし子供のくせに妙に賢いのだ。嘉手納は、おっさんが美少女化したのではないかと疑っている。(実際、明香はTS転生者であり正解だった)
「おっす。お疲れ様です!」
「むっ。明香と伊予ではないか。おぬしらもこの依頼を受けておったのか?」
「ああ。けど遅かったみたいだな」
「そうだよ(便乗)」
「お主ら、仲がいいな。ま、妾と蓮太郎もラブラブじゃけどな!」
「あっ、ふーん(察し)」
「おい、明香、今何か察したじゃろ」
「別に、興味ないね」
「嘘じゃろお主、誤魔化し方が下手すぎる」
藍原延珠のプロモーターである里見蓮太郎は、警察と何か話していた。
「なあ、明香。特売のモヤシ買いに行くか」
「はーあほくさ。雑魚お兄さん、前髪だけじゃなくて脳味噌もスカスカなんですか?」
「えっ? 何? お前、梯子外す感じ? ガストレア倒してから特売行く予定だったじゃん。ねえ。須垣さん」
「まだ終わってないですよ。前髪スカスカお兄さん」
「なんで俺が悪いみたいになってんの? ねぇ? なんで?」
明香は、延珠のスカートを後ろからめくり上げようとしていた。多分、嫌がらせだ。
「な、なんじゃ!? 明香、人のスカートを捲るでない!」
「恋愛雑魚の蓮太郎雑魚おにーさんも、これで落ちますよ。あの人、ロリコンですから」
「お前ら、人をロリコン呼ばわりするんじゃない! 延珠行くぞ! モヤシの特売だ!」
蓮太郎は、タイムセールに釣られていった。この場には嘉手納と明香。そして多田島警部だけしか居なくなった。
「脳味噌スカスカお兄さん、ガストレアの感染経路は確かめましたか?」
「あっ! そうか! そうだよな!」
里見ペアがいなくなって、嘉手納はようやく明香の言葉の意味を理解した。
「どうも警部さん。初めまして。嘉手納民間警備会社の嘉手納です」
「ああ、多田島だ。警部をしている。何か用か?」
「見たところ、倒したのはコイツ1体だけですよね? 他のガストレアは倒しました?」
「いや、1体だけだ」
「妙ですね。依頼では、2階から血液が垂れてきたということでした。このガストレアが、被害者が変化したものだとしたら、被害者を産み出したもう1体のガストレアはどこにいるんです?」
多田島の顔がこわばった。ここには、もう一体ガストレアがいるはずなのだ。
「そうか。マズイな。もう1体いるのか……」
「ええ。発見しなければいけません。依頼になりますね?」
「ああ。頼んだぞ」
多田島が嘉手納の持ち歩いている契約書にサインをする。話を聞いていた明香が、自分自身のことを指さした。
「明香、やれるな?」
「当たり前でしょ。私は、雑魚お兄ちゃんとは違う」
明香の瞳が赤く輝くと、髪が逆立った。そして、犬の耳が生える。髪が伸び、ふさふさとした犬の尻尾がショートパンツから覗く。
「おい、そこのマッポ。私の尻は見世物じゃないぞ」
「あっ、ああ。すまない」
明香は覚醒したイニシエーターだった。雑魚ではない。つよつよイニシエーターなのだ。能力を使うと、尻尾が邪魔になる。それに、呪われた子供たちですアピールをしていると、街中で嫌がらせに遭う。なので、普段はしまっているのだ。
「スカスカお兄ちゃん。私のバットをパスミー」
「ほれ」
「せんきゅー」
明香は壁を蹴り上げ、瞬く間に屋上へ上がる。鼻をひくひく動かすと、そのまま、屋上から屋上へと伝っていった。
「逃れられぬカルマ!」
自慢の鼻で血の匂いを放つガストレアを見つけた。そして、そのまま、飛び上がると、ガストレア目掛けてバラニウム製のバットを振り下ろした。
「チェリオォォ!!」
飛行型ガストレアは、地面に叩きつけられ、汚らしいシミへと変わった。
「勝った。第三部完!」
「おい。公道がぐちゃぐちゃになってるんだけど! 明香!」
「それ、嘉手納とマッポの役目だろ。潰すのが私。片付けがマッポ」
「いや。無理あるだろ」
多田島警部は、頬を引き攣らせながら、嘉手納民間警備との契約が遂行されたとし、書類にサインした。
「片付けもお前らに頼んで良いのか?」
「金次第ですね」
「これくらい出す」
多田島のジェスチャーに嘉手納が、頷いた。多田島が契約書にサインした。
「ありがとうございます。今後もご贔屓に」
「金! 金! 金! 民警として恥ずかしくないのか!」
「いや、お前も金って言うじゃん」
「それはそう」
嘉手納は、何気に器用だった。血や肉片を1箇所に纏めた。嘉手納の原付には大体何でも入っているのだ。
片付けをスピーディーに終えた2人は、サインを貰い、ボロ原付に乗りスーパーへ向かった。目的はモヤシの特売である。しかし、渋滞に巻き込まれたこともあり、タイムセールは終了していた。
「あっ、恋愛弱者男性の里見お兄ちゃんがいるよ!」
「その枕詞本当に必要だったか? 蓮太郎も色々大変なんだぞ」
「色々? 延珠に見つからないようにオナニーすることとか?」
「そうそう。俺も、お前が目敏くて、オチオチ抜く暇が、って違うわ!!」
「性欲つよつよお兄ちゃん。プライベートブラウザのブクマ、バレてないと思ってるの?」
「えっ…? 明香さん……」
「おっぱい星人で、分かりやすくて良いと思う」
「殺してくれ。俺を殺してくれ」
2人のイカれた会話は、周囲に丸聞こえだったので、蓮太郎と延珠はそっと立ち去ろうとした。
「
「お前、そんな木更津みたいな……蓮太郎! 奇遇だな! 俺ら友達だよな!」
「お前みたいな友達は居ねぇよ!」
「蓮太郎! 俺はお前と友達だと思っているぞ! 具体的にお前の料理上手なところが好きだ!」
嘉手納と明香の料理スキルは死んでいた。そのため、里見家に食材や食費を払い、料理のご相伴に預かってきたのだ。
「たくっ、しょうがねぇな。作ってやるよ」
蓮太郎はなんやかんやでこの2人に甘かったりする。