マイペースな覚醒メスガキイニシエータの明香と、ツッコミ役かつプロモーターの嘉手納は、ネットで依頼を探していた。
「おい! 見ろよ明香! すげぇ依頼だぞ!」
「お兄さん、かなりアホっぽい発言ですね。メスガキポイントが10pt貯まりましたよ」
「じゃあ、ティッシュと引き換えでお願いします」
「かしこまりました。温めますか?」
「なんで、ティッシュ温めるんやねん!?」
「急な似非関西弁、キモっ。大阪ゲットーの人に言ったら殺されますよ」
「いや、明香の発言の方が失礼だろ。大阪エリアだよ。あそこは独裁っぽいけどゲットーは失礼だろ」
「でも、箱の中に籠もってもガストレアに殺されるだけですよね。立派なゲットーです」
「待て。政治の話はよそう」
明香と嘉手納は歴史的な和解を果たした。
「で、その詐欺依頼ってなんなんですか?」
「これだ。ケースを探して3000万だとよ」
「ん? あー」
「政府の依頼だぞ。怪しくないぜ。本物だ」
「見当は付いてるんですか?」
「いや、全然分からん」
明香の瞳には、¥30,000,000が映し出されていた。
「このケース、昨日、私たちが目撃してます。臭いは覚えてます。チョロい依頼ですよ」
「昨日? あのガストレアが抱えていたモノか。印象的だから覚えてる。警察に引き渡したはずだよな?」
「ええ。ですが、この記事を見てください。聖天子の親衛隊が襲撃を受け全滅しています」
嘉手納は察しの良い方だ。決してバカではない。しかし、明香の頭の回転が速すぎるのだ。
「つまり、どういうことだ?」
「私たちが回収したケースは、大変、価値のあるものだったということです。警察に渡したケースが、聖天使親衛隊まで上がり、それを何者かが、奪取したのでしょう」
「おいおいおい。めちゃくちゃヤバい話じゃないか」
「でも、3000万ですよ。私の鼻で行方は分かります」
「その奪取した奴はヤバイ奴だよな……戦力が足りないかもなぁ……」
「じゃあ。力を隠している系の蓮太郎さんに頼みましょう」
「え? 蓮太郎って強いの?」
「ええ。芋砂お兄さんより強いですよ」
「芋砂とか言うなよ……俺はお前とは違って殴られたら死ぬんだよ……」
「私も死にますけど!?」
嘘である。明香はめちゃくちゃ頑丈だった。モノリス外への探索依頼で、推定ステージⅣのガストレアとダメージレースで勝負し、バットで殴り殺した実績を持っている。
「もう、お前1人で良いんじゃないか?」
「常識的に無理ですよ。何考えてるんですか?」
「えっ? お前、常識側なの?」
「ええ。スーパークレバー幼女なので」
「幼女は自分のことを幼女とか言わないんだよな……」
「うるさいですね……」
2人は金欠である。モノリス外へ向かうのならば、何らかの乗り物が必要となる。4駆をレンタルしたいのだが、未探索領域へ向かう乗り物のレンタル料は非常に高価だ。
「よう! 蓮太郎! 金貸して!」
「おい! 人ん家に入ってきて言うのがそれかよ!」
里見家は、嘉手納の借りている部屋の隣だ。すぐに行ける。朝方だったこともあり、蓮太郎と延寿はまだ家に居たのだ。
蓮太郎は、この話を聞いて飛びつかなかった。
「木更さんに確認する。俺のポケットマネーじゃ払えそうにない」
「んじゃ、俺たちも着いていくわ」
天童民警事務所の立地は異常だ。ちなみに嘉手納民間警備会社は、事務所を持っていない。維持費が高いのとノリと勢いで生きているからだ。
「木更さん、まだ里見お兄ちゃんとくっつかないんですか? 付き合っちゃえば良いじゃないですか……どうせ、くっつくんですから」
「明香ちゃん。デリカシーって知ってるかしら?」
「デリカシーなら、コンビニで売ってましたね」
「そう……もういいわ。嘉手納くん。ちゃんとイニシエーターを監督しなさい。この子が困ることになるわよ」
「あっ、はい」
嘉手納は明香を肘打ちした。明香は、嘉手納にやり返した。メスガキゴリラパワーで嘉手納は吹き飛んだ。
ゴミ箱を頭から被った彼は、ヨロヨロと立ち上がった。
「明香ちゃん……弁償してもらうわよ」
「……はい」
刀を構えた木更は、ブチギレる五秒前といった様子だった。
「あの〜。用件に入っていいですかね……」
「いつまでゴミ箱被ってるのよ??」
「俺の前世はヤドカリだったみたいで、なんか居心地が良くて……すいません……今外します」
几帳面な木更が、ゴミ箱の中を空っぽにしていたため、嘉手納はまだ辛うじて綺麗だった。
嘉手納の説明を聞いて、木更は頷いた。
「良いわ。私なら車を貸してくれるところを知ってるから、教えてあげる。お金もある程度出すわ」
「ありがとうございます。これで1500万が手に入るぞ!! 蓮太郎お前も1500万だぞ!!」
未探索領域を、明香の鼻を使いケースを追うのだ。強奪犯がどのようなルートで逃げているかが、鍵になる。
「取り敢えず、臭いの強い方に行きましょう。まだ東京エリア内にいるかもしれません」
「おう!」
四人乗りの高機動車を借りた一行は、臭いを追った。モノリス外に臭いは続いていた。
「なぁ、アレって軍用車だよな?」
「嘉手納もそう思うよな……」
蓮太郎の視線の先には、車列が有った。自衛隊のものだ。民警と軍は敵対していない。仲良しではないが、同業者ではある。
「臭いが強くなってますね。間違いなく、あの中にいます」
「マジかぁ」
「むっ? 普通に問い正せば良いのでないか?」
「奴ら武装しているし、3台もいる。数が多い。組織絡みの陰謀が有るんだよ」
「むむむ……」
対戦車ミサイルや、そういったものは用意していない。嘉手納のスナイパー・ライフルが、最大口径だ。
「蓮太郎……俺が狙撃で援護するから、お前たちは普通にしてろ。話せば分かるかもしれん」
「多分、無理だろうな……」
蓮太郎は、車列の後方に車を付けた。向こうも気付いていたようで、武装した兵士と、奇抜な格好をした男が降りてくる。
「里見くん。随分早いとうちゃッッッッッッグッっ」
「どーも仮面さん。須垣明香です」
仮面の男は、明らかに曲がってはいけない方に腕が曲がっていた。
「貴様ァ!!」
兵士が発砲するが、明香の方が早かった。兵士たちの四肢がバキバキに砕かれている。
「えっ? めちゃくちゃ喧嘩っ早くない? 本当に敵だったのか?」
「挨拶前のアンブッシュは、一回までセーフです。まさか、蓮太郎さん、そんなことも知らないんですか?」
「妾もそんなことは、知らんぞ!」
「良い機会だから覚えておくと良いですよ」
「いや、民警にそんな常識ねぇよ!!!!」
仮面の男のイニシエーターが、二刀を抜き明香に襲い掛かる。明香は刀をベキベキに圧し折った。
「実は、良い人だったんじゃないか?? 正当防衛してるんじゃないか??」
「変な仮面の男は、大体敵キャラですよ」
「妾はあの仮面、好きじゃぞ。蓮太郎にも似合うと思うのじゃ」
聖天子親衛隊が奪われたケースを、明香はいとも容易く取り返していた。
「ぐふっ、なんなんだお前はッッッ!? まさか新人類創造計画の試験モデルか!? こんなところで負けるなど!!」
嘉手納が、蓮太郎に指示を出す。蓮太郎は、敵の車を破壊した。
「アンブッシュが効いてない。それに、目的はケースだ。逃げるぞ!!」
「嘉手納、お前何もしてないじゃねぇか……」
蓮太郎の言葉に、嘉手納はしょんぼりした。
「芋砂お兄ちゃん、敵追ってきてるよ。出番でしょ。仕事して」
「マジかよ……」
嘉手納は、窓を開き身を乗り出す。そして、スナイパーライフルで、追っ手を狙撃した。ワンマガジン撃ち込んだ弾は継矢のように、同じ位置を穿ち、仮面の男が張ったバリアのようなものを貫いた。足を撃ち抜かれた男は、それ以上追ってこなかった。
「芋砂お兄ちゃん、本当に芋砂得意だよね」
「うるせぇ。近距離ゴリラに言われたくねぇよ」
ケースを取り戻した蓮太郎たちに、聖天子は直々に礼を言った。ボーナスを含め、報酬は1人あたり2000万円となった。里見ペア、嘉手納ペアのそれぞれに4000万円が入ったのだ。
「蓮太郎! 焼肉行こうぜ!! 俺たちやったんだ!! イヤッホー!!!」
こうして、ケース回収依頼は終了した。この依頼は嘉手納ペアにとっては、美味しすぎる仕事だった。
蛭子影胤テロ事件RTA、多分これが一番早いと思います。